森林・林業基本計画の概要

平成13年10月
林  野  庁

1.基本計画の目的

○ 森林の有する多面的機能の発揮、林業の持続的かつ健全な発展という基本理念実現に向けて、森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本計画を策定。(基本計画の内容については、概ね5年ごとに見直し)

○ その中で、関係者の森林の整備や保全、林業、木材産業等の事業活動や林産物の消費に関するの指針とするため、森林の多面的機能の発揮に関する目標及び木材の供給及び利用の目標を設定

2.施策の考え方、展開方向

○ 森林は美しく豊かな国づくりの基礎森林は、国土の保全、水源かん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、木材の供給等の多面的機能を有しており、森林に対する国民の多様な要請に応えるため、森林の適正な整備・保全林業の持続的かつ健全な発展木材の供給・利用の確保を図ることが必要。

○ 木材の生産を主体とした政策から森林の有する多面にわたる機能の持続的発揮を図るための政策へと転換するという、森林・林業基本法の理念の実現を図るため、国民の参加と合意を得て、森林・林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、人と自然が共生する森林の世紀の実現に努力。

(1)多様な森林の整備の推進

○ 森林の機能は、林木、土壌、多種多様な生物などの森林の構成要素が良好な状態に保持され、生態系として健全に維持されることにより発揮されることから、森林の持つ多様な生態的特性等を踏まえた適正な整備及び保全を図ることが必要。

○ 一つの森林に高度に発揮すべき機能が併存する場合が多いことから、個々の森林について自然的条件や地域のニーズ等に応じて特に重視すべき機能を特定するなど機能間の調整を行いつつ、より適切な森林の整備を進めることが必要。このため、重視すべき森林の機能や望ましい森林整備のあり方を示すこととし、森林所有者や地域住民の合意の下に、森林を「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」に区分。(13年度末までに市町村森林整備計画において実施予定)

[3区分毎の森林整備]

@水土保全林

 下層植生、樹根、土壌孔隙が発達した森林への誘導を旨として、高齢級の森林への移行及び広葉樹導入により混交林化を図るなど複層林の造成を推進。森林所有者等の自助努力のみでは適正な整備が進みがたいものについては、必要に応じて、治山事業、緑資源公団、森林整備法人等による森林整備を実施(公的な関与による森林整備

A森林と人との共生林

 動植物の生息・生育に適した森林、住民等に憩いと学びの場を提供する森林等への誘導を旨として、広葉樹の導入等による森林構成の多様化、森林環境教育、健康づくりの森の整備を推進。

B資源の循環利用林

 木材の利用に適した森林への誘導を旨として、経営目的等に応じた施業の適切な選択、森林施業の集約化・団地化や機械化を通じた効率的な森林整備を推進。

・3区分ごとの整備対象面積(単位:万ha)       

区   分 整備対象面積
   合   計   2,510

考内 訳
水土保全林   1,300
森林と人との共生林     550
資源の循環利用林     660
 

○ 森林の多面的機能の発揮に関する目標

 新たな森林整備の考え方に基づき、平成22年及び平成32年における目標を設定。

※ 今計画の指向する状態については、伐期の長期化や伐採後の裸地化の減少等3区分毎の森林施業が適切に実施されることとし、前計画と比較すると、育成単層林は半分、育成複層林は6割増

※ 皆伐・新植といった画一的な施業から脱却し、育成複層林への誘導、長伐期化、広葉樹の導入など森林の区分にふさわしい施業を推進し、多様な森林を整備
 育成複層林については、長期育成循環施業の導入等により整備を推進。(抜き伐りへの助成等を13年度から実施中)
 育成複層林面積 平成12年 90万ha → 指向状態 870万ha

※ 炭素の貯蔵庫である森林の総蓄積の増加を図る。
 森林の総蓄積 平成12年 39億m3 → 指向状態 51億m3

○ 造林、保育、林道の整備等について、森林の区分に応じた事業展開を円滑に実施。(14年度概算要求)
 特に、林道と作業道等の適切な組み合わせや自然環境の保全等森林の3区分に応じた林内路網を整備するほか、森林の区分を包括する骨格となる林道を整備。

○ 健全な森林を育成するため、計画的かつ効率的な間伐を推進
(12年度から5カ年対策を実施中)

○ 地域の生物多様性の向上等に資する観点から、地域固有の豊かな自然林等を再生・創出。(「緑の再生」特別対策(14年度概算要求))

○ 森林の現況の調査等の地域活動を確保するための支援措置
 一体的かつ計画的な森林施業が適切に行われるよう、森林施業計画の認定を受けた森林所有者等を対象とする交付金制度を創設。
(14年度概算要求)

○ 山村の活性化
 都市と山村の共生・対流の推進を図るため、山村における就業機会の増大、生活環境の整備、拠点集落への重点化等を通じた山村地域への定住を促進。情報通信基盤や交流基盤の整備、森林体験活動の指導者の育成等による都市住民等の受け入れ態勢を整備。

○ 国民の自発的な活動の促進
 全国植樹祭や緑の募金等の国土緑化運動や森林ボランティア活動の促進等国民参加の森林づくりを推進し、森林の整備・保全は社会全体で支えるという国民意識を醸成。

○ 社会的コスト負担
 森林整備のための社会的コスト負担について、国民の理解を得つつ、地域の状況にも対応して、様々な手法のうちから的確に選択していくことについて検討。

(2)林業経営の育成

○ 林業経営の規模の拡大・集約化
 効率的・安定的な林業経営を担える者(森林組合、素材・造林事業体、林家、会社等)を育成し、経営意欲の低下した小規模所有者や都市部に居住する不在村所有者などの森林について、これらの担い手への施業や経営の集約化を促進。
 このため、地域の特性に応じ、林業経営の規模の拡大、生産方式や経営管理の合理化等林業経営基盤の強化の促進を図ることとし、具体的には以下の施策を実施。

・ 林業経営基盤強化法(13年7月改正)に基づく特例資金の貸付、税制特例

・ 同法に基づく都道府県知事による森林所有権の移転や施業・経営の受委託のあっせん等

・ 森林施業計画の作成主体及び造林関係補助事業の事業主体の拡大(14年度概算要求)

○ 高性能林業機械の導入等により、効率的かつ安定的な林業経営の基盤を整備。(林業・木材産業構造改革事業の創設(14年度概算要求))

○ 人材、林業労働力の育成確保
 新規就業の確保、雇用管理の改善、労働安全衛生の向上。
(13年度補正予算(改革先行プログラム)において、森林整備等による緊急雇用対策を要望

(3)木材の供給及び利用の確保

○ 木材の供給及び利用の目標
 木材に対する需要が確保され、適切に利用されることにより、伐採、植栽、保育等のサイクルが円滑に循環し、林業の持続的かつ健全な発展が図られ、森林の有する多面的機能の発揮も確保
 再生産可能で加工に要するエネルギーが少ないなど木材は人と環境に優しい素材であり、木材の有効利用の促進が環境に負担の少ない循環を基調とする社会経済システムの実現に貢献。
 このようなことから、望ましい森林の整備が行われた場合の木材の供給量と、今後の木材の需要動向を見通しつつ製材用材等用途別の利用量を設定。(目標年次は平成22年)

供給の目標(平成22年)

                             (単位:百万m


区  分
実 績
平成11年
目 標
平成22年
参 考
平成32年
    合  計   20   25   33

考内
 訳
水土保全林   −   12   15
森林と人との共生林   −    4    4
資源の循環利用林   −    9   14

※ 木材供給量 平成11年 20百万m3 → 平成22年 25百万m3   実績と比較すると、択伐などの非皆伐施業による木材生産量の増加

利用の目標(平成22年)

                   (単位:百万m

用途区分
 
総需要量 利用量
見通し 平成11年 目 標
合    計 100   20   25
製材用材   41   13   18
パルプチップ用材   41    5    5
合板用材   15    0    1
その他    3    1    1

※ 製材用材利用量 平成11年13百万m3 → 平成22年18百万m3我が国の木材の主要用途である製材用材の利用促進に努力

○ 木材産業等の健全な発展

・木材産業の事業基盤の強化、流通及び加工の合理化
 外材に対抗し得るよう規模拡大による低コスト化、乾燥材生産等による品質の向上、ロットの拡大等。
(林業・木材産業構造改革事業の創設(14年度概算要求))

○ 林産物の利用の促進

・建物等における木材の使用の促進
 住宅生産者との連携の促進、今後の新設住宅着工の見通しを踏まえた上で、長期耐用住宅、リフォーム等への対応、非木質住宅向けの内装材の開発普及
 学校、保育所、郵便局等の地域のシンボルとなる公共施設の木造化、公共事業への木材利用促進
(地域材を利用した学校関連施設等の整備(14年度要求))

・木材の新規需要の開拓
 バイオマスエネルギー利用、新素材の開発等
(木質バイオマス発電施設等の整備(14年度概算要求))


○ 国が「地域材利用の推進方向及び木材産業体制整備の基本方針(仮称)」を策定し、製材等分野ごとに取り組むべき具体的課題を明示
 これを受け、都道府県が木材産業の構造改革、地域材の利用に関する目標等を設定

(4)国有林野の管理及び経営

 国有林野は国民の共通の財産であることを踏まえ、公益的機能の維持増進を旨として、適切かつ効率的に管理経営。既に重視すべき機能に応じて森林を3区分しているところであり、民有林との連携を図りつつ、森林の区分に応じた適切な森林施業を一層推進。


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