第5章 国有林野事業における改革の推進  

1 国有林野事業の役割

○ 国有林野は、国土の約2割、森林面積の約3割を占め、その多くが奥地脊梁山脈や水源地域に分布しており、森林のもつ公益的機能の発揮に大きな役割を果たしている。

○ 国有林野を国民共通の財産として、国民の参加により、国民のために管理経営していくことが必要である。

○ 国有林野に期待される役割に応えるため、国民の生命や財産を脅かす土砂の崩壊防止や洪水の緩和、貴重な自然環境の保全、民有林からは供給が難しい林産物の供給に加え、地球温暖化防止のための森林吸収源としての整備、森林環境教育に必要なフィールドの提供を推進している。

○ このため、森林・林業基本法や改革関連2法に掲げる基本理念に基づき、公益的機能の維持増進を旨とし、管理経営を推進している。

2 「国民の森林」に向けた取組

(公益的機能の維持増進を旨とする管理経営)
○ 「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」に3区分し、区分に応じた森林づくりを推進している。
  森林づくりの方法や効果を国民が目で見て理解できるよう、全国で122か所、約2千ha(平成14年4月1日現在)の「森林施業モデル林」を設定している。

○ 国民の生活を守るため、保安林の計画的指定や治山事業により、災害に強い安全な国土づくりや水源地域の整備を推進している。

○ 優れた自然環境を維持・保存するため、新たな保護林の設定や、保護林同士を連結し、野生動植物の移動経路を確保するための「緑の回廊」を民有林と連携しつつ設定している。平成13年度には、新たに、3か所、9万haの「緑の回廊」を設定した。

○ 地球温暖化防止対策として、健全で活力ある森林づくりや森林土木工事における木材利用を推進している。

○ 伝統的木造建築物の修復に必要な大径長尺材の供給を目指した国民参加型の「古事の森」づくりを推進している。

図X−1 公益的機能の発揮に向けた国有林野の機能類型区分
(平成14年4月1日現在)

資料:林野庁業務資料
注:内訳と総計が一致しないのは四捨五入によるものである。

                           

図X−2 緑の回廊の位置図

(平成14年4月1日現在)

(国民に開かれた管理経営)
○ 管理経営に関する計画を国民の意見を聴いた上で策定するとともに、国有林野事業の情報を国民に提供している。

○ 学校などが国有林野内で体験活動等を実施するため、平成14年度から森林管理署等と協定を締結する「遊々の森」を創設した。

(森林の流域管理システムの下での管理経営)
○ 知事と森林管理局長との間で森林の整備に係る覚書を結ぶなど、民有林関係者等と連携をとりながら、森林整備や林業の活性化に向けた取組を推進している。

3 改革の推進

(簡素で効率的な管理経営体制の確立)
○ 事業実施の民間委託を推進している。伐採、人工造林、下刈の平成13年度の委託割合は、前年度よりさらに拡大した。

(財政の状況)
○ 職員数の適正化等により、人件費を前年度より128億円縮減した。また、財政の健全化に向けて、新規借入金が前年度よりも174億円減少した。

図X−3 林道事業及び治山事業における木材・木製品の使用状況

資料:林野庁業務資料
注:図中の太字は、林道事業及び治山事業での使用量の計である。

 

表X−1 民間委託の実施状況

 

資料:林野庁業務資料
注:1)( )は、伐採、人工造林等に占める割合である。
  2)分収造林における実績は含まない。  

   


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