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東北森林管理局

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    置賜森林管理署

    「署長が語る!」

                      平成31年2月
    置賜森林管理署
    署長  佐藤  宏一

     

      1. 置賜地方の歴史
      置賜(おきたま)という名称は「広く葦(あし)のはえている谷」という意味のアイヌ語「ウキタム」が由来とされています。
      江戸時代には、上杉氏の米沢藩が置賜地方を治め、独特の郷土料理や方言などの藩政文化が育まれました。また、9代藩主の上杉鷹山は、藩の財政難を立て直すために尽力し  「なせば成る なさねば成らぬ何事も 成らぬは人のなさぬなりけり」の名言を残し、アメリカ合衆国のケネディ元大統領が最も尊敬する日本の政治家として彼の名を挙げています。
      明治時代には、英国婦人イザベラ・バードが訪れ、その著書『日本奥地紀行』の中で、置賜地方を「エデンの園(地上の楽園)」とし、その風景を「東洋のアルカディア(理想郷)」 と評しました。

                                           


      2. 管内の国有林の概要
      置賜森林管理署では、山形県の南部に位置する米沢市や小国町などの3市5町の土地面積の31%、森林面積の41%を占める国有林野7万7千haを管理経営しています。うち、ブナなどの天然林が森林面積の90%を占め、スギなどの人工林は僅か10%です。
      管内には、日本百名山に選定されている朝日連峰、飯豊連峰、吾妻山があり、それぞれ原生的で非常に貴重な森林生態系を有することから、特に保護を要する区域を「森林生態系保護地域」に指定し、保全管理を行っています。また、「鳥海朝日・飯豊吾妻緑の回廊」を設定して保護林を連結するとともに、管内国有林のうち22%が「磐梯朝日国立公園」に指定されるなど、大自然に恵まれた地域です。

    3. 森林生態系保護地域の保全管理
      森林生態系保護地域の適正な保全管理に努めるため、自然保護団体と共同で湿原の植生回復事業を行うとともに、関係行政機関、学識経験者等有識者との情報共有や活動方針等に係る意見交換を図る場として「検討会」を開催し、効果的な保全管理活動を推進しています。
      また、森林保護員(グリーン・サポート・スタッフ)による巡視保全活動も行っています。

    吾妻山周辺森林生態系保護地域内「弥兵衛平湿原」の植生回復作業(標高1800m付近)                同左         
     吾妻山周辺森林生態系保護地域保全管理検討会                                         森林保護員「任命式」           
         森林保護員による巡視保全活動                      同左





    4. 温身平風致探勝林
      平成29年9月20日に「レクリエーションの森」の共通ロゴマークが設定されました。シンボルマークは、大きく手を広げた人が中央に立ち、その周りを葉が覆い、一本の木を形成しています。
    また、葉の形を利用して「レクリエーションの森」の頭文字である「R」を表現しています。
      飯豊山周辺森林生態系保護地域内にある「温身平」(ぬくみだいら)は、レクリエーションの森のうち「風致探勝林」に設定されています。
      平成18年に日本初の森林セラピー基地として認定され、日本百名山に選定されている飯豊連峰への登山口にもなっていることから、毎年、県内外から多くの登山者や観光客が訪れます。
      また、平成29年1月にはモデル的なレクリエーションの森として「日本美しの森お薦め国有林」にも選定されたことを機に、林野庁は温身平風致探勝林のパンフレットを日本語版3000部、英語版600部作成しました。当署では近隣の施設・団体等にパンフレットを配布し、PRを行っています。
      当該箇所の入山者数を把握するために、平成30年秋、入山者カウンターを現地入口に試験的に設置しました。平成31年度からは本格稼働させる予定であり、入山者数の推移を把握しつつ、更に開かれた「国民の森林」を目指していきます。

      ロゴマークと日本語・英語版パンフレット

     

     

    温身平風致探勝林の入口に設置した入山者カウンター                      同左


      5.林業の成長産業化に向けた取組
    1民有林行政との連携・支援
          山形県が推進する「やまがた森林(モリ)ノミクス」とも協調・連携しながら、置賜管内の林業の成長産業化に貢献し、山村地域の振興につながるよう各
    種の施策を進めています。

          市町村森林整備計画策定にあたり、民・国連携の提言や効率的な森林整備に向けた助言を行うとともに、伐採と造林を組み合わせた「一貫作業システム」を国有林に導入した成果と課題を現地検討会の開催を通じて民有林関係者にも紹介し、低コスト林業の推進に寄与する等、民有林行政の支援に取り組んでいます。

      2森林共同施業団地の設定
           民有林と国有林が連携した施業の集約化・団地化により、合理的な路網整備と効率的かつ低コストの森林整備を行い、地域の森林・林業の活性化に資する目的で、「森林共同施業団地」の設定を進めています。
           平成24年に管内初の「小国町黒沢・種沢・大滝地区森林整備推進協定」を締結した後、平成30年2月に南陽市、米沢地方森林組合、当署の三者による「南陽市水林地区森林整備推進協定」を新たに締結し、民有林と国有林の新設林道の連結に向けた現地検討会を開催するなど、協定者が連携、協力しながら地域林業の活性化を目指して取り組んでいます。

     

     
           森林整備推進協定締結式               森林整備推進協定位置図     
    民有林と国有林の新設林道の連結に向けた現地検討会    



      6.森林ふれあい事業による地域への貢献
    森林・林業に理解を深めていただくため、関係機関と連携して、地域の方々や小学生等を対象にした森林教室、木工教室を実施しています。

       
      地域の方々を対象とした木工教室                       同左
     小学生を対象としたスギの植林体験                     同左
    大学生を対象とした森林整備(下刈)体験                     同左

     

    子供たちとの温かい「ふれあい」を求めて巣箱づくりを指導する当署職員~☆大盛況です!~


      7.おわりに
      平成29年4月に置賜森林管理署に赴任して2年が過ぎようとしています。
    この「署長が語る!」の投稿を機に、これまでの国有林との関わりを自分なりに振り返ってみると、国内や海外を1~3年おきに転勤していく中で、それぞれの任地で思い出深い出来事が数多くありました。
    特に、平成元年~2年にかけて勤務した阿仁営林署(現在は米代東部森林管理署上小阿仁支署)の印象は格別なものがあります。
    当時、秋田営林局(現在は東北森林管理局)管内でも屈指の広葉樹生産量を誇っていた阿仁署で、20代の若者だった私は毎日のように森吉山の奥深いブナ等広葉樹林(国の天然記念物のクマゲラが生息する森)の択伐調査に歩き回っており、同行する現場職員の中には休日に山でクマ狩りを行う、いわゆる「阿仁マタギ」の方々がたくさんいました。
      仕事としての森林調査や地域のお祭り等を通じた阿仁マタギの方々との私的な交流を通じて、奥山の自然を熟知した実践的な知識・技術はもとより、命がけの熊猟に臨むにあたって「山の神」に感謝し崇拝する敬虔な態度、自律的な行動、時折ユーモアを交えた純朴な人間性など、人間としてとても大切なことを教わったように思います。
    山の民の生き方に深い感銘を受けたことや愉快に語り合ったことが後々までの私の財産となり、この仕事を通じて国有林と長く関わっていく際の土台となっているように思います。

     
    飯豊連峰の麓・小国町小玉川集落のマタギたち(昭和44年頃) 




    それからあっという間に30年近くの歳月が流れ、平成も終わろうとしている昨今ですが、既に遠い過去の存在になりつつあるだろうと思っていたマタギの人達が、今もなお、当署管内の飯豊・朝日連峰に広がる深い山岳地帯を舞台に生き生きと活躍している姿に接する機会を得て、うれしく思っています。
    民宿等の仕事(本業)をこなしながら、マタギの若い後継者も育っており、伝統的な狩猟文化を後世に継承していくための素地が脈々と培われていることに勇気づけられる思いがします。

       
                 小玉川の熊まつり           全国マタギサミット2017in小国町




    このような置賜地域の自然と人々との「ご縁」を大切にしていきたいと思います。
      今後、民有林の各現場で「新たな森林管理システム」が実際に動き出す中、「地域に根ざした森林管理署」として国有林の存在感も高めつつ、山形県が推進する「やまがた森林(モリ)ノミクス」とも協調しながら、置賜管内の林業の成長産業化に貢献し、山村地域の振興につながるよう努めていきたいと考えています。
    そのために、いつも誠実に担当業務を処理し、私を支えてくれる当署職員ひとりひとりに感謝し、彼らが日々笑顔を忘れず明るく元気に働けるよう、「笑う門には福来たる」をモットーに仲良く働いていきたいと思います。
    最後に、当署の所在する山形県小国町は、町総面積の94%が森林で、国有林がその72%を占めており、ブナに代表される豊かな森林資源を活かした「白い森まるごとブランド構想」を基本理念に据えて、「ずっと住み続けたい町づくり」を推進しています。
    今、署長室から白一色の雪景色に覆われた朝日・飯豊連峰をぼんやり眺めていると、この雪が置賜地域の豊かな自然と温かい人情を育み、春を迎える喜びをもたらしてくれる源となっているのだなあ・・・と感謝の念を深くしているところです。

     

       
     『ふるさとの山河とともに』と題して講演~「ネイチャーフロント米沢」主催~    温身平の奥にそびえる飯豊連峰

     

     

    お問合せ先

    林野庁東北森林管理局
    置賜森林管理署
    〒999-1352山形県西置賜郡小国町大字岩井沢581-45
    電話:0238(62)2246
    FAX:0238(62)3553