T 国民全体で支える森林 |
|||
1 急がれる森林の整備・保全
|
|||
(私たちの生活を守る森林) |
|||
○ 森林は、私たちの生活と深く結びつき、国民生活及び国民経済の安定に欠くことのでき ない「 緑の社会資本」である。森林の二酸化炭素吸収・貯蔵機能は、地球温暖化防止 の国際枠組である京都議定書でも重要性が認識されている。 ○ 京都議定書目標達成計画(平成17年4月閣議決定)においては、排出削減約束6%の うち、3.9%を国内の森林吸収量で確保することを目標としている。京都議定書の第1 約束期間開始が平成20年に迫っており、森林吸収源対策は差し迫った課題となってい る。 ○ 昨年から今年にかけて、台風等の自然災害が相次いでおり、森林の山地災害防止や 洪水緩和といった機能発揮に国民の期待は高い。 ○ 生物多様性保全や保健・レクリエーション機能等を含め、森林のもつ多面的機能を発揮 させていくためには、森林の整備・保全を更に進めていくことが必要である。 |
|||
|
|||
○ 木材価格の長期的な低迷と人件費をはじめとする経営コストの上昇の中で、間伐、保育 等の施業や伐採後の植林が行われない森林がみられるようになるなど、我が国の林業 生産活動は停滞してきている。 ○ 森林の整備・保全を進めていくためには、林業・木材産業関係者の努力、国や地方公共 団体の取組とともに個々の国民を含めた社会全体からの支援が必要である。 |
|||
表T−1 京都議定書目標達成計画における温室効果ガスの 排出抑制・吸収の量の目標 |
|||
![]() |
|||
資料:京都議定書目標達成計画(平成17年4月)をもとに作成。 | |||
注:京都議定書の第1約束期間における削減約束に相当する排出量と同期間における実際の温室 効果ガスの排出量(温室効果ガス吸収量控除後の排出量とする。)との差分については、京都 メカニズムを活用することを目標とする。(現時点各種対策の効果を踏まえた各ガスの排出量見 通しを踏まえれば、不足分は1.6%となる。) |
|||
図T−1 森林のもつ多面的機能の貨幣評価 |
|||
![]() |
|||
資料:日本学術会議答申「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価につ いて」(平成13年11月)及び関連付属資料 |
|||
注:1)機能によって評価方法が異なっていること、また、評価されている機能が多面的機能全体のう ち一部の機能に過ぎないこと等から、合計額は記載していない。 2)※については、保養機能のごく一部を対象とした試算であることに留意する必要がある。 3)いずれの評価手法も、「森林がないと仮定した場合と現存する森林を比較する」等一定の仮定 の範囲においての数字であり、少なくともこの程度には見積もられるといった試算の範疇をで ない数字であるなど、その適用に当たっては細心の注意が必要である。 |
|
|||||||||
(林業のサイクルを循環させる) |
|||||||||
○ 我が国の森林は、蓄積が年々増加していること等もあり、木材生産に十分な余力があ る。森林の整備・保全を進めるには、木材が消費者に利用され、その収益によって伐採 後の施業が行われるという林業のサイクルが円滑に循環していく必要がある。 ○ 国産材利用の大部分は製材用材であり、その利用量の増加のためには、住宅建築にス ギやヒノキ等の国産材が積極的に利用される必要がある。 ○ また、我が国の森林、あるいは地元の森林から生産された木材を利用したいといったニ ーズにこたえるため、産地の範囲や一定の品質基準を設け、これを満たす地域材を認証 する動きも活発化している。 ○ さらに、現在の我が国の森林整備の大きな課題の一つに間伐の推進があるが、間伐に よって生産された木材(間伐材)、またはそのような木材を原材料とした製品であることを 表示する「間伐材マーク」の使用認定を受けた団体も増えている。 |
|||||||||
|
|||||||||
○ 森林ボランティア団体は、平成15年に1,165団体で、平成12年の2倍、平成9年の4倍と全 国的に増加し、その内容も環境教育や薪炭材の利用等多様になっている。 ○ 森林ボランティア活動は、森林づくりを進めるというだけではなく、森林・林業への理解の 促進、山村住民と都市住民との交流や相互理解の貴重な機会である。 ○ 多くの里山林は、現在のところ、森林所有者にとって経済的な魅力が少ない一方、国民 にとっては身近な森林であることから、きめ細かな整備が求められる。このような森林の 整備においては、森林ボランティア活動との連携は有効な取組になるものと考えられる。 ○ 京都議定書目標達成計画でも、より広範な主体による森林づくり活動等を推進することと している。森林ボランティア活動は森林の整備・保全を社会全体で支えていくための大切 な取組の一つとなっている。 |
|||||||||
図T−2 OECD加盟国の森林蓄積量に対する年間伐採量の比率 |
|||||||||
![]() |
|||||||||
|
|||||||||
資料:FAO「森林資源評価2005」の蓄積量と年間伐採量のデータをもとに林野庁で作成。 | |||||||||
注:メキシコ、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドについては蓄積量が、アイスランドについては伐 採量が報告されていないため除いている。 |
|||||||||
図T−3 間伐材マーク使用認定団体数の推移 |
|||||||||
![]() |
![]() |
||||||||
資料:全国森林組合連合会調べ | |||||||||
図T−4 森林ボランティア団体の主な活動目的(複数回答) |
|||||||||
![]() |
|||||||||
資料:林野庁「森林づくり活動についてのアンケート」(平成16年2月) | |||||||||
|
|||||||||
○ 緑の募金は、「緑の羽根募金」を引き継ぎ、平成7年に制定された「緑の募金法」に基づき 行われている。近年は24億円程度が全国から寄せられ、森林整備や緑化活動に活用さ れている。 ○ 企業の社会貢献活動として各地で森林づくりが展開されている。森林ボランティア団体へ の助成や社員による活動に加え、手入れの進んでいない私有林等の整備を地元森林組 合に委託して実施するといった取組もあらわれている。 ○ このほか、国産材製品を積極的に使用することで国内の森林整備に貢献するというケー スも増えている。企業の社会貢献としての環境保全活動に対する一般消費者の関心は 高く、今後も森林づくりへの貢献活動が増加することが期待される。 |
|||||||||
|
|||||||||
○ 現代では、居住地域から森林、特に生産現場との距離が遠くなり、森林・林業や木材を身 近に感じることが困難な状況となっている。実際に、若い世代では、自然体験や木材利用 の意義への認識の不足がみられる。 ○ このような中では、積極的に森林や木材に触れ、森林のもつ多面的機能や森林資源の 循環利用について自ら考える機会が求められ、森林環境教育等を行う場の確保が重要 である。 ○ 学校林等も利用しつつ、指導者の養成や教育プログラムの開発、安心して活動できる森 林や施設の整備等を進めるとともに、森林・林業関係者や教育関係者等の連携のもとに 森林・林業体験や木材についての学習等を推進していくことが重要である。 |
|||||||||
図T−5 一般生活者が共感を覚える企業の社会貢献活動 |
|||||||||
![]() |
|||||||||
資料:gooリサーチ「企業の社会貢献活動に対する一般生活者の視点」(平成16年7月調査) | |||||||||
図T−6 木材利用の意義についての周知度 |
|||||||||
![]() |
|||||||||
資料:内閣府「森林と生活に関する世論調査」(平成15年12月) | |||||||||
注:国内の森林から生産される木材の利用を促進することが森林整備に必要だということを知っている かを聞いた回答 |
|||||||||
表T−2 「森の聞き書き甲子園」OB・OGの活動(事例) |
「森の聞き書き甲子園」は、全国の高校生が、樵(きこり)、マタギ等森にかかわる技の達人「森の名手・名人」の技や人となりを聞き書きし、その成果を発信するもので、平成17年度には第4回を迎えている。 この「森の聞き書き甲子園」のかつての参加者が、新たな活動を展開している。「共存の森」という活動では、県有林を借り受けての植樹や下刈作業、セミナーの開催等を行っており、現在では、東北、関東、関西の3つの活動拠点をもっている。 さらに、愛知万博での「森の聞き書き甲子園」のブースの展示、「森の名手・名人」の技の映像化の取組等を行う者もおり、「森の聞き書き甲子園」がステップとなって、かつての参加者たちは、新たな森林の情報発信者となっている。 |
![]() |
|
||||||||||||
(地方公共団体による取組) | ||||||||||||
○ 上下流域で協力して水源地域を整備する、企業の森林づくりの場を提供するため森林所 有者との橋渡しを行う、さらに使途を森林整備等とする独自課税を導入するなど、独自の 取組を行っている地方公共団体が多数出てきている。 |
||||||||||||
(森林の整備・保全のため、国民それぞれが今できること) |
||||||||||||
○ 我が国においては、古くから森林や木材が生活に深くかかわり、「森林文化」や「木の文 化」は、今日でも色濃く影響している。これまで森林を守り育て、利用してきた先人たちの 叡智を受け継ぎ、森林の恩恵を次世代に引き継いでいかなければならない。 ○ 今できることの一つは、地域材の利用である。企業や最終消費者が地域材を利用するこ とで、林業のサイクルが循環し、森林の整備・保全も進む。 ○ 一つは、森林づくりへの直接参加である。手入れが必要な森林等について直接的に整備 を進めることが可能であり、森林づくりに参加することにより、森林・林業への理解も更に 深まる。 ○ もう一つは、森林づくり活動への支援である。緑の募金は森林ボランティア活動等に活用 される。企業等からの支援は、資金面で厳しくなっている森林の整備・保全活動を支える 動きの一つとなる。 ○ また、これらの取組を推進していくためには、森林環境教育等により、森林や木材とふれ あう機会を通じて森林・林業・木材利用への理解を深めていくことが必要である。 ○ 我が国の森林の整備・保全を着実に進めていくためには、国や地方公共団体に加え、林 業・木材産業関係者、消費者、企業等、国民が互いに協力し、それぞれが今できることを 実行していくことが重要である。 |
||||||||||||
表T−3 都道府県における森林整備等のための独自課税の取組 |
||||||||||||
|
||||||||||||
資料:林野庁業務資料(平成18年3月24日現在) | ||||||||||||
表T−4 森林ボランティア活動に意欲の高い世代(コラム) |
||||||||||||
|