熊谷農林水産大臣政務官の訪欧の結果概要
 
平成15年5月1日
農 林 水 産 省
I ジラールWTO非農産品市場アクセス交渉グループ議長との会談
1.日時等
平成15年4月28日(月)16:00〜17:00、於スイス代表部(ジュネーブ)
2.出席者
(1)先 方  ジラールWTO非農産品市場アクセス交渉グループ議長
(2)当 方  熊谷農林水産大臣政務官ほか
3.会談の概要
 非農産品関税モダリティ
 
ア 熊谷政務官から、亀井大臣の指示の下、非農産品モダリティ案の提示前に、我が国の考え方を伝えたいとして、我が国林水産業の厳しい国内事情等を紹介しながら、次のように述べた。
1 関税フォーミュラに関しては、(i)品目ごとの柔軟性が確保される平均関税率による引下げ方式で、(ii)しかも、先進国・途上国に共通の単一フォーミュラとするのが必須である。
2 地球規模の環境問題の解決、有限天然資源の持続的利用は、ドーハ閣僚宣言の前文に明確に位置付けられている「持続可能な開発」を実現するために不可欠で、交渉全体において配慮されるべき考え方であり、また、国内の様々な利害関係者との対話を含む国民的な議論を経て樹立した我が国の基本的な哲学である。
3 このような有限天然資源の持続的利用の観点等については、品目ごとの柔軟性のある関税フォーミュラによって実現可能となる。
4 仮に、林水産物等を始めとする機微な分野に配慮できないような関税フォーミュラになるのであれば、日本の政治家として国内的に全く説明ができず、受け入れられない。
5 鉱工業品18分野のゼロゼロ/ハーモナイゼーションが基本モダリティに入ることが必要である。一方、林水産物分野のゼロゼロに参加する余地は全くない。また、低関税の撤廃には反対である。

イ これに対し、ジラール議長から、次のような発言があった。
1 日本の主張の背景にある政治的にも深刻な事情について理解し、非農産品関税モダリティについての説得力のある日本の考え方をテークノートしたことを約束する。スイス代表としては賛同できる部分が多いが、非農産品市場アクセス交渉グループの議長としては、異なる立場をとらざるを得ない。
2 議長としては、WTOへの統合、貿易の更なる自由化、途上国への配慮の三要素が重要と考えている。現在の世界貿易制度を強化するため、先進国及び途上国が、革新的、大胆かつ勇気ある措置を執ることが必要である。
3 本交渉グループには多様な提案が提出されているが、議長としては、これらの提案のベストの要素を選択し、相互に矛盾のないようなものとすることが必要と考えている。私が提示する骨子と基本要素に対しては、日本を含め、多くの国が不満を持つであろう。
4 コンセンサスに至るためには、カンクンまでの時間が必要であり、現段階で数字入りの具体的な非農産品モダリティ案を提示しようとは考えていない。
 ウ これに対し、熊谷政務官から、次のように発言した。
1 現在、非農産品市場アクセス交渉において、特に関税フォーミュラに関する各国の主張が複雑に対立する中で、我が国が考えている平均関税率による引下げ方式は、WTOへの統合、自由化推進、途上国配慮というジラール議長が考える基本原則に沿い、各国が抱える困難な事情にも配慮できるという意味において、現実的な解決に貢献することができるものと確信している。
2 ジラール議長が加盟国全体の利益となるような議論が推進されるようモダリティの骨子と基本要素を作成されることを強く望んでいる。


U
 ヴッチャー・オーストリア農林・環境・水資源副大臣との会談

1.日時等
平成15年4月29日(火)10:30〜11:30、於ホーフブルグ宮殿内会議室(ウィーン)
 
2.出席者
(1)先 方  ヴッチャー・オーストリア農林・環境・水資源副大臣
(2)当 方  熊谷農林水産大臣政務官ほか
3.会談の概要
 
(1)ハービンソン議長農業モダリティ1次案改訂版等
 
ア 熊谷政務官から、ジュネーブ・プロセスとハービンソン議長農業モダリティ1次案改訂版について、次のように述べた。
1 関税引下げ方式やアクセス数量、国内支持削減方式、最終的な野心の水準等の農業交渉の要となる事項については、加盟国間の交渉によってしか解決できず、引き続き他の加盟国と十分議論を行っていく考えである。
2 各国が、技術的事項の検討を継続することを始め、できるだけ早く農業モダリティを確立するために努力するとの認識を共有していることは重要である。
3 関税のハーモナイゼーションの要素や輸出入国間のバランスの欠如等、主要事項において根本的な問題を抱えるハービンソン議長案は、総体的に受け入れられず、議論のベースにはできない。
 イ これに対し、ヴッチャー副大臣から、次のような発言があった。
1 ハービンソン議長モダリティ1次案改訂版は、
(i) 市場アクセスについては、各国の市場が保護できなくなる
(ii) 国内支持の削減、特に青の政策の削減については、あまりにも行き過ぎた内容になっている
(iii) 非貿易的関心事項については、農業の多面的機能、環境保護、動物愛護の観点が全く配慮されていない
等、大きな問題があり、交渉のベースにはならない。
2 今後、各国が議論を継続し、技術的事項の検討を行うことは重要である。
 (2)CAP改革
 
 熊谷政務官から、米国はWTO農業交渉とCAP改革をリンクさせ、CAP改革を見極める姿勢が見られることを指摘したところ、ヴッチャー副大臣から、ラウンド全体の中で進んでいないのは、農業分野だけではなく、EUが農業分野の進展を妨げているという批判があるのは心外である旨発言があった。
(3)カンクンへのプロセス
  熊谷政務官から、カンクンを成功させるため農業分野での譲歩を迫る圧力が今後高まってくる中、現実的かつバランスのとれたアプローチによってこそ農業交渉が進展し、ラウンド全体の前進に寄与するとの考えを示しつつ、カンクンに向けてのプロセスについての副大臣の見解を尋ねたところ、ヴッチャー副大臣から次のような発言があった。
1 カンクンを成功させようと産業界が農業界に圧力をかけてきているが、これに対して我々の主張を通していくべきである。
2 カンクンに向けては、途上国との関係を緊密にし、農業交渉に関する我々の主張を理解してもらうことが、特に市場アクセスの分野で、重要である。
 
(4) 食料援助の無償化
ア 熊谷政務官から、農業モダリティにおけるルールの要素の重要性に関連して、食料援助の無償化について、次のように述べた。
1 食料援助については、これまでの経験に照らしても、緊急時における真の人道的援助数量の確保のためには、有償での食料援助の途を残す必要がある。
2 この点については、引き続き、日EUの交渉担当者間で意見交換をさせたい。
 イ これに対し、ヴッチャー副大臣から、次のような発言があった。
1 日本の考え方は理解できる。無償での人道的援助が、援助を受けた国の市場に大きなダメージを与えたこともある。
2 この点については、交渉担当者間で意見交換をしていくべきと考える。
(5)日EUの連携強化と意見交換の継続
 今後カンクンに向けて日EUが農業分野で連携を強化していくべきこと、日オーストリア間の意見交換を継続していくべきことについて、認識を共有した。
V 欧州森林保護閣僚会議でのステートメント
1.閣僚会議の日程等
  平成15年4月28日(月)〜30日(水)、於ホーフブルグ宮殿(ウィーン)
2.熊谷農林水産大臣政務官のステートメント
熊谷政務官から、我が国における持続可能な森林経営の推進のための取組や違法伐採対策を含む、地球規模での環境問題解決への貢献についてステートメントを行った。
 
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 林野庁 木材課 木材貿易対策室
 貿易第一班
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   直通 03−3502−7830