平成15年3月26日
総 務 省 消 防 庁
農林水産省 林 野 庁

林野火災の発生の抑制と拡大防止に向けて

林野火災対策に係る調査研究会報告書

 消防庁、林野庁は共同で、幅広い視点から林野火災対策の再構築に取り組むことを目的として、学識者、関係省庁、地方公共団体の代表者等で構成する「林野火災対策に係る調査研究会」(委員長:熊谷良雄・筑波大学社会工学系教授)を設置して昨年5月から検討してきました。
 このたび、火災警報の運用や警戒活動の工夫、森林の保全管理・施設整備のあり方、ヘリコプターを活用した効果的な消火方法等の提言を含む検討結果を報告書にとりまとめました。本報告書は、毎年多発している林野火災の発生の抑制と拡大防止に役立ててもらうため、地方公共団体等に配布されます。

◆「林野火災対策に係る調査研究会報告書」の概要◆

T 林野火災の実態・検討課題の抽出

 近年の林野火災の発生・拡大状況、平成14年に発生した大規模な林野火災事例、関係省庁(国)の林野火災対策の現状について調査し、課題の抽出を行った。

U 林野火災の予防対策のあり方

1 林野火災に関する効果的な予報等の発表体制

(1)気象と林野火災との関係

 気象要素(最小湿度、実効湿度、実効降水量)と林野火災発生との関係から、その発生危険を判断するための指標としては、実効湿度が適当である。

(2)火災気象通報・火災警報の見直し

 火災の危険性が極めて高くなったときには、市町村は、消防法第22条の規定に基づいて気象台が発表する火災気象通報を基に「火災警報」を発令し出火防止体制を強化すべきである。

林野火災の警戒活動

(1)警戒活動に関わる情報の共有と関係者の連携

 消防や林野等の関係者が地域の過去の林野火災等の情報を共有し、消防団、婦人防火クラブ、自主防災組織、森林ボランティアなどが連携して林野火災に対する効率的な警戒・広報を実施する必要がある。

(2)ヘリコプターによる警戒活動

 林野火災の発生防止のため、ヘリコプターにより山林の上空を巡回飛行して警戒や監視を行うことは極めて有効である。

3 森林の保全管理・施設整備

(1)適切な森林整備

 除・間伐等の森林整備が遅れている林分では地表火が樹幹火や樹冠火に移行しやすいとされており、枯損木等の除去を通じて林野火災の延焼に抑制的に働く適切な森林整備が重要である。

(2)防火施設等の整備

 防火施設等の整備にあたっては、地域の状況(住宅地の有無、森林への入林者の多寡等)に応じた林道、作業同等の開設・改良と併せて、消火活動に必要な防火水槽等の施設整備が重要である。

(3)森林ボランティアの活用

 林野火災の予消防に係る森林ボランティアの活用にあたっては、リーダーの育成、日常的な活動(林野火災危険期の巡視等)への支援等を行うことが必要である。

V 林野火災の消火活動のあり方(ヘリコプターの活用)

ヘリコプターの要請

(1)ヘリコプター要請判断のための基本要件

@消防・防災航空隊への事前通報・要請

 林野火災発生を覚知した場合、自都道府県内の消防・防災航空隊に一報を入れ、できるだけ早期に要請する。

A他の都道府県の消防・防災ヘリコプターの要請

 強風・乾燥注意報や火災気象通報が発表されているときは、自都道府県内のヘリコプターと併せて同時に要請を行うべきである。
 また、日頃から図上演習等を実施し、火災規模や諸条件に応じて必要機数を判断する目安を立てておく。

B自衛隊ヘリコプターの要請

 要請から離陸までの準備等に相当の時間を要することから、正式要請前に事前連絡を行うとともに、早めに要請する必要がある。

(2)ヘリコプター要請に伴う情報の共有

@消防・防災ヘリコプター要請にあたって提供すべき情報

 要請側市町村の消防長は、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づき、応援側市町村の消防長等に対し、災害の発生日時・場所・概要等の必要事項を直ちに提供する。

A自衛隊ヘリコプター要請にあたって提供すべき情報

 原則として都道府県知事から、1)災害の情況及び派遣を要請する事由、2)派遣を希望する期間、3)派遣を希望する区域及び活動内容、4)その他参考となるべき事項(派遣航空機の離着陸場の位置、現地対策本部等設置場所、現地対策本部等への連絡要領)を連絡する。

B要請側と応援側の情報の共有

 正式要請以前から林野火災の発生・拡大等に関するリアルタイム情報を随時提供するなど、両者で情報を共有しておくことが望ましい。

(3)ヘリコプター要請側の受入準備

@離着陸場の確保
A給水場所の確保
B給油場所・燃料の確保

指揮・情報連絡体制

(1)現地指揮本部の設置と指揮・調整系統

 多数のヘリコプターが活動する場合には、現地指揮本部においてヘリコプターの運用に関する調整と情報の共有化を図る。

(2)情報連絡手段の確保

 現地指揮本部には、消防無線、自衛隊無線、航空無線、その他関係機関の通信施設を整える必要がある。

(3)情報の収集・共有

 早期に必要な情報を収集、共有することにより統一的な防ぎょ活動が可能になるため、ヘリコプターを要請して空中からの情報収集を行ことが有効である。

3 ヘリコプターの運用

(1)ヘリコプターの連携による消火活動

 空中消火活動は、複数機の連携によりできるだけ短い間隔で効果的な散水を行う必要がある。

(2)指揮支援体制

 現地指揮本部のなかに被災地都道府県内の消防・防災航空隊長を長とするヘリコプター指揮本部を設置し、現場指揮者の指示のもとにヘリコプターの局面指揮にあたらせる。

4 空中消火の方法

(1)消火薬剤の使用

 消火薬剤の使用については、基本的には、応援要請を行う自治体が判断、決定すべきである。特に自衛隊とは、事前に調整しておく。

(2)空中消火法

 空中消火に関わる諸条件を総合的に考慮し、状況に合わせて間接消火法(延焼阻止を図るため火線前方に散布する戦法)か直接消火法(火災地点に直接散布する戦法)の最適な消火法を選定すべきである。  

5 空中消火資機材の整備

 自治体による自衛隊用の消火用資機材整備にあたっては、自衛隊と協議の上、消火薬剤使用に係る自治体の方針に基づき自己給水型のバケット等への切替え、高額な大型ヘリコプター用バケットの都道府県による共同整備なども検討する必要がある。  

6 ヘリコプターによる効果的消火活動の推進に向けての課題

 消防・防災ヘリコプターの整備状況、現実の消火方法を勘案して、空中消火に係る消防庁の昭和50年通知「林野火災空中消火の運用について」(昭和50年3月18日付消防災第47号)は、内容点検のうえ必要な改正を行うことが望まれる。

W 新しい技術を用いた情報の収集・共有

 林野火災発生時の火災情報の収集・共有を行うための具体的手段(GPS付携帯電話を活用した火災の現況把握システム、林野火災ハザードマップ)を検討・開発した。                

(連絡先)
  消防庁防災課
  担当:庄慶(しょうけい)課長補佐、
      木戸(きど)防災第三係長
  電話:(代表)03−5253−5111
           (内線)7753、7770
     (直通)03−5253−7525
     (FAX) 03−5253−7535
(連絡先)
  林野庁森林保全課森林保護対策室
  担当:岡井(おかい)課長補佐、
      進藤(しんどう)森林火災対策係長
  電話:(代表)03−3502−8111
           (内線)6332、6336
     (直通)03−3502−1063
     (FAX) 03−3502−2104


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