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「おかえりモネ」解説ページ

「おかえりモネ」とは?

   「おかえりモネ」は、5月17日からNHKで放送が開始される宮城県(気仙沼市、登米市)を舞台とした連続テレビ小説です。

   林野庁でも放送されたストーリーに併せて、森林や林業等について独自の解説をしていきます。
   また、林野庁公式Facebook林野庁公式Twitterでも情報を発信しておりますので、興味のある方はフォローをお願いします。

   連続テレビ小説「おかえりモネ」の詳細はNHK特設サイトへ〔外部リンク〕

    写真提供:登米市森林組合
     写真提供:登米市森林組合

          写真提供:登米市森林組合

    写真提供:登米市森林組合
        (写真提供:登米町森林組合)




【解説一覧】「おかえりモネ」の林業の関連するストーリーのポイント



9月7日(第82回) 花粉の少ないスギってあるの?

(解説)
   気象会社では野坂さん、内田さんが新規事業のプレゼンを行っていましたね。野坂さんのプレゼンにモネが山と気象の関係についてナイスフォローをしていました。さすが元森林組合の職員です。一方、内田さんは花粉情報の提供について完全なプレゼンをして、新規事業に採用されました。花粉症の方には、事前に花粉情報が分かるのは大助かりです!
   林野庁の職員なのに私も花粉症で、仕事柄スギ林へ行くことも…。ついつい、花粉が無くなれば良いのにと考えてしまいます。実は、花粉の少ないスギが開発されているってご存知ですか?
   花粉の少ないスギには、(ア)無花粉スギ品種(花粉が全くでないもの)、(イ)少花粉スギ品種(ほとんど花粉を生産しないもの)などがあり、令和2年3月までに(ア)は8品種、(イ)は147品種が開発されています。
   林業の品種の開発は、お米や果物の品種改良と同様に、よいもの同士を掛け合わせる形で開発が行われてきていますが、樹木は成長に時間がかかるため、それだけ時間も掛かります。今、多くの品種があるのは、これまでずっと開発が続けられてきた成果なんです。
   また、最近では特定母樹といって花粉も少なく、成長も特によいものが開発されています。成長が良いということは二酸化炭素をたくさん吸収でき、地球温暖化対策にもなることが期待されています。花粉症対策と地球温暖化対策、どちらにも貢献できる次世代の品種としてどんどん普及が進められています。

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(出典:林野庁webサイト「花粉の少ない苗木を植えよう」





7月16日(第45回) 萌芽更新

(解説)
   伐採された樹齢300年のヒバの切り株の根の間から、若い芽が伸びていましたね。モネのこれからと将来へ続く森林の営みを連想することができ、とても感動的なシーンでした。
   ドラマのヒバとは若干異なりますが、伐採された切り株から若い芽が育つことを「萌芽更新」といいます。今回は「
萌芽更新」について解説します。コナラやクヌギなどの広葉樹を伐採すると、伐採された切り株の外周部から 芽 (萌芽)が出てきます。幹や枝が伸びるときに葉の付け根にできた側芽(そくが)が、翌年芽吹くことなくそのまま眠った状態で、幹の肥大成長に伴い樹皮の直下に残ったり、幹の内部に埋没したりしています。これらは潜伏芽(せんぷくが)(または休眠芽)と呼ばれています。多くの場合、この無数の潜伏芽が、伐採に伴い失われた光合成のための地上部器官を回復させるために芽を出しているのです。幹の内部に埋没したものは固い幹を突き破って芽を出すことができないため、 必然的に樹皮直下にある潜伏芽がいち早く萌芽します。ただ、樹木の再生能力を利用するといっても、人が手を加えないで成林する訳ではなく、萌芽の数の管理、成長の妨げになる下草や灌木の除去などの手入れは必要です。
   萌芽更新による管理は、明治期以前の古くからコナラ、クヌギなどの広葉樹が大部分を占める里山林で行われてきました。薪や炭などの燃料、山菜等の食糧、農業用の肥料・資材の採取など、様々な用途に木材を利用するため、20~30年程度の間隔で伐採と萌芽による更新を繰り返していたのです。このような里山林は、比較的細く、高さも低い株立ち(注:樹木を根元で切り落とし、地際から茎や枝が数本立ち上がったような樹形の状態)した樹木からなる森林でした。
   なお、ドラマではヒバ(針葉樹)の切り株の根の間から芽が生えていましたが、一部の例外を除き針葉樹では萌芽更新は困難なため、この芽は萌芽更新ではないと考えられます。この芽は伐採されたヒバから落下した種子が発芽した、いわば子供のような木かも知れません。
   気象予報士として活動の芽が出たばかりのモネ。森林組合を辞めてしまったことは残念ですが、今後も森林や林業のことを忘れず、気象予報士としてあのヒバのような大樹に成長していくことをお祈りしたいと思います。これまでの森林組合での御活躍に心から感謝申し上げます。

(参考1)「林の再生能力を活かす」伊藤哲
              日本生態学会発行「里山のこれまでとこれから」所収

(参考2)「樹皮剥皮による河道内樹林管理手法の提案」伊木 千絵美他
              北海道開発土木研究所月報 No.622号 2005年3月
 
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コウヨウザンの萌芽更新


(出典:四国森林管理局webサイト



7月14日(第43回) 伐木チャンピオンシップ

(解説)
   ついに樹齢300年のヒバが伐採されましたね。サヤカさんが以前山には神様がいると言っていましたが、山では節目節目で神事を執り行う習慣が残っています。そのため、このヒバのように地域の象徴となる木を伐採するにあたって、神事やサヤカさんとモネがノコギリを入れる儀式を執り行ったんですね。また何よりも重要なことは、周りの木々や見守る人々を傷つけることのないよう方向を定め、正確に伐倒することです。このように安全に樹木を伐採するには、高度な技術が必要です。
   皆さんは「日本伐木チャンピオンシップ(JLC※)」をご存じですか?2014年から2年に一度、林業技術及び安全作業意識の向上、林業の社会的地位の向上、新規林業就業者数の拡大等を目的に開催されている林業技術の競技大会です。本大会では、[1]木をどれだけ目標に近く、素早く伐倒できるか等を競う「伐倒競技」、[2]チェーンソーの刃(ソーチェン)の着脱の正確性等を競う「ソーチェン着脱競技」、[3]2本の丸太を上下から切り出す正確性、タイム等を競う「丸太合せ輪切り競技」、[4]地面に接地している2本の丸太を接地面を傷つけず、素早く切り出せるかを競う「接地丸太輪切り競技」、[5]丸太に差し込まれた30本の枝を払う正確性等を競う「枝払い競技」の5競技があります。
   これらの競技は、「世界伐木チャンピオンシップ(WLC)」のルール、規則に準じて行われており、JLCの上位3名が日本代表としてWLCに参加しています。日本は2014年からの参加で、出場回数も2回とまだ少ないのですが、2018年の第33回大会では個人総合で19位を記録し、世界の猛者を相手に大いに健闘しました。大会出場も目標に、林業従事者の皆さんは、日頃から安全作業の技術を研鑽されているのです。

(※日本伐木チャンピョンシップウェブサイト
 
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(出典:平成26年度 森林・林業白書



7月13日(第42回) 将来の林業の担い手の育成

(解説)
   翔洋課長が「林業に未来があるか分からない」と悲観しつつも「この土地の文化も林業も大好きですよ」と話してくれました。もちろん、私たちも林業が大好きですし、林業には明るい未来があることを信じています!豊かな森林を次の世代に受け渡していかなければなりません。
   では、林業の将来を担う若者はどのように育成されているのでしょうか。全国各地には森林・林業を学べる高等学校が41都道府県に73校、大学が27都道府県に32校(令和3年4月現在※)あります。
   また最近では、1~2年制の専修学校や研修機関として、将来の地域林業のリーダーや森林管理の現場で即戦力となる人材を育成する「林業大学校」が続々と設立されており、令和3年度末時点で21校に増えています。例えば、平成31年度には鳥取県、令和2年度には北海道、今年度は青森県と奈良県で開校されており、来年度には福島県と山梨県で開校予定となっています。平成27年度に開校した高知県立林業大学校では建築家の隈研吾氏が校長を務め、高度な木造建築の設計方法を学ぶことができるほか、設計者と森林・林業の関係者との交流の機会を創出するなど様々な視点から森林・林業を学ぶことができるようです。
   モネが森林組合で多くのことを学び、成長したように、皆さんも森林・林業について学んで一緒に豊かな森林を活かし、育ててみませんか?

(※:林野庁webサイト(林業技術研修教育機関)
 
参考

参考

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現地実習に先立った講義の様子

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チェーンソーによる作業の様子
(出典:林野庁webサイト(情報誌 2016.10)四国森林管理局webサイト



7月12日(第41回) 長くて太い木材の保管場所

(解説)
   サヤカさんの山のヒバの木は、伐採されてから利用されるまでに、10年から50年保管されるようですね。以前木材の乾燥について解説したとおり、現在建てられる住宅などの木造建築物では、発注から納材までの期間(リードタイム)が短いために製材工場などに整備された木材乾燥施設(注:2段階が必要)で短期間で乾燥されます。これを人工乾燥といいます。しかし、今回の能舞台のように大規模な木造建築物には、長くて太い木材が必要で、乾燥施設に入れることができないので、長い時間を掛けて(天然)乾燥されるのです(注:以前の解説でも天然乾燥を否定している訳ではありません。)。
   床板に使用する板材は保管場所が見つかったようですが、梁や柱などの大きな断面の木材は保管場所を探すのも大変です。しかし、大きな木材が大量に保管される様子はさぞ迫力があることでしょう。実は都内にも大きな木材が大量に保管されている場所がありますので、御紹介します。
   場所は、江東区にある(公財)日本住宅・木材技術センターの銘木館です。長蔵スギ(長さ50m、樹齢500年、元の直径3m)、ネズコ(長さ17m、直径75cm、樹齢約350年)、群馬ケヤキ(長さ17m、直径80cm、樹齢約250年)などの巨大な丸太のほか、「春日局欅」や「笠懸の松」といった由緒ある木材も保管・展示されています。また、「牡丹杢(ぼたんもく)」、「縮緬杢(ちりめんもく)」など珍しい杢目も鑑賞することができます。事前連絡や申込書の提出などが必要となりますが、見学も可能ですので一度訪れてみてはいかがでしょうか。

(参考)公益財団法人 日本住宅・木材技術センター銘木館
 
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長蔵スギ





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笠懸の松


(出典:公益財団法人 日本住宅・木材技術センター銘木館




7月2日(第35回) 国づくりは樹木で山を埋めること

(解説)
   この地方を治めた伊達政宗公の教えとして、サヤカさんが「国づくりとは樹木で山を埋めることにあり」と話していましたね。江戸時代には、国を豊かにするには木を植えろといわれていたそうですが、これはどのようなことなのか解説します。
   我が国には、世界平均(880mm)の約2倍となる1700mmを超える豊富な降水が、梅雨時期などに集中的に降り注ぎます。国土もとても急峻で大陸と比べると河川がとても短く、幅も狭いために、土砂崩れや土石流の発生の危険がとても高いのです。これは江戸時代も同じでした。江戸時代には全ての建築物が木造でしたので、木造家屋が密集する江戸等の大都市では大火が頻発し、これに伴い建築用の木材需要も増大しました。木材を運び出すため、森林伐採が全国的規模で拡大し、その結果山地災害が多発することになりました。
   この頃から、森林を有効に利用しつつも同時に保全することが必要であるとの認識が広まり、17世紀後半頃には森林資源の維持を目的に特定の地域の森林の伐採を禁じる留山(とめやま)制度や「木曽の五木(ごぼく)」のように特定の樹種の伐採を禁止又は制限する留木(とめき)制度が各地で定められました。また、産業としての造林活動が本格的に開始されるようになったのもこの時期です。河川に沿って植林し、その氾濫に備えるためのものや上流の土砂流出の防止のための植林、強風や砂がもたらす害を抑える海岸防砂林の造成等が各地で行われました。さらに、森林の再生能力に応じて持続的に木材を収穫していため、森林を数十の区画に分け、一区画を順番に伐採していく「順伐山(じゅんぎりやま)」、「番山(ばんやま)」と呼ばれる方法での森林管理も各地で見られるようになりました。こうした伐採や造林に対する考え方は、現在の森林法に基づく森林計画制度にも活かされています。
   現代では、地球温暖化の影響もあり、以前にも増して集中豪雨が多発し、山地災害の危険性が高まっています。積極的に木材を利用し脱炭素社会の実現に貢献するとともに、伐採後には適切に造林を行い森林吸収源を確保したり、山地災害を防止する役割を強化する取組が一層重要となっています。

(参考1)平成13年度、平成6年度林業白書
(参考2)木曽式伐木運材図会(中部森林管理局)
 
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祭山神図





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株祭之図


(出典:中部森林管理局(木曽式伐木運材図会)






6月30日(第33回) 家にも燃料にもなる木は大切な財産

(解説)
   サヤカさんが、木材は家や舟の材料のほか燃料や農機具など様々な使い道がある財産として、昔から大切にされてきたと話していましたね。我が国は太古の昔から森林資源に恵まれ、そこに住む日本人は様々な用途に木材を使用してきました。我が国では、古くから木材とどのように関わって生活してきたのか解説します。
   先日、世界文化遺産登録への勧告が出された北東北縄文遺跡群のひとつ、三内丸山遺跡(約5千9百年~4千2百年前)では、柱と梁で組まれた竪穴式住居や直径1メートルの巨木6本を柱にしたシンボル的な3層の建物など多くの遺構が見つかっています。福井県の鳥浜貝塚(約6千5百年~3千5百年前)をはじめこの時代の遺跡からは様々な木製品が出土していますが、これらを見ると用途に応じた樹種が的確に選択されており、既に樹種の違いによる木材の性質が理解されていたと伺われます。水に強く、加工にも適した性質を持つスギが丸木舟の材料に使われ、櫂(かい)としては、弾力に富み水に強いケヤキやヤマグワが使用されていました。盆や鉢などの器にはきめ細かなトチ等が、石斧等の柄には粘り強い性質のユズリハ等が使用されていました。また現在でも、樽、桶、まな板、箸のほか、弁当箱等に使われる曲物、椀などの日用品、タンスなどの家具等にも木材が材料として使われています。
   弥生時代に入ると木材を主要な材料として住居が造られるようになり、6世紀末になると宮殿や寺院等数多くの大型の建築物が木材を利用して造られるようになりました。世界最大の木造建築として知られる東大寺大仏殿などの建造には、大量のヒノキなどが使われました。この点は石の文化といわれる海外と大きな違いといえます。また、世界最古の木造建築物として世界文化遺産に登録された法隆寺は、定期的な大規模改修を経て、千数百年経った現在もその姿を留めており、古代の建築技術を今に伝えています。その後、室町時代に確立したとされる書院造を経て江戸時代には構造を支える木組み技術が完成し、現代の木造軸組工法の住宅建築に活かされています。
   現在では、ハイボールの流行でウィスキーが人気となっていますが、独特の香りは樽に使われる木材の成分に由来しています。また、ピザの窯等に使われる薪、炉端料理等に使われる炭も近年見直され需要が増加しています。
   このように我々日本人は、古来から現在に至るまで木材を大切に利用するための知恵を持っているのです。

(参考)林野庁「木の文化を支える森」
 
三内丸山遺跡(青森県)
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法隆寺(奈良県)
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舟材(弁甲材)
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木製日用品(桶など)
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6月29日(第32回) スマート林業ってどんなもの?

(解説)
    朝岡さんの部下(?)の野坂さんと内田さんが、新しい気象予報サービスを検討するために、米麻森林組合の管理する山にフィールドワークにきていました。野坂さんは、レーザースキャナーで樹木の表面積、本数などを計測していましたね。実際に、レーザー光線による点群データを立体的な3次元画像に再現し、森林の高さ、太さ、曲がり、材積等を計測できる機械(地上型レーザースキャナがあります(図1)
   このように、林業の分野でもICTや地理空間情報等を活用して、生産性や安全性の向上、需要に応じた高度な木材生産等を目指す「スマート林業」の導入が各地でみられるようになっています。通常上空からは樹木が邪魔をして地形を観測することができませんが、例えば、航空機等から地上に照射するレーザの反射強度等の情報から、地上の高さや形状を3次元で計測することができ、オルソ画像、微地形表現図、レーザー林相図(図2)などを作成する「航空レーザー計測」や、スマホ等を用いた丸太の検収システムなどタブレット端末を活用した作業現場との情報共有、これらのデータを用いた需給情報のマッチングなどが各地で取り組まれています。
   なお、舞台となっている登米市でも、登米町森林組合、登米市等からなる登米市森林管理協議会が、施業情報や流通情報をデータ化し、タブレットを活用した流通管理システムの構築を進めています。
   小学校に無事に机を納入できた背景には、乾燥方法の工夫以外に、このようなスマート林業の導入もあったのかもしれません。
  
 
(図1   3Dレーザースキャナ計測で再現した林内画像)
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(図2   オルソ画像、微地形表現図、レーザー林相図の例)
参考

(出典:四国森林管理局webサイト林野庁webサイト(スマート林業の推進)



6月28日(第31回) 全国植樹祭

(解説)
    サヤカさんが植樹祭を企画していましたね。樹齢300年のヒバを伐採することを契機に、次の世代に森林を残すため、子供たちにも体験してもらうために植樹祭を企画したんですね。
   植樹祭といえば「全国植樹祭」です!国土緑化の中心的な行事として、例年、天皇皇后両陛下の御臨席を仰いで春に開催されています。第1回の全国植樹祭は、昭和25年に山梨県で「荒廃造林」をテーマに開催され、以降都道府県が持ち回りで開催しています。
   今年は島根県で「木でつなごう   人と森との   縁(えにし)の輪」をテーマに「第71回全国植樹祭」が開催されました。本大会は四大行幸啓(※)で初めて、天皇皇后両陛下にオンラインでお出ましいただき、天皇皇后両陛下にお手植え、お手播きを、天皇陛下には初めて御収穫を行っていただきました。更に、県内各地で県民参加の植樹イベントが開催されるなど、県をあげて盛り上がりを見せました。来年は滋賀県で「第72回全国植樹祭」が開催される予定です。
   皆さんも、近くで開催されるイベントに参加して、モネ達のように森、空、海を感じながら植樹体験してみてはいかがでしょうか?

(※)四大行幸啓:天皇皇后両陛下が外出される4つの行事のことで、全国植樹祭、国民体育大会、全国豊かな海づくり大会、国民文化祭のことを指しています。
  
 

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天皇陛下のお手植えの様子(写真:島根県提供)

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第71回全国植樹祭会場







6月22日(第27回) カフェなどの内装に木材を使うとお客さんが増える?

(解説)
    モネが働く森林組合に併設されいるカフェ「椎の実」は明るい色の木材が内装や家具に使われ、とても居心地がよさそうですが、「トムさん」が経営するジャズ喫茶も濃い色の木材が内装に使われ、落ち着いた雰囲気でしたね。最近では、街中でもカフェや商業施設などで木材の内装のものを多く見かけるようになりました。
   ヒノキやスギなどの木材のある空間では木の香りにも癒されますが、こうした木の効果が科学的に解明されつつあります。例えば、スギの内装材を設置した部屋で計算課題を実施した際に、作業中の唾液中のアミラーゼ活性化が低下する傾向にあったとの研究報告があります。これは、計算課題によるストレスをスギ材から揮発した精油成分が抑制したと解釈されています。
   それでは、商業施設やオフィス等の内装に木材を使うとどのような効果が期待できるでしょうか。それを実証する取組が昨年度から林野庁の支援により行われています。
   都内にあるカフェでは、ヒノキを内装に用いた木質化エリアと非木質エリアを間仕切りで区分し、両エリアの売上の違い等の検証が行われました。その結果、木質化エリアの着席率は、非木質化エリアのそれに比べて約2倍となり、木質化エリアの売上が非木質化エリアの約2倍となりました。また、木質化エリアを利用した来客者のほとんどが、木質化の良かった点として、リラックスできると回答しています。このように、商業施設等の内装に木材を使うと、利用者の快適性や満足度が高まるだけでなく、経済性の向上も期待できます。
   他にも、木材の香り成分による免疫力アップの効果、室内の湿度の変動を抑制する効果、眠りの質を高める効果、子供の集中を助ける効果など、木材を建物の内装等に用いることによって様々な効果が期待できます。
   皆さんも、建物に木を利用したり木製品を暮らしに取り入れる「ウッド・チェンジ」をしてみてはいかがでしょうか?

(参考:建物の内装木質化のすすめ「内装木質化した建物事例とその効果」「内装木質化等の効果実証事例集」林野庁HP「木づかい運動でウッド・チェンジ!」
  
 

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内装を木質化したオフィス

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一部エリアの内装を木質化したカフェ

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(出典:公益財団法人日本住宅・木材技術センター(令和2年度 内装木質化等促進のための環境整備に向けた取組支援事業 内装木質化等の効果実証事例集)


6月21日(第26回) 林業はどれくらい危険な仕事なの?

(解説)
    翔洋課長が、「林業は、労働災害が多い業種」と話していましたね。実際、自然を相手にする仕事なので、他業種に比べ危険は多いと思います。だからこそ、作業員の安全を一番考えている熊谷さんは、モネにきつく当たってしまったんですね。
   林業における死傷者数は、長期的に減少傾向にあります(図1)。これは、高性能林業機械の導入や路網整備等により働く人の負荷が軽減されたり、チェーンソーから身を守る防護衣の普及など労働環境が改善していることが理由だと考えられます。しかし、一方で、林業における労働災害の発生率は、全産業平均の9.5倍となっており、全産業の中で最も高い状態が続いています(図2)。
   林業労働者の死亡災害について作業別にみてみると、伐木作業中の災害が64%と一番多くなっており、集材作業、造材作業中にも多くの災害が発生しています(図3)。作業員の皆さんがカードゲームのように伐木作業者資格などの資格自慢をしていましたが、専門的な技術が必要だからこそ、皆さん多くの資格を持っていたんですね。

 
         
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(参考:厚生労働省「労働災害統計」




6月18日(第25回) 木材はどのように乾燥させるの?

(解説)
   昨日の放送の中で木村さんが「木は乾燥が一番厄介、天然乾燥は時間が掛かり過ぎるし、人工乾燥は燃料代が高くかかる」と言っていましたが、モネは、ビニールハウスでの乾燥と乾燥機を組み合わせて解決していましたね。あの方法で本当に上手くいくかは分かりませんが、実務でも、製品の納期が短いので、いかに時間と費用をかけずに乾燥させるかが課題となります。そこで木材と水分の関係から乾燥の方法について説明します。
   木材は顕微鏡で見てみると、道管(広葉樹)や仮道管(針葉樹)と呼ばれる細長いストローのような細胞が同じ方向に並んだような組織構造になっています。樹木の生育時には、このストローの中を水分が下から上に流れており、この水のことを自由水といいます。伐採された後の木材が乾燥する過程で最初に放出されるのがこの自由水です。自由水がなくなっても木材中にはまだ水が存在しています。実はストローのような細胞の壁は(紙のように)水分をある程度吸収しているのです。この細胞壁の内部に吸収されている水分のことを結合水といいます。自由水が全て放出されると、今度は細胞壁中の結合水が壁の内部を移動して材表面から放出されます。自由水がなくなり細胞壁が結合水で満たされている含水率のことを繊維飽和点といい、どの樹種でも概ね30%といわれています。
   含水率が繊維飽和点である30%よりも低い場合、含水率の変化は木材の性質に様々な影響を与えます。木材が収縮や膨張をするのもこの繊維飽和点以下のことです。強度性能も含水率が繊維飽和点よりも低いほど高くなります。ちょうど紙が水に濡れると容易に破れてしまうのと似ています。
   ドラマで説明があったように、木材を高温の下においた方が早く乾燥させることができるので、スギやヒノキなどの針葉樹では、繊維飽和点までは木材を100℃以上の高温で短時間(1日程度)で乾燥させても問題ありません(ただし、ドラマに出てきたナラ材では初期から高温乾燥には向かないようです。)。しかし、繊維飽和点以下になっても高温乾燥を続けると、収縮に伴う大きな引張力が掛かり、木材内部に放射方向の割れ(角材の木口に見られる対角線の割れ)が生じてしまいます。このため、含水率が30%程度になったら、60℃以下の温度で高周波加熱や減圧などして3~7日程度かけてゆっくりと乾燥させる必要があります。逆に、初めから中低温で乾燥すると、ドラマで説明のあったように時間と費用が掛かり過ぎます(ナラ材は材の特性から初期から中低温にする必要があります。)。
   時間と費用を節約しながら、割れなどがなく木材を乾燥させるためには、2段階の乾燥方法を組み合わせることが不可欠なのです。初期の含水率や樹種、利用できる乾燥施設により、温度、湿度、送風、時間などの最適な組み合わせをした乾燥スケジュールを調整する必要があります。
   中大規模の木造建築物に使用される木材には、高い強度性能が求められることがありますが、しっかり含水率を落とすことで、割れを抑え、寸法が安定するだけでなく強度も高まります。このように、木材にとって乾燥はとても重要なのです。

(参考)「スギ乾燥のための10の要点」森林総合研究所第1期中期計画成果集18

 
 
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          (図:針葉樹の組織構造)

                     
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      (図:木材中の水分)

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   (図:木材の強度と含水率)

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 (イメージ写真:木材乾燥機)
 

(出典(上):「この木なんの木」海青社
(出典(上から二番目):「木材の魅力・耐力・底力」
(社)日本木材加工技術協会関西支部
(出典(上から三番目):「木材科学講座3 木材の物理」海青社
(出典(下):「スギ乾燥のための10の要点」森林総合研究所第1期中期計画成果集18




6月17日(第24回) 木材はなぜ乾燥させるの?

(解説)
   製作した学童机が教育委員会の方に気に入ってもらえて安堵したモネ達ですが、今度は年度末までに4,200を納品する発注条件に翔洋課長も川久保さんも失望していましたね。実は、木材製品の製造工程の中で最も重要で時間が掛かるのが、木材の乾燥工程なのです。木材はなぜ乾燥をしなければならないのか解説します。
   樹木は生育しているときに、根から吸った水分を葉まで届けているため、その幹には多くの水分を含んでいます。伐採後、乾燥により木材の中の水分量が減少しますが、その際木材は収縮する性質があります。上手に乾燥させないと、収縮に伴い表面や内部に割れが生じるほか、反りや曲がりが発生することもあります。この点は、湿式のコンクリートや土塗壁と同じですね。建築物を建てた後に木材が曲がり、建物が傾いてしまわないよう、予め一定程度まで水分量を落とすため木材を乾燥させる必要があるのです。
   ではどれぐらい水分量を落とせばよいのでしょうか。それは温度と湿度が関係しています。1日の間、また季節によっても気温や湿度が変化します。冬の乾燥した時期には、木材の中から水分が放出され、湿度の高い梅雨の時期には逆に水分を吸収します。それらの水分の放出量と吸収量が平衡に達するときの含水率を平衡含水率(注:気乾含水率ともいいます。)と呼び、我が国の気候では平均して15%程度といわれています(※1)。15%前後の含水率の変化では収縮、膨張により大きく反りや曲がり、割れが生じることはありません。
   なお、木材の含水率の計算は、
含水率(%)=(木材の重量(g)-全乾重量(g))/全乾重量(g)×100
で表されます。全乾重量とは105℃の状態下において重量が変化しなくなった時の重量をいいます。木材は全乾重量以上の水分を含むことができるため、含水率が100%を超えることもあり、伐採直後のスギでは、材の位置により40%~260%の広い分布となることがあります(※2)。

(※1)「日本各地における木材の気候値平衡含水率」森林総合研究所研究報告(Bulletin of FFPRI) Vol.16 No.3 (No.443) 163 - 211 September 2017
(※2)「スギ乾燥のための10の要点」森林総合研究所第1期中期計画成果集18

 


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                  参考
 
 参考

(出典(上):木材工業ハンドブック)
(出典(中):林野庁webサイト(木づかい普及啓発テキスト「木の基本」)
(出典(下):「スギ乾燥のための10の要点」森林総合研究所第1期中期計画成果集18



6月16日(第23回) 公共建築物等における木材利用

(解説)
   翔陽課長が、「今、公共の建物や備品は、地元の木材使って作りなさいよーってのが行政のトレンドなんです」と話していましたね。この行政のトレンドとはどういうことなのか説明いたします。
   実は戦後長らく、木材にとって不遇な時代が続いていました。戦中戦後は我が国史上、森林資源が最も過剰利用された時代で、森林伐採により山地災害が多発しました。これを防止するため、当時の政府は政策目標として木材消費の抑制とともに建築物の不燃化(注:木造から鉄筋コンクリート造への変更)を掲げ、推進しました。国会決議や閣議決定のほか1959年には日本建築学会で、木造を禁止する決議をしたほどです。
   しかし時代は変わりました。戦後造成された森林資源が充実し、利用期を迎えるとともに、2000年には建築基準法が性能規定化され、木造の建築技術が飛躍的に向上しました。このような時代の変化を踏まえ、上記の政府の方針を変更するため、2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成22年法律第36号)」が施行され、その基本方針において、国が整備する一定の公共建築物について、低層のものは「原則としてすべて木造化を図る」など木材を積極的に利用するほか、木材を使用した備品の利用を促進することとされたのです。この法律に基づき、全国の(全ての)都道府県と(1623の)市区町村でも木材利用方針を策定し、取り組んでいます。このため、公共建築物の木造率は、年々増加傾向で推移しています。
   公共建築物は、多くの方に利用され、地域のシンボル的な存在となることも多いので、こうした政府の取り組みが、民間の建築物に波及していくことが期待されていましたが、民間への一層の普及促進を図るため、民間建築物を基本方針等の対象に追加するなどした改正法が先週の6月11日に可決、成立しました。この法改正も推進力にして木材利用を通じて、更なる地球温暖化や山地災害の防止、地域や産業の活性化に繋がることが期待されます。

(参考)公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律

 
(出典の一部を加工)

参考
 
 参考

(出典:林野庁webサイト(森林・林業・木材産業の現状と課題)



6月15日(第22回) 丸太の価格は安い?

(解説)
   川久保さんが、何十年も大切に育ててきた木の価格が安すぎると怒って(酔って?)いましたね。
   今日の放送では、直径20cmの丸太が一本1,600円で落札されたという話がありましたが、皆さんもそれを聞いて安すぎると感じませんでしたか?
   スギを植え、育てるには(植栽から50年生までに)114万円/ha~245万円/ha(※1)が必要となります。これに対して、50年生のスギを伐採し販売した場合の平均的な木材収入を推計すると96万円となります(※2)。
   50年もの時間、これだけの手間とお金をかけて大切に育てているんですから、川久保さんが怒る気持ちもわかりますね。ただ、サヤカさんが「山の人間もうかうかしてらんないよ!知恵絞って金稼がなきゃ林業はほんとに消えるよ」と言っていましたが、その通りだと思います。先ずは木を育て、丸太を生産するまでのコストを下げること。また、1本の立木や1つの伐採箇所から様々な品質の木材が生産されるので、それらを無駄なく活用すること。建築物の柱だけでなく、集成材・合板の材料として、さらにパルプや木質バイオマスの燃料、CNF(※3)や改質リグニン(※4)といったバイオマス由来の新素材を開発し、少しで価値を高める努力やドラマのような最終製品を生産・販売するなど売り方を工夫することも大切です。

1)「平成25年度林業経営統計調査報告」
2)スギ山元立木価格3,061円/m3に、スギ10齢級の平均材積315m3/ha(林野庁「森林資源の現況(平成29(2017)年3月31日現在)」における10齢級の総林分材積を同齢級の総森林面積で除した平均材積420m3/haに利用率0.75を乗じた値)を乗じて算出。
3)セルロースナノファイバー。木材の主要成分の一つであるセルロースの繊維をナノ(10億分の1)メートルレベルまでほぐしたもので、樹脂やゴム等との複合材料等は軽量ながら高強度、膨張・収縮しにくい、ガスバリア性が高いなどの特性を持つ素材
4)リグニンは、木材の主要成分の一つであり、高強度、耐熱性、耐薬品性等の特性を有する高付加価値材料への展開が期待される樹脂素材

 
(イメージ写真:丸太)
イメージ写真
(出典:登米町森林組合webサイト


           スギCNF水分散液                                         CNF
 イメージ写真
(出典:林野庁webサイト(木材のマテリアル利用技術開発(CNF))




6月14日(第21回) 林業に関する資格ってどんなものがあるの?

(解説)
   モネが菅波さんから「森林施業プランナー」などの林業関係の資格を進められていましたね。皆さんは「森林施業プランナー」ってご存知ですか?
   日本の森林所有形態は、小規模・分散的となっています、効率的に間伐等の森林施業を行うためには、隣接する森林所有者の森林を取りまとめる「施業の集約化」が必要です。この「施業の集約化」の推進を担う人材が「森林施業プランナー(※1)」です。森林施業プランナー協会が認定する民間資格ですが、令和3年3月までに2,405名が認定を受けており、年々認定者数は増加しています。なお、認定を受けるには試験に合格する必要があり、試験は一次試験(筆記試験)、二次試験(面接試験)があります。
   この他に国家資格として、森林所有者等への森林技術の指導や情報提供等を行う「林業普及指導員(※2)」や、森林・林業に関する専門的かつ高度な知識、技術、現場経験を有し市町村等への助言等を行う「森林総合監理士(フォレスター)(※3)」、また業務の品質管理を行う技術士の中にも森林部門の資格があります。「林業指導普及員」は、令和2年4月時点で1,264人が活動しており、「森林総合監理士」は令和3年3月末時点で1,477人が登録されています。ちなみに、合格率は林業指導普及員が48%(令和2年度)、森林総合監理士が22%(令和2年度)となっており、実際に林業に携わるプロが受験するのにこの合格率ということは、なかなかの難関ですね。

(※1) 参考:森林施業プランナー認定制度webサイト
(※2) 参考:林野庁webサイト(林業指導普及事業の概要)
(※3) 参考:林野庁webサイト(森林総合監理士(フォレスター))

 
   認定森林施業プランナー数の推移
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(出典:林野庁webサイト(令和2年度 森林林・業白書)


(イメージ写真:フォレスターの活動)

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(出典:林野庁webサイト(森林総合監理士(フォレスター))




6月11日(第20回) 森・川・海の繋がり

(解説)
   モネが今暮らしている登米(森林)、故郷の気仙沼(海)が水を通して循環していることを、これまでの経験を通じて実感していましたね。舞台となっている気仙沼市でも、「森は海の恋人」をスローガンに、漁業関係者が中心となった森づくり活動を続けています(※1)。森林の養分が川によって海に運ばれることなど、海における森林の重要性が認識されているんですね。
   では逆に、森林にとって海はどのような重要性があるのでしょう。例えば、サケ・マスの仲間は産卵のため生まれた川に帰ってきます。産卵後には死んでしまいますが、産卵後の死体(ホッチャレ)が、森林の生き物の餌となり、さらには樹木などの養分にもなります(※2)。海の養分が森林にも運ばれているんですね。
   このように、森林と海は水を通じてだけでなく、生物の営みを通じても循環しているのです。

(※1)NPO法人森は海の恋人ホームページ
(※2)北海道立総合研究機構「北海道産サケ野生集団の評価と流域生態系の動植物に及ぼす影響の解明(2009~2011年度)」

 
(イメージ写真)
 イメージ写真
(出典:林野庁webサイト



6月8日(第17回) 薪の利用

(解説)
   モネが薪を見ただけで、木の種類を言い当ててましたね。薪の状態から木の種類を当てるのは難しいのですが、それを当てるなんで流石ですね。
   ところで、皆さんは薪がどの程度利用されているのかご存知ですか?
   薪は古くから煮炊きや風呂の燃料として利用され、生活には欠かすことのできないエネルギー源でしたが、昭和30年代以降、燃料が石油やガスに代わっていき利用量は減少していきました(※1)。しかし、平成19年以降はピザ窯やパン窯用等として利用されたり、薪ストーブの販売が増えたこと(※2)などにより薪の生産量は増加に転じています。平成24年は東日本大震災の影響等により減少しましたが、近年は5万m3(※3)程度で推移しています(※1)。
   なお、この数値には、モネの実家のように自家消費されるものは入っていませんが、自家消費用に生産されるものも相当量あると考えられています(※4)。

(※1) 林野庁「特用林産基礎資料」
(※2) 一般社団法人日本暖炉ストーブ協会調べ
(※3) 1層積m3を丸太0.625m3に換算
(※4) 長野県が平成21年度、平成22年度に行った調査では、県内の約4%が薪ストーブや薪風呂を利用し、使用全量を購入せずに自家調達している世帯が約半数を占めた。
 (イメージ写真)
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  イメージ写真
(出典:登米町森林組合webサイト




6月1日(第12回) 何にでもなる魔法の材料”組手什”?

(解説)
   先週、モネが小学生に説明していた組手什で、龍己さんが盆棚を作っていましたね。組手什は「クデジュウ」と読みますが、平成21年からNPO等が取り組んでおり(※1)、棒状の木材に等間隔で切り込みが入っていて、それをはめ合わせて組み合わせることで、棚やベンチなど身の回りで必要なものを作ることができます。
   そのため、災害時には、緑の募金を活用して木製組立家具キット組手什を避難所の間仕切りとして使って頂く取組も行われました(※2)。
   皆さんもおうち時間が長くなっていると思いますが、アイデア次第でお洒落な家具などを作れる組手什にチャレンジして、楽しいおうち時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

(※1)登米町森林組合webサイト
(※2)(公社)国土緑化推進機構webサイト
 (イメージ写真:組手什)
  出典:国土緑化推進機構webサイト
(出典:(公社)国土緑化推進機構webサイト




5月31日(第11回) 木造建築に使われる木材の刻み加工とは?

(解説)
  モネが完成した木材製品を並べて運搬をしていましたね。放送では、フローリング材や壁の羽目板に使われる側面に凹凸のあるさね加工された板材を扱っていました。建築物に使われる木材の加工でも機械化が進んでいます。
   木材の加工といえば、大工さんを思い浮かべる方が多いと思います。昔は、工場で製材された木材は、乾燥されることなく住宅の建築現場に運び込まれ、数カ月置かれていました。これは建築される場所の気候に木材を晒すことで乾燥させていたのです。その後、大工さんはカンナを使って、反りや曲がりを矯正し、真っ直ぐで平滑な角材に仕上げます。次に、ノコギリやノミを使って、木を組み上げるために必要な(縦方向の)継手や(直交方向の)仕口部分の刻み加工行っていました。このカンナ仕上げや刻み加工が大工さんの腕の見どころだったのです。
   ところが現在は、工期の短縮や加工精度の向上に対する要請が高まり、木材の乾燥、仕上げを製材工場で行い、刻み加工は「プレカット工場」と呼ばれる工場で機械加工されているのです。プレカットとは、「pre」と「cut」からなる造語で、プレカット工場とは、「予め刻み加工を行う工場」を意味しています。
   木造軸組工法の建築物においてプレカット材の利用率は、1990年に1割にも満ちませんでしたが、現在は9割を超える水準となっており、大工さんが建築現場に加工道具を持たずに来ることも普通の光景となっています。大工職人の技能の分野にも機械化が相当に進んでいるのです。
 
  (写真:出典の一部を加工)
    出典:林野庁webサイト(現状と課題)
 (出典:林野庁webサイト「森林・林業・木材産業の現状と課題」





  (職業漫画「人to木(ひととき)」より抜粋
   職業漫画「人to木(ひととき)」~人と木をつなぐ仕事~
  (出典:林野庁webサイト「職業漫画「人to木(ひととき)」~人と木をつなぐ仕事~





5月27日(第9回) 山での安全確保

(解説)
   何とか避難小屋へ避難できたモネと圭輔君。まだ安心はできませんが、二人が無事に下山できることを祈るばかりです。
   実際、山には多くの危険があります。令和元年の山岳遭難は、発生件数2,531件、遭難者2,937人で、平成25年以降の発生件数は2,000件以上で推移しています(※1)。山や自然の中では、日常生活では想定できない様々な危険に満ちていると思われがちですが、山岳遭難の多くは、天候に関する不適切な判断や、不十分な装備で体力的に無理な計画を立てるなど、知識・経験・体力の不足等が原因とされています(※1)。
   今日の放送では、天気の急変(雷)、転落・滑落(ケガ)などが重なりましたが、山の危険はその他に、道迷い、落石、疲労・熱中症、鉄砲水・増水、危険な野生生物などがあります。予めこのような危険を予想し、それを避ける判断が安全につながります。登山などを行う場合には、的確な計画と万全な装備品等の準備、登山計画書・登山届の提出、早めに引き返すなど状況の的確な判断等を心掛け、安全に山を楽しみましょう。

(※1)令和元年における山岳遭難の概況(出典:警察庁webサイト
    (イメージ写真:雨の降る山)
    出典:四国森林管理局webサイト
  (出典:四国森林管理局webサイト




5月26日(第8回) 森林ESD

(解説)
   遥か昔に林間学校へ行った記憶がありますが、自然の中で様々な体験・勉強したことが今に活かされい…活かされいるハズです!
   自然で学ぶといえば、森林環境教育という言葉は聞いたことがあるかと思いますが、「森林ESD(Education for Sustainable Development)(※1)」という言葉はご存知ですか?森林ESDは、これまで森林分野に主眼を置いていた森林環境教育を発展させた考え方で、森林分野と教育分野の双方の視点を併せ持ち、学習指導要領(※2)で重視されている「アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)」について、森林を活用して実践するものです。また、「森林ESD」は学校と地域が協働して展開することが重要とされており、企業・NPO等と学校が連携した取組が各地で行われています(※3)。
   「森林ESD」は、要するに子どもたちが自分で考え行動できるようにするなど、多様な資質・能力を育むための取組のことですが、こういう小難しいことは大人が考えることで、子供たちには素直に、自然の中で感じたままに、様々なことを体験して学んで欲しいですね。

(※1)国土緑化推進機構ホームページ
(※2)学習指導要領(平成29・30年改訂) [出典:文部科学省ホームページ]
(※3)参照:企業・NPOと学校地域をつなぐ森林ESDの促進に向けて~基礎篇・事例編~
    出典:近畿中国森林管理局
  (出典:近畿中国森林管理局webサイト



5月25日(第7回) 森林の循環利用とSDGsとの関係

(解説)
   林間学校の講師役として、課長が山の仕事や木材の利用について、分かりやすく説明していましたね。課長が説明の中で、「山に木を植えて時間をかけて育てて、大きくなったら伐って、住宅や家具の材料にするのが林業の基本の仕事」と言っていましたね。その通りで、森林資源を循環利用していくことが大切だと思います。
   このところ、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への関心が高まりも見られますし、ここでSDGsと森林の循環利用について考えてみたいと思います。具体的なSDGs目標と関連付けながら整理された図1をみてみると、まず、様々な生物を育む森林そのものが目標15に関連し、水を育み(目標6)、豊かな海を作ること(目標14)などに貢献し、持続可能な森林経営の下で木材を生産、流通、利用することは目標12に直結することが分かります。また、バイオマスエネルギー利用は、持続可能なエネルギー(目標7)や気候変動対策(目標13)につながり、きのこ、ジビエ等の森の恵みは持続的な形の食糧生産(目標2)に、森林空間を活用する取組は雇用創出(目標8)や都市と農村との交流による地域活性化(目標11)につながることが分かります。
   ここで挙げたものは、ほんの一例です。皆さんが考え行動する、その取組が大きな流れとなりSDGsの達成につながると思いますので、ぜひ、これを機会に森林とSDGsについて考えてみてはいかがでしょうか。
   出典:森林林業白書
   (出典:令和元年度新林業白書




5月24日(第6回) 森林組合で働く女性

(解説)
   モネが試験に合格し、ついに正式採用になりましたね。しかも、モネは商品開発を担当することに。どのような木の商品を思いつくのでしょうか?楽しみですね!
   ところで、モネの職場となる森林組合、山での現場作業が多く男性の職場というイメージがありますね。実際はどうでしょうか。平成30年度森林組合統計(※1)を見てみると、モネと同じように全国の森林組合の事務所で働く女性(専従職員)は1,706人(専従職員全体の約25%)で、その他に山に入って木を植えたり、伐ったりといった現場作業をする女性(雇用労働者)が847人(雇用労働者全体の約6%)います。まだまだ男性の職員と比べると数は多くありませんが、最近では林業も機械化が進み、女性でも働きやすい職場となっていますので、モネのように森林に関わり活躍する女性がさらに増えて欲しいですね。
   ちなみにサヤカさんは、山主として山の管理を森林組合にお願いしている森林組合の「組合員」ですが、そのオーラから「親分」さんといった立場でしょうかね。

(※1) 平成30年度森林組合統計
          
   出典:情報誌林野2020.4
 
(出典:林野-RINYA-令和2年4月号




5月21日(第5回) 都市部の建築物の木造化・木質化

(解説)
   地域に伝わる伝統芸能である能舞台は素晴らしかったですね。課長の踊りはもちろんのこと、周りの自然と調和した舞台そのものも素晴らしかったです。サヤカさんが大切に思っていたヒバを伐採する気持ちになったのも分かります。木は伐るだけではなく、それを使うことで後世に受け継がれていく、それも木を使う魅力の一つなのでしょうね。
   最近は都市部においても、新国立競技場をはじめとしたオリンピック関連施設や、共同住宅、ホテル、オフィスビル、校舎など木材を活用した建築物が増えています。これは、CLT(直交集成板)や建築基準法で求められる性能を満たした木質耐火部材の開発等が進んでいることも要因に挙げられます。CLTは一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着したものなど(図1)で、木質耐火部材は木材を石膏こうボードで被覆したものや、モルタル等の燃え止まり層を備えたもの、鉄骨を木材で被覆したもの(図2)があります。これらの部材を使うことで、様々な安全基準を満たすことができ、これまで主流であった低層の住宅以外の建築物でも木造化・木質化の動きが広がっているんですね。
   ちなみに、今日の放送では課長が「能」を舞っていましたが、舞台となる登米市には「森舞台」という能舞台があり、新国立競技場等を設計した隈研吾氏の作品です。
      図1   CLTの模式図

CLT模式図
平成28年度森林・林業白書より

  図2   木質耐火構造の法式資料Ⅳ-36 木質耐火構造の方式平成30年度森林・林業白書より





5月20日(第4回) 森林セラピー基地・セラピーロードの認定

(解説)
   森林セラピーを体験し、ラフターヨガで大笑いするモネ、翔洋課長、朝岡さん。とっても気持ち良さそうでしたね。
   本日は、少し森林セラピーについて掘り下げてみましょう。森林セラピーは、科学的な証拠に裏付けされた森林浴のことで、NPO法人森林セラピーソサエティが認定する森林セラピーロードと森林セラピー基地で行われる活動のことを言います(※1)。
   森林セラピーロードは、生理・心理実験によって癒しの効果が実証され、森林セラピーに適したと認められた道のことで、森林セラピー基地は、森林セラピーロードが2本以上あり、健康増進やリラックスを目的とした包括的なプログラムを提供している地域のことです。なお、安全・安心に森林セラピーを実施するには、森林セラピーガイドや森林セラピストの案内を受けることが必要とされています。
   ちなみに、舞台となっている登米市内は森林セラピー基地があります(※2)ので、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

(※1) NPO法人森林セラピーソサイエティ
(※2) 登米ふれあいの森
   登米市の森林セラピーロード
  イメージ:森林セラピー
  




5月19日(第3回) 林野庁にも漫画家が!?

(解説)
   朝岡さんが石ノ森章太郎原画展のチラシに食いついてましたね。私も石ノ森章太郎先生の作品は大好きで、特に悪の組織に魔改造されたヒーローが活躍するシリーズは(ほぼ)全て見ています!朝岡さんと朝まで語り合ってみたい…。
   話がそれましたが、林野庁にも漫画を使って、多くの人々に森林について分かりやすく伝える職員がいることを知っていますか?その名も平田美紗子画伯です!代表作には皆さんご存知(?)の「お山ん画(おやまんが)」、「人to木(ひととき)」などがあります。専門的な知識を分かりやすく紹介するこれらの作品は一読の価値アリです!林野庁のホームページ(※1)からご覧になれますので、ぜひ一度ご覧ください。

(※1) 林野庁ホームページ
         
    北海道森林管理局webサイト
(出典:北海道森林管理局webサイト





5月18日(第2回) 木の名前の由来

(解説)
   サヤカさんの山にあった樹齢300年のヒバは立派でしたね。古くて大きな木はそれだけで神秘性を感じ、圧倒されてしまいます。ところで、サヤカさんが「アスナロ」の名前の由来を「明日はヒノキになろう」と説明していましたね。木の名前にはこのように面白い由来のものもあります。
   それでは、アスナロの説明に使われた「ヒノキ」はどのような由来があるのでしょう。昔からヒノキは火の出やすいことで知られており、語源は「火の木」であるという説が有名です。その他には、日本書紀では宮殿の材にするくらい尊い木という趣旨の記載もあること、また、ヒノキの古語である「桧(ヒ)」は、「火(ヒ)」を表す「斐」という音ではなく、「日(ヒ)」と同じ「比」という音を用いていたことから、最高のものを表す「日(ヒ)」に基づくとする説もあります(※1)。
   鬼との闘いを題材とした某大人気漫画では、様々な「呼吸」の呼び方がありますが、特別視されている「ヒ」の呼吸を表すのは「日」だけで、「火(ヒ)」は使われませんね。「火」の代わりに使われているのは「炎(ホノオ)」です。このように「日」を特別なものとしている点は、物語的にも重要な要素になっていますよね。
   私もこの漫画は大好きなので、ヒノキの語源は「日(ヒ)」に基づくという説を押してみたいと思います。「全集中」で呼吸を整え「ヒノキ」を手にして「神楽」を舞ってみたら、「ヒ」の呼吸を使えるようになるでしょうか。

(※1) 「木の名の由来」(深津正・小林義雄著/東書選書)
         
   出典:中国森林管理局ホームページ  出典:中国森林管理局ホームページ
(出典:中部森林管理局Webサイト





5月17日(第1回) 森林組合はどんなところ?

(解説)
   森林組合に見習いとして就職したモネ。見るからに個性的(?)な仲間に囲まれて、これからどのように森林と関わっていくのか楽しみですね!
   今日の放送では、森林組合について「みんなの山と森を守るのが仕事です」といった紹介がありました。本作はフィクションですので、実際の森林組合とは少し違うと思います(お洒落なカフェ等は併設されていません)が、実際の森林組合はどのようなところか簡単にご紹介します。森林組合は、サヤカさんのような森林所有者(組合員)が出資して設立した協同組合です。森林所有者の森林経営のために、経営指導、苗木の植え付け、間伐(※1)などの作業、木を伐って丸太に加工、販売するなど様々な事業を行っています。
   本作の舞台となっている登米市の森林組合では、登米市等と「登米市森林管理協議会」を設立し、森林認証(※2)の取得、森林認証材の供給・流通といった取組を行っています。特に、森林認証を受けた広葉樹材を加工して、フローリング材、内装建材、家具等の製品開発まで行っているところは珍しいですね。

(※1)間伐とは、樹木の成長に応じて、一部の植栽木を伐採し立木密度を調整すること
(※2)森林認証とは、第三者機関が森林経営の持続性や環境保全への配慮等に関する一定の基準に基づいて森林を認証するとともに、認証された森林から産出される木材及び木材製品(認証材)を分別し、表示管理することにより、消費者の選択的な購入を促す取組
  写真提供:登米町森林組合
(写真提供:登米町森林組合)





「おかえりモネ」林野庁解説始めます!

   いよいよ、朝のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」が始まります。舞台の中心は宮城県であり、森林についても多く描かれるようです。
   今後、林野庁では、ストーリーに併せて、森林や林業等について独自の解説をしていきます。
   どうぞお楽しみに。



お問合せ先

林野庁林政部林政課広報

ダイヤルイン:03-3502-8026