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九州森林管理局

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    ヤクシカ好き嫌い植物図鑑

    ヤクシカ好き嫌い植物図鑑

    ヤクシカ好き嫌い植物リストへ

    ヤクシカは昔から屋久島に生息しており、森林生態系を構成する一員でもあります。しかし、最近は生息密度の増加により、農林業地域における食害のほか、森林生態系被害も顕著となってきました。下層植生、後継稚樹や希少種の減少、消滅、シカが嫌いな植物のみが繁殖するなど、景観の激変、生態系のバランスが崩壊しています。

    さらに、下層植生の減少は、裸地化の進行と土壌流亡の引きがねとなる危険性もはらんでいます。屋久島は、その地形的要因や気象条件等から生物多様性が豊かな自然環境を有しているため、世界自然遺産地域の指定や森林生態系保護地域などが設定されています。

    屋久島の生物多様性の保全や自然環境を良好な形で維持し、遺産地域の価値を将来に引き継いでいくためには、シカの生息密度や植生の回復状況などを常にモニタリングしながら、上記のような被害を未然に防ぐ植生保護柵の設置、有害鳥獣捕獲を実施するなど順応的管理の下で適正な頭数管理に努める必要があります。

    今回作成した「ヤクシカ好き嫌い植物図鑑」は、ヤクシカが好きな植物、嫌いな植物を既存の研究成果や文献から抽出したほか各地における情報等を参考にして、現時点で判定してとりまとめたものです。

    シカの食性の柔軟さから、区分したものが地域や時間経過に伴い今の判定が分かれる可能性もあります。種数については、現時点(平成24年7月末)で好き嫌い種合計で302種(部位により区別した場合を含む)としました。今後、精度を高め、種数や区分の再検討もしていきたいと思います。

    本図鑑が、屋久島の自然環境やヤクシカの生態を理解するきっかけとなり、シカ害対策の一助となれば幸いです。


    本図鑑利用に当たっての留意点

     好き嫌い植物は、植物種の共通種も多い九州における好き嫌い区分の傾向を屋久島において、一応参考にできるだろうとの前提に立っています。
     
    しかし、ヤクシカの食性に係る知見により、柔軟に捉える必要があることとしました。これを裏付けるように、屋久島島内の地域によっても同じ食性とはならないこともあるということが分かってきています(好きな植物が減少すると、嫌いだった植物も食べるようになる)。(関連既往文献、調査結果から) 

    好き嫌い植物を判定した根拠とした引用文献は、九州局発行のシカ好き嫌い植物図鑑(平成22年)をはじめとし、主にヤクシカが好きか嫌いな植物に関して記載がある文献等を参考として整理しています。記載された嗜好性区分について、他の文献の関連記載(引用文献参照)と比較検討し、さらに現地観察結果をより確かな情報として、最終判断し、現時点での区分としてどちらかに区分しました。

    矛盾するようですが、ヤクシカの食性の柔軟性から、屋久島の中でもこの判定区分と異なる結果となる場合もあることをご承知おき下さい。(注1)
    今後、これらの知見の積み重ねにより、また、地域により判定区分が移動することも想定されるということです(忌避から嗜好への変化など)。

    また、今回のヤクシカの好き嫌い植物リストの作成に当たって、多くの研究成果(論文、著作、報告書等)を抽出・検討しましたが、その過程において、シカと採餌植物との関係(嗜好性区分)にとどまらず、シカの食圧が森林植生や森林施業に与える影響、今後の主要なテーマの一つとなるシカと食圧がもたらす生態系における生物間相互作用の問題などについて、幅広く関連性があることが分かってきました。

    これらの中には、興味深い問題を取り扱ったものも多く、シカの森林生態系の中での生物間の関係が密接であったり、他の生物が介在することにより間接的に影響し合っているなど複雑に絡んでいることが報告されています。シカに関する調査研究は、膨大で、確認した資料は一部に過ぎないと思われますが、好き嫌い植物の選定作業に際して、別途そのとりまとめを行い、これらの成果だけを見ても、今ある森林や植生がシカの採餌に伴い現在の姿となるに至った要因を推定するヒントになったり、将来の姿を予想したりすることなど今後のシカ害対策にもつながる何かしらの示唆を与えてくれるものが、多く含まれているのではないかと考えています。(注2)

    これらの紹介は、内容が膨大になることから、今回のweb版ヤクシカ好き嫌い植物図鑑('解説編)では、特に、ヤクシカの好き嫌い植物リストのとりまとめ成果を中心に紹介するにとどめ、上記の幅広い調査研究成果の紹介は省略します。

    種別の解説をした図鑑編では、下記のシカ好き嫌い植物リスト一覧に掲載した種毎にリンクを張り、1種1頁として解説し、部位別写真、区別のポイント、分布、名前の由来、葉の形態、忌避をする原因となる含有成分など参考となる情報等を簡潔に記載しました。写真は、樹形、葉、花、実、樹皮等に分けたり、類似種を掲載するなど、判別しやすいようにまとめました。

    また、掲載写真の大部分は、屋久島森林環境保全センターオリジナルの植物写真ライブラリーから引用し、所蔵にない場合は、webサイト等からの引用によったものもあります。
     
    (注1)基本的には、好きな植物は変わらないとの前提です。条件により、シカは嫌いな植物も食べるようになったり、長い年月を掛けると植物側が対抗戦略を持つように変化する場合もある。シカもさらにそれに対応するなどの変化が予想されます。上記に記載したように、嗜好性区分はそれぞれ文献により異なる判定とされた場合もあり、裏返せばこの区分は固定的に捉えられないことを意味しています(適応や共進化をしていくことが予想される)。これは、全国で見られたシカの食性の柔軟さ(可塑性がある)が、ここ屋久島でもみられるという知見が得られてきているためです。
     
    (注2)シカの食性の変化について考慮すべき要素としては、植物側の要因とヤクシカ側の要因、生物間相互作用と時間要素など多様な観点で捉えて行く必要があると考えられます。例えば、植物側の要因として、屋久島の植生の分布や種毎の特徴(繁殖力との食圧のバランス、植物形態変化や成分変化等適応(または変異)能力の有無や速度の違い)、そのバイオマス量、ヤクシカ側の特徴としてホンドシカとは違う亜種ヤクシカとしての生態的特性、生息地が異なる地域個体群の特性などを考慮する必要があり、双方の関係においては、採餌圧により変化してきた際の植生変化とシカ側の食性の変化などの観点で捉える必要があると考えられます。

      
     

    1.ヤクシカによる食害がもたらしている屋久島における生態系や環境への影響について

     
    シカ(ニホンジカ)の食性や生態、それに伴う生息地の植生に係る生態系の変化等については、これまで多くの研究や調査報告があります。

    それによれば、シカは生息域の下層植生等を継続的に採食し、生息密度が増加した場合やそれと共に下層植生の種構成、被度などが変化した場合、状況に合わせて巧みに自らの食性や生態を変え、好きな植物が減少して不嗜好植物が優占する植生に変わると、不嗜好植物も食草とし、落ち葉も含めた多様で柔軟な食性に変化するように順応し、時には、体サイズを変えたり、繁殖年齢を上げて生息数を増加させるなどの柔軟な適応能力を備えていることが解ってきています。

    ヤクシカの場合も各種調査報告、屋久島世界遺産地域科学委員会、ヤクシカWGに関連して調査されてきた成果があり、生息環境の食物資源状況に合わせて食性を変えるなど本土のニホンジカに見られる同様の現象があり、柔軟な環境適応能力があるのではないかということが解ってきました。

    屋久島は、地域によってヤクシカの生息密度が違っており(標高、地域(東北部、南部、西部)、シカ食害により本来の下層植生が消失する等生態系が変化した地域があります(遷移の進行の停滞または退行遷移、不嗜好植物の増加など)。

    ヤクシカは、島嶼域という限られた生育空間や2000m近い山岳部を有して亜熱帯性の気候から亜寒帯の気候の中で成育する植生分布を抱える生態系の中で、独自の進化を遂げてきたと考えられ、体サイズの小型化、形態の変化(本土の個体群に比べて足が短いとされる報告がある。)、さらに、過去の人間の歴史(林業、農業、狩猟などの歴史的経過)などが複雑に絡み、現在のヤクシカの生態、生息密度の増加、それに伴う植生の変化等が起こっているものと推察されます。

     

     

    ヤクシカの観察結果から分かってきた現象等について

    このヤクシカ好き嫌い植物図鑑では、本来シカが好むと考えられる植物種、本来嫌いだろうと考えられる植物種に分けて区分を試みていますが、冒頭でも触れたように、採餌圧の進行や植生の変化からシカの食性は変わっていきます。

    あるシカ生息地においてシカが最初に採食するのは、好きな種(食べやすい種、栄養価の高い種や個体)から採食し、生息密度が増加するなどにより好きな植物が減少すると徐々に嫌いな種も採食する傾向(採餌植物に変わる)にあることが、観察結果等から解ってきています。

    以下、現在分かっている観察結果や現象について、ヤクシカだけでなく全国のシカの食性傾向も含めて簡単に記載しておきます。

    シカ密度の高い地域(西部地域ほか島内各地、洞爺湖中島など(2011高橋浩史ほか、幸田氏論文等))では、落葉を主に採食し不嗜好植物も採餌するようになる。

    ヤクシカは、森林生態系における消費者の役割の外、分解者の役割(説)、また、生態系エンジニアとしての役割もあるとされる。

    サルと共生(片利共生?)をしているとの報告(サルが樹上から落とす落下物、果実類、また、サルの糞食もする)がある。

    生息密度が高い地域であっても嗜好植物とされる種が食べられずに残っている場合も観察された。落ち葉食を主とするためかは不明であるが、シカの食性は可塑性があり、落ち葉食が最終とは限らない。

    屋久島においても冬期には、雪を避け中低標高地に下りてくることも予想されるが、そこに止まりそれほど移動しないだろうとの見解もある。

    九州にはない低標高から2000m近い高標高まで連続する植生帯があり、中央山岳地も生息密度が高いとの報告もあるが(それほど多くないのではないかとの見解もあり、更に、データの蓄積が必要)、それぞれの植生域に合わせ、食性は異なることも想定される。

    テレメトリー調査から、ヤクシカの行動範囲は、本土の場合より狭い可能性があるとの報告がある(さらに、調査継続の必要がある)。従って、生活圏としては概ね1~2km程度以内の限られた行動範囲である、雌雄で傾向は異なり、雄はより広範囲に、雌はより狭い範囲で活動していそうなことが分かってきた。雌の定住性がより高い傾向がありそう。

    生息密度が高くなってきても、嗜好性植物(食物)がある地域に、シカが急激に移動することはなさそう。上記調査結果から、広範囲の移動は見られない。(ただし、オスによっては、5~8km程度時期的移動する個体はあり、今後、調査を継続する必要。)

    カシノナガクキイムシによるナラ枯れ現象は、西部地域などで観察されたことがあるが、このような樹勢の弱った樹木からは根際萌芽(ひこばえ)が生じる個体が多い。西部地域などではこの萌芽は殆どの場合、採食されている。主要樹種の稚幼樹もほとんど見られないなどから、樹体の一層の衰弱、常緑広葉樹林の更新がうまく行われない可能性がある。

    樹皮の剥被害は、荒川登山道沿い、低標高域のシカ生息地の白谷雲水峡、希少種ヤクタネゴヨウ自生地等島内各所で散見される。

    また、シカ密度が高い地域においてはアブラギリ(在来種との説もある。不嗜好種)、クワズイモ、ハスノハカズラなど不嗜好性種の拡大繁殖が島全体で散見されており、生物多様性の低下、生態系バランスの崩壊が起こっているとことも予想される。(参考文献7、25ほか)これらの実態は、屋久島のヤクシカが森林に与える影響は大きいとするに十分な結果。

    花之江河、小花之江河などの高層湿原においてホシクサ類、コケスミレ等の採食痕が見られるなど高山帯においても植生被害が深刻化している。

    また、シカ密度の高い西部地域では、林床植生が極端に貧弱で裸地化が進行しているところがある。このような箇所は、土壌流亡、崩壊の危険が高まっているとされ、全国と同じ状況が、屋久島おいても起きつつある可能性がある。(23年度ヤクシカ対策WG報告、H21年度、22年度九州森林管理局委託調査)

    愛子岳麓においては町営牧場があり、シカの生息密度が高く、食害の影響が懸念されており、愛子岳登山道沿いの世界遺産地域においては、かつて、希少植物、在来植物が見られた低標高域の下層植生への加害が目立ち、ディアラインも高標高域に上がってきたとの報告がある。

    また、現状ではシカ生息密度が少ないとされていた南部地域においても、かつて見られた希少植物が最近では、急激に、シカによる食害を受けて危機的状況になりつつある地域や種もあるとの情報もある。(平成23年度垂直分布植生調査(九州森林管理局委託調査)、平成23年度ヤクシカWG対策現地検討会、平成24年度ヤクシカWG)

    シカ食害は、希少植物種の存続の危機的状況、下層植生への顕著な影響等森林生態系(生物多様性の低下など)の攪乱をもたらし、生態系・生物多様性の劣化が進行していること。更に里地や農林業地域における農林業被害の増大を招いており、シカ被害が屋久島の森林のみならず、生活圏の耕作地を含めて島全体への影響が大きくなっていることを示唆している。

    これらの現状から、シカ被害対策はモニタリング調査による順応的管理を行いつつ、シカ防護柵、植生保護柵の設置、頭数管理等による取り組みが喫緊の課題となっている。

    参考)ニホンジカの食性は日本列島の植生の南北変異とほぼ対応しており、北部ではイネ科植物を西南部では木本植物の葉と種実類を主食とし、採食型類型は草本を主とする粗食型から木本を主とする濃厚食選択型まで可塑性に富むと考えられている。=シカの食性については日本列島の植生環境の多様性に対応して可塑性が認められる。 (野生動物の生息地管理に関する基礎的研究(矢部)北海道大学農学部 演習林研究報告)
    グリーンパワーH23年12月号森の研究寺田千里

    ヤクシカが採食する植物、採食しなかった植物

     
    (本図鑑の好き嫌い植物及び採食リストとりまとめに当たっては、本解説編の最後にまとめた出典・文献1~26等の中から出典4、7、9,14、15、16、26、好き嫌いリスト(本図鑑掲載リスト))を引用し、併せて野外での観察結果等知見からとりまとめたもので、現時点で採食した植物種を190種、不採食種31種を挙げています。

     その後、本図鑑の作成と並行して取り組まれていた「平成23年度野生鳥獣との共存に向けた生息環境等整備調査(屋久島地域)報告書」九州森林管理局(以下、共存報告書という)があり、同報告書の各種調査の中でヤクシカの好き嫌い植物図鑑リストも別途整理されていて、平成23年度末のほぼ同時期に調査結果がとりまとめられたところです。(以下、報告書図鑑または共存報告書という)。

    この種の調査結果は、言うまでもなく利便性を高めることや今後の調査研究に有効に活かしていけるよう知見の蓄積が重要であり、本図鑑と報告書図鑑とを統合したもので、関係者等に供した方がより有益と考えられましたので、カテゴリー統合を行い、一括整理することとしました。

    報告書図鑑リストから新たに追加し盛り込んだ結果、現時点で採食した植物種は、268種(左側)、不採食植物は60種となりました(報告書とりまとめ前のバージョン(以下、プレリスト)で、食べる(好き)、食べない(不嗜好)等合計224種がリストアップされており、これらを新たに追加検討したもの)。

    なお、追加したリストのうち、不採食植物は、便宜上「食べないがまれに食べる例もある」と区分された種55種から整理し、採食植物はそれ以外の全ての種を含めました。)

    左欄の採食した植物には、今後シカの食性変化、知見の追加により、右側の不採食植物等から新たに追加されることも想定されます。

     報告書図鑑でのリストは、好き嫌いの区分ではなく、採食するかしないかの区分であるため、厳密には同じではありません。また、便宜上「食べる」を「嗜好=好き」に「食べないが稀に食べる例もある」を「不嗜好=嫌い」に区分したものです。出典16では、ヤクタネゴヨウ、スギ、シロダモ、ヒメシャラ、フカノキは、枝葉以外の被害記録であるが、採食するに含め、ヤクタネゴヨウとスギは、本出典の調査結果とは別に実際の屋久島での観察結果から枝葉も採食することを確認しています。


    全出典を反映した採食植物一覧 不採食植物種
    Calex sp. Dryopteris sp. Gramineae sp. アセビ
    アオガシ(ホソバタブ) アオキ アオスゲ アラカシ
    アオツリバナ アオノクマタケラン アオバノキ イワヒバ属 Seraginella sp.
    アオモジ アカガシ(萌芽、成葉) アカシデ ウマノアシガタ
    アカメガシワ アコウ(果実、成葉) アザミ ウラジロフジウツギ
    アツイタ アズキナシ アデク エダウチホングウシダ
    アブラギリ アマクサギ アラゲキクラゲ オキナワシタキソウ(オキナワシタキヅル)
    アリドオシ イイギリ イシカグマ オニヤブマオ
    イズセンリョウ イスノキ(稚樹、成葉) イソヤマアオキ(コウシュウウヤク) カエデドコロ
    イタドリ イヌガシ イヌザンショウ カゴノキ
    イヌツゲ イヌビワ イノデ カミヤツデ
    イワガラミ ウスバクジャク ウドカズラ カラムシ
    ウバユリ ウラジロ ウラジロエノキ(萌芽、成葉、果実) キジノオシダ
    ウラジロガシ(萌芽、成葉) ウラジロマタタビ ウリハダカエデ キジョラン
    エゴノキ オオイタビ オオイワヒトデ キダチチョウセンアサガオ
    大型ディプラジウム(ヘラシダ属) オオカナワラビ(=ヤクカナワラビ?) オオゴカヨウオウレン キツネノボタン
    オオタニワタリ オオバギボウシ オオムラサキシキブ キリシマテンナンショウ
    オオヤマレンゲ オガタマノキ オニタビラコ コウヤノコケシノブ
    オニヤブソテツ カギカズラ カクレミノ コチヂミザサ
    カゴメラン ガジュマル カタバミ サツキ
    カツモウイノデ カナクギノキ カラスキバサンキライ サネカズラ
    カラスザンショウ カンコノキ ガンゼキラン シマサクラガンピ
    カンツワブキ カンラン キキョウラン シャクナンガンピ
    ギシギシ キノボリシダ キミズ シュスラン属 Goodyera sp.
    キランソウ クズ クスノキ シラタマカズラ
    クチナシ クマノミズキ(ミズキ) クロガネモチ スジヒトツバ
    クロキ クロバイ クロマツ センニンソウ
    クワズイモ ケイビラン ケウバメガシ(萌芽、成葉)  
    コオニユリ コガクウツギ(=ヤクシマガクウツギ?) コケミズ ツチトリモチ
    コシダ コショウノキ コハウチワカエデ ツボクサ(類似腫のチドメグサは食草)
    コハシゴシダ コバノイシカグマ コバノカナワラビ ツルアリドオシ
    コバノクロヅル コバンモチ コミヤマカタバミ ツルグミ
    コムラサキ コンロンカ サカキ ツルコウジ
    サカキカズラ サクラツツジ サクララン ツルホラゴケ
    サザンカ サツマイナモリ サツマサンキライ ツルモウリンカ
    サツマノギク サルトリイバラ サンカクヅル ツルリンドウ
    サンキライ サンゴジュ サンショウ テイカカズラ
    サンショウソウ シキミ シシアクチ トキワガキ
    シシンラン シマイズセンリョウ シマサルスベリ ナンゴクウラシマソウ
    シマサルナシ シマモクセイ(ナタオレノキ) ジャゴケ ニガカシュウ
    シャシャンボ シャリンバイ シュンラン ヌルデ
    シライトソウ シラタマカズラ シロダモ ノアサガオ
    シロヤマシダ類 スギ ススキ ハシカンボク
    スダジイ ゼンマイ センリョウ ハシゴシダ
    ソヨゴ タイミンタチバナ タカサゴキジノオ ヒトツバ
    タカサゴシダ タブノキ タマシダ ヒメイタビ(他地域では食草)
    タラノキ タンナサワフタギ チケイラン フデリンドウ
    チチコグサ ツガ ツクシイヌツゲ(イヌツゲ変種) フトモモ
    ツゲ ツゲモチ ツタ フモトシダ
    ツルアジサイ ツルソバ ツルラン ヘクソカズラ
    ツワブキ テッポウユリ テリハノイバラ ヘラシダ
    トキワガキ トクサラン トベラ ホソバコケシノブ
    ナギ ナギラン ナチシダ ホラシノブ
    ナナカマド ナワシロイチゴ ナンバンキブシ マメヅタ
    ネズミモチ ノギラン ノシラン ミソナオシ
    ノビル ノリウツギ ハイノキ ミヤマウズラ
    バクチノキ ハスノハカズラ ハゼノキ ヤクシマサルスベリ
    ハチジョウシダ ハドノキ ハナイカダ ヤブコウジ
    ハナガサノキ ハマクサギ ハマサルトリイバラ ヤマハゼ
    ハマセンダン ハマニンドウ ハマヒサカキ ユノミネシダ
    ハマビワ ハマユウ バライチゴ リュウキュウマメガキ
    ハリギリ バリバリノキ ヒイラギ  
    ヒサカキ ヒノキ ヒメカカラ  
    ヒメシャラ ヒメヒサカキ ヒメユズリハ  
    ビャクシン ヒロハノコギリシダ ヒロハノミミズバイ(オニクロキ)  
    フウトウカズラ フカノキ フユイチゴ  
    ヘゴ ヘツカシダ ベニシダ  
    ホウロクイチゴ(新芽・新葉、成葉) ホソバカナワラビ ボチョウジ(リュウキュウアオキ)  
    ホルトカズラ ホルトノキ マツバラン  
    マテバシイ(萌芽、成葉) マムシグサ マルバニッケイ  
    マンリョウ ミカン類 ミズキ(クマノミズキ)  
    ミミズバイ ミヤマシキミ ミヤマノコギリシダ  
    ミョウガ ムベ メギ  
    モウソウチク モクタチバナ モチノキ  
    モッコク モミ モロコシソウ  
    ヤクザサ(ヤクシマダケ) ヤクシマアザミ ヤクシマアジサイ  
    ヤクシマオナガカエデ ヤクシマカラスザンショウ ヤクシマキイチゴ  
    ヤクシマシャクナゲ ヤクシマノギク ヤクシマバライチゴ(芽)  
    ヤクシマヒメバライチゴ ヤクシマヒヨドリ ヤクシマフヨウ  
    ヤクシマヤマツツジ ヤクシマラン ヤクタネゴヨウ  
    ヤダケ ヤナギイチゴ ヤブガラシ  
    ヤブカンゾウ ヤブツバキ(リンゴツバキ) ヤブニッケイ  
    ヤブラン ヤマグルマ ヤマグワ  
    ヤマザクラ ヤマノイモ ヤマヒハツ  
    ヤマビワ ヤマモガシ ヤマモモ(萌芽、成葉)  
    ユウコクラン ユズリハ ヨゴレイタチシダ  
    リュウキュウイチゴ リュウキュウチク リュウキュウテイカカズラ  
    リュウキュウバライチゴ(=オオバライチゴ?) リュウキュウマメガキ リュウキュウルリミノキ  
    リュウビンタイ リョウブ ルリミノキ  
    ワラビ      
        計268種 計60種
     
    注)本図鑑と報告書図鑑では、調査手法や区分したカテゴリーが異なっています。本図鑑のカテゴリー区分は、好き、中間、嫌い(嗜好、中庸、不嗜好)の3区分ですが、後者では、次の4カテゴリーに区分されています。「好きな植物」、「食べる」、「好きではないが食べる」、「食べないがまれに食べる例もある」の4区分です。本図鑑との違いを見ると、報告書図鑑プレリストでは、特に、草本植物、希少植物等のリストが多く掲載されていること。

    本図鑑では、既往の文献から抽出した屋久島における好き嫌い植物リストにおける区分の比較検討作業及び現地における検証等を加味し、種別にはシダ植物がやや多目にリストアップされています。それぞれでカバーした種が共通種とは別に異なった種も多かったため、重複を除いて合計した総種数は当初のリストより増加しました。 また、本図鑑の好き、嫌いの区分に合わせるため、便宜上、本図鑑の3区分を、報告書図鑑区分のうち、「好きな植物」、「食べる」の2カテゴリーを「好きな植物」に、「好きではないが食べる」を「中間種」に、「食べないがまれに食べる例もある」を「嫌いな種」にそれぞれカテゴリー統合することとしました。

     さらに、共通して掲載した種について、当初区分された結果を見ると概ね合致する部分も多かったのですが、種によっては区分が異なるものも複数存在しており、本図鑑の解説編の随所で触れたようにシカの生息密度の違い、個体群の差などにより柔軟な食性を示している結果で(それぞれの研究・観察のとりまとめでの判断が異なった)と考えるべきと思われました。この場合は、本図鑑での区分を優先して採用することとし、その違いについては、備考欄で記載することとしました。新区分リストについては、次章「2  ヤクシカ好き嫌い植物リスト(図鑑掲載種)」各出典からの取り纏めに反映しました。


    2 .ヤクシカ好き嫌い植物リスト(図鑑掲載種)

     
     各出典の取り纏めで同種の植物であっても、部位が違う場合は区別して掲載したものもあります。   本図鑑とりまとめに当たって収集整理し、掲載した種は、好きな植物種62種、中間種14種、嫌いな植物種91種、総計167種となりました。

     これに加え、「平成23年度野生鳥獣との共存に向けた生息環境等整備調査(屋久島地域)報告書」のシカ好き嫌い植物図鑑リストがとりまとめられていたため、リスト再編統合することとしました。経緯及び本図鑑中の取り扱いについては、前章で既述した。

     本図鑑では、報告書図鑑リストとの重複を除き、合算反映した結果、好き嫌い植物リストは、下記一覧のとおりとなった。 なお、報告書図鑑リストのうち、本図鑑の3区分は、好きとした植物は、「好き」及び「食べる」の区分135種を、「好きではないが食べる」34種を中間種に、「食べないが、まれに食べる例もある」55種を嫌いな種に区分した。

     その結果、好きな植物143種、中間種31種、嫌いな植物128種の合計302種となった。後者のリストから引用した種は、出典に★印を付けている(共存報告書との区分が違う場合は、本図鑑の区分リストを採用したため出典に含めなかった)。

      本図鑑との共通種については、図鑑編に種別の解説ページがあるが、出典が報告書図鑑のリスト単独の場合は、現時点で分冊の図鑑編には掲載していない。 (当初の好き嫌い植物図鑑では、取り上げていなかったものは便宜上、「屋久島の植物」で掲載している植物写真または保全センターライブラリーに画像がある種から引用した。解説リンクまたは画像掲載種合計260種)
     
      
    ヤクシカ好き嫌い植物リスト 
    分類 種名 好/嫌 備考 出典
     シダ アツイタ 好き  
     シダ イノデ 好き   1
     シダ ウスバクジャク 好き   3
     シダ オオイワヒトデ 好き   12
     シダ オオタニワタリ 好き シカ低密度地域の南部で採餌痕を確認、沖縄では山菜利用。 4,★
     シダ キノボリシダ 好き   15
     シダ シロヤマシダ類 好き   3,12,15
     シダ ゼンマイ 好き   1
     シダ ヒロハノコギリシダ 好き   5
     シダ ヘゴ 好き  
     シダ ヘツカシダ 好き   3,5
     シダ リュウビンタイ 好き   3,5,★
     シダ ワラビ 好き 有毒:プタキロサイド、アノイリナーゼ,屋久島の高密度地域で食べてないところも。 1
     シダ アオスゲ 好き   14
     草本 アオノクマタケラン 好き   15,★
     草本 アザミ 好き  
     草本 イタドリ 好き シュウ酸 1
     草本 ウバユリ 好き   1,★
     草本 オオバギボウシ 好き 山菜
     草本 オニタビラコ 好き   14
     草本 カゴメラン 好き   14
     草本 カタバミ 好き   14,★
     草本 ガンゼキラン 好き  
     草本 カンツワブキ 好き  
     草本 カンラン 好き  
     草本 キキョウラン 好き  
     草本 ギシギシ 好き  
     草本 キランソウ 好き  
     草本 クズ 好き  
     草本 ケイビラン 好き  
     草本 コオニユリ 好き  
     草本 コケミズ 好き  
     草本 コミヤマカタバミ 好き  
     草本 サクララン 好き 共存報告書では嫌い 14
     草本 サツマイナモリ 好き   12,★
     草本 サツマノギク 好き  
     草本 シシンラン 好き  
     草本 シュンラン 好き  
     草本 チケイラン 好き 西部 14
     草本 ツルソバ 好き  
     草本 ツルラン類 好き   15,★
     草本 ツワブキ 好き 西部、山菜 14,★
     草本 テッポウユリ 好き  
     草本 ナギラン 好き  
     草本 ノギラン 好き  
     草本 ノビル 好き 山菜
     草本 ハマユウ 好き  
     草本 ミョウガ 好き 山菜、薬味
     草本 モウソウチク 好き 山菜
     草本 ヤクシマアザミ 好き  
     草本 ヤクシマダケ 好き  
     草本 ヤクシマノギク 好き  
     草本 ヤクシマヒヨドリ 好き  
     草本 ヤクシマラン 好き  
     草本 ヤダケ 好き  
     草本 ヤブガラシ 好き  
     草本 ヤブカンゾウ 好き  
     草本 ヤブラン 好き  
     草本 ヤマノイモ 好き 山菜
     草本 リュウキュウチク 好き

     

     木本 アオキ 好き   1,★
     木本 アオモジ 好き  
     木本 アカガシ(萌芽) 好き 共存報告書部位の区別無し 14
     木本 アカメガシワ 好き 奈良公園で嗜好種
     木本 アコウ(果実) 好き 共存報告書部位の区別無し 5
     木本 アズキナシ 好き  
     木本 イスノキ(稚樹) 好き 共存報告書部位の区別無し 14
     木本 イヌガシ 好き 西部、 15では好き、九州では嫌いなものとなっている 1,9,14,15,★
     木本 イヌザンショウ 好き  
     木本 イヌビワ 好き   1,14,★
     木本 ウバメガシ(萌芽) 好き 共存報告書部位の区別無し 14
     木本 ウラジロエノキ(葉,果実) 好き 北限種、南西諸島では餌木に使用。パイオニアプランツ。 5
     木本 ウラジロガシ(萌芽,成葉) 好き 共存報告書及び9では部位区別なし、シカWGでは中 2,9,14
     木本 ウラジロマタタビ 好き  
     木本 ウリハダカエデ 好き  
     木本 オオムラサキシキブ 好き  
     木本 オオヤマレンゲ 好き  
     木本 カギカズラ 好き  
     木本 ガジュマル 好き  
     木本 カラスザンショウ 好き 物理的防衛種であるが、嗜好植物の代表であり、密度増加地域では、急速に減少する。一方、稚樹は、高密度地域でも林床の各所に残っているのを確認している。(食べ尽くさない) 1,15,★
     木本 カラスキバサンキライ 好き  
     木本 クマノミズキ 好き  
     木本 クロガネモチ 好き  
     木本 コバノクロヅル 好き   1
     木本 サカキカズラ 好き 共存報告書では嫌い。 15
     木本 サツマサンキライ 好き トゲ
     木本 サルトリイバラ 好き トゲ
     木本 サンキライ 好き サルトリイバラ類の総称、トゲ、鹿児島ではカカラとも言い、この葉でよもぎ餅を包む。 15,★
     木本 サンゴジュ 好き 西部地域 14
     木本 サンショウ 好き トゲ
     木本 シマイズセンリョウ 好き  
     木本 シマサルナシ 好き  
     木本 シマモクセイ(ナタオレノキ) 好き  
     木本 シャリンバイ 好き 西部地域 14,★
     木本 スギ(新葉) 好き 各地での観察例によれば稚幼樹の新芽を採餌し、盆栽状になることも。人工林幼令林、天然下種更新に影響を与える。成葉はトゲ(物理的防衛)があるため嫌いと思われる。 4,7,15,16,26,★
     木本 スダジイ 好き 14では萌芽,9,15では区別なし 9,14,15,★
     木本 ソヨゴ 好き 有毒、四国の魚梁瀬では,植栽樹種の杉を食べ周囲にあるソヨゴへの被害は全くなかった。 2,★
     木本 タイミンタチバナ 好き 匂い。西部で,中から嫌が好きに。モクタチバナもタイミンタチバナも嫌いとする文献あり、タイミンタチバナを嗜好性とする場合もある。屋久島ではどちらも採食し、タイミンタチバナをより好む。 9,14,17,19,★
     木本 タブノキ 好き   9,★
     木本 タラノキ 好き トゲ、山菜
     木本 タンナサワフタギ 好き  
     木本 ツクシイヌツゲ 好き  
     木本 テリハノイバラ 好き  
     木本 トベラ 好き  
     木本 ナナカマド 好き  
     木本 ナンバンキブシ 好き  
     木本 ネズミモチ 好き  
     木本 ノリウツギ 好き   1,★
     木本 ハドノキ 好き 嗜好植物の代表だが、日持ちしない。 12,★
     木本 ハナイカダ 好き   1,観察、野宮他
     木本 ハマクサギ 好き   1,★
     木本 ハマセンダン 好き  
     木本 ハマビワ 好き  
     木本 ハリギリ 好き トゲ、別名:ミヤコダラ、センノキ
     木本 ヒイラギ 好き  トゲ
     木本 ヒノキ 好き  
     木本 ビャクシン 好き リンクはツクシビャクシン
     木本 フウトウカズラ 好き 共存報告書では嫌い 12
     木本 ホウロクイチゴ(新芽・新葉) 好き 幹にトゲがあり、成葉と周りのトゲは堅いので、成葉は、食べられずに残る。共存報告書では中。 4,7,15
     木本 ホソバタブ 好き  
     木本 ボチョウジ(リュウキュウアオキ) 好き 嗜好種の代表であるが、西部地域では、シカに容易に食べられる位置にありながら,林床の各所残っていることを確認している。 9,15,★
     木本 マテバシイ(萌芽) 好き 9,15では区別なし。成葉は中間。堅果は人も食す。 9,14,15,★
     木本 マルバニッケイ 好き  
     木本 ミカン類 好き 葉を好むが、はく皮剥害も顕著。
     木本 ミズキ(クマノミズキ) 好き   3,5
     木本 メギ 好き トゲ、材にベルベリン
     木本 モチノキ 好き  
     木本 モミ 好き  
     木本 ヤクシマアジサイ 好き 西部ほか 3,5,9,14,15,★
     木本 ヤクシマオナガカエデ 好き  
     木本 ヤクシマキイチゴ 好き  
     木本 ヤクシマダケ(ヤクザサ) 好き   7
     木本 ヤクシマヒメバライチゴ 好き  
     木本 ヤナギイチゴ 好き  
     木本 ヤマグルマ 好き   10,16,26,観察,★
     木本 ヤマザクラ 好き  
     木本 ヤマヒハツ 好き   9
     木本 ヤマビワ 好き  
     木本 ヤマモモ(萌芽) 好き 西部、樹皮、成葉はタンニン。 14
     木本 リュウキュウルリミノキ 好き 9では中 3,5,9,15
     木本 リョウブ 好き 山菜 1,★
     木本 ルリミノキ 好き   3,5,15,★
      好きな植物種計 143種    
     シダ コバノカナワラビ   3
     シダ ホソバカナワラビ 出典は,シカWG報告から,環境省報告書「平成17年度屋久島における生物多様性の維持機構の保全に関する研究」では,嫌いなものに分類 2,5,12,14
     シダ ミヤマノコギリシダ  
     シダ ヤクカナワラビ 3では中 3,14
     シダ ヨゴレイタチシダ 西部 14,★
     草本 サンショウソウ  
     草本 シライトソウ  
     草本 トクサラン  
     草本 ユウコクラン  
     木本 アオガシ(ホソバタブ) 西部,9では好き 9,14
     木本 イスノキ(成葉) 稚樹は好き 9,14
     木本 イソヤマアオキ(コウシュウウヤク)  
     木本 ウドカズラ  
     木本 オオバライチゴ  
     木本 カンコノキ 採餌圧が激しい箇所では、トゲより葉が縮小化して対抗。
     木本 コバンモチ 本種は、基本的に不嗜好性と判断したが、宮之浦地区では、採餌しており、実績がある。区分としては中に分類する(生息密度増加=嗜好種減少の結果とも考えられる)。 共存報告書では好き。地域によっては好んで食べる。 4,26,高槻,☆
     木本 サカキ 共存報告書、西部では好き 9
     木本 サクラツツジ 共存報告書では嫌い。西部では嫌から好き 9,14
     木本 トキワガキ   9
     木本 ナギ  
     木本 ナワシロイチゴ  
     木本 ハマヒサカキ  
     木本 バリバリノキ 共存報告書は好き、西部 14
     木本 ヒメカカラ トゲ
     木本 ヒロハノミミズバイ(オニクロキ)  
     木本 ホルトノキ  
     木本 マテバシイ(成葉) 西部で好むに。萌芽は採餌。 9
     木本 モッコク  
     木本 ヤクシマバライチゴ(芽)  
     木本 ヤブニッケイ 高密度では,中から好へ変化,15は好き,共存報告書では中 9,15,★
     木本 ヤマモガシ   9
      中程度の植物計 31種    
     シダ イワヒバ属(Seraginella sp.) 嫌い   4,☆
     シダ イワヒメワラビ 嫌い   1
     シダ ウラジロ 嫌い 15では,好きとされる(若葉ではないか) 1,3,5,15
     シダ エダウチホングウシダ 嫌い   4,☆
     シダ オオバノハチジョウシダ 嫌い   1
     シダ オニヤブソテツ 嫌い 西部 14
     シダ カツモウイノデ 嫌い 共存報告書では中 3
     シダ キジノオシダ 嫌い   4,☆
     シダ コウヤコケシノブ 嫌い   4,☆
     シダ コシダ 嫌い   5,12,14
     シダ コバノイシカグマ 嫌い   1
     シダ スジヒトツバ 嫌い  
     シダ タマシダ 嫌い 共存報告書では好き 5,12
     シダ ツルホラゴケ 嫌い   4,☆
     シダ ナチシダ 嫌い   1,★
     シダ ハシゴシダ 嫌い   4,☆
     シダ ヒカゲノカズラ 嫌い   1
     シダ ヒトツバ 嫌い   4,14,☆
     シダ フモトシダ 嫌い   4,☆
     シダ ヘラシダ 嫌い   4,★,☆
     シダ ホソバコケシノブ 嫌い   4,☆
     シダ ホラシノブ 嫌い   4,☆
     シダ マメヅタ 嫌い   4,☆
     シダ マンネンスギ 嫌い   1
     シダ ユノミネシダ 嫌い  
     草本 イラクサ 嫌い トゲ(トゲが少なければ採餌する) 1
     草本 ウマノアシガタ 嫌い  
     草本 オキナワシタキソウ(オキナワシタキヅル) 嫌い  
     草本 オニヤブマオ 嫌い  
     草本 カエデドコロ 嫌い   4,☆
     草本 カラムシ 嫌い   4,☆
     草本 キジョラン 嫌い   1,4,★,☆
     草本 キダチチョウセンアサガオ 嫌い アルカロイド(スコポラミンほか)
     草本 キツネノボタン 嫌い  
     草本 キリシマテンナンショウ 嫌い  
     草本 クワズイモ 嫌い 有毒:シュウ酸カルシュウム。西部地域では、枯れて黄色く変色した葉を食べている例があった、生葉は基本的に食べないが、生葉の採餌が観察されたとの報告が最近あった。 3,5,14,★
     草本 コアカソ 嫌い   1
     草本 コチヂミザサ 嫌い   4,☆
     草本 シュスラン属(Goodyera sp.) 嫌い   4,☆
     草本 ススキ 嫌い 地域によっては採餌する 1
     草本 センニンソウ 嫌い  
     草本 タケニグサ 嫌い 有毒:プロトピン、サンギナリン、ヘレリトリン(アルカロイド) 1
     草本 ダンドボロギク 嫌い   1
     草本 ツチトリモチ 嫌い  
     草本 ツボクサ 嫌い   4,☆
     草本 ツルモウリンカ 嫌い  
     草本 ツルリンドウ 嫌い  
     草本 ナガバヤブマオ 嫌い   1
     草本 ナンゴクウラシマソウ 嫌い  
     草本 ニガカシュウ 嫌い   4,☆
     草本 ノアサガオ 嫌い  
     草本 フタリシズカ 嫌い  
     草本 フデリンドウ 嫌い  
     草本 ヘクソカズラ 嫌い   4,☆
     草本 マムシグサ 嫌い 有毒:シュウ酸カルシュウムの針状結晶、サポニン、九州局発行「シカ好き嫌い植物図鑑」では好きとなっているが白谷雲水峡など各所での食痕は無い、屋久島では不嗜好性の可能性がある。共存報告書でも嫌いに区分。 1,★
     草本 ミヤマウズラ 嫌い   4,★,☆
     草本 メドハギ 嫌い   1
     草本 モロコシソウ 嫌い  
     木本 アオバノキ 嫌い  
     木本 アカガシ(成葉) 嫌い   2
     木本 アカメガシワ 嫌い 葉にタンニンを含む。春日山原始林の調査では、採餌率が高かった報告がある。(春日山はすでに高密度になったためとも考えられる。)。共存報告書では好き 4,23,☆
     木本 アセビ 嫌い 有毒:アセボトキシン 1,4,★,☆
     木本 アデク 嫌い 共存報告書では中、9では中から好き 1,9
     木本 アブラギリ 嫌い 有毒:脂肪油、エレオステアリン酸、食べるとの情報があるが,まれ。好んで食べない。エサ植物にもならない。むしろ嫌いな植物と見られる。 4,15,26,★
     木本 アラカシ 嫌い   4,☆
     木本 アリドオシ 嫌い トゲあり、林道端などで、盆栽状になったものがよく観察される。西部では,採餌種になる。共存報告書では中。 3,9,14
     木本 イズセンリョウ 嫌い   1,9
     木本 イワガラミ 嫌い   1
     木本 ウラジロフジウツギ 嫌い 西部 14,★
     木本 エゴノキ 嫌い  
     木本 カクレミノ 嫌い 樹皮に傷を付け、出る樹液は、黄漆に使われるという。
    地域によっては食べる。
    1,4,☆
     木本 カゴノキ 嫌い   1,4,☆
     木本 カミヤツデ 嫌い  
     木本 クサギ(アマクサギ) 嫌い 匂い成分。共存報告書は(アマクサギ)中 1
     木本 クスノキ 嫌い 匂い成分。葉に樟脳(カンファー)を含む。 1
     木本 クロキ 嫌い 共存報告書では、好き 1,14
     木本 クロバイ 嫌い 共存報告書では好き、9では中 4,9,14
     木本 コショウノキ 嫌い   1,★
     木本 サザンカ 嫌い 共存報告書では中 12,14
     木本 サツキ 嫌い  
     木本 サネカズラ 嫌い   4,☆
     木本 シキミ 嫌い 有毒:アニザチン、イリシン、ハナノミン。高密度地域等では,食べる場合あり。共存報告書では中 1,14
     木本 シマサクラガンピ 嫌い  
     木本 シャクナンガンピ 嫌い  
     木本 ジャケツイバラ 嫌い トゲ(物理的防衛種)がある。 1
     木本 シャシャンボ 嫌い   1,★
     木本 シラタマカズラ 嫌い 共存報告書では中 4,☆
     木本 シロダモ 嫌い 匂い成分。共存報告書では中、9では中 1,9
     木本 センダン 嫌い 西部地域において,台風後に落下した葉は,他の枝はよく食べるものが多かったが,本種の枝は全く食べなかった。有毒:葉にタンニン。 12,観察
     木本 センリョウ 嫌い 共存報告書では中 14
     木本 ツゲ 嫌い  
     木本 ツガ 嫌い 共存報告書は好き 4,☆
     木本 ツルアジサイ 嫌い 共存報告書は好き 1
     木本 ツルアリドオシ 嫌い  
     木本 ツルグミ 嫌い   4,☆
     木本 ツルコウジ 嫌い   4,★,☆
     木本 テイカカズラ 嫌い 有毒:トラチェロシド、トラヘロサイド((茎、葉、汁液) 4,★,☆
     木本 トキワガキ 嫌い  
     木本 ヌルデ 嫌い  
     木本 ハイノキ 嫌い 匂い成分。共存報告書では中 14,19
     木本 ハシカンボク 嫌い  
     木本 ハスノハカズラ 嫌い シカ密度が高い箇所の至る所で本種が不嗜好種として繁茂しているのが散見される。西部地域、牧場等。 14,★
     木本 ハゼノキ 嫌い 有毒:ウルシオール、ラッコール 4,☆
     木本 ハナガサノキ 嫌い  
     木本 ヒサカキ 嫌い 共存報告書、西部,9では中 9,12,14
     木本 ヒメイタビ(葉、果実) 嫌い   4,5
     木本 ヒメシャラ 嫌い 1では、好きとされたが、屋久島では嫌いと思われる。四国の三本杭では、高率で樹皮の剥皮が起こっている。共存報告書では好き 4,19,☆
     木本 ヒメヒサカキ 嫌い 共存報告書では中 14
     木本 ヒメユズリハ 嫌い 有毒(ダフニフリン)、本種はユズリハより嗜好性順位が高いとの報告があるが、好んで食べられておらず、ユズリハとともに不嗜好性植物に分類。宮之浦林道では、成葉に採食痕あり。共存報告書では中。 4
     木本 フカノキ 嫌い 共存報告書では好き、地域によっては食べる。 4,☆
     木本 フトモモ 嫌い  
     木本 ホウロクイチゴ(成葉) 嫌い トゲ、西部林道沿いにおいては,新芽・新葉は,かなりの割合でよく採食しているのが確認され,種の存続,後継樹の育成に懸念を示すとの意見もあった。(シカWG)、共存報告書では中。 1,12
     木本 マテバシイ(果実) 嫌い ただし,萌芽はよく採食する。萌芽採食で樹木衰弱、結果として森林の更新へ影響懸念。 5
     木本 マンリョウ 嫌い   1,★
     木本 ミソナオシ 嫌い  
     木本 ミミズバイ 嫌い 共存報告書では好き 14
     木本 ミヤマシキミ 嫌い 有毒:スキミアニン、スキミン(アルカロイド)。 1
     木本 モクタチバナ 嫌い 屋久島ではタイミンタチバナもモクタチバナもどちらも採食するが、モクタチバナは、不嗜好性。共存報告書では好き 3,4,5,9,
    14,17,19
     木本 ヤクシマサルスベリ 嫌い   4,☆
     木本 ヤクシマシャクナゲ 嫌い  
     木本 ヤクタネゴヨウ 嫌い 船行森林事務所管内の採種林・見本林の稚樹は食べた形跡あり、また、DBH10cm程度の小径木は角研ぎをする(白谷展示林),共存報告書では好き。 14
     木本 ヤブコウジ 嫌い  
     木本 ヤブツバキ(リンゴツバキ) 嫌い 九州では,好きな樹木となっている。9では中。共存報告書では中。 1,9,14,
     木本 ヤマハゼ 嫌い  
     木本 ヤマモモ 嫌い タンニン
     木本 ユズリハ 嫌い 近縁種のヒメユズリハの項参照。 1,★
     木本 リュウキュウイチゴ 嫌い 共存報告書では好き 12
     木本 リュウキュウマメガキ 嫌い  
      嫌いな植物計 128種    
      総計 302種 同種でも別部位は1項目(種)として区分した  
     
    注)上記好き嫌い植物のリストでは、シカの食性が多様なため、同一種の植物種部位を違えて掲載されている場合があります。たとえば、ホウロクイチゴ(新葉か成葉か)、マテバシイ(萌芽か、果実か、成葉か)などであり、これは、シカの食性が、現地植生の状況に応じて柔軟に食性を変えることができる多様な食性を有しているためであり、シカの適応能力の高さや一概に種だけ(種の個体全体を指して)で好き、嫌いを区別できない場合があることを示す一例と言えます。基本的には、忌避成分の有無や食べにくいか、食べやすいかなどの要因で左右されていると考えられます(注2で後述)。

    文献15のデータは、他の報告書等に照らして、合致するものが多いため、嗜好性値がカラスザンショウ以上の値を示しているものを暫定的に嗜好性が高いとして掲載しています。ただし、バライチゴについては、他の報告で、近縁のイチゴ類であるリュウキュウイチゴ、ホウロクイチゴ等で嫌いな部類に分けているので不掲載としました。   ☆印は、今回とりまとめた好き嫌い植物図鑑の出典文献から判定した採食・不採食植物リストのうち不採食とした植物を嫌いな植物に区分したものです。

    注2)シカの嫌いな植物は、物理的防衛と化学的防衛(植食者への植物側の防衛策の事例としては、このほか生物的防衛もあることが知られていますが、シカではまだ不明)を行うことが知られており、備考で記載した解説でトゲがあるものは、物理的防御であり、(恐らくは厚いクチクラ層を持つ種は堅くて食べづらいことも含まれるかもしれない)、匂いがしたり、不味いもの、有毒成分があるものや消化しにくいものなどは採餌を避ける傾向にある(食べない)ので化学的防御です。(ただし、消化しにくいものであっても、シカの方で繁殖年齢を上げるなどの対策を取る場合があり、結果として生息密度は増えていくこともあるらしい。)

    例えば、ヤブツバキ(リンゴツバキ、ツバキ)は、九州では好きな植物として分類されていますが、化学的防御の類に入れられ(高槻1989、同2006 出典21)、クチクラ層の発達した堅い葉でもあります。屋久島では嫌いな植物に分類される。同じ種でも柔らかい時期(新葉)に良質の餌資源として利用される場合など、不嗜好種とされる種でも時期により摂食する可能性があります。同様に嫌いとされるヒメユズリハも屋久島の宮之浦林道において、成葉で採餌されている例がありました。

    食べる場合でも、好きで食べる場合と嫌いでも食べざるを得ない場合(高密度化や冬季の積雪などにより、餌資源が限定されてきた場合など)があり、好きか嫌いかの判定は、採餌する種とは区別する必要があります。   また、西部地域ではシカ生息密度が極めて高い地域として知られますが、嗜好性が高いと思われるボチョウジの個体が葉や実を付けたまま林床の各所に残っていたり、他の高密度地域でカラスザンショウの稚樹が残されているような事例を観察しており、好きな種、個体群全てを食べ尽くすというわけでもありません。これがシカ側の理由か、植物側の理由かは、今のところわかりません。

    植物側におけるシカの食害防護策

     
    宮城県牡鹿半島の先500mの海上に金華山島がある。ここに生息するニホンジカと植生との関係から植物のシカ食害防衛策についてまとめられている(高槻2006、出典21)。金華山は、本土から離れた島のためシカの集団が隔離されて生息している。ここのシカは、洞爺湖の中島に生息するエゾシカ同様、限られた島の狭い面積の中で生息していることから、同じような現象が現れている。すなわち、シカの生息数の高密度化が進行し、高密度化時に見られる不嗜好植物の増加、シカの体サイズの小型化などの特徴的状況が確認されている。

    金華山島には、600種の植物相(フローラ)が確認されているが、島で目に付く植物は限られ、その量的あり方に特徴がある。シカに好まれる植物がほとんど見られず、逆に、嫌いなる植物が多い。嫌いなグループは、下記の2グループに分けられるとしている。ヤクシカ好き嫌い植物図鑑リストでは、シカが嫌う(忌避する)植物種のうち、嫌いな原因となると思われる含有化学成分、物理防衛が分かったものについて記載しています。

    1  植物体内に特殊な物質を含んでシカの採食を防いでいるもの (化学的防衛植物)

    (不味い、いやな匂いを出す、消化出来ない物質、毒を含むもの) ハンゴンソウ(タンニンを含み消化が妨げとなる)、ワラビ(有毒)、イワヒメワラビ、レモンエゴマ、クリンソウ(有毒)ミミガタテンナンショウ、ウラシマソウ、ベニバナヤマシャクヤク、ナギナタコウジュ、メハジキ、ヒトリシズカ、フタリシズカ、カリガネソウ(不快な匂い)、ヤマゴボウ等
     

    2  植物の器官を特殊化(トゲなど)し、防いでいるもの(物理的防衛植物)

     
    サンショウ、メギ、ニガイチゴ、キンカアザミ(ダキバヒメアザミの変種とされるが、それよりもトゲがより鋭く、長くなっている)このようなシカの採食に対する防衛で更に特殊化、進化する時間は100年から数百年と推定される。(同様の例で、本文内で取り上げた論文の中に奈良のイラクサが他地域の刺毛より刺毛密度、刺毛数ともに多い例を既述した。)   

    高槻は(本出典21)、シカの好きな植物、嫌いな植物を固定的に考えると事実を見誤る恐れを指摘している。シカの食性は、季節ごとに変動すること。メギに守られたヤマカモジグサは、トゲの傘下で守られるため食べられず、草丈を長くして生存できた。これを「植物防衛ギルド」の概念として紹介し、共進化の考え方の重要性を指摘している。生物は、食べる、食べられる関係において、それぞれの戦略を有し、共進化の中で多様な生活形を獲得していくという生物の多様性、複雑さを考慮した観察を提言している。

     注)屋久島においては、フタリシズカは、縄文杉周辺の植生調査で年を経て徐々に採食された例があります。クワズイモ(シュウ酸カルシュームの結晶があって食べないものとされる)も枯れた葉は、食べるようになることが観察されています(最近、生葉を食べる目撃例も情報された)。

    ホウロクイチゴは、トゲもあり嫌いな種とされますが、高密度地域(西部地域など)では、トゲの木化で守られる成葉を除いて、若い芽や葉は食べられています。硬い葉のツバキなどは、化学成分によるとされるとともに、上記の2の物理的防衛例として葉が堅いこと自体も物理的防衛の不食種の可能性があります。屋久島での化学的、物理的防衛植物種(推定)は、ヤクシカ好き嫌い植物リストの備考欄に一部記載している。

     注)本解説の冒頭でも記したが、シカの柔軟な食性については、各所で触れているところであり、シカは嗜好植物をのみを食べるというより、嗜好植物の採食によりそれ自体が減少してくれば結果的に不嗜好種が増加してきて、やむを得ず不嗜好種も食草とし、生息場所の植生の変化に応じて、エサ種を柔軟に変えていると推定され、その時点での食草に嗜好性があるとも言えるのではないかと考える(食性の可塑性があるという)。

    従って、高槻が指摘するとおりシカが食べる植物が好きか嫌いかの判断はその時点地域での大まかな区分であって、固定的にとらえるのは避けた方がよい。  シカは嫌いなものを食べる場合があること。また、その生息地において主たる餌食物がある場合には、好きな植物であっても生息域内にある全個体を食べない場合もあると推定される(西部地域のシカは、落ち葉食が主であるが、特に好きな部類と思われるボチョウジも容易に採食できる場所にそれがあっても、同地域で健全個体がある程度(少数ではない)残っていることを確認している)。

    これについては関連を後に述べる。従って、好き嫌いの区分は、シカの環境適応能力の高さや生態の多様性の一面をとらえた嗜好性区分とも理解できるのではないかと思う。

    また、植物も長期間の採食圧がかかることによって、植物の器官の形態変化(トゲの形態を更に大きくすることを遺伝的に固定化する場合もある)をもたらしたり、化学成分(忌避成分や天敵の誘引物質など)の生産による防衛戦略を備えるようになる場合があるとされている。

    例えば、屋久島においても、タイミンタチバナは、採食を受けると根萌芽を良く生産し、高採食圧下でも良く生残できるとの報告(幸田2008)がある。   (この場合は遺伝的な形態変異と言うより、植物の特性として生活形を変えたものと捉えた方がよいだろう。前述の金華山のヤマカモジグサに似た現象。)

     観察した事例であるが、スギやサツキ類、アリドオシの矮性化、側溝や谷間で成育するハドノキの個体は、シカの口の届く範囲付近の葉は繰り返しの採食により矮小化し、その届かない範囲は、普通の大きさの葉を残して生育しているなどの形態変化がよく観察できる。スギやアリドオシの例は、その生き残り戦略と言えるかもしれない。

    また、本文の論文紹介の中でボチョウジは、採餌の程度によって3集団が存在し、被食が全くない枝、被食が低程度、被食が高程度の3集団があるとの報告(2010野邊ほか)があり、このうち中程度以上の集団の展葉速度は3集団の中で最も盛んに行われるなど、植物側の柔軟な適応事例も見られる。これについても生物の相互作用の中で生じた共進化の過程、生物多様性の事例として捉えることも出来、その意味で高槻のいう提言を理解できるのではないか。

    あとがきに代えて

    最後に,屋久島のシカ被害と屋久島の森林の将来について、最近気になることを記しておきたい。

    これまで屋久島の森を見て感じたことや、ヤクシカの好き・嫌い植物図鑑の作成に当たって、多くの研究成果に触れて最近思うことがある。それは、屋久島の森林の将来、屋久島の森林に生息する生物の生物間相互作用の研究解明が、急務と思うことだ。

    シカ害の問題は、本解説編の「はじめに」で触れたように、近年では全国的な広がりと同様、屋久島でもヤクシカによる食害が、問題となっていることは、各所で触れてきたとおりである。

    島内各所では、生息密度の違いは認められるものの中央部奥岳、東北部、西部地域、最近では集落の直ぐ近くまで現れるなど全島的に生息数の拡大とともに、食害その他の被害、影響が広がりつつある。

    屋久島の中でヤクシカの生息密度が最も高いとされる代表的地域が、西部地域である。いくつかの生息密度調査結果から、㎢当たり100頭かそれ以上の頭数が生息しているのではないかとされている。

    本土におけるシカ害発生密度は、㎢当たり5頭程度以上からとも言われる中で、ヤクシカが本土のものより小さいことを差し引いてもその影響は想像がつく。通称西部林道と称する県道が島の海岸部の上に位置して鬱蒼とした常緑広葉樹林の森林の中を貫いており、ここを通過すれば、誰でも群れをなしたシカとサルに遭遇する。

    訪れた観光客は、これを見るために立ち止まり写真を撮っている。それほど、生息密度が高いということだ。しかし、一度、森林に目をやると各地のシカ害のない健全な常緑広葉樹林を見たことがある人なら、その景観の異変に驚くと思う。林床の下層植生が貧弱で、見通しのよい歩きやすい景観が各所に続いていたり、植生があっても不嗜好植物が優占していたりする。これは、若い林の遷移の過程だとの説もあるが、果たしてそうだろうか。

    西部地域のヤクシカは、主に落葉食であるとする報告があり、その気になってじっくり観察していれば、見ることができる。100mから300mを通る県道付近は、特に、シカ密度が高密度であり、実生や低木に対して高い食圧がかかっていることは、林床状況を見て凡そ察しが付く。

    野生生物は、したたかに生きているものが多いが、ヤクシカも不嗜好植物の毒を無毒化したり、低栄養でも生き残る個体が生まれてくるかも知れない。(既に、そうなっているかもしれない。)それに対抗し或いは共存してきた屋久島の生物たちの進化や適応が、将来も見られるようになるのかもしれない。

    さらに、この森林の樹木に目を向けてみる。この中には、樹幹の途中から焦げ茶色や黒っぽい樹液を流している個体が林内各地に散見される。これは、カシノナガキクイムシ(略称、カシナガ)という甲虫が、屋久島の常緑広葉樹林の主要樹種となっているブナ科のシイ、カシ類に穿孔加害しているもので、全国でも特に日本海側を中心に多く発生して、近年では太平洋側にも見られるようになってきたナラ枯れという樹木の病害である。

    ナラ枯れは、このカシナガという昆虫とナラ菌という糸状菌(菌類)が相互にブナ科樹木にアタックして、樹木の水分通導機能を阻害して起こるとされており、激しい場合は、枯死に至ることもある複合的樹木病害である。ちなみに、平成22年度には、ナラ枯れにより赤くなって枯れた個体が西部地域周辺で見られたが、翌年には終息した※。
     
    屋久島のブナ科樹木は、ナラ類はなく、マテバシイ、スダジイ、ウバメガシ、アカガシなどが主である。幸い、このナラ枯れは屋久島においては、在来のものであったと推定されており、枯死に至る例は、それほど多くないことが、最近分かってきた。これは、この地域の樹種がナラ類のような枯死率の高い樹種ではなかったことも要因と推定されている。

    しかし、私は最近のシカ食害の拡大は、これと関連して森林にとって重大な問題となっているのではないかと危惧している。樹木は、枯死に至らずとも衰弱すると根株付近からよく萌芽を発生させることがあり、その枝葉により光合成を行い樹体に必要な不足したエネルギーを補給しようとする。※※

    そのことを証明するように、カシナガに入られ感染した樹木は、ことごとく萌芽を発生させている個体が多い(ここ数年の屋久島におけるナラ枯れ調査で明らかになってきた)。ところが、ここ西部地域はシカの生息数増加・高密度化により、この萌芽がきれいに食べ尽くされ、出た先から加害されているのである(シカ被害写真参照)。自ら再生、回復しようとしている樹木だが、シカの萌芽刈込み(食害)は、なけなしの貯金で得た稼ぎ手をシカに奪われているようなものだろう。

    この2重のダメージにより、樹体内の貯蔵エネルギーが徐々に消費され、萌芽力も衰え衰弱し、ついには枯れていくかナラ枯れ等病害虫への抵抗力が無くなることも想定される。枯れて倒木となった跡は,ギャップとなり光環境が良くなり、続いて、埋土種子や周辺樹木からの種子供給により、一斉に稚樹が発芽してくることは予想できる。しかし、シカ食害により、本来の植生遷移に移行するには至らないこともまた、予想できる。

    想像したくないが、それらの主要樹種が抜けた後の、屋久島の森林は、どのようになるのだろうか。代替植生としてシカの不嗜好植物のみの単純な森林となってしまうのだろうか。多くの生態系の生物を支えていたフードチェーンが寸断され、生物多様性が低下し、落ち葉と不嗜好種のみで生活するシカが生息する偏った森林が現実のものとなるかも知れない。

    空いた空間には、不嗜好種のシダ類、ハスノハカズラ、クワズイモ等が繁茂し、高木種としては島内全域の開放地に拡がりつつあるアブラギリ、在来陽樹で同じくシカが食べないセンダンなどの林が広がり始め、続いてシキミ、アセビ、ハイノキ、ユズリハ、イスノキ、リンゴツバキなどの限られたシカ不嗜好樹種が台頭してくるのかも知れない。

    解説編で紹介した記載の中に、シカ食害がある土壌は、土壌構造や土壌動物の変化をもたらすとの報告もあった。シカと植生間の問題ばかりでなく、相互に関連した環境や生物への影響が指摘されている。シカ害が行き着いた森林?、そんな森林が果たして森林として必要な機能を発揮してくれるだろうか。

    カシナガのアタックだけなら個体の抵抗力で何とか対応できたかもしれない。シカの継続的食圧によって起こる様々な生物間相互作用が、屋久島の森林にどんな影響をもたらすのか、現段階では予想がつかない。あらゆる研究分野の研究者が多角的に且つ、連携して解明していく必要があるだろう。

    全国のシカ激害地では、森林の裸地化、土砂崩壊の危機に瀕している箇所が、現実に多く存在する。屋久島の森林が、そのような危機的な状況にならないことを祈る。

     
     
    (※平成22年に被害が目立ったのは、屋久島での気象データの平年と被害が目立った年の平成22年を比較してみた。その結果、月別降水量の変動が平成22年で大きく、特に、カシノナガキクイムシが樹木を加害する夏期の7月から9月のうち、梅雨期を含めた夏期の6月から9月の気候に注目すると気候因子の変動が平年に比べ大きかったこと、すなわち、梅雨期の平年の雨量よりも極端に多かった多雨の月(6月7日月)から、8月以降には一転して高温・小雨の月となったことすなわち例年より気温と降水量の気候的変動幅が大きかったことがある。これに水分通道組織を加害するカシノナガキクイムシの加害との相乗効果で,加害樹種のブナ科樹種の中でも抵抗性の高い方のブナ科樹種(マテバシイ、ウバメガシ等)であっても、樹体への過剰な水分ストレスに耐えきれなかったことが枯死に至った要因と推定される)

    (※※常緑広葉樹林の更新は、本来、ギャップにおける実生や埋土種子が発芽、成長して行われるものであり、萌芽更新は、薪炭材や椎茸原木のクヌギ、コナラ等で行われる人工更新方法の一つであるが、ここで現れた萌芽は、樹勢回復のための樹木自身の防衛反応としてのヒコバエ、ヤゴと言われる根際萌芽の可能性が高く、本来の天然林の主たる更新の姿ではないことに留意。)
                                                                                                                          
     
     

    出典・参考文献

     
      1  九州森林管理局「シカの好き嫌い植物図鑑」2010年
      2  「平成22年度屋久島世界遺産地域科学委員会ヤクシカ・ワーキンググループ報告書」
      3  「平成17年度屋久島における生物多様性の維持機構の保全に関する研究」環境省自然環境局
      4  「平成20年度自然環境保全基礎調査種の多様性調査(鹿児島県)報告書」環境省自然環境局生物多様性セン
    ター  2009年3月
      5  「屋久島フィールドワーク講座植物班報告書(HP版)」
      6  「屋久島フィールドワーク講座報告書五回、六回」紙報告書形式のもの
      7  「季刊生命の島新連載やくしかノート」 揚妻直樹 しゃいんあやか 物語風にアレンジしてあるが、食性等の
    記載がある。
      8  「持続的森林利用オプションの評価と将来像」研究会報告  「屋久島/照葉樹林の構造とヤクシカの生態」 (揚
    妻直樹、揚妻芳美、辻野亮、日野貴文氏)(KKRホテルびわこ)での発表論文
      9  Is deer herbivory directly proportional to deer popuulation density? Comparison of deer feeding
    frequencies among six forests  withdifferent deer densityRyosuke Koda ,Novoru Fujita  Forest Ecology
    and Management 262     (2011)432-439 (投稿中)  シカの生息密度と採食圧は比例するのか?
     10 ヤクスギ(縄文杉等)におけるモニタリングの概要(平成19年度) 屋久島生態系モニタリング調査:九州
    森林管理局[平成20年3月] 
     11 ヤクシカ個体群管理における'原生性'の問題(ヤクシカWGプレゼン資料、日本生態学会大会論文)立澤史郎
    (北海道大学) 
     12 西部林道でのシカ防護柵設置後2年間の植生の変化  鹿児島県立埋蔵文化財センター  寺田仁志  屋久島まるご
    と保全協会
     13 屋久島野生植物目録  1992  濱田英昭編者  初島住彦監修       日本高速印刷株
     14 平成21年度屋久島森林生態系の垂直分布調査報告書  九州森林管理    局2010年3月 
     15 シカの嗜好性解析と植生管理による被害軽減の可能性(屋久島全域の低地のおける2011年のシカによる被食
    圧分布日本生態学会口頭発表資料より)  小池文人  横浜国大  2011年6月
     16 平成21年度野生鳥獣との共存に向けた生息環境等整備調査(屋久島地域)報告書
     17 森林技術誌2009年5月号シカが森林生態系に及ぼす影響  第120回日本森林学会大会(2009.4)  テーマ別シン
    ポジウム
    (同シンポジウム発表課題より、藤木大介氏によるまとめ)
     18 日本生態学会全国大会(2007~2011)第54、55、56、57、58回大会発表要旨集(要約)
     19 日本哺乳類学会大会(2009-2011)発表要旨集(要約)
     20 日本森林学会大会(日本林学会大会)、日本森林学会誌、日本生態学会大会、環境科学会誌の1980-2011ま
    での前記出典引用以外の論文要旨
     21 シカの生態誌  高槻成紀  2010年9月  東京大学出版会
     22 自分で採れる薬になる植物図鑑  増田和夫監修  2006年11月  柏書房
     23 毒草100種の見分け方  中井将善  2000年4月  金園社
     24 世界遺産をシカが喰うシカと森の生態学  湯本貴和・松田裕之編      2006年6月  文一総合出版
     25 平成22年度屋久島森林生態系保護地域におけるナラ枯れ被害等影響調査業務報告書  九州森林管理局
     26 世界遺産屋久島大澤雅彦他編集  2006年10月  朝倉書店  
     
      第3部 第1章 屋久島の動物と生態  1ヤクシカの生態と食性   第2節白谷雲水峡のヤクシカの食性(市川聡)




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