第6章 国有林野事業における改革の推進

1 国有林野事業の役割

○ 国有林野は、国土面積の2割、森林面積の3割を占め、その多くが奥地脊梁山脈や水源地域に分布する国民共通の財産である。

○ このため、国有林野事業では、森林・林業基本法に掲げる基本理念にのっとり、公益的機能の維持増進を旨として、国民に開かれた管理経営を進めている。

○ 特に、国が直接管理経営を行う国有林野に期待される役割としては、
@ 国民の生命や財産を脅かす土砂の崩壊の防止や洪水の緩和、国民の生活に不可欠な良質な水の供給
A 国有林野ならではの貴重な自然環境の保全、民有林からは供給が難しい林産物の供給
が挙げられる。

2 新たな基本法の下での国有林野事業

(公益的機能の維持増進を旨とする管理経営)
○ 民有林に先駆け、「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」に3区分し、区分に応じた森林づくりを進めている。

○ 国民の生活を守るため、保安林の指定や治山事業により、災害に強い安全な国土づくりや水源地域の整備を推進している。

○ 優れた自然環境を維持・保存するため、保護林の設定や、保護林間を連結してネットワークを形成し、野生生物の移動経路を確保する「緑の回廊」の設定を行っている。

       

図6−1 公益的機能の発揮に向けた国有林野の機能類型区分(平成13年4月1日現在)

                         

図6−2 緑の回廊の位置(平成13年4月1日現在)

○ 地球温暖化防止へ寄与するため、健全で活力ある森林づくりとともに、森林土木工事における木材利用や、国有林野内の自然エネルギー資源の利用を進めている。

○ 伝統的木造建築物のある地域の国有林野において、修復資材の供給等に取り組んでいる。

(国民に開かれた管理経営)
○ 管理経営に関する計画を国民の意見を聴いた上で策定するとともに、国有林野事業の情報を国民に提供している。

○ 森林・林業に対する国民の理解を深めるため、森林環境教育や広報活動等を通じて普及啓発活動を行っている。

○ 自主的な森林づくり活動のための「ふれあいの森」等、多様な活動の場として、国有林野を提供し、国民参加の森林づくりを進めている。

(森林の流域管理システムの下での管理経営)
○ 流域内の市町村や林業関係者等と連携し、民有林と国有林が一体となっての森林づくりや、合同の技術研修会等を実施している。

3 改革の推進

○ 簡素で効率的な管理経営体制を確立するとともに、財政の健全性の回復に向けて国有林野事業の改革を進めている。

○ 事業実施の民間委託を進めている。伐採、人工造林、下刈の平成12年度の委託割合は、8割から9割程度となった。

○ 職員数の適正化等により、給与経費等を前年度より132億円縮減した。また、財政の健全性の回復に向けて、新規借入金を前年度よりも70億円減少させた。  

表6−1 伝統的木造建築物を守るための取組事例
「世界文化遺産貢献の森林(もり)」の設定(近畿中国森林管理局)

 近畿中国森林管理局では、平成13年に、世界文化遺産「古都京都の文化財」、「厳島(いつくしま)神社」、「法隆寺(ほうりゅうじ)地域の仏教建造物」と「古都奈良の文化財」周辺の国有林野を「世界文化遺産貢献の森林」に設定した。同局管内には、世界文化遺産や国宝等に指定されている神社仏閣が多く、その維持・保存に樹齢200〜300年の大径材や樹齢80年以上のヒノキの樹皮が必要となる。このため、これら民有林からの供給が困難な木材等の供給等を通じ、文化財の保護にも貢献することを目的に、これらの「世界文化遺産貢献の森林」を設定したものである。
 
 

表6−2 国民参加の森林づくりの事例
 野球関係者による「バットの森」づくり(北海道森林管理局 北海道苫小牧(とまこまい)市)
 北海道産のアオダモから作られたバットは、多くの野球選手に愛用されているが、これらのアオダモは天然林からの供給に頼っており、成長も遅いため、長期的な安定供給が心配されている。このため、「アオダモ資源育成の会」や野球関係者等により、平成12年度からアオダモの植樹活動が始まったところである。北海道森林管理局でも、北海道道有林等とともにこの活動に協力しており、フィールドの提供や技術指導等を行っている。平成13年7月、苫小牧市の国有林野において、「バットの森づくり植樹祭」が開催され、プロ野球選手や地元の少年野球チームの選手達が、200本のアオダモを植樹した。
 
 

表6−3 民間委託の実施状況


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