U 木材産業と木材需給

1 木材産業の現状

○ 我が国の木材輸入は丸太から製品へ移行している。その結果、製材工場に入荷された丸太に占める国産材割合は、平成10年以降、5割を超過している。外材丸太入荷量の減少に伴い、外材を主に製材している工場数は減少している。国産材を主に製材している工場では入荷量が10年間で35%減少したものの、工場数の減少は23%で減少の割合が少ない。

○ 乾燥材の需要は多いものの、乾燥コストを販売価格に転嫁できないため、乾燥材の生産割合は低迷しており、乾燥施設の整備や乾燥コスト縮減による供給体制の整備が必要である。

○ 建築材のプレカット率は年々増加し、平成14年には6割に達している。集成材は寸法が安定しており、プレカット加工の進展に対応していることから、平成14年の集成材の生産量、輸入量は、それぞれ10年前の3倍、17倍に増加している。

○ 丸太、製品ともに流通の合理化が必要であり、物流は直送を進める一方で、木材流通業者が商流の取引に関わる受発注、決済等を担うなど新しい流通形態を推進する必要がある。


2 安定供給体制の整備に向けた課題

○ 製材の歩留まり向上と乾燥コストの低減のためには、含水率や強度にばらつきが大きいスギを事前に選別することが有効である。

○ 小規模な製材工場の再編や規模拡大により製材工場の生産性の向上を図る必要がある。また、柱材に適した寸法よりも大きな中目材の出材に応じ、地域によってはラミナ工場へ転換し、集成材を生産する必要がある。

○ 乾燥材生産量を拡大するためには、天然乾燥の併用、丸太の事前選別、最新設備の導入、木質バイオマスの熱源利用によるコストの縮減、スケジュール管理者の養成等各段階での取組が必要である。

図Uー1 製材用丸太の供給量と国産材割合の推移
資料:農林水産省「木材需給報告書」                                 
図U−2 集成材の供給量の推移

資料:日本集成材工業協同組合調べ、財務省「貿易統計」

○ 集成材や合板への国産材の利用に当たっては、単価の安い短尺材や曲が り材を有効活用する必要がある。

○ 木質バイオマス資源の有効利用の観点から、未利用の林地残材の集荷方法を検討し、工場の大型化、効率化を通じてラミナやチップの原料として利用する体制を確立することが必要である。

○ 木材が利用されるには、木材の価格、品質、性能等の情報を住宅生産者や消費者にきめ細かく提供する必要がある。また、情報のネットワーク化により定時・定量に供給できる体制を整備する必要がある。


3 新たな国産材供給の動き

○ 経済発展の続く中国へ丸太を輸出する動きがみられる。平成15年には58百m3を輸出している。海外での需給動向を調査し、需要が見込まれれば、供給体制の整備を検討する必要がある。

○ 国産材の需要拡大のため、一定の品質基準を設け、地域材として認証する動きが活発化している。各取組間の連携強化、規模拡大によるコストの低減等を通じ、地域材を普及させる必要がある。

○ 製材工場等が工務店と連携し国産無垢材を積極的に利用した住宅の供給を目指す動きが進展している。無垢材の利用は「安心」「安全」を求める消費者の志向に合致している。


4 木材需給と価格の動き

○ 平成14年の用材の自給率は、木材価格の低迷による林業生産活動の停滞から前年より0.2ポイント低下し18.2%となった。平成15年の木材需要量は増加の見込みである。

○ スギ製材品の価格は、構造用集成材に比べ低位に推移している。構造用集成材の輸入は欧州からのものが約8割を占めている。欧州からの輸入はユーロ高、船運賃の上昇により一時減少したものの堅調に推移している。

○ 合板用丸太は北洋材の割合が増加している。また、合板製品の9割はインドネシアとマレーシアから輸入されている。合板生産に用いられた丸太のうち国産材の割合は近年増加しており、平成14年は前年に比べ53%と急激に増加している。

図U−3 中国の産業用針葉樹丸太の輸入量の推移
資料:FAO「FAOSTAT」


図U−4 最近の製材品価格の推
資料:農林水産省「木材価格」、日刊木材新聞


図U−5 国産材合板用丸太入荷量の針葉樹・広葉樹別の推移

資料:農林水産省「木材需給報告書」

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