第2章 森林の多面的機能の持続的な発揮に向けた整備と保全

1 森林・林業をめぐる国際的な動向

(持続可能な森林経営に向けた動き)
○ すべての森林における持続可能な経営を推進するため、平成13年に国連森林フォーラムが設立され、平成14年3月には第2回会合が開催された。

○ 森林管理協議会(FSC)等による持続可能な森林経営の認証・ラベリングが国際的に進展している。

○ 違法伐採問題については、「違法に伐採された木材は使用すべきでない」という考え方に基づき、違法伐採問題に対する国際的な関心をさらに喚起するとともに、国際的に理解の得られる貿易上の措置を検討することの重要性についても主張していく。また、国内の木材流通加工の関係者や消費者等に対して、こうした考え方についての理解を深めていくことも重要である。

(地球温暖化防止に向けた取組)
○ 平成13年11月の気候変動枠組条約第7回締約国会議では、京都議定書の具体的な実施ルールが定められた。我が国は、森林経営による二酸化炭素の吸収量について、基準年である平成2年排出量の3.9%に相当する1,300万炭素トンまで適用することが可能となった。

○ これを受けて平成14年3月に見直された我が国の新たな地球温暖化対策推進大綱では、森林・林業基本計画の目標が達成された場合、森林経営による二酸化炭素の吸収量は3.9%程度と推計されるが、仮に、現状程度の水準でしか森林整備等が進まなかった場合、確保できる吸収量は3.9%を大きく下回るおそれがあるとの危惧が示された。

○ このため、平成15年(2003年)から平成24年(2012年)までの10年間において、森林・林業基本計画に基づく森林整備、木材の供給、木材の有効利用等を計画的に強力に推進していく必要がある。                                    

図2−1 循環型で、森林・木質資源を活用するシステム

図2−2 地球温暖化防止のため国が取り組むべきこと

2 森林の多面的な機能と森林資源の現状

(森林資源の現状)
○ 我が国の森林面積は、2,512万ha。森林蓄積は39億m(平成12年3月31日現在推計値)。人工林は、45年生以下が8割、今後とも、保育や間伐を着実に実施することが必要である。

(森林の機能の評価)
○ 平成13年11月に日本学術会議が、農林水産大臣の諮問に対し「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的機能の評価について」を答申した。

○ 答申においては、森林の機能が体系的に分類され、その評価手法について示された。その検討内容を踏まえ、このうち、物理的な機能を中心に、貨幣評価が可能な一部の機能について、評価額が示され、森林の重要性が改めて認識された。

(重視すべき機能に応じて森林を区分していく考え方)
○ 狭小かつ急峻な国土に高度な経済・文化活動が展開されている我が国においては、個々の森林について自然的条件や地域のニーズ等に応じた、より適切な森林の整備を進める必要がある。

○ 森林を重視すべき機能に応じて、「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」の3つに区分し、区分ごとの望ましい森林の姿を描き、これに誘導するための森林施業を実施していくことが合理的である。

3 多面的機能の発揮に向けた森林の整備及び保全の推進

(間伐の推進)
○ 平成12年度から5年間に150万haの民有林を対象として、緊急間伐5ヵ年対策を実施している。この結果、平成12年度の民有林間伐面積及び利用材積は、従来水準の約1.5倍となった。

(林道の整備等)
○ 林道等は、適切な森林施業の実施等を通じ、森林の多面的機能の発揮を進める上から不可欠な施設である。また、作業現場へのアクセスの改善等を通じて、効率かつ安定的な林業経営を確立する上でも重要である。

表2−1 日本学術会議から答申された森林の多面的機能

   

         

図2−3 林内路網からの距離別の施業実施率

 

(計画的な森林整備の推進)
○ 森林施業計画に基づく計画的かつ一体的な森林施業を確保するため、その実施に不可欠な地域における活動に対する支援を平成14年度から開始する。

(森林の保全)
○ 安全で安心できるくらしの実現を図るため、計画的な治山事業や保安林の指定を推進する。

○ 平成12年度松くい虫被害量は、夏期の高温等のため前年度より17%増加した。また、シカによる被害が深刻な状況にある。このため、引き続き防除対策を推 進する必要がある。

(公的な関与による森林の整備)
○ 公益的機能の発揮に対する要請が高い民有林のうち、森林所有者等による林業生産活動のみでは適切な整備が困難な森林について、治山事業や緑資源公団、森林整備法人等による森林整備を推進する必要がある。

(森林を支える連携)
○ 近年、上・下流の自治体等の協力による間伐等に対する支援や基金を造成し、その運用益等で森林整備を支援する取組が増加している。

○ 近年、森林の整備及び保全に自発的に関わる森林ボランティア活動等が増加しており、今後、指導者の研修、フィールドの確保等自発的な取組を助長することが重要である。

(森林の多様な利用)
○ 平成14年度からの完全学校週5日制の導入等に対応するため、森林・林業体験の機会と場を確保・提供する体制づくりが必要である。

4 持続可能な森林経営の推進に向けた我が国の貢献

○ 我が国は、技術協力、資金協力等の二国間協力や国際機関を通じた協力、NGO等が行う海外植林への技術支援等を実施している。  

図2−4 保安林の所有形態別の面積

図2−5 上下流の協力による森林整備のための基金設立数の推移

     


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