第4章 木材の供給の確保と利用の推進

1 木材利用の推進

(森林のもつ多面的機能の発揮と木材利用)
○ 森林のもつ多面的機能を発揮させていくためには、森林から生産される木材の利用を推進することを通じて森林を適切に整備していくことが必要である。

○ 木材は、再生産可能であり、製造時に必要なエネルギーが少なく、また、繰り返し利用でき、固定した炭素を長く貯蔵できるなど、環境への負荷の小さい資材である。
  また、防菌、防カビ等の作用があるほか、人をリラックスさせるといった特徴も持っている。
木材の有用性を国民に対し積極的にPRしていくことが重要である。

(住宅建築の状況と木材利用の推進)
○ 平成13年の木造住宅新設着工数は、52万戸に減少した。
  しかし、一戸建て住宅の木造率は82%であり、国民の木造志向は依然高い。

○ 大工・工務店、森林所有者等が連携し、地域材を利用した「顔の見える木材での家づくり」が各地で展開されており、地域材の利用を促進する上で、このような取組が推進されることは有効である。
一部の大手住宅メーカーでは、国産材集成材を利用する動きもみられる。

○ 最近、着工戸数が堅調なマンション等の内装材、住宅のリフォーム資材等の新たな需要に対応できるよう、パネル化、ユニット化した木材製品や意匠性の高い木材製品を供給することが必要である。

表W−1住宅分野での新たな需要の開拓

マンションへのヒノキ内装材利用の取組

 三重県で健康住宅の資材の供給を目指すインテリアデザイナーは、林家、製材工、住宅生産者、木材の研究機関と連携し、マンションの内装向けに木材の供給等を行うY社を平成8年に設立した。インテリアデザイナーが、マンションの施主に内装材としての木材の長所や木材製品に関する情報を提供している。また、含水率において厳しい基準に合格した、施工が容易で意匠性の高い床板、腰板等のヒノキ内装材を現場に供給している。これまでに、関西や首都圏のマンションを中心に2,000戸以上に対する実績を有している。

(公共部門等における木材利用の推進)
○ 近年、学校施設、郵便局等公共施設において木造化が進展している。
林道、治山事業等の公共土木事業でも地域材の利用が増加している。平成13年度には、2年前の約1.7倍、31万‰の間伐材等が利用された。

○ 鉄骨造が主流の店舗や事務所では、最近、構造用大断面集成材や接合金具を用いることにより、大型建築物においても木造化が進展している。

○ 公共施設や公共土木工事においては、今後とも、性能や施工性に優れた土木用木質資材の開発等により、木材を利用しやすい環境の整備に努め、地域材の利用を推進していく必要がある。

表W−2 公共施設の木造化の取組事例

事務所等の木造化の取組

 山形県のS社が開発した柱と梁等を強固な接合金具で繋結する構法は、当初、木造住宅の建設に用いられていたが、大空間の建築物にも応用が可能なこと、鉄骨造に比べ構造自体が軽いため基礎工事費の低減が可能なこと、木材のもつ暖かさや吸湿性、心地よさといった特性が認められたことから店舗や公共施設にも採用されるようになった。
 岩手県の浄法寺町では、この構法を用い、町有林のカラマツ材から加工された集成材を活用して3階建ての木造庁舎を鉄筋コンクリート造の7割程度の建設費で完成した。さらに、町有林のカラマツ材を活用することにより地域林業の活性化にも貢献した。なお、斬新な庁舎は、町のシンボルとなっており、建築関係の様々な賞も受けている。

(消費者に理解されやすい価格の表示)
○ 1本当たりの価格等、消費者にとって解りやすい木材価格を表示することは、木材に対する正しい理解を得る上で重要である。

図W−1 
スギ立木、丸太、製材品の1m
当たりの本数と1本当たりの木材価格

(多様な用途への木材の有効利用の推進)
○ 平成14年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき、木質バイオマスについても活用を推進している。

○ 製材工場等の残材は、9割以上がパーティクルボードの原料、家畜の敷料、乾燥施設の熱源等に有効利用されている。
しかし、製材工場等において焼却、棄却処分される残材のうち4分の3を占める丸太の樹皮や林地残材のほとんどは、利用されていないことから、これらの利用が課題である。

○ 不燃木材の開発等、技術開発により木材の新たな分野への利用が拡大している。更に木材利用分野の拡大を目指し、技術開発を推進している。

2 木材の需給動向

(大幅に落ち込んだ木材需要)
○ 平成13年の木材(用材)需要量は9,124万‰で、前年に比べ802万‰減少した。これは、我が国の経済が低成長であった昭和58年以来の低水準であり、木造住宅の割合の高い一戸建て住宅の落ち込みが主な要因である。

(木材供給をめぐる状況)
○ 平成13年の木材供給量は国産材、外材ともに減少したが、自給率は0.2ポイント上昇し、18.4%となった。

○ 木材輸入では、徹底した人工乾燥や量産により価格競争力の高い欧州材が増加傾向にあり、米材は大幅に減少している。製品比率は、上昇している。 平成11年以降、国産材の製材用材は、製材用材全体の供給量が増加しても生産量が減少する状況にある。

(木材価格の動向)
○ 平成14年6月以降、構造用集成材の価格が上昇している。これは、欧州材の対米向け輸出の増加、ユーロ高等が要因である。
一方、スギ製材品の年平均価格は、人工乾燥材の供給体制が不十分なことなどにより需要量が減少していることから下落傾向にある。

 

図W−2 最近の木材製品価格の推移

資料:農林水産省「木材価格」、日刊木材新聞
注:スギ正角、スギ正角(乾燥材)は、10.5cm×10.5cm×3mの製材品、構造用集成材は、10.5cm×10.5cm×3mの製品の価格を使用している。

           

3 木材の供給体制の確立に向けた課題と取組

(原木の流通)
○ スギ原木価格が10年前に比べ37%下落したことなどから、原木市場の経営は悪化している。市場の整理、合理化、原木直送化等により流通を改善する必要がある。

(製材品の生産)
○ 出力数75kw以下(年間製材能力:1千m3程度以下の工場)の小規模製材工場が7割を占めている。近年、国産材専門の300kw以上(同:1万m3程度以上の工場)の規模の大きい製材工場が増加し、224工場となっている。1従業員当たり原木入荷量は増加し、労働生産性が向上している。

○ 我が国の乾燥材の割合は13%と未だ低位な水準にある。
 建築後に変形しない品質の確かな木材の供給が求められる中で、高温乾燥による乾燥日数の短縮、工場残材の熱源利用等により乾燥コストを縮減し、乾燥材生産を拡大していくことが必要である。

図W−3 国産材のみ取り扱っている出力規模300kw以上の

製材工場数と入荷量の割合

資料:農林水産省「木材需要報告書」
注:入荷量の割合とは、全製材工場への国産材の入荷に対する国産材のみを取り扱っている出力規模300kw以上の製材工場への入荷量の割合である。

(集成材の生産)
○ 住宅の品質・性能の確保に対する需要者ニーズの高まりを背景に、住宅に使用される木材において、強度や寸法等品質・性能の明確な集成材の需要が増大している。
国産材も、短尺材等の単価の安い原木を活用したコスト縮減、ベイマツとの組み合わせによる強度の確保等、集成材生産の取組が進められている。

(合板等の生産)
○ 合板の需要量が減少している中で、南洋材の資源的な制約等により原木輸入が減少していることから、全体の合板生産量は減少し、針葉樹合板の生産量のシェアが拡大した。
  国産材も、細い原木でも処理できる加工機械の開発や単価の安い原木の活用により、平成13年には、合板用の国産針葉樹材が前年に比べ6割増加した。

図W−4 針葉樹・広葉樹別の国産材の合板用原木の生産量の推移

資料:農林水産省「木材需要報告書」

(シックハウス問題に対応した木材製品の供給)
○ シックハウス問題に対応した木材製品の供給が拡大している。近年、学校施設の内装においても、地域材を利用する取組が進展している。


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