ホーム > 生物の多様性の保全 > 森林の恵みと危機~九州の生物多様性~ > 日本の森林が直面する危機
日本の森林面積は、戦後から今日に至るまでほとんど変わっていませんが、森林の質をよく見ると、これまで生育していた植物の喪失・絶滅や動植物の種類の均一化など、森林は生物多様性の危機に直面しています。
日本でも草木の4分の1が絶滅の危機に瀕していると言われています。
日本最大の草食動物であるシカは、過去30年間に生息頭数が大幅に増加し、生息域も日本全体の約2割から4割へと拡大しました。九州でも同様であり、食害により生態系が大きく変化し、絶滅した植物も出ていると言われています。
これに伴い、昆虫や鳥類等の生息地も失われつつあります。シカが食べない植物、シカに寄生する昆虫、ヒルも増えており、生態系の均一化や変質などがみられます。
また、森林が裸地化し土壌崩壊の危険が生じるところも出現するなど深刻な被害が発生しています。
赤線(シカライン)より下は、シカの食害により下層植生が全くない。今後、上木が食害を受ければ、森林が崩壊。 |
シカが嫌う有毒植物(ヤマシャクヤク他)ばかりになった森林。多様性が喪失。 |
シカの角磨ぎにあったヒノキ。経済的価値が大きく毀損。 |
人工林の間伐が遅れると、森林の中が暗くなり、下草などが生えなくなります。
下草が無くなると昆虫やそれを餌にする動物も姿を消し、生物多様性が損なわれてしまいます。
山村の過疎化や生活様式の変化により、里山や竹林の手入れが不足すると森林の加齢や竹林の拡大が進み、若い森林等を好む生物の生息地が失われてしまいます。
手入れ不足のヒノキ林 |
森林に入り込んだ竹 |
地球温暖化により、多数の生物種の絶滅や生態系の崩壊が懸念されています。
九州では南限種であるブナなどの衰退が危惧されます。
また、病害虫(例えば、スギザイノタマバエ)が越冬しやすくなるため、被害の拡大が心配されています。
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衰退が危惧されるブナ |
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人間が、元々いなかった種や遺伝子を持ち込むことにより、生態系のバランスが崩れてしまいます。外来種は時として生態系を一気に変化・崩壊させてしまいます。
外来種であるマツノザイセンチュウによって引き起こされた松枯れ病は、耐性のない日本中のマツを枯らし、日本史上最悪の樹病となっています。
西表島ではネムノキの一種のギンネムが在来の植物を駆逐し、奄美大島や沖縄ではハブ駆除のために持ち込まれたマングースが島の固有種であるアマミノクロウサギやヤンバルクイナを捕食しています。
自動カメラで撮影されたマングース |
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松枯れ病の被害にあったマツ林 |
松枯れの原因となったマツノザイセンチュウ これを媒介するマツノマダラカミキリ(幼虫)(独立行政法人森林総合研究所) |
マツノマダラカミキリ(成虫) |
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ナラ枯れ病による被害木(赤い木) 森林に人の手が入らなくなったことにより、被害が拡大していると言われている。 |
ナラ枯れ病を媒介するカシノナガキクイムシ (独立行政法人森林総合研究所) |
生物は互いに複雑な関係でつながっており、これらの問題を放置しておくと互いに影響し合って生物多様性の喪失は加速的に進んでいきます。
ひとつひとつの影響は我々の生活に直接影響を与えない些細なことかも知れませんが、これらの連鎖反応が私たちの生活に重大な影響を及ぼすことが恐れられています。
例えば、これは航空機に使われているネジや部品がひとつひとつ外れていくようなものです。放っておくと航空機はいずれ墜落することになります。
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