平成12年度林業白書

目  次

基本認識 −21世紀に森林を守り育てていくために− 

第T章 これまでの林政の推移と新たな基本政策の方向 

1 林業基本法が果たしてきた役割と現状

2 新たな基本政策の方向

第U章 多面的機能の発揮に向けた適切な森林の整備と保全 

1 森林資源の現状

2 森林をめぐる近年の動き

3 森林に対する要請の多様化と森林の果たす役割

4 今後の適切な森林の整備と保全に向けた取組

第V章 健全で活力のある森林の整備を担う林業及び山村の振興

1 林業経営をめぐる動き

2 生産基盤の整備の現状

3 山村の活性化に向けた総合的な取組

4 今後の林業の発展に向けた新たな取組

第W章 森林資源の循環利用を担う木材産業の振興

1 木材需給をめぐる動き

2 木材の輸入と用途別供給をめぐる動き

3 木材産業をめぐる現状

4 木材の優れた特性と地域材の利用推進

5 今後の木材産業の振興に向けた取組

第X章 「国民の森林」へ改革の歩みを進める国有林野事業

1 改革の着実な推進

2 「国民の森林」の実現に向けた取組

第Y章 森林・林業をめぐる国際的な動向と我が国の取組

1 世界の森林資源と木材貿易の現状

2 森林・林業をめぐる国際的な動向

3 持続可能な森林経営の推進に向けた我が国の貢献


基本認識 −21世紀に森林を守り育てていくために−

(森林の整備と森林資源の循環利用)

○ 21世紀に持続可能な社会を構築していく上では、健全で活力ある森林を育成するとともに、そこから生産される木材の有効利用、森林の確実な再生を繰り返す、「森林の整備と森林資源の循環利用」を推進していくことが重要である。

○ 森林に対する国民の関心や期待は、国土保全や水資源かん養はもとより、野外活動の場、自然環境の保全など多様化・高度化してきた。地球温暖化防止への期待が高まるなど、今後も一層多様化・高度化していくと考えられる。

(先人から引き継いだ森林の危機)

○ しかし、森林を守り育ててきた林業は、材価の低迷等から採算性が低下し、停滞している。小規模な森林所有者を中心に、林業への意欲や森林への関心が減退し、自分の森林の境界さえわからない森林所有者も現れている。

○ 近年では、間伐されない人工林、造林されない伐採跡地等も目立っており、このまま推移すれば、先人が守り育ててきた森林が利用されずに放置されて荒廃し、公益的機能も低下するなど、多様化・高度化する国民の要請に対応できなくなるおそれがある。

(新たな基本政策の再構築)

○ 新たな基本政策では、木材生産を中心とした従来の基本理念を転換し、森林の健全性の確保と要請への的確な対応を基本とする「持続可能な森林経営」を通じて、森林の多面的な機能を持続的に発揮させることを新たな基本理念とする必要がある。  

○ 林業・木材産業は、木材を繰り返し生産・供給するという営みを通じて、健全で活力ある森林を育てつつ、森林資源の循環利用を推進するという重要な役割を果たしており、こうした位置づけの下で振興していく必要がある。

○ また、山村は、健全で活力ある森林の整備や森林資源の循環利用を通じて国民生活の安定や向上に重要な役割を果たしており、その活性化は、山村住民だけでなく国民全体の課題である。

○ こうした考え方の下で政策を再構築し、国民の要請に応えて森林の多面的な機能を将来にわたり発揮させるとともに、環境への負荷の少ない持続可能な経済社会の形成に貢献していく必要がある。

T これまでの林政の推移と新たな基本政策の方向

1 林業基本法が果たしてきた役割と現状

(林業基本法制定の背景)

○ 昭和30年代には、高度経済成長に伴い木材需要が急速に増大したため、国有林での木材の増産、天然林の伐採と人工造林を進める拡大造林等が積極的に推進された。木材輸入は段階的に自由化された。

○ また、大都市地域への人口集中と農山村の過疎化、林業従事者の減少が進むなど、経済社会が急激に変貌し始めた。

○ 森林面積の6割を占める私有林は、所有規模が著しく零細であり、こうしたことが、林業の発展と木材供給の拡大を阻む要因の一つと考えられていた。

林業基本法が目指したもの)

○ 林業基本法に掲げられた政策目標は、経済の発展と国民生活の向上に応じて、林業の安定的な発展と林業従事者の経済的社会的な地位の向上を図ることであり、この目標達成に向けて、生産対策、構造対策、需給・流通対策、従事者対策が推進された。

林業基本法の下での施策の展開と評価)

○ 林業基本法の下で展開された施策により、森林資源の造成は大きく進展し、木材供給能力は向上した。しかし、小規模な森林所有者を中心に経営規模の拡大は進まず、小口で分散的な木材の生産構造は変わらずに残された。

○ また、少量・多品種が多段階に取引きされる国産材に対し、単純な流通経路で均質・大量に取引きされ競争力が高い外材に需要は大きくシフトした。

○ その後、木材需要は頭打ちとなり、円高等の影響も加わって木材価格は長期的に低迷するようになり、森林の所有構造と木材の生産・流通・加工構造の改善は停滞し、林業・木材産業が停滞する悪循環に陥っていった。

(今日直面している状況)

○ 森林に対する国民の関心や期待は、国土の保全、水資源のかん養のほか、自然環境・生活環境の保全、地球温暖化の防止など、多様化・高度化しており、これに的確に応えていけるような森林整備が求められている。

○ 一方、木材価格の低迷、労賃等の経費の上昇により、林業の採算性は大幅に低下を続け、20ha以上を保有する林家の年間林業所得は36万円で、家計費に占める割合も低下している。

○ このため、小規模の森林所有者を中心に、林業への意欲や関心が減退しており、今後、森林所有者の世代交代等により、整備が不十分な森林は一層増加することが心配される。

○ このような中で、旺盛な木材需要と森林所有者の活発な林業経営意欲を前提とするこれまでの政策には限界が生じており、政策の抜本的な見直しが必要となっている。

○ 持続可能な経済社会の構築が求められる中で、森林を育成しつつ木材を繰り返し生産し、無駄なく利用する「森林資源の循環利用」を進めていくことが重要であり、その推進のためには、森林所有者の自助努力はもちろん、社会全体で取組んでいくことが重要である。                                        

2 新たな基本政策の方向

(新たな政策の基本理念)

○ 新たな基本政策においては、森林の健全性と活力を維持しつつ、その保全と利用の両立を図る「持続可能な森林経営」を通じて、森林のもつ多面的機能を持続的に発揮させていくことを基本理念とする。

○ また、林業・木材産業は、森林の整備と森林資源の循環利用に重要な役割を果たしており、その健全な発展と、国民のニーズに即した木材の生産・供給と利用の促進を図っていく必要がある。

(新たな基本政策の展開方向)

○ 森林の健全性と活力を維持しつつ、国民の要請に的確に対応できるよう、森林の区分に応じた森林整備(「水土保全林」、「森林と人との共生林」、「資源の循環利用林」)、長期育成循環施業の導入、間伐の着実な実施等を推進する必要がある。

○ 林業が将来にわたり森林の整備と森林資源の循環利用を担っていけるよう、効率的・安定的に林業経営を行える担い手の育成と森林施業・経営の集約化、就業者の確保・育成等を推進する必要がある。

○ 木材産業が将来にわたり森林資源の循環利用を担っていけるよう、ニーズに応じた品質・性能の明確な木材製品の安定的な供給、流通の効率化や情報化の促進とともに、地域材の積極的な利用を推進する必要がある。

○ 山村が安全で豊かな国土の形成に引き続き重要な役割を果たしていけるよう、地域資源を活かしつつ、多様な就業機会の創出・確保、生活環境の整備、都市との交流活動の促進等を総合的に実施し山村の活性化を推進する必要がある。

(林業基本法等の見直しと新たな政策の推進)

○ 林業基本法等を見直すとともに、森林整備と森林資源の循環利用の推進のための目標を定め、施策を総合的に推進する必要がある。

U 多面的機能の発揮に向けた適切な森林の整備と保全

1 森林資源の現状

○ 我が国の森林面積は2千5百万ha。森林蓄積は38億mで、人工林を中心に 蓄積は毎年およそ8千万mずつ増加している(平成11年3月31日現在推計値)。 人工林の多くは、未だ間伐等が必要な年齢である。

2 森林をめぐる近年の動き

(森林の公益的機能の発揮に向けた取組)

○ 間伐を強力に推進するため、市町村主導による間伐の共同実施や間伐材の利用推進等を内容とする総合的な対策を推進している。

○ 災害に強い安全な国土をつくり快適な暮らしを守るため、弱者関連施設の周辺も含め、計画的な治山事業の実施や保安林の指定を推進している。

○ 松くい虫被害は引き続き予断を許さない状況にある。また、シカ等による被害が深刻な状況にある。このため、このような森林被害に対して、引き続き防除対策を推進することが必要である。

(森林整備を支援する取組)

○ 近年、下流と上流の自治体の協力による植林や間伐への支援の実施、水道料金を活用した森林整備のための基金の造成などの取組が増加している。

○ ボランティア活動への理解と環境問題への関心が高まる中で、一般市民によ る森林整備のための活動が増加している。

森林の新たな利用への取組)

○ 子どもたちの「生きる力」を育むため、林野庁と文部科学省が協力して森林体験の機会を提供する取組を推進している。今後は、体験者等の受け入れ体制の充実が必要である。

○ 幅広い国民が森林に親しめるような高齢者の利用にも配慮した歩道、休憩施設等の整備や、森林浴の医学的効果に関する研究も徐々に進展している。今後 も一層の取組の推進が重要である。

○ 里山林や都市近郊林に対しては、多様な活動を通じて森林と人との豊かな関係を回復する場として期待が増大している。今後は、森林の保全・整備・利用 を一体的に推進する参加型活動の推進が必要である。

3 森林に対する要請の多様化と森林の果たす役割

○ 森林に対する国民の要請は、時代とともに変化しながら多様化・高度化している。特に近年は、野外活動の場、自然環境の保全や地球温暖化防止への期待の高まりなど、さらに多様化・高度化する方向にある。

○ 主要な森林の公益的機能を代替法により貨幣評価すると75兆円という結果となった(平成12年 9月公表)。また、農林水産省は、農業と森林の多面的機能の評価について幅広い学術分野からの検討を日本学術会議に諮問している(平成12年12月)。

4 今後の適切な森林の整備と保全に向けた取組

○ 一体的・効率的な森林整備を推進するため、小規模な森林所有者等が安心して施業・経営を任せることができる仕組の構築や、適切な森林整備を推進するための条件整備を進めることが重要である。

○ 一定の林齢に達した人工林について、画一的に行う皆伐−新植施業を見直し、 抜き伐りを繰り返しつつ徐々に森林の世代交代を図る「長期育成循環施業」の導入とこれに対応した高密度の林道等の整備を行うとともに、間伐の着実な実施、針葉樹や広葉樹の特性を生かした森林整備を推進することが重要である。

○ 森林所有者や地域住民の要望を踏まえつつ、重視すべき機能に応じて森林を 区分し、区分にふさわしい森林整備が行われるよう、森林計画制度や森林整備 事業の見直しを行うことが必要である。

○ 森林所有者等の自助努力だけでは整備が困難な森林について、公益的機能の 発揮の要請に応じて保安林の指定、治山事業や緑資源公団による整備等公的関 与による森林整備を実施することが必要である。

○ また、「森林を社会全体で支えていく」という国民意識の醸成と森林整備への国民の参加を推進するほか、森林整備の社会的コストの負担のあり方についても幅広く検討することが重要である。

V 健全で活力ある森林の整備を担う林業及び山村の振興

1 林業経営をめぐる動き

(林産物の生産)

○ 丸太生産量は昭和42年をピークに一貫して減少している。

○ 輸入生しいたけについて、一般セーフガードにかかる政府調査が平成12年12月から行われている。

(森林所有者)

○ 我が国の森林所有者数の94%は保有面積20ha未満であり、小規模な林家を中心に林業経営意欲が減退している。一方、森林資源を活かし、創意工夫を凝らした林業経営を積極的に展開している林家や会社も存在している。

(林業事業体)

○ 素材生産や造林等を行う林業事業体は約6千であり、その64%を個人経営が占めるなど、小規模で経営基盤の弱いものが大半である。

○ こうした中で、造林・保育から素材生産までを一貫して引き受けるなど、効率的・安定的に事業を行っている林業事業体も存在している。

(森林組合)

○ 森林組合は、民有林の新植の9割、間伐の7割を実行する森林整備の中心的存在である。

○ 地域の森林整備の中核として森林組合の役割が一層重要となる中で、経営基盤強化のため、広域合併を進めている。

(林業労働)

○ 林業就業者数は7万人で減少傾向である。また、65歳以上の比率は29%であり、全産業と比較しても高齢化が顕著である。

2 生産基盤の整備の現状

(林道及び作業道の整備)

○ 林道の開設延長は12万9千kmである。林業経営の効率化や森林の適切な保全と整備を進めていくため、林道や作業道の整備は引き続き必要である。

(林業機械の整備)

○ 高性能林業機械の導入台数は2,140台である。今後、現場の地形や森林施業にきめ細かく対応できるよう、高性能林業機械の開発・実用化や複数の高性能林業機械を組み合わせた作業体系の構築を進めている。

(研究・技術開発と普及)

○ 森林のもつ多面的機能の解明、林業生産性の向上、木材の新規用途の開発等様々な研究や技術開発を進めている。今後とも、その一層の推進が必要である。

○ スギ花粉の少ない品種や、花粉生産量を予測するシステムを開発するとともに、花粉生産の抑制にも資する間伐等を進めている。

○ 普及指導事業において、林家等に対する林業指導や経営相談や林業関係学科の高校生等に対する森林・林業教育等を進めている。

3 山村の活性化に向けた総合的な取組

○ 山村は、過疎化・高齢化が著しい状況にあるが、農林産物の供給や安全な国土の形成を通じて、国民全体の安全で豊かな生活の確保に貢献している。

○ 中山間地域にあって森林と農地の混在する地域においては、林業と農業分野等と一体的に取り組んでいる。

○ 山村の住民やIターン者等の定住を促進するため、地域資源を活かした多様な就業機会の創設と確保、安全で快適な生活環境の整備、山村の魅力を活かした都市と山村の交流の促進等の施策を総合的に進めていくことが必要である。

4 今後の林業の発展に向けた新たな取組

(森林の整備と森林資源の循環利用を担う林業)

○ 林業を、健全で活力ある森林の整備と森林資源の循環利用を担う産業と位置づけ、その健全な発展に向けて取組を進めていくことが必要である。

(今後の林業の発展に向けた新たな取組)

○ 安定的・効率的に林業を営んでいける林家や林業事業体等を担い手として育成しつつ、これらの者に、自ら林業を行えない森林所有者の森林の施業・経営を集約化を進めていくことが必要である。

○ 森林組合について、森林の現況把握から施業・経営まで一貫して、継続的に実施できる地域の森林整備を担う組織として育成していくことが必要である。

○ 林業が魅力ある職場となるよう作業環境や労働条件を改善するとともに、多様なルートを通じた人材の確保や、必要な知識・技術を備えた人材の育成を進めていくことが必要である。

○ 育林や素材生産のコストを削減し、森林の整備を効率的に行えるよう、林道・作業道の整備、機械化を一層進めていくことが必要である。

○ 良質で安全な特用林産物を供給するため、生産技術の向上、低コスト安定供給体制の整備、新商品の開発等を進めていくことが必要である。

W 森林資源の循環利用を担う木材産業の振興

1 木材需給をめぐる動き

(木材需要の動向)

○ 平成11年の木材需要量(丸太換算)は、対前年比6%増の9,781万と前年よりわずかに増加したものの、2年連続して1億を下回った。

○ 平成元年に木材需要量の5割を占めていた製材用材の需要は漸減傾向にあり、近年は約4割に低下している。

(木材供給の動向)

○ 平成11年の国産材の供給量は前年に引き続き減少傾向にあり、対前年比3%減の19百万となった。これに対し、外材供給量は、対前年比9%増の79百万と増加に転じたが、平成9年の供給量を1割程度下回る水準で推移している。

2 木材の輸入と用途別供給をめぐる動き

(製材品の輸入状況)

○ 建築材としての需要が多い針葉樹製材品の輸入量は、住宅着工の減少の影響で急激に減少した平成10年に比べ増加に転じた。

○ 産地別では、米材が約6割と過半を占めるが、近年シェアが低下している。一方、平成7年には8%に過ぎなかった欧州産の針葉樹製材品は、ユーロ安を背景に価格競争力をつけ、平成12年には25%までにシェアを拡大した。

○ このような近年の木材輸入の動向にかんがみ、木材製品の輸入が国内産業に及ぼす影響等に関する情報を早期に把握できる体制整備が講じられた。

3 木材産業をめぐる現状

(住宅建築の動向)

○ 新設住宅着工戸数は、平成8年に消費税率引き上げ前の駆け込み需要等により

160万戸台に増加したが、平成10年以降は、その反動と景気の低迷により、 120万戸台で推移している。

(変化する木材製品の需要動向)

○ 住宅の品質・性能への要求が高まる中で、「建築基準法」の改正(平成10年6月)や「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の施行(平成12年4月)に伴い、木材に対する要求は、表面の見ばえが優れた製材品から、品質・性能の明確な乾燥材や集成材に急激に変化している。

(木材価格の動向)

○ 品質・性能の明確な木材製品が求められる中で、未乾燥材は平成12年1月以降大きく下落し、スギの未乾燥材と乾燥材の価格差が拡大した。

(木材産業の現状)

○ 木材需要の伸び悩みと輸入製材品のシェアの拡大及び製材品価格の低下等により、木材産業は厳しい経営状況が続いている。

○ 木材・木製品の製造業と販売業の企業倒産件数と負債額は、平成11年にはいったん減少したものの、平成12年に入ると再び増加した。

4 木材の優れた特性と地域材の利用推進

○ 木材は、断熱性、調湿性等に優れ、人の健康にも良い優れた素材。また、再生産が可能で、炭素を長期間固定し、加工に必要なエネルギーが少ないなど環境への負荷も少ない。

○ このように優れた特性をもつ木材の積極的な利用は、森林の整備や地球温暖化防止を通じて、安全で豊かな国民生活に貢献するものである。このため、住宅や公共施設への地域材の積極的な利用推進が必要である。

○ 木材の多角的な利用を推進するため、廃材等の利用促進のための体制づくりや、木材のガス化、液化等によるエネルギーとしての利用、新素材の開発等のための技術開発が必要である。

5 今後の木材産業の振興に向けた取組

○ 木材産業を優れた天然素材である木材の供給と林業の健全な発展に重要な役割担う産業と位置づけ振興することが重要となっている。

(品質・性能の確かな木材製品の低コスト供給体制の整備)

○ 地域材の利用を推進するためには、品質・性能が明確な木材製品の低コスト安定供給体制の整備を推進する必要がある。特に、乾燥施設の一層の整備促進等、乾燥材の生産供給体制が緊急に必要である。

○ さらに、生産・加工・流通にかかわる関係者間の連携強化を通じて、多様な木材製品の供給体制の整備を推進する必要がある。

(木材流通の合理化と情報化の推進)

○ 乾燥材生産の効率化のため、原木市場での含水率や強度等に応じた選別機能の強化、製品の共同出荷体制の整備や住宅建築現場への部材の直送などによる流通の合理化を推進することが必要である。

○ 品質・性能が明確な木材製品の生産を促進し、取引や物流の効率化を図るため、JAS制度を活用した品質・性能に関わる情報表示、情報技術(IT)を活用した木材取引の情報化を推進する必要がある。

X 「国民の森林」へ改革の歩みを進める国有林野事業

1 改革の着実な推進

(改革の基本的な考え方)

○ 抜本的改革の基本的な考え方は、国有林野を「国民の共通財産として、国民 参加により、国民のために」管理経営し、名実ともに「国民の森林」としてい くことである。

具体的には、

@ 公益的機能の発揮を重視した管理経営への転換

A 組織・要員の合理化、縮減による簡素で効率的な実施体制の確立

B 一般会計からの繰入れを前提とした特別会計制度への移行   

2 「国民の森林」の実現に向けた取組

(公益的機能の発揮を重視した管理経営)

○ 管理経営基本計画に基づき、「水土保全林」と「森林と人との共生林」から なる公益林の面積は全体の5割(改革前)から8割に拡大した。

○ 公益的機能を発揮させるため、育成複層林施業や長伐期施業等を推進してい る。

○ 従来からの保護林の設定に加え、森林生態系保護地域を中心として保護林間を連結しネットワークを形成する緑の回廊の設定を推進している。

(国有林野資源の有効利用)

○ 間伐材の一層の利用を推進するため、自ら実施する治山、林道等森林土木工事への活用とあわせ道路等の公共土木事業への利用を推進している。

○ 多様な森林資源を有している特性をいかして、民有林からの供給が期待しにくい、大型の公共建築物や社寺等の建築に必要な特殊な樹種や大径材の供給を 実施している。

(国民に開かれた国有林野の管理経営を目指して)

○ 管理経営基本計画と地域管理経営計画は案の段階で国民の意見を聴いた上で策定した。

○ 平成11年度の管理経営基本計画の実施状況については、法律に基づき、平成12年 9月に林政審議会の意見を聴いた上で公表した。

○ 保健・文化・教育的利用の場として国有林野をレクリエーションの森として 国民に提供している。また、森林づくりボランティア団体等に国有林野をフィ ールドとして提供するふれあいの森の設定を推進している。

○ 「森の巨人たち百選」を実施し、地域のシンボルとなるような国有林内の巨 木に対する地域住民による自主的な保護活動を推進している。

○ 森林の市、森林倶楽部、森林教室等のイベントの開催やインターネットのホ ームページを通じて、森林や林業に関する情報提供を実施している。

(簡素で効率的な管理運営体制の確立)

○ 事業実施の民間委託を推進している。伐採、人工造林、下刈の平成11年度の 民間委託による実施割合は、おおむね 8割程度である。

○ 簡素で効率的な管理運営体制の確立を目指して、職員数の適正化、組織の再 編等を推進している。

(財政の健全性の回復)

○ 借入金は、約2兆8千億円の累積債務を平成10年度に一般会計に承継したこと 等により 825億円。前年度に比べて 2,294億円の減と大幅に減少した。

Y 森林・林業をめぐる国際的な動向と我が国の取組

1 世界の森林資源と木材貿易の現状

(世界の森林の現状)

○ 世界の森林面積は34億5千万haで、陸地面積の27%を占めている。平成2年から平成7年の間に、我が国の国土の1.5倍に当たる6千万haが減少した。

(木材貿易の現状)

○ 木材の輸入額は、米国に次いで日本が多く、我が国は世界でも有数の木材輸入国である。

(木材貿易に関する動き)

○ 平成11年の第3回WTO閣僚会議では、各国間の大きな立場の違いにより、新たなラウンドの立ち上げには至らなかった。

○ WTO次期交渉に向けて、我が国は、地球規模の環境問題や資源の持続的利用、輸出入国の権利義務バランス等といった観点を踏まえ交渉する方針である。

2 森林・林業をめぐる国際的な動向

(持続可能な森林経営に向けた国際的な動向)

○ 平成12年10月の国連経済社会理事会で、国連森林フォーラムの設置が決定された。

○ 平成12年7月の九州・沖縄サミットでは、違法伐採問題が取り上げられ、G8各国がこの問題に取り組んでいく旨が表明された。我が国もG8の一員として、具体的方策について検討することとしている。

○ 我が国が参加しているモントリオール・プロセスでは、基準・指標に沿って持続可能な森林経営の進捗状況を評価するための取組が進められている。

○ 森林管理協議会(FSC)、国際標準化機構(ISO)等による持続可能な森林経営の認証・ラベリングが国際的に進展している。

○ 平成12年2月に三重県の林家、10月に高知県の森林組合がFSCの認証を取得した。

(地球温暖化防止に向けた取組)

○ 「京都議定書」において、我が国は、平成20年から平成24年の温室効果ガスの平均排出量を平成2年の水準より6%削減することを約束した。

○ 平成12年11月の第6回締約国会議(COP6)では、京都議定書の具体的な実施方法について協議が行われ、我が国や米国、カナダ等が温暖化防止にあたって吸収源活動を促進すべきであり、吸収源を制限すべきでない旨主張したが、合意には至らなかった。本年7月に再開する予定である。

○ 平成10年6月、「地球温暖化対策推進大綱」を決定するとともに、翌年4月、「地球温暖化対策推進法」を施行した。

○ 大綱を踏まえ、林野庁は、平成10年7月、「森林・林業、木材産業分野における地球温暖化対策の基本方向」を策定し、荒廃地への植林、公共施設の木造化、低コスト乾燥技術の研究開発等の取組を進めている。

3 持続可能な森林経営の推進に向けた我が国の貢献

○ 我が国は、技術協力、資金協力等の二国間協力や国際機関への資金拠出、NGO等が行う海外植林に対する技術支援等を行っている。