赤谷プロジェクトでは今年度「ニホンジカの低密度下における捕獲試験」を実施します。赤谷の森のニホンジカ(以下シカ)の生息数はまだ少数ですが、増える前に効果的に捕獲する手法を確立しようという目的で、平成30年度から捕獲に取り組んでいます。取り組みではシカ以外の動物を捕獲しないように、動物が頻繁に通る獣道を避けた場所に鉱塩(塩のかたまり)を置いてシカをおびき寄せ、周りに設置した括り罠により捕獲する手法を採用しています。使用する罠も、(株)三生のスーパーマグナムという、一点に荷重が強くかからないと作動しない(シカ以外の動物では作動しにくい)製品を使用しています。一方で、非常に強力なバネと滑車方式によるワイヤーの括り方により、作動すればシカを逃がすことなく確実に捕獲することが可能です。これらの手法によってシカ以外の動物を極力捕獲せず、シカが寄ってきた場合は、その少ないチャンスを逃すことも無くなります。
実際の捕獲期間は6月を予定していますが、罠を設置した直後はシカが警戒して、近くまで寄ってこない可能性が考えられます。そこで、捕獲3週間前のこの日に罠を作動しない状態で仮設置をする作業を行いました。使用する罠は構造がやや複雑なこともあって、設置には十分な知識が必要となります。そこで、群馬県林業試験場の坂庭さんに設置方法について改めてご指導をいただきました。押さえるべきポイントはいくつもありますが、特に重要なのは、(ア)ガイドボックスと呼ばれる箱が動かないようにしっかりと地面に固定すること、(イ)シカの脚を括るワイヤーが滑車の通るべき部分を通っていること、(ウ)シカの脚を締め上げる時間を極力短くするために、ワイヤーの途中に留めるストッパーの位置を罠の先端に近づけることなどがありました。また、罠の設置場所についてですが、これまでの調査結果から、鉱塩によってシカが誘引されていることが確認できている地点を4つ選定しました。罠の数はそれぞれにつき3基ずつ計12基としました。捕獲箇所には、定点式のセンサーカメラが設置してあり、動くものがあるとそれに反応して写真が撮影され、画像データが関係者に送られます。加えて今回は、坂庭さん考案の、シカが罠にかかった場合にメールが届く通報装置も一緒に設置しました。定期的な見回りも当然行いますが、センサーカメラと通報装置により、シカが捕獲されたことを、より早く確実に知ることができます。
また、今年度からは括り罠に加えて箱罠による捕獲も実施します。これまでも箱罠は設置していたのですが、シカの警戒心が非常に強く、中にシカが入ってくれませんでした。しかし、鉱塩を中に入れて箱罠を数年間設置し続けた結果、昨年度あたりからシカが中に入って鉱塩を舐める様子が何度も確認されるようになりました(付近に設置したセンサーカメラの写真から)。箱罠の稼働も6月を予定していますが、罠を動作させる仕組み(シカが中に入ったら箱の扉が閉まる仕組み)については、職員だけでは分からない部分も多かったので、こちらも坂庭さんにご指導をいただきました。その仕掛けもいくつか種類があるようですが、一番オーソドックスなやり方である、糸(水糸を使用)を箱罠の中にピンと張るように通しておき、その糸にシカが触れると、糸と繋がっているストッパーが外れて、扉が閉まる仕組みを採用しました。糸を箱罠の中に通したので、シカが警戒せずにこれまで通り中に入ってくれるのか心配ではありますが、6月の本稼働に向けて、とりあえず糸を通した状態で仮設置を続け、糸の存在になれてもらおうと思います。
鉱塩は平らな場所に設置し、それを取り囲むように30cmほど離れた場所に括り罠を埋め込みます。
シカの脚を括るワイアヤーや締め付けるためのストッパー、各箇所のネジなどを細かくチェックします。
罠のワイヤーの先には10mのクレモナロープをつなげ、そのロープは付近の立木に結びつけます。
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林業試験場の坂庭さん考案の捕獲通報装置です。罠とつながっているロープが引っ張られると作動する仕組みとなっています。
ちなみに括り罠は仮設置の状態なので、その上に木を乗せてシカに踏み抜かれないようにしています。
こちらは箱罠を設置している様子です。仕組み自体は単純で、試したところしっかりと作動させることができました。
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さて、罠を設置してもシカがこれまで通り寄ってきてくれるのか、ドキドキしながら本稼働までモニタリングを続けたいと思います。また、その様子や6月以降の捕獲試験の状況もブログ等で随時発信していきたいと思います。
報告者:いとうちゃん
これからもどんどん、赤谷プロジェクトの様々な取組を紹介していきます。
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AKAYA(赤谷)プロジェクトホームページより