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庄内森林管理署「署長が語る!」平成28年6月 庄内森林管理署 署長 松浦 安剛
山形県の北西部に位置する鶴岡市での生活がスタートしたのは、平成27年10月でした。ほどなく迎えた降雪と地吹雪の時期は、雪国の生活経験がほとんどない宮崎県生まれの身には少しこたえました。 これまでの8か月間に見聞きした職場の状況や地域の自然環境等を、自分で撮影した写真とともにご紹介しますので、気楽に眺めていただければ幸いです。
1.沿革と庁舎庄内地域の国有林は、鶴岡営林署と酒田営林署の2署で管理経営を行っていましたが、平成10(1998)年3月に旧酒田営林署を酒田森林管理センターへと改組し、翌11年3月には鶴岡営林署を庄内森林管理署に改称しました(酒田森林管理センターは平成16年3月に廃止)。 昭和60(1985)年に貯木場跡地へ新築移転した現庁舎はJR鶴岡駅から徒歩圏内にあり、事務室から特急“いなほ”を始めとする客車や貨物列車などが通過する姿を見ることができます。現在も「えいりんしょ踏切」という表示があり、着任早々の時期にシャッターボタンを押しました。 山形県産スギを鎧下見張りにした外壁
“特急いなほ“と、車体に描かれた山伏の庄ちゃん えいりんしょ踏切
木造一部2階建て庁舎の延べ床面積は、723m2(219坪)です。天然秋田スギを含むスギ、ヒメコマツ、ブナ、ケヤキ等の木材を合計183m3使用し、10.8mの梁間をトラス組で支えたこの建物は、工事の段階から地元メディア数社の取材を受けたほか、山形県立鶴岡工業高校建築科の生徒が見学実習のために訪れるなど、注目を集めました。 新築移転前の鶴岡営林署庁舎(昭和35年竣工)は鶴岡市役所の東隣にあり、現在は市役所の東庁舎として活用されています。 茶色い外壁の建物が鶴岡市役所、手前の建物(2階建て)が旧鶴岡営林署庁舎
南東と西から見た庁舎の外観を、それぞれ同じアングルで撮影しました。積雪量は、平年よりも少なかったそうです。
南東から
西から
私の執務室にはノルウェー製の薪ストーブがあり、対応可能な日には石油ファンヒーターを止めて自分で薪をくべました。暖かさだけでなく穏やかな光と独特の香りは来客にも好評です。事務室を暖めるペレットストーブの燃料は、鶴岡市内にある製造工場から調達しています。 署長室の壁板は真室川(最上支署管内)産天然スギ製で、「江山清趣」の書が掛かっています。
最高温度は350℃にも 壁板は木目を洗い出しして使用
2.庄内森林管理署の管轄区域と組織庄内地域は、鶴岡市、酒田市、三川町、庄内町、遊佐町の2市3町からなり、その面積は県土全体の1/4で、神奈川県や佐賀県と同規模です。人口(平成28年5月1日現在で277,191人)も県全体の1/4となっています。 稲作を始め、だだちゃ豆、庄内柿、メロン等の栽培が盛んで海の幸も豊富なことから、着任前には体重増を心配する声をかけられました。平成17年10月の広域合併により市町村として東北地方最大の広さを有することとなった鶴岡市には、クラゲの展示で注目を集めた加茂水族館や時代小説を得意とする作家・故藤沢周平の記念館などがありますが、観光パンフレット的な記述はここまでとします。 現在、庄内森林管理署は、管内を7つの担当区に区切り5名の森林官を配置しています(このうち2名は首席森林官で、それぞれが2つの担当区を所管)。署庁舎が新築された翌年(昭和61年)の職員名簿によると、定員内職員数は両署で128名を数え、次のような組織となっていました。23名の今とは隔世の感があります。
○昭和61年当時 酒田営林署管内:7担当区(酒田、吹浦、遊佐、升田、大沢、中野俣、田沢)、浜中海岸治山事業所、 酒田製品事業所 鶴岡営林署管内:10担当区(鶴岡、清川、工藤沢、羽黒、田麦俣、鱒渕、上田沢、大鳥、木野俣、鼠ヶ関)、 清川種苗事業所、鶴岡製品事業所 ○平成28年 庄内森林管理署:7担当区(遊佐・八幡、平田、羽黒、大鳥・田麦俣、温海)
3.国有林の姿庄内平野を取り囲む山地のうち、標高の高い部分の多くは国有林となっています。管内各地から見える山々をご紹介します。 【月山】村山地域との境にある月山(がっさん・標高1,984m)は修験者の山岳信仰の山として知られ、湯殿山、羽黒山とともに出羽三山と呼ばれています。
羽黒山大鳥居とともに
庄内町の立谷沢川沿いより トビ(撮影地は同左)
羽黒山スキー場より 湯殿山スキー場(標高の高い部分は国有林野を貸付)
【鳥海山】庄内地域の北端にそびえる鳥海山(ちょうかいざん・標高2,236m)は、出羽富士とも呼ばれています。東北地方では標高2,356mの燧ヶ岳に次いで高く、北側は秋田県です。
酒田市の最上川左岸より 遊佐町吹浦より
冬季は閉鎖される鳥海ブルーラインの駒止にて(上:6月、下:11月)
遊佐町藤崎より 酒田市の十里塚国有林より 鶴岡市内を流れる内川より
【高館山】ラムサール条約登録湿地の上池と下池は、農業用水の確保等を目的とした築堤工事により江戸時代に誕生したものです。その西側にある高館山(たかだてやま・標高273m)には、豊かな自然が維持されています。 スプリング・エフェメラル(春の一斉開花)の時期に、ギフチョウの飛翔を視認しました。「ササやカヤの繁茂によりカタクリ等の山野草が減少しているのではないか」という自然保護団体からの指摘を受けたこともあり、高館山国有林で現地調査などを行っています。 上池
下池(11月)
下池(5月+ツバメ)
カタクリ
ショウジョウバカマ ルリソウ
【庄内海岸林】日本海に面した延長34kmに及ぶクロマツ林(約24百ha)のうち、1/3に当たる833haが国有林です。林野庁は、昭和26(1951)年から海岸林の造成及び維持に取り組んできました。拡大傾向にある松くい虫被害やバイク・バギー等の乗り入れによる砂草被害への対策を、さらに進めていく所存です。
航空機より(中央部は「おいしい庄内空港」) 高館山より
その名も“砂飛”国有林 砂丘垣設置後の堆砂状況(浜泉国有林)
庄内弁の看板も(「うだるな」は「捨てるな」の意)
4.木材の新たな需要と利用事例管内では、木材加工施設等の整備が進められています。鶴岡市櫛引に木質バイオマス発電所(出力規模は毎時1,995kw)が完成し、平成27年12月に売電を開始しました。かつて大量の北洋材が輸入されていた酒田港に隣接する酒田臨海工業団地には、平成30年5月の商業運転開始を目指す木質バイオマス発電所(同50,000kw)の建設計画があり、まもなく工事が始まる見込みです。また、最上地域の新庄市では、平成29年春の操業開始に向けて集成材工場の建設が進められています。 このように、製材用に準じた品質のB材や林地残材・未利用材を大量に必要とする新たな需要が生まれ、安定的な木材供給が期待されるなど、今後、庄内地域における木材の需給状況は大きく変わることが予想されます。木材資源の供給元として地域振興に貢献できるよう、木材生産の低コスト化と合わせて国有林としての取組みを強化していきたいと考えています。 コンテナ苗の植付け(遊佐町嶽ノ腰国有林で開催した低コスト森林施業に関する現地見学会)
結びに、趣味の一つである木彫の作品(全て自作)をご紹介します。一通りの木工用具を揃えて、彫りすぎたらおしまいという緊張感も味わいつつ、三次元で設計した形になるようひたすら彫り進めています。
「メビウスの輪」 4年を費やした同寸の「左手」
「編み編み」 ボール紙で型紙を作った「ペーパーナイフ」
檜と竹を使用して組み立てた「折り畳み椅子」
桐から彫り出し、全てがつながっている「連環」 いわば“輪違い大根”の連続版である「連環」は未完成で、あと2つの環を細かく彫る作業が残っています。どうやって作ったのか不思議がられ、没頭できそうな次の作品の構想もあり、今からあれこれと思いを巡らせているところです。 |
林野庁 東北森林管理局
庄内森林管理署
〒997-0015 山形県鶴岡市末広町23-37
TEL:0235-22-3331
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