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津軽森林管理署

高校生による治山工事現場見学について

  青森県立五所川原農林高等学校より授業の一環として森林科学科の生徒に国有林の治山工事現場を見学させて欲しいとの要望があり、現在、実施中の「後長根沢治山工事」の現場を見学していただきましたので、その様子をお知らせします。

 

  見学月日  平成26年10月20日(月曜日)

  見学者  青森県立五所川原農林高等学校  森林科学科  2年生  33名  教諭4名

  見学箇所  青森県弘前市大字百沢字東岩木山国有林33林班  後長根沢治山工事

 

現地説明の内容

  見学にあたって、当署総括治山技術官、治山技術官より「後長根沢治山工事」の目的や概要、国有林の治山工事などについて説明し、その後、土石流跡を見学しました。

  「後長根沢治山工事」の概要や工事経過についてはこちらをご覧ください。

 

 工事概要説明  現在施工中の治山ダムの前で工事の目的や概要について説明をしました。
 土石流の説明

 後長根沢治山工事実施する原因となった土石流の実態についての説明です。

 平成25年9月15日から16日にかけて三陸沖を通過した台風18号の影響で2日間の雨量が200ミリメートルを超え、標高1200メートル付近で発生したとみられる土砂崩れによる土砂が標高800メートル付近で左岸の支流と合流したことにより土石流化したものと見られる。

標高510メートル付近から勾配が緩やかになるとともに、幅も広がるため流速が低下し泥流はそのまま流下したものの、流木や土砂は堆積したと考えられる。

標高510メートル付近を境に上流は土石が流下した状況、下流は土石が堆積した状況となっていることが写真を見ると理解できると思います。

後長根沢工事目的

後長根沢治山工事は堆積した土砂が再び下流に流れ出さないように安定させさること、沢側面の斜面がこれ以上削られないように固定することを目的に治山ダムを設置します。

また、更に上流に2基の治山ダムを階段状に設置することで、勾配を緩やかにし、下流への土石の流出を防ぐことを目的としています。

後長根沢は下流の砂防事業と連携し、一体的な土石流対策を行うことで、山地災害を未然に防ぐこととしています。

治山と砂防

次に、治山ダムと砂防ダムの違いについて説明しました。

簡単に言うと

・治山ダムは森林の持つ土砂災害の防止機能を発揮させることを目的にしたダムで、ダムが周辺の森林と一体となり土砂の生産や流出を防止することで下流の土砂災害を防止する。

 

・砂防ダムはダム本体で流出した土砂をせき止め下流の土砂災害を防止する。

ダムを超えて 上流へ移動 説明終了後、普段上がることの出来ない治山ダムの放水路を越えて、後長根沢を上流へ向かいます。
後長根沢の紅葉風景 沢を移動

天気はあいにく曇り空でしたが、岩木山は紅葉真っ盛りで非常にきれいでした。

生徒の皆さんは大きな岩や石で足元の不安定な中、更に上流を目指します。

土石流の痕跡

上流3基めの治山ダム設置予定箇所です。

非常に大きな岩がそこら中に堆積し、土石流の威力がうかがえます。

中には4トンを越える岩も流れているそうです。

 

転石の説明の中でコケが付いているものは元々沢床にあった石で、コケのないものは土石流により流下したものである。とのことでしたが、ほとんどがコケのない石でした。

 作業道へ移動 治山事業全体の説明  後長根沢から移動し、国有林の治山事業全体の説明をしました。
 災害復旧事例(内陸地震)

 はじめに、平成20年に発生した「岩手・宮城内陸地震」で発生した山地災害箇所の復旧状況を説明しました。

 復旧工事開始から4から5年の年月は要したものの、崩落した斜面の山脚及び山腹を固定し、森林へ復旧していることが分かると思います。

 治山ダムの効果

 次に治山ダムの効果について説明しました。

 これも岩手・宮城内陸地震により発生した災害です。

 地震により大規模に崩壊し、大量の土砂が堆積した箇所について、今後土石流化による土砂災害が予想されたため、下流に治山ダムを設置し災害の未然防止対策を行った事例です。

 かなり、変わった形状のダムですが早急な対策が必要だったことから、一般的なコンクリートのダムではなく、設置現場の土砂を利用して作設したため、このような形状になっています。

  その後の大雨で土石流が発生しましたが、治山ダムにより土砂の流下を止めていることが分かると思います。

  また、右下の写真は工事中に台風により土砂が流出しましたが、ダム本体の工事が終了していたため、土砂をせき止めるとともに堆積した土砂により川の傾斜が緩やかになり、流下の勢いを弱めていることが分かると思います。

海岸林治山の概要

 最後に海岸林の整備についても国有林の治山事業であることを説明しました。

 海岸林は東日本大震災で発生した津波の威力を弱める効果が認められたこと、また、それ以外でも砂地からの飛砂による被害を食い止めるために整備が必要であることを説明しました。

型枠設置

 後長根治山工事は順調に進み、現在本体が完成し、下流に設置する側壁を作設するための型枠設置作業を施工中です。

 作業自体はあまり大規模な作業ではありませんが、実際の作業を見るとやはり迫力があります。

  総括治山技術官より、まず型枠を設置し、その後コンクリートを充填することで側壁が出来ること、この行程は本体工事と同様であることを説明しました。

 

 これで今回の見学会については全ての行程を終了しました。

 

 終わりに

  今回は、日頃、森林や林業について勉強をしている森林科学科の生徒の皆さんに見学していただきましたが、なかなか治山事業に触れる機会がないということで、理解するのがたいへんだったと思います。

  近年、ゲリラ豪雨などの異常気象とも言える天候が多くなっているように感じ、各地で土砂崩れや地すべり災害による甚大な被害の発生が報道されております。そのような時に被害を未然に防ぐ方法、被害が発生した後の復旧について、少しでも治山事業のことを思い出し、考えていただければありがたいと感じております。

  後長根沢治山工事については、来年度以降も上流に治山ダムの設置が予定されており、五所川原農林高等学校、森林科学科の皆さんから来年度も見学させて欲しいとの申し出がありましたので、本見学会を継続し、治山事業全体が完成する過程を学んでいただきたいと考えております。

 

 

 

ちなみに

  今回の見学会の前に予行練習として職員を対象に勉強会を行いました。

 

署内勉強会 署内勉強会2

 国有林に働く当署職員の中にも、これまで治山事業に携わった経験のない職員がおり、治山事業について理解を深められた良い機会となりました。

職員からは、このような説明にしたらどうか、このような内容も説明したらどうかといった提案がありました。

また、治山事業の目的や工法についての厳しい質問が出され回答に困る場面もありました。

中には 説明の内容が難しい、専門用語が分かりづらいなどのダメだしもありました。

 

 

 

 

 

 

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