U 森林の整備・保全

1 地球温暖化と森林の役割

○ 大気中の二酸化炭素濃度は、産業革命以降30%以上上昇している。このため、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議において、各国の温室効果ガスの削減目標を定めた「京都議定書」が採択され、我が国は温室効果ガスの排出量を基準年と比べ6%削減することを約束した。

○ 現在、森林の二酸化炭素吸収量1,300万炭素トン(3.9%)程度の確保に向け、「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」を推進している。しかし、現状の整備量では目標を大幅に下回ることとなる。
  森林吸収源対策については、林政審議会においても、安定的な財源を確保して緊急に取り組むことが必要であるとされているように、その着実な推進が課題となっている。


2 多面的機能の発揮に向けた森林の整備・保全

○ 健全で活力ある森林を育成するため、平成12年度から「緊急間伐5カ年対策」に取り組み、年間概ね30万haの間伐を実施している。しかし、依然として間伐の必要な森林が残っており、効果的な間伐の推進を図るため、17年度から「間伐等推進3カ年対策」を実施予定である。

○ 平成16年は台風による集中豪雨や新潟県中越地震等により激甚な山地災害が発生し、林地荒廃等の被害額は2,500億円を超えた。災害の迅速な復旧と防止のために、治山事業の推進が必要である。

○ 松くい虫の被害量は全国的に減少傾向にあるが、東北地方の北部、九州の一部地域等では、被害が拡大している。引き続き、被害先端地域の拡大防止や海岸松林等の保全を図ることが重要である。

○ シカ、カモシカ等の野生鳥獣による森林被害は、依然として深刻な状況となっている。今後も森林被害防止に係る被害対策が必要である。


図U−1 二酸化炭素の大気中の濃度と化石燃料の利用による排出量
二酸化炭素の大気中の濃度と化石燃料の利用による排出量
資料:IPCC第3次評価報告書、オークリッジ国立研究所(米国)


図U−2 民有林における間伐実施面積と間伐材利用量
民有林における間伐実施面積と間伐材利用量
資料:林野庁業務資料


図U−3 過去10年間の山地災害発生状況
過去10年間の山地災害発生状況
資料:林野庁業務資料

○ 花粉症対策として、花粉の少ないスギ品種の種苗生産・供給体制の整備、スギ等人工林の効果的な抜き伐りや花粉症対策にも資する間伐を推進している。平成17年1月、独立行政法人林木育種センターでは無花粉スギを開発した。

○ 森林整備の中心的担い手である森林組合は、森林組合改革プランにより、経営基盤や業務執行体制の強化、事業の再編・強化の取組を進行中であり、その着実な実施が必要となっている。

○ 効率的かつ効果的な普及事業の実施のため、平成17年4月から林業専門技術員と林業改良指導員の資格を一元化するなどの制度改正を実施する予定である。


3 国民参加の森林づくりと森林環境教育

○ 森林ボランティア団体は増加し、活動内容も森林整備だけでなく、森林環境教育等多様化している。このため一層の技術の向上や安全体制の整備等への支援が必要となっている。また、森林の整備・保全を社会全体で支えるという国民意識の醸成のために、「緑の募金」運動の強化や企業等民間主体による森林づくり活動の促進が重要である。

○ 森林のもつ多面的機能等に対する理解と関心を深める「森林環境教育」の機会を、子供たちをはじめ広く国民に提供していくことが重要である。

○ 環境保全機能等の観点から里山林の価値が再認識されるようになっており、人々の身近な森林として、継続的に利用され維持管理されていくことが重要である。また、竹の侵入による被害が問題化しており、竹の利用拡大等を図りつつ、管理を進めていくことが重要である。


4 世界の森林の動向と我が国の役割について

○ 開発途上地域における森林は、過剰伐採や違法伐採、森林火災等により減少・劣化が進行している。開発途上地域だけの問題として捉えるのではなく、世界全体で持続可能な森林経営を推進することが重要である。

○ 違法伐採は、国際的・社会的問題となっており、インドネシアとの違法伐採対策のための協力に関する「アクションプラン」やアジア森林パートナーシップ(AFP)等の国際協力を通じて、違法伐採対策を推進していくことが重要である。


図U−4 無花粉スギの開発
<雄花の断面の電子顕微鏡写真>
普通のスギ 無花粉スギ
普通のスギ 無花粉スギ
丸い粒状のものが花粉 花粉が全く見られない


図U−5 違法伐採対策の取組
違法伐採対策の取組

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