U 森林の整備・保全 |
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1 我が国の森林をめぐる動向 |
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(地球温暖化防止と森林吸収源対策) |
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○ 20世紀における地球全体の気温の上昇率は、100年につき0.7℃であった。このような 中、平成17年2月に各国の温室効果ガスの削減目標等を定めた「京都議定書」が発 効した。これにより我が国は、温室効果ガスの排出量を基準年(平成2年)の水準と比 べ6%削減することとなった。 ○ 我が国の森林による二酸化炭素吸収量は、1,300万炭素トン程度(基準年総排出量比 約3.9%)を確保することを目標としているが、現状程度の水準で森林整備等が推移した 場合、これを大幅に下回ると見込まれている。 ○ 森林吸収源対策の取組は、広く国民の理解と協力を得ながら推進していくことが重要で ある。「京都議定書目標達成計画」では、森林吸収量の目標を達成するには、政府一体 となった取組及び国民等各主体の協力と多大な努力が必要とした上で、環境税につい ては、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題であると記述している。 |
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○ 間伐は、健全で活力ある森林を育成するため必要不可欠な作業である。平成17年度か ら「間伐等推進3カ年対策」により、間伐の実施及び間伐材の利用促進等を総合的に展 開している。 ○ 平成17年は、全国的に多量のスギ等の花粉が飛散した。無花粉スギ等の品種の開発・ 普及等効果的な花粉発生抑制対策を推進していくことが重要である。 ○ 近年、手入れ不足の里山林や放置された竹林が問題化している。今後とも地域の創造 力を活かしながら、個性的で魅力ある里山の環境を再生していくことが重要である。 |
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図U−1 地球全体(陸上のみ)の年平均地上気温の 経年変化(1901〜2000年) |
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資料:気象庁観測資料 | ||||
注:棒グラフは各年の平均気温の平年差、折れ線は年々の変動を取り除くため5年間の移動平均、 直線は長期的傾向を示す。平年値は1971〜2000年までの30年間の平均値。 |
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図U−2 民有林における間伐実施面積と間伐材利用量 |
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資料:林野庁業務資料 | ||||
○ 林業公社は、これまで森林資源の造成や山村の振興等を目的として森林整備を実施し てきた。森林のもつ多面的機能を持続的に発揮させるため、公社自らによる経営改善と 併せ、複層林等の多様な森林への誘導等の手法を検討していく必要がある。 ○ 公益的機能の発揮の上で特に重要な森林は、保安林に指定し、それぞれの目的に沿っ た機能の確保のために適切に管理・保全していくことが重要である。今後も計画的な指 定の推進とともに、保安林の質的向上と機能の持続的な発揮を図ることが重要である。 ○ 平成17年は、九州・四国を中心に甚大な山地災害が発生した。効果的な治山事業の着 実な実施を通じて安全で安心して暮らせる国土づくり、豊かな水を育む森林づくり等を推 進していくことが重要である。 ○ 松くい虫の被害は依然、東北地方等一部の地域で拡大している。他方、近年カシノナガ キクイムシによる被害が本州の日本海側を中心に急激に拡大している。このようなまん 延力の強い森林病害虫に対しては、被害状況の速やかな把握、被害先端地での重点 的防除により被害の拡大を早期に抑制することが重要である。 ○ 森林の野生鳥獣被害では、近年シカによる被害が深刻化している。防護柵の設置、広 域的な駆除、広葉樹林の造成等を鳥獣保護対策と連携しつつ、一体的かつ総合的に推 進することが重要である。 |
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○ 熱帯林を中心とした森林の減少・劣化は、依然進行している。森林の減少の背景には、 様々な社会的、経済的問題が存在することから、先進国と途上国が協力して対処してい く必要がある。 ○ 海外における持続可能な森林経営の推進のため、我が国は、政府開発援助等により 様々な支援を実施している。また、民間レベルでも植林をはじめ、技術指導、人材育成 等の分野での協力が展開されている。 |
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図U−3 多発する山地災害と治山事業 |
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図U−4 カシノナガキクイムシの被害の推移 |
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資料:林野庁業務資料 | ||||
図U−5 シカによる食害の状況 |
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図U−6 世界の森林面積の変化 |
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資料:FAO「世界森林資源評価2005」 |