プレスリリース
平成15年12月15日
林    野    庁

気候変動枠組条約第9回締約国会合(COP9)における
吸収源CDMの定義等に関する決定の概要

1.会議の概要と吸収源CDMの定義等についての結果
12月1日(月)から12日(金)までイタリアのミラノにおいて、気候変動枠組条約の第19回補助機関会合(SBSTA19)と第9回締約国会合(COP9)が開催され、条約締約国167カ国、国際機関、NGO等から5151名が参加した。
我が国からは、小池環境大臣ほか、林野庁から永目調査官、佐藤課長補佐等が出席し、吸収源CDM(クリーン開発メカニズム)の定義・ルール・手続きの合意形成に積極的に参画した結果、COP7以降2年間かけて検討・協議してきた 吸収源CDMの定義等が確定・採択された。
2.今次会合の吸収源CDMの定義・ルール・手続きに関する決定の内容
別紙:(吸収源CDMの実施ルールの詳細[PDF])  (全体の会合の概要[PDF])
(1)  吸収量(ベースライン吸収量、プロジェクト活動による吸収量、リーケッジ)についての各定義・計測方法は、クレジットが過大にならないように規定。
(2)  発行するクレジットの担保である森林の非永続性(伐採や火災により森林が失われると炭素固定効果が永続しないこと)に考慮し、i)クレジット発行形態(それぞれ期限付きであるが一時的クレジットまたは長期的クレジットの選択が可)、ii)定期的なモニタリングと認証による確認、iii)クレジット発生期間(クレジットが新たに発生し続ける期間を意味し、最長60年間)を規定。
(3) 新規植林、再植林の定義については、附属書I国の国内森林の定義と同一(議定書3条用と同一)に規定。
(4)  社会・経済的及び環境的影響の分析のあり方については、事業者がプロジェクト設計書にて分析・記載すべき項目が例示的に盛り込まれ、ホスト国が実施する評価については各国の関連制度によることと規定。
(5)  追加性の定義については、排出源CDMの定義をそのまま吸収源に置き換えて規定。
(6)  小規模吸収源CDMについては、吸収量が年平均で8キロCO2トン未満のものが対象とされ、加えて低所得者層が参画するものと規定。また今後、関連する簡素化されたルール・手続き等を検討し、次回締約国会合(COP10)にて採択することを規定。
(7)  外来侵入性樹種及びGMO(遺伝子組換体)の使用については、ホスト国がそれらの使用に関連する危険性を国内法規で評価し、附属書I国もそれらを使用した植林からのクレジットを活用することを国内法規で評価することをそれぞれ認識することを規定。
3.考察
京都メカニズムの中で定義・ルールが決まっていなかった吸収源CDMのルール等がスケジュール通り、今次会合にて決定したことは、議定書発効に向けての国際社会への良いシグナルとなる。
非附属書I国の中でも、排出源CDMのホスト国候補となり得ない国においても、この吸収源CDMは実施可能なスキームであり、それらの国の持続可能な開発への貢献、技術移転等の観点からも、定義・ルール等の決定が先延ばしにならなかったことは評価できる。
特に、小規模吸収源CDMのスキームが認められたことは、温暖化の影響を最も受けやすいとされている最貧国や島嶼国での実施も想定され、大事な足がかりとなる。今後の実施細則作りの作業を急ぐ必要がある。
追加性に関する規定が排出源CDMの記述と同じ並びになったことと、再植林の基準年が附属書I国の国内森林の定義と同一となったことは、それぞれマラケシュ合意に基づくもので、対を成すものである。
また、外来侵入性樹種及びGMO(遺伝子組換体)の使用については、これまで実施されてきている外国の有用植林樹種の導入やそれらから育種された品種を対象としておらず、特に支障は生じない。
なお、事業者にとって、ベースラインの設定や吸収量の計測方法、クレジットの種類や事業期間をどう選択するか等、軽々に判断出来ない定義・ルールがあり、これらについては林野庁内のCDM植林ヘルプデスク、実施中の補助事業等を活用し、一層の技術的支援を行っていく。
問い合わせ先: 林野庁計画課海外林業協力室 永目、佐藤
  TEL: 03-3591-8449 (直通)、   03-3502-8111 (内線 6211、6216)

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