区  分:都市と山村の交流
タイトル:ユガテの森づくりによる交流
    西川木楽会の活動
都道府県名:埼玉県 市町村名:飯能市ほか(西川林業地域)
1 地域の概要

 西川林業地は、県の南西部、荒川流域の、飯能市、日高市、毛呂山町、越生町、名栗村の林業地を総称するもので、東京都心から40km〜60kmにあり、人口は約19万3千人(平成12年4月現在)である。
 地域の総面積は、31,513haで、そのうち森林面積が20,229haと、全体の64%を占め、秩父山地に続く地域から、関東平野に接する丘陵地にわたる地域で、標高は100m〜1,300mで、そのほとんどが600m以下である。
 地質は秩父中・古生層が主体で、平均気温12〜14度、降水量1,700o〜2,000o、降雪は山地部を除き年3〜4回、積雪量も10〜20pと少なく、スギ、ヒノキの生 育適地であると言える。
 「西川林業」の名称の由来は、江戸時代、用材を筏により江戸へ流送していたので、「江戸の西の川より来る材」との意味で「西川材」と呼ばれ、その材が生産されるこの地方を「西川地方」と呼ぶようになったためと言われている。
2 取組の背景と経緯

(1)取組の背景
 平成6年9月に「森林・木材に関心のある者が、森林の活用、木材の利用の将来を考え西川地域の振興と活性化に資すること」を目的に西川木楽会(西川地域青年林業会議所)が発足した。
 設立総会前の新聞報道により、「木を愛するもの集まり 西川材の復興を」と報じられたため、林業関係者以外で山や木に関心のある一般の都市住民も多数参加し、合計155名の会員で会がスタートした。
 初年度には、会員に対するアンケート調査、野外美術展への参加、森林の手入れ作業体験、木造住宅展示場視察、講演会「西川の林業〜明日の林業を見つめて」などの活動を実施した。
(2)取組の経緯
 平成9年度から、飯能市虎秀地内の通称「ユガテの森」で、山側と都市側の相互理解と交流を深めるための森林づくりを始め、約1ヘクタールの伐採跡地に、ヒノキのほかコナラ、ケヤキ、ヤマザクラなどの広葉樹を植栽し、針広混交林として整備を続けている。
3 取組の概要

 この活動には、西川木楽会の会員を中心に、多くの人々が参加して、地拵え、植栽、下刈りなどの作業を通じて、長い時間をかけて森林づくりを楽しんできた。
 この間、新聞や情報誌などで「ユガテの森づくり」が紹介されたことにより、その活動が各方面に知られるようになった。
 このため、平成10年度には他団体からの共同活動の申込みがあり、二つの大きなイベントを共同で運営した。
 地域の経済団体である飯能青年会議所と実施したイベント「ユガテこども森林塾」は、環 境教育活動の一環とした小学生対象の林業体験で、「ユガテの森」をフィールドにして行われた。コナラ、ヤマグリの植栽、枝打ちや間伐の見学・体験など盛りだくさんな内容で、地域の小学生など約200名以上が参加した。
 MORIMORIネットワークと実施したイベント「ユガテの森:木の里親植樹祭」は、都市と山村の交流を目的とした植樹祭で、同じく「ユガテの森」をフィールドにして行われた。ケヤキ、コナラの植栽、地元の林業家との交流、翌年度植栽用の苗木を自宅で育てるために持ち帰る(木の里親)という内容で、約80名が参加した。
 また、西川木楽会はいろいろな立場の会員で構成されているため、市民参加や環境的視点と経済的視点の関係を整理し、都市住民と林業家との協力関係を深めたいとの考えから「多様な意見を反映した森づくり」をテーマに地域林業活性化フォーラムを開催した。

「ユガテこども森林塾」植林風景

4 取組の効果

 「ユガテの森」づくりを始めてわずか2年余りで、地元はもとより全国的な団体からの共同活動の呼びかけや視察の申込みなどで注目された理由は、都市側住民と林業家が協力して始めた活動に、多くの人々が参加し、長い時間をかけて楽しみながら森づくりをしてきたことが評価された結果と思われる。
 この取組の成果としては、以下のようなことがあげられる。
@ 多くの人々が参加することにより、森林・林業の現状に関する情報・認識が都市側の人々に伝わるとともに、山側も都市側の認識の程度を感じられるようになった。
A 交流の中での技術的指導などを通じて、山側が林業家としての自信と誇りを取りもどすことになった。
B 会員全体による森づくりの方向性を決定する過程で、資源の循環利用や環境的視点にたった森づくりの重要性などが理解された。
5 今後の課題

 最近では、「ユガテの森づくり」の活動を通じて都市側の会員が増加するなど、会の構成員の変化と会を取り巻く環境も設立時と比べて変化しており、今後の活動を見直す時期にきている。
 今後は、会の設立目的の一つでもある木材の利用を具体的に検討し、木材の利用推進が果たす役割などに理解を深めることも必要である。


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