(別紙)  

林産物交渉に関する論点

 ご意見を伺いたいポイントを※印で例示しておりますが、これにこだわることなく、幅広くご意見を聞かせ下さい。また、以下の論点以外にも林産物交渉に関するご意見があれば、お聞かせ下さい。

【背景】
 2001年11月、ドーハで開催された第4回WTO閣僚会議において、新ラウンドが始まりました。ドーハ閣僚宣言は、総則において、「マラケシュ協定の原則と目的を再確認し、保護主義を拒否することを約束する」とする一方、併せて「持続可能な開発の目的への約束を再確認する」こと等も盛り込まれました。
 林産物については、一般の鉱工業品とともに、非農産品市場アクセス交渉グループにおいて交渉が行われることになりました。ドーハ閣僚宣言においては、「関税及び非関税措置の削減、または適切な場合には、撤廃を目指す」こととされており、今次ラウンドの非農産品市場アクセス交渉は関税の引下げを指向しています。また、貿易と環境委員会(CTE)通常会合において、環境措置が市場アクセスに与える影響や環境目的のラベリング等について議論を行い、これらを交渉事項とするかどうかを含め、来年の第5回閣僚会議(メキシコ)に勧告を行うこととなっています。この他、林産物にも関係のあるものとしては、補助金協定の明確化等について交渉を行うルール交渉グループがあります。
 林産物に関係する三つの交渉分野のうち、非農産品市場アクセス交渉については、本年11月1日までに各国が交渉提案を提出することとなっています。

マラケッシュ協定前文(抄)
 物品及びサービスの生産及び貿易を拡大する方向に向けられるべきであることを認め、・・(中略)・・環境を保護し及び保全し並びにそのための手段を拡充することに努めつつ、持続可能な開発の目的に従って世界の資源を最も適当な形で利用することを考慮する。

WTO閣僚宣言の要旨(林野関係部分)
総則
・マラケシュ協定の原則と目的を再確認し、貿易政策の改革と自由化のプロセスを維持し、保護主義を拒否することを約束。
・持続可能な開発の重要性を確認。
非農産品市場アクセス
・非農産品市場アクセス交渉グループにおいて、林水産物の市場アクセス問題も交渉。
貿易と環境
・貿易と環境委員会特別会合において、多国間環境協定(ワシントン条約・生物多様性条約等)の貿易措置とWTOルールとの関係等について交渉。
・貿易と環境委員会通常会合において、環境措置が市場アクセスに与える影響、環境目的のラベリング要件等、貿易と環境に関する事項について議論。
ルール
・ルール交渉グループにおいて、補助金協定全体の規律の明確化。
ドーハ閣僚宣言パラ16(非農業産品市場アクセス)
 我々は、今後合意される交渉形態に従って、特に開発途上国の輸出関心品目を中心に、タリフ・ピーク、高関税及びタリフ・エスカレーションの削減又は撤廃を含めた関税及び非関税措置の削減、または適切な場合には、撤廃を目指す交渉に合意する。交渉対象品目は包括的であり、かつ、あらかじめ例外品目を設けてはならない。(後略)

【項目】
1.基本的な考え方について
 森林は、地球温暖化防止や生物多様性の維持など、地球規模の環境問題の解決・改善に不可欠であり、また、適切な管理の下で生産を実施すれば持続的な利用が可能となる再生可能な有限天然資源です。森林については、地球サミット以降、持続可能な森林経営の推進は世界的な課題となっていますが、現実には、世界の森林の面積減少・質的劣化が進行しています。
 我が国としては、世界規模の森林破壊を進行させるような貿易自由化であってはならないという基本的考えから、今次ラウンドにおいて、自由化の観点からのみ議論を行うのではなく、地球規模の環境問題や有限天然資源の持続的利用の観点に配慮し、持続可能な森林経営の推進に資する貿易ルールを確立することが必要である主張しています。
 これに対して、森林の劣化・減少と貿易は関係なく林産物貿易を自由化すべきである、あるいは、森林の劣化・減少は貿易自由化が不十分であることが原因であり、森林の劣化・減少の解決には貿易自由化が不可欠であるとの意見もあります。

※林産物交渉において、地球規模の環境問題や有限天然資源の持続的利用の観点に配慮することの是非について

2.市場アクセス
(1)関税について
 林産物の関税水準は、数次の貿易交渉等において決定され、現在、最高で10%、貿易量を勘案した貿易加重平均で約2%という低い税率となっています。
 昨年のドーハ閣僚宣言においては、「関税及び非関税措置の削減、または適切な場合には、撤廃を目指す」こととされており、今次ラウンドの非農産品市場アクセス交渉は関税の引下げを指向しています。
 我が国は、関税水準について、地球規模の環境問題の解決・改善に果たす森林の役割や、再生可能な有限天然資源であるという森林の特徴を踏まえることが必要であると考えています。
 これに対して、林産物について、早期関税引下げや関税相互撤廃(ゼロゼロ)等が必要であるとの意見もあります。

※林業・木材産業に対する支援の是非や措置のあり方など

  ○主要品目の実行関税率の推移(%)












 

品 目 名

[引下げ期間等]
 
自由化
完了時

1964年
 
ケネディ
ラウンド
1968年

1972年
東京
ラウンド
1980年

1987年
MOSS
合意
1987年

1988年
UR
合意
1995年

1999年
丸太   0   0   0   0   0
製材
 
ベイマツ等
マツ・モミ・トウヒ
  0
 10
  0
 10
  0
 10
  0
  8
  0
 4.8
合板


 
熱帯木材14種
その他熱帯木材
その他広葉樹
針葉樹
 20
 20
 20
 20
 20
 20
 20
 15
17-20
17-20
17-20
15
15-20
10-15
10-15
10-15
8.5-10
  6
  6
  6
集成材  20  20  20  15   6

(2)丸太輸出規制への対応について

 我が国は、WTO整合的な形で実施される自然環境や有限天然資源の保全を目的として採られる貿易措置については、その必要性は理解し得るものと考えています。
 しかし、一部の輸出国においては、丸太の輸出は規制されているものの、その丸太から生産される製品の輸出は規制されていません。このため、自然環境や有限天然資源の保全ではなく、国内産業の保護を目的としている可能性があります。我が国は、このような措置の是正を主張しています。
 これに対して、輸出規制の対象が丸太のみであっても十分と考える輸出国や、輸入国の関税制度(未加工品は無税で加工品が有税)に対抗する手段として丸太輸出規制が必要であるとする輸出国もあります。

※自然環境や有限天然資源の保全を目的として採られる非関税措置の是非やあり方など

  ○各国の丸太輸出規制措置








 
国  名 輸 出 規 制 の 概 要
  米  国 丸太輸出禁止(西経100度以西の連邦・州有林)
  カ ナ ダ 丸太の輸出許可制度(余剰材のみ輸出を許可)(BC州)
  N  Z 天然林に由来する丸太・製材・チップの輸出禁止
 インドネシア 丸太・チップ用丸太の輸出禁止
  マレーシア
 
小径木を除く丸太の輸出禁止(半島マレーシア)
丸太輸出に輸出枠を設定(サバ・サラワク)
  フィリピン 丸太・製材の輸出禁止
  ベトナム 天然林に由来する丸太・製材の輸出禁止

(3)輸出税について
 輸入国が物品の輸入の際に課す関税の水準については、(1)で述べたとおり、数次の貿易交渉等において決定され、現在、最高で10%、貿易量を勘案した貿易加重平均で約2%という低い税率となっています。これらの関税率は、国際的に約束したものであり、基本的には変更できません。
 しかし、輸出国が物品の輸出の際に課す輸出税については、輸出国が任意に新設・引上げを行うことが可能となっています。  我が国は、このような輸出国と輸入国の権利義務のバランスを回復すべきことを主張しています。

※輸出国と輸入国の権利義務のバランスを回復させるための方法など

    ○各国の輸出税



 
国  名 輸 出 税 の 概 要
 マ レ ー シ ア 製材1.3〜67ドル/m3,単板67ドル/m3 (半島マレーシア)
パプアニューギニア 天然丸太10〜65%
  ロ シ ア 丸太6.5%、製材・集成材10%

3.違法伐採木材の貿易の抑制について

 違法伐採は、一般的に各国の森林の利用・保全等に関する法令に違反して行われる伐採を指すもので、国によっては、生産される木材の約半分が違法なものであるとの報告もなされています。本問題については、森林破壊の一つの要因として、また、持続可能な森林経営の推進を阻害する要因として国際的に認識されてきており、国連森林フォーラム(UNFF)、持続可能な開発のための世界サミット(WSSD)準備会合、G8カナナスキス・サミット等、各種の国際会議でも議論が行われています。
 我が国は、違法伐採に対処するためには各国の国内での対策及びこれに対する支援が必要であると考えているものの、本問題の解決を模索していく上で、貿易面からの対応の可能性についても議論を深めていく必要があると主張しています。
 また、林産物に関係するラベリングについては、持続可能な森林経営の推進に資するものとして世界的に関心が高まっているところであり、違法伐採問題に対処していく観点からも、林産物のラベリング制度について議論を深める必要があると考えています。

※違法伐採問題について、WTOにおいて貿易面からの議論を行うことの是非など

○国連森林フォーラム(UNFF)閣僚レベル会合(2002年3月、ニューヨーク)


 
以下の内容を含む、WSSDに向けての閣僚メッセージを採択
・森林法規の実行、林産物の違法な国際貿易に対処する取組の実施。そのための人材育成等の国 際協力の実施。
○WSSD第4回閣僚級準備会合(2002年6月、バリ(インドネシア))



 
WSSDにおいて採択される予定である「世界実施文書」の森林関連部分に、以下の内容を盛り
込むことについて合意。
森林法規の実行
林産物の違法な国際貿易への対処
○G8サミット首脳会合(2002年6月、カナナスキス(カナダ))




 
・小泉総理から、違法伐採問題への取り組みを強調した「G8森林最終報告書」を歓迎し、その 実施も重要である旨、発言。
・森林破壊の問題について議論を行った旨を明記した議長サマリーを公表。
・木材を含む天然資源の違法な開発及び国際取引を監視し対処するためのイニシアティブを支援 する旨を明記した「アフリカ行動計画」を採択。


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