V 林産物需給と木材産業 

1 我が国の林産物需給と価格の動き

○ 我が国の用材需要量は、平成元年以降1億1千万m3程度の水準で推移してきたが、平成10年以降低下し、平成15年の需要量は 8,718万m3となっている。

○ 平成15年の木材(用材)自給率は18.5%である。なお、平成15年は、用材の輸入量が1.4%低下した一方、国内生産量が15年ぶりに増加(+0.5%)したことから、自給率は0.3ポイント増加した。

○ 品質や性能の明確な木材製品が要求される中、これに応えられるスギ乾燥材は、ホワイトウッド集成材と価格的に競合している。乾燥施設の導入が進む中、国内で生産される人工乾燥材出荷割合は増加傾向にある。

○ 現地の木材需給動向の調査や日本産木材の普及宣伝等を実施するなど、スギやヒノキを中国や韓国に輸出しようとする動きが活発化している。

○ 特用林産物については、生産額の8割を占めるきのこ類が生しいたけ等の主要品目で前年に比べ減少した。消費者ニーズや販売戦略に臨機に対応可能な生産体制の確立が重要である。 


2 我が国の木材産業をめぐる現状と課題 

○ 国産材利用を推進するためには、乾燥材等市場の要求する製品を生産する構造へ転換し、品質・性能の明確な製品を安定的に低コストで供給できる体制を構築していくことが課題である。

○ このため、さらなる技術開発や、大規模需要者へ安定して供給できる体制の確保が重要である。また、曲がり材や短尺材等を集成材や合板等に有効活用していくことが重要である。


図V−1 我が国の木材需要量と国産材供給量
我が国の木材需給量と国産材供給量
資料:木材需給表


表V−1 国産材を利用した異樹種集成材(事例)
これまで米材製材品でトップシェアを占めているC社は、佐賀県伊万里市にある工場において、スギ(国産材)とベイマツ(米材)を使った異樹種集成材の生産を開始した。国産スギは、4mの長さのまま曲がり挽きができる製材機を利用してラミナ化し、外板にベイマツ、内板にスギを利用した構造とする。同工場には、国有林から直送される曲がり材等も使用される予定である。 国産材を利用した異樹種集成材

3 木材の利用拡大

○ 木材の利用拡大は森林のCO2吸収・貯蔵の促進につながり、「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」においても重要な位置づけとなっている。

○ 「農林水産省木材利用拡大行動計画」の下で、平成15年度は農林水産公共土木工事における安全柵等の木製割合は目標の100%に対して88%、林野公共事業の木材使用量は計画策定時の2倍程度とする目標に対して1.9倍などを達成した。今後も目標の達成に向けた取組を推進していく必要がある。

○ 近年、名刺、紙製缶飲料といった製品に対して、間伐材等を原料として明示する動きが拡大している。身近な製品から、木材利用の意義が広く国民に理解され、木造住宅や木製家具等の購入に結びつくようにすることが重要である。

○ 我が国では、地域材の産地認証が活発化している。さらに、木材の原産地や加工の種類等を表示する全国的な取組もみられており、これにより、消費者による地域材の選択的な購入が促されていくことに期待される。

○ 我が国が育んできた「木の文化」を継承していくためには、伝統的な木造建築技術の評価や技術者の育成が重要であり、各省庁やNPO等による取組がなされている。これらの動きを通して伝統的な木造住宅の良さや「木の文化」を現代に活かしていくことが重要である。

○ 木材は、衝撃吸収性、断熱性、調湿性、ダニの繁殖の抑制等人に優しい素材である。施主は木造住宅に関して「健康に良い」という認識が強い。このような、追い風を積極的にとらえ、品質・性能の明確な木材の供給に努めるとともに、木材の良さを更に普及していくことが重要である。

○ 製材工場残材等の木質バイオマスを燃料としたボイラーは平成15年で324基と11年の約2倍に増加した。木質バイオマスのガス化発電の実用化への取組や火力発電所における木材チップと石炭との混焼といった取組も進行している。


表V−2 乾燥秋田スギ認証制度(事例)
 良質な秋田スギ乾燥製品を安定的に供給するため、乾燥秋田スギ製品生産促進協議会が設置された秋田県で、乾燥秋田スギ認証制度が立ち上がった。品質・寸法・含水率などの基準を設け、認定工場が生産し、この基準に基づいた製品を乾燥秋田スギ認証製品として「乾燥秋田スギ」のブランドシールを貼りつけて出荷する。 乾燥秋田スギ認証制度


図V−2 工務店が認識している施主の木造住宅に関する意識・関心
工務店が認識している施主の木造住宅に関する意識・関心
資料:日本木材総合情報センター(平成15年3月調査)
注:日本木材総合情報センターが全国の工務店に対し調査を行ったものであり、工務店側からみた施主の意識・関心である。


表V−3 木くず焚きボイラーを利用した二酸化炭素削減(事例)
N社は、福島県にある工場で、木くず廃材を主な燃料とするボイラーを稼働。稼働当初、ボイラーは8割の木くずに2割の石炭を混焼させて稼働させていたが、現在では木くずのみを燃料として稼働させている。ボイラーから発生する蒸気も工場内で使用。同社によると、重油使用量が大幅に減少され、二酸化炭素排出量を年間十万トン削減することができるとしている。 木くず焚きボイラーを利用した二酸化炭素削減

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