ホーム > 生物の多様性の保全 > 九州国有林の取組


ここから本文です。

 

九州国有林の生物多様性保全への取組

 森林全体の生物多様性が向上するように、森林計画制度に基づき、森林の特徴等に応じ、原生的な天然林や遺伝資源等の保護を行うとともに、極力、林齢、樹種等が異なる広葉樹林、針葉樹林、針葉樹と広葉樹の混交林、人工林等がバランスよく配置されるよう取り組みます。その際、林分配置等の多様化を推進するための多様度指数等の指標を用いて、生物多様性を定量的にチェックしながらその向上に取り組んで行くこととします。

 人工林においては、間伐等による下層植生の導入、広葉樹との混交、長伐期化等を推進し、生物多様性の向上に取り組みます。  

 

主な取組事項

・世界自然遺産や我が国を代表する森林の保護

・遺伝資源の保全

・希少動物の保護管理

・人工林の適切な整備

・森林を結びつけるネットワークの形成・充実

・原生的な森林(照葉樹林)の再生・復元)

・シカ被害対策(植生等の保護とシカ個体数の調整)

・自然災害からの再生

・計画の実行と見直し

 

 

 世界自然遺産や我が国を代表する森林の保護 

 我が国を代表する原生的な自然や主要な森林生態系の保護、特徴ある森林など貴重な生物が多数生息・生育する地域を重点的に守るための取組を行っています。

保護林制度について

 国有林において、貴重な森林を保護するための制度です。国立公園や自然遺産よりも早い大正時代につくられ、九州各地に95カ所5万4千ha、全国では843カ所78万2千haの保護林が設定されています。               

 保護林には、その目的により、森林生態系保護地域、森林生物遺伝資源保存林、林木遺伝資源保存林、植物群落保護林、特定動物生息地保護林、特定地理等保護林、郷土の森の7種類があります。

 

→保護林制度について詳しくはこちら

 

 

 


 

屋久島世界自然遺産 (森林生態系保護地域)

 

樹齢数千年のヤクスギ林や海岸から山頂に沿って多様な森林が垂直に分布するという世界でも珍しい自然環境が広がっています。 

屋久島垂直分布

紀元杉

標高差に富んだ屋久島の地形

紀元杉

 

 

厳正な保護を図る仕組み

厳正な保護

保護林(森林生態系保護地域)では、厳正に守るべき地区を「保存地区」(コア)とし、その周囲に開発・利用圧力を軽減する緩衝区として「保全利用地区」(バッファー)を設定しています。これによって原生自然と人間の生活空間が近距離にあっても、保護を図ることができます。このような仕組みは世界遺産でも現在導入が検討されている先進的な制度です。

 

→屋久島の森林について詳しくはこちら

 


 

  祖母山・傾山・大崩山 (森林生態系保護地域)

 標高1,300mから1,700mの急峻な山々が連なった深い渓谷を持つ山岳地帯に位置します。典型的な森林の垂直分布が見られ、尾根や谷には土地的極相をを示す森林が見られます。 林内には特別天然記念物であるニホンカモシカ、ヤマネ等多くの哺乳類、鳥類が生息

祖母山

大崩山

 


 

英彦山・鶯(植物群落保護林)

 北九州で他に類をみないモミ、スギ、ブナ、ケヤキなどの優良な植物群落が形成されている針広混交天然林

英彦山・鶯植物群落保護林

英彦山・鶯植物群落保護林内のスギ林

 


 

 霧島山(森林生物遺伝資源保存林)

 霧島山の噴火後数千から数万年を経て形成された生態系、固有の生物や遺伝子を生きたまま守るため多様な森林生態系とともに一体的に保存 

霧島山森林生物遺伝資源保存林

霧島山森林生物遺伝資源保存林

 

ページトップへ

遺伝資源の保全 

 同じ生物種であっても個体ごとの特徴は様々です。生物種を守る取組とは別に、病気に強い、成長が早い、南限・北限に位置する個体等様々な特徴を持った個体とその遺伝子を生きたまま守ります。 

 

多様な遺伝子の保全

国有林では、広範囲に分布する種をそれぞれの地域で保護することで、各地の遺伝的多様性を保全しています。

 例えば、ブナは分布域によって葉の大きさなど異なる形質を持ちますが、全国各地に保護林を設けることで、それぞれの遺伝資源を保護しています。九州では、ブナの南限域に近い鹿児島県紫尾山を保護林(林木遺伝資源保存林)に指定し、ブナを含む森林を保護しています。

 

 

ブナ

 

 ブナの林木遺伝資源保存林

 

 


 

 

巨樹巨木の選定

 

 国有林内に生存する巨樹巨木から全国で100本の「森の巨人」たちが選定されています。九州では19本が選ばれています。
 福岡県糟屋郡新宮町・久山町の立花山(標高367m)には樹齢300年以上と言われる「立花山の大クス」が生育します。周辺一帯は保護林(林木遺伝資源保存林)に指定されており、北限ともいわれるクスノキ群生地とともに、樹木の遺伝子を生きたまま保存しています。

 

→森の巨人たち百選についてはこちら

立花山の大クス

 

立花山の大クス

 

ページトップへ

 

   希少動物の保護管理 

 ツシマヤマネコやアマミノクロウサギなどの希少動物の保護管理を行っています。

 九州では、国内希少野生動植物種に指定されている以下のほ乳類、鳥類や昆虫など11種類の動物について、種の生息地の保護、生息・採餌環境の整備、生息数の調査・モニタリング等を実施しています。

 

ほ乳類(3種)

ツシマヤマネコ、アマミノクロウサギ、イリオモテヤマネコ

鳥類(6種)

オーストンオオアカゲラ、オオトラツグミ、アマミヤマシギ、カンムリワシ、ノグチゲラ、ヤンバルクイナ

昆虫類(2種)

ゴイシツバメシジミ、ヤンバルテナガコガネ

 

ツシマヤマネコ

シシンラン 

ゴイシツバメシジミ

ツシマヤマネコの個体増加のため、間伐を行い餌となるアカネズミを増やしたり、水飲み場を造るなど生息環境を整備しています。

絶滅危惧種であるゴイシツバメシジミ(蝶:写真右)の餌となるシシンラン(写真左)を増殖しています。(市房山周辺(特定動物生息地保護林))

 

→希少野生生物の保護管理について詳細はこちら

 

 人工林の適切な整備 

 人工林の整備は、生活に必要な木材資源の供給、二酸化炭素吸収による温暖化防止その他公益的機能の発揮のために必要不可欠ですが、生物多様性保全の観点からも間伐や路網の整備の推進の他、複層林化、針葉樹と広葉樹との混交林化、長伐期施業など高度な森林施業、保護樹帯の設置等に取り組みます。
 また、かつて薪炭林等として利用されてきた広葉樹二次林については、多様な林齢等からなる森林の配置によって生物多様性を向上させる観点からも、資源の有効利用を推進していくこととします。 

 

間伐

混交林

長伐期

間伐すると森が明るくなり、下層植生が生育し、生物多様性が向上

広葉樹を導入すること(針広混交林化)により、植生が豊富になり、生物の多様性が向上

長伐期、複層林化することにより、森林が多段構造となり、広葉樹の導入も進みやすいことから、生物多様性が向上

 


 

コラム:人工林だってすごい

 人工林の豊かな生物多様性

 適切に間伐が行われ、下層植生が茂った人工林では、昆虫などの種数が増加し、生物多様性が豊かになることが知られています。

 ただし、放置すれば再び多様性は低下してしまうことから、林業活動などを通じた継続的な管理が必要です。

 間伐などが適切に行われているスギの人工林は、ブナを主体とする天然林の1.7倍の二酸化炭素を吸収し、地球温暖化防止に貢献しています。

二酸化炭素吸収量

ページトップへ

 

森林を結びつけるネットワークの形成・充実 

緑の回廊

 希少な生物の移動経路を確保し、離れた保護林どうしを結ぶことで生物の生息・生育地の拡大と相互交流を促すため、「緑の回廊」を設定しています。 

 

緑の回廊

緑の回廊イメージ図

九州森林管理局では宮崎県綾川上流と鹿児島県大隅半島に設定しています。

→九州森林管理局における「緑の回廊」について詳しくはこちら

 

 


きめ細かなネットワークの形成 ・充実

 渓流沿いや尾根筋の森林は、野生生物の移動経路や種子の供給源として、人工林の針広混交林化や広葉樹林化に取り組み、きめ細かなネットワークの形成・充実に努めます。この際、今後、多様度指数等の指標を用い、より定量的に多様性をチェックしながら、この向上に努めることとします。  

人工林と保護樹帯

人工林と保護樹帯のイメージ図

保護樹帯

人工林に隣接する保護樹帯

渓流沿いの森林

渓流沿いの森林

 

ページトップへ

 

原生的な森林の再生・復元 

大規模な照葉樹林の復元

 シイ、カシ、タブノキの仲間の樹木を中心とした「照葉樹林」(常緑広葉樹林)は、人工林化が進む中で大規模にまとまったものが少なくなりました。

 宮崎県綾町には日本最大規模の照葉樹林があります。この照葉樹林を保護するとともに、50〜100年の長い時間をかけて、周辺の人工林を照葉樹林に誘導する取組「綾の照葉樹林プロジェクト」を地元自治体、てるはの森の会、日本自然保護協会等とともに進めています。

 

綾の照葉樹林

綾の照葉樹林

復元イメージ

照葉樹復元過程のイメージ

 綾の照葉樹林プロジェクト

綾の照葉樹林プロジェクトでは、他の地域の樹木の遺伝子が混ざらないよう、スギ・ヒノキの間伐を行い綾の照葉樹の自然な発芽を促しながら、50〜100年の長い時間をかけて広い照葉樹の森を復元していきます。

 

→綾の照葉樹林プロジェクトについて詳しくはこちら 

ページトップへ

シカ被害への対応 

 シカが増え過ぎると自然には回復できないほど植生が食べ尽くされてしまいます。
 九州森林管理局では、これまで植栽木や植生の保護のためのシカ侵入防止ネットの設置を行ってきましたが、シカによ生物多様性や農林業への被害の大きさに鑑み、シカの個体数調整のためのシカの効果的、効率的な捕獲技術の開発等に取り組んでいます。

 

主な取組項目

 ○シカ被害の把握と対応策の検討

 ○ネットによる植生、造林地の保護

 ○シカの効果的、効率的捕獲技術の開発

 ○シカの捕獲

 

鹿ネット

シカの食害を防ぐためのネット

ネットの内外で植生の状態がはっきりと分かれる

造林地のシカネット

造林地のシカネット

→九州森林管理局のシカ被害対策への取組状況について詳しくはこちら

 

ページトップへ

 

 自然災害からの再生 

 台風などの自然災害は必ずしも生物多様性を脅かすものではありませんが、被害(噴火や山腹崩壊等)を受けた場合は、少しでも早く植生が回復するよう、山崩れ防止や緑化などの治山工事を行います。

 治山工事の実施に当たっては、その土地本来の樹種を中心とした植生の回復、魚類の移動確保や渓畔林の整備・保全等生物多様性に配慮した取り組みを進めています。

山地災害

植生回復

鹿児島県鹿屋市高隈山における山地災害の発生状況

治山工事施工後の植生回復状況

ページトップへ

 

計画の実行と見直し 

 自然界の食物連鎖や共生関係などについて人間が把握しているのはその一部です。不測の事態が発生しても次の計画で改善できるよう様々なチェックを行いながら森林の生物多様性の保全を進めていきます。

PDCAサイクルによる実施

 事業を実施いていく中で判明した課題に対してその都度適切に計画を修正していく「順応的管理」の考え方に基づき取組を推進します。

 事業を実施するだけでなく、実施後にはその結果を評価し、その後の課題やより効果的な手法について検討し、それを次の計画に生かしています。

pdca

 


 

モニタリングや巡視によるチェック

 モニタリング・巡視等を通じて、野生動植物の生息状況の調査や保護管理対策の検討などを行っています。調査の結果は次期の管理計画などに反映していきます。

巡視

有識者や地元とも協力しながら

モニタリング調査を実施

 

 


 

科学的視点からの検討

 事業を適切に推進するため、保護林モニタリング調査評価委員会や科学委員会(屋久島)から、科学的な助言を受けながら行っています。 

会議

屋久島世界遺産地域科学委員会

ヤクシカWG

→屋久島世界遺産地位科学委員会について詳しくはこちら

 

ページトップへ

お問い合わせ先

計画部指導普及課指導普及課01 
担当者:保護林係
代表:096-328-3500(内線408)
ダイヤルイン:096-328-3593
FAX:096-326-7062

森林管理局の案内

リンク集