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更新日:2012年11月19日

担当:指導普及課

准フォレスター研修資料室

研修は幾つかの講義・演習・実習等で構成され、それぞれの到達目標やねらいを受講生に理解してもらいつつ、講義等のポイントを明確にして実施されています。

講義等のねらいや講義等の状況について、平成24年度に実施された研修をご紹介します。

あわせて、研修に使用した講義資料などについてもご覧下さい。

※ タイトルをクリックすると、それぞれの講義状況や講義資料などを見ることが可能です。

 

 

   

 

森林・林業再生プランの概要/フォレスターの役割、プランナーとの連携   

この講義等では、森林・林業再生プランの概要及びその実行に向けた国の施策について理解するとともに、取組を推進する人材としての准フォレスターの果たす役割について理解を深めてもらう  ことをねらいとして実施されています。

森林・林業再生プランの概要に関して

1 『森林・林業再生プラン(平成21年12月)』→『森林・林業の再生に向けた改革の姿(平成22年11月)』→『森林法改正(平成23年4月)』→『森林・林業基本計画の策定(平成23年7月)』などの森林・林業再生プランに係る一連の経緯と内容について説明等を行いました。
    この中で、

・これまでの森林・林業施策について、持続的な森林経営を構築するためのビジョン、そのために必要な実効性のある施策や実行体制を確立しないまま、間伐等の森林整備に対し広く支援してきたため、施業集約化や路網整備、機械化の遅れ、脆弱な木材供給体制、森林所有者の林業への関心の低下という悪循環に陥っていること
・このため、ようやく人工林を主体に森林資源が充実してきているにもかかわらず、これを生かす体制の整備や経営主体の育成が十分ではなく、基盤整備も立ち後れ、適正な森林整備が行われていない森林が増加する状況にあること
・また、林業の低迷により山村での雇用機会が失われ、林業の担い手が減少し山村の過疎化も進行しており、このままでは林業再生のチャンスを無にするばかりか、施業放棄により森林機能の低下や持続的な森林経営の理念が無いまま無秩序な伐採が進み、戦後築き上げてきた森林の荒廃を招く恐れが高まっていること

 などの状況を真摯に受け止め、
・森林計画制度の見直し、適切な森林施業の確保、路網整備の加速化、人材の育成など、これまでの森林の育成を前提とした施策から、森林資源の利用期に適合した新たな森林・林業施策が提言され、実施に移されていること
など、再生プランを具体化する取り組みが進められていることについて、理解を深めてもらいました。

2 また、次のような施策の必要性について、上記の森林・林業再生プランに係る一連の施策の全体方向との関連に留意して説明等を行い、理解を深めてもらいました。
    (川上)
    多様で健全な森づくりと木材生産が調和した持続的な森林経営の実現に向け、
    ・森林経営計画により面的にまとまりのある森林の確保
    ・合理的な路網の整備
    ・効率的な作業システムの導入
    等を進めていく必要がある。
    (川中から川下)
    山の現場から消費者に至る木材のサプライチェーンを構築するため、
    ・集出荷施設や大規模工場の整備
    ・地域の中小工場の連携強化
    ・木材バイオマスや公共建築物等による木材利用の拡大
    等を進めていく必要がある。

3 これらにより、
  『今、なぜ森林・林業再生プランの取組が必要なのか』
  について、理解を深めてもらいました。

講義資料:「森林・林業再生プランの概要」(PDF:3,193KB)           

フォレスターの役割、プランナーとの連携に関して

1 フォレスターの役割・活動内容

人材育成検討委員会最終報告での取りまとめ内容及び森林・林業基本計画でのフォレスター(=森林・林業に関する専門知識・技術について一定の資質を有した人材)の位置付けについての説明を行うとともに、
・森林・林業に関する専門知識や技術を持った職員が配置されている市町村は極めて限られているかとから、フォレスターが市町村の森林・林業行政を支援する「日本型フォレスター」制度を創設することになったこと、
・フォレスターは、地域の森林・林業の牽引車(リーダー)として、『長期的、広域的な視点からの構想策定』、『公平・公正・中立的な立場からの合意形成』、『具体的な取り組みを通じた構想実現』の3点について特に役割を果たすことが期待されていること、
・フォレスターは、森林・林業再生の必要性やその中でフォレスター制度の意義について市町村の理解を得つつ、構想策定、合意形成、構想実現について市町村を支援する(地域の実態によってはフォレスターが実質的に実施する)ことを通じ、地域の森林・林業の牽引車(リーダー)としての役割を果たすことになること、
  ・また、フォレスターと林業普及指導員及び森林施業プランナーとの違いや、
・市町村等への支援を実施していく際には、例えば、都道府県の准フォレスター、その他の都道府県職員、国有林の准フォレスター等により構築されるチームを設置するなどの支援体制を整えた実施(「日本型フォレスター」制度と言われる所以)が望ましいことや、平成23年度研修受講者等によるフォレスターの活動事例など
  フォレスター制度と取り組み事例の説明等を行いました。

さらに、森林・林業の再生は、法制度の改正や予算の拡充など「上からの」取り組みだけで実施されるものではなく、次のような取り組みを「地域」に密着して進めて行かなければ、何もはじまらないことについて理解を深めてもらいました。
また、このような取り組みについて、PDCAサイクルとして継続して改善していくことが重要なことについて理解してもらいました。

  ・構想の作成

地域の森林をどのように整備・保全していくのか、林業や木材産業の活性化をどのように進めていくのかについて、自然的・社会経済的条件を踏まえながら公益的・長期的な視点に立った構想(マスタープラン)を描く。
具体的な活動内容としては、森林面積や蓄積・施業履歴など森林資源に関する情報、保安林や水源林・レクリエーションなどの公益的機能に関する情報、路網整備や集約化の状況、林産業からの要望など、地域の森林・林業に関する広範な情報や要望を収集・把握した上で、これらを踏まえた基本方針、森林の取り扱い等を検討し、市町村森林整備計画に落とし込む(表現していく)。

  ・合意形成

公平・公正・中立的な立場から、地域の森林・林業関係者(森林所有者、森林組合、素材生産業者、木材加工業者、行政機関等)や一般市民の間で構想について合意形成を図る。
具体的な活動内容としては、市町村森林整備計画案についても説明会の開催や有識者への意見聴取等を通じ、関係者の関心を高めつつ、幅広い合意を形成していくことになる。

  ・構想の実現

構想の実現に向け、制度や予算等を活用しながら具体的な取り組みを進めていく。
具体的な活動内容として、森林資源の保続と木材生産を盛り込んだ森林経営計画案や伐採・造林届が市町村森林整備計画に照らして適切かどうか、実際に適切な施業が実施されているかどうかについて現地確認や指導を行うほか、森林の整備、生物多様性の保全、路網整備と作業システムの改善による生産性の向上などの技術・知識に関する森林所有者等への指導、川上から川下の林業・木材産業、建設業等の関係者の連携・調整などを行うことになる。


2 フォレスターの役割・活動内容

フォレスターが、「構想の作成」、「合意形成」、「構想の実現」について、市町村を支援していくという役割・活動内容を十分に果たしていくためには、次のような知識・能力を前提として、これらの技術を現場で統合しながら活用していくことが必要になることを理解してもらいました。

  (ア)技術力
森林の機能の発揮の評価やこれに基づく目標林型や施業の選択など森林を科学的に評価する能力、木材の流通・販売の動向を踏まえた木材の生産目標の選択、これに向けた路網や作業システムの選択・運用など循環的な木材生産の戦略を描ける能力
  (イ)構想力
森林の科学的な評価、循環的な木材生産の戦略を統合・調和させて、地域の森林・林業の構想を描いていく能力
  (ウ)合意形成力
地域の森林・林業のビジョンについて地域の関係者の合意を形成していくための森づくりに対する熱意、行動力、コミュニケーション能力

平成24年度の准フォレスター研修では、これらの能力が獲得できるよう講義・演習等の昨年度カリキュラムの見直しを行い、フォレスターに求められる能力を養ってもらうことにしていることを説明し、それぞれの講義・演習に参加する動議付けを高めてもらいました。
    また、研修を単に終了しただけで十分な能力が培われるものではなく、
・日頃の業務を通じて経験を積んで実力をつけることや、技術者同士の交流等を通じた自己啓発を通じ、自ら日々成長していくという心構えを持つことが重要なこと、
・森林・林業に関する最新の専門的知識・技術を磨き、一個の独立した林業技術者として自分なりの森づくりについての考え方(哲学)を創り上げていくという自覚が必要なこと
  について理解してもらい、研修にのぞんでもらいました。

  ・技術力
    (ア)森林を科学的に評価する能力
        →カリキュラム『森づくりの構想(講義・実習)』で獲得
*森づくりの構想:森林現況から、機能・目標林型・施業を検討。循環的木材生産の適否を判断
    (イ)循環的な木材生産の戦略を描く能力
        →カリキュラム『間伐実行監理演習』で獲得
*間伐実行監理演習:団地ごとに、路網整備や架線系作業システム導入など生産活動の可能性を評価
  ・構想力
    上記の(ア)と(イ)を統合・調和させ、地域の森林・林業の構想を構築していく能力
→カリキュラム『森林資源循環利用構想演習』及び『市町村森林整備計画演習』で獲得
*森林資源循環利用構想演習:団地の配置など、地域を俯(ふ)瞰(かん)する観点から生産活動の可能性を評価
*市町村森林整備計画演習:ゾーニング、特に木材生産を対象とする人工林の見極め(⇔木材生産機能維持増進森林のゾーニング)、優先順位の検討(⇔路網整備等推進区域の設定)
  ・合意形成能力
    プレゼン能力、コミュニケーション能力
→カリキュラム『コミュニケーションとプレゼンテーション』及び各演習とその発表で獲得

 

これらにより、
『フォレスターの役割』、『フォレスターの活動事例』、『フォレスターに必要とされる能力』について、共通認識を持って頂きました。


  講義資料:「フォレスターの役割」(PDF:1,145KB)           

 

 

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森づくりの構想   

この講義等では、公益的機能と木材生産機能の調和のとれた持続的な森林経営を進める上での最も基礎的な知識である森づくりの基本的な考え方と森林施業を選択する上での視点・留意点等について理解を深めてもらい。
また、個々の森林について公益的機能と木材生産機能の発揮の可能性について評価するとともに、最終的な目標林型、途中の目標林型を考え、そこに向けた森林施業が選択できる視点を養うことをねらいとして実施されています。

森づくりの基本的考え方

林業の目的は森林からの木材の効率的な生産ですが、林業は森林生態系の生産力に基礎をおいており、
・林業活動を中心にすえた森林管理を持続可能なものにするためには、木材生産と同時に森林がもたらす恩恵(公益的機能)を維持する必要があること
・言い換えれば、木材を生産する物質生産機能のほかに、森林生態系が持つ様々な生態系サービスを十分に発揮させることが大切なこと
・森林の持つ諸機能は、森林の発達段階に応じて変化すること
・森林施業は、個々の対象林分の構造を変化させ、発達段階を制御することにより、機能に大きく影響すること
・森林施業は機能に影響を与えることから、地域や流域レベルで森林の機能を十分に発揮させるためには、それぞれの森林タイプや林齢の構成に配慮した施業を行うことが必要なこと
    などを改めて理解してもらいました。

その上で、森づくりは、森林の有する多面的機能の持続的発揮(持続可能な森林経営)が基本であることについて理解を深めてもらいました。
    *森林の有する多面的機能は、木材生産機能を含む概念。

森林経営・森林施業の基本原則

森林施業を行う、あるいは持続的な森林経営を実現する上で、遵守すべき次の基本原則があることについて説明しました。
フォレスターは、これらの原則を良く理解し、基本原則に反するようなことが生じないよう、持続可能な森林経営の具現化に向けて、市町村や森林・林業関係者などへ指導等の役割を果たすことが期待されていることについて理解してもらいました。

  (ア)合自然生の原則
  ・自然に反した林業は行わない
  ・厳しい自然環境や脆弱な立地での林業活動は行わない

  (イ)保続性の原則
  ・対象とする森林において、森林の持つ諸機能が永続的・恒久的に維持されること
  ・それを支える土地の生産力(地力)を維持することをするべき

  (ウ)経済性の原則
  ・常にコストパフォーマンスを考えた森林経営を行うこと
  ・木材生産だけではなく、公共事業による森林の整備・保全にも適用

  (エ)生物多様性保全の原則
・人間は、自己の利益に反しても生態系を構成する多様な生物種の生存権を損なわない形で森林経営をするべき

 

林分の目標林型と配置の目標林型(ゾーニング)、施業方法の選択

森林の多面的機能の持続的発揮の確保を図るため、森林の管理を正しく進め、適切な森林施業を適用するためには、対象とする林分をどのような森林に導くかという目標の設定が不可欠なことについて説明しました。
間伐方法の選択などにあたっても、伐期や森林の状態をどのように想定するかで、判断は変わってきます。また、対象林分の目標設定を設定するに当たっては、その林分の状況のみならず、その林分を含む森林景観、流域全体の全体像、すなわちゾーニングの目標を常に意識することが必要となってきます。
このように、地域レベル、林分レベルにおいて、どのような森林に導くかという目標を設定することが不可欠なこと、また、こうした目標林型(目標とする森林の姿)の設定のために考えるべきことや順応的管理を進める必要性について理解を深めてもらいました。
また、林分の混み合を客観的に表現するための幾つかの指標や、複層林の類型や課題、天然更新の現状等についても説明を行い、施業方法を選択する際の視点や施業における留意点などについて理解してもらいました。

    さらに、
(ア)地域の森林に対する自然的、社会的ニーズを踏まえた森林の配置を行う地域レベルの目標設定、つまり、『配置の目標林型(ゾーニング)』は、主に、市町村森林整備計画のゾーニングで検討することになること
(イ)個々の林分について求められる機能に応じた目標とする森林の姿を決める林分レベルの目標設定、つまり、『林分の目標林型』は、主に、森林経営計画で検討することになること
  などについて理解してもらいました。

森づくり構想の実習

実際の現地において、グループ内で、現状を評価し、その森林がおかれている自然的、社会的ニーズを考え、公益的機能と木材生産機能の発揮の可能性について評価するとともに、最終的な目標林型、途中の目標林型を考え、そこに向けた森林施業について検討してもらい、その結果についてプレゼンテーションとその内容の討議を行いました。
このようにして、施業方法の選択に唯一の正解というものがない中で、場面に応じて、より適切な選択ができる視点を養ってもらいました。

講義資料:

「森づくり(ア)(基本的な考え方と目標林型)」(PDF:2,159KB)

「森づくり(イ)(施業方法の選択)」(PDF:557KB)  

 

 

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地域の森林林業の将来ビジョンと市町村森林整備計画   

この講義等では、地域の森林林業のビジョン(構想)の要素を学んだ上で、これらを市町村森林整備計画に反映させる視点を養うことをねらいとして実施されています。

地域の森林林業の構想の要素

フォレスターの役割は、(ア)広域的長期的な視点に立った構想を作成し、(イ)公平公正中立的な立場から関係者の合意形成を図り、(ウ)構想の実現に向けた取り組みを進めていくことにあります。
そこで、地域の森林林業にとっての構想とは何か、その構想に盛り込むべき要素等について説明し、理解してもらいました。

1 地域の森林林業にとっての構想とは何か?

構想(=ビジョン、未来像)とは、
・現状を将来に向かってどのように変えていくのか、その目指すべき方向と一定時点での到達点をあらかじめ明らかにしたもの
・関係者が全体としてまとまりのある活動を行い、確実な成果を獲得していく際の道標としての役割を果たすもの
です。
地域レベルでは、地域の森林や社会経済的条件は様々であり、森林林業基本計画や全国森林計画の総論的記載やマクロ的に試算設定された目標を単純に希釈して記載したり、面積按分したりするようなことは意味がなく、地域特定的な内容を個別に検討する必要があることを理解してもらいました。

2 構想の要素

地域の森林林業の構想に込めるべき要素は、「基本方針」、「森林の取扱い」、「施策(基本方針の実現のための取組)」であり、特に、地域の森林林業を反映した基本方針が関係者での合意形成過程を得て作成されるよう、フォレスターが中心となって取り組む必要があることを理解してもらいました。

・基本方針

地域の森林林業のあり方を考えていく際には、地域において森林はどのような存在なのか、どのような特徴があるのか、地域の要望は何なのか、などについて検討した上で、関係者の合意に基づく方向や目標が必要です。

・森林の取扱い

森林の適切な整備保全を進め、上手に利用していくためには、林分の目標林型と配置の目標林型(ゾーニング)、これに応じた伐採更新、間伐の方法などの施業方法などをあらかじめ決めておく必要があります。
特に、狭小かつ急峻な国土に多くの人口を擁している我が国においては、個々の森林に対して期待される機能が併存していることが多いこと、また、森林の整備保全に税金が投入されていることを踏まえれば、ゾーニング等の設定においては、国民納税者の理解と協力を得ながら森づくりを進めていくという観点からも重要です。
このように森林の取り扱いの大枠を決めた上で、個々の森林をどのように整備保全し、利用していくのかについては、森林の現況や地域ニーズ等を踏まえつつ、また、所有者の意向を尊重しながら決定していくことになります。

・施策(基本方針の実現のための取組)

地域の森林林業の基本方針の実現に向けた施策を検討する必要があります。路網整備の考え方、林業機械の導入を含めた作業システムのあり方、森林施業や森林経営の受委託の促進等、また、これらを担う林業事業体や人材の育成、森林から生産される木材のサプライチェーンの構築などが基本方針を実現するための取組の中心となると考えられます。

3 構想の策定の考え方

地域の森林林業の構想を検討する際には、「合自然性の原則」、「保続性の原則」、「経済性の原則」、「生物多様性保全の原則」を踏まえる必要があること、構想の策定に当たっては、森林林業再生プランなどの最近の森林林業を巡る情勢を踏まえ、特に、次に掲げる事項について留意して行う必要があることについて理解を深めてもらいました。

・森林の有する多面的機能の持続的発揮(持続可能な森林経営)

森林林業再生プランや森林林業基本計画においても、木材需給率50%が示されていることから、とにかく木材生産のみが注目されがちです。
しかし、森林林業基本計画では、モントリオールプロセス等の国際的な文脈を踏まえながら、「森林の有する多面的機能の持続的な発揮」という表現で「持続可能な森林経営」を位置づけており、再生プランにおいても、生物多様性保全等を含む森林の有する多面的機能の持続的発揮が基本理念の一つとなっています。
また、森林林業基本計画においても、林業が森林生態系の生産力に基礎をおいていること、今後の森林の整備保全に当たって生物多様性保全の考え方を踏まえることなどが強調されています。
このように、森林林業再生プランは、木材生産だけを追求するものではなく、持続可能な森林経営の実現が基本にあります。この点を踏まえながら、地域の森林林業の構想の検討を進める必要があることについて理解してもらいました。

・コスト削減

我が国では、森林整備に関して、民有林には補助金(森林整備事業費等)という形で、国有林には一般会計繰り入れという形で、国費が投入されたいます。この政策的な意図は、貨幣価値として現れていない(外部経済化している)森林の持つ公益的機能を、個人の財産である市有林を含め、その所有形態にかかわらずなるべく高度に発揮させようとすることにあります。
このことを踏まえると、広く国民から集めた税金を投入している以上、森林の整備に要するコストを縮減して税金の投入を抑制する義務があります。森林林業の構想を作成するに当たっては、補助金を活用して公益的機能を発揮できる持続可能な林業経営の土台を構築するとともに、条件がよい地域については中長期的に補助金の支え無しに林業を成り立たせるような戦略を含むことが望まれます。
このように、地域の森林林業の構想を策定する際には、生産性の向上によるコスト縮減の視点を十分に盛り込む必要があることについて理解してもらいました。

・木材のサプライチェーンの構築

近年、大型の製材工場や合板工場が各地に建設されていますが、これらの大規模工場では、その操業を維持するために大量の原木を安定的に調達する必要があります。大量の原木を市場の競りで調達することは、市の開催日や手数料、物流という点からも容易ではなく、商流と物流の分離、県をまたぐ広い地域からの原木の集荷、山土場や中間土場から工場への直送など、原木を安定的に供給する体制の構築が必要になります。
このことを山側から見れば、山で生産した木材をまんぜんと原木市場に出すのではなく、生産される木材の径級品質数量等を踏まえて販売先を検討し、協定等の締結も含め安定的な生産供給を行う、なおかつ、需要先からのニーズにも迅速に対応していくことが必要になります。
このように、地域の森林林業の構想の検討に当たっては、山の現場が木材のサプライチェーンの最上流を担う、山の現場を木材のサプライチェーンに明確に位置づけるという視点を意識することが重要であるということについて理解してもらいました。

 

講義資料:「地域の森林林業の構想」(PDF:107KB)         

 

新たな市町村森林整備計画の概要

森林計画制度は、その時々の必要に応じて改正が行われてきたこと、地域に最も密着した市町村森林整備計画については、かねてより、紋切り型である(ややもすれば絵に描いた餅である、金太郎餅であるなど)と指摘があることを説明しました。
このため、市町村森林整備計画を地域の森林の「マスタープラン」とするため、
従来の3機能区分を廃止し、市町村が主体的にゾーニングや施業方法を決定できる仕組みを導入したこと
傾斜別作業システム別の路網密度の水準、作業路網の整備と併せて効率的な森林施業を推進する区域(路網整備等推進区域)の設定を行うこととしたこと
計画全般の図示化を行うこととしたこと
等の具体的な改正内容やその考え方について説明を行い、理解を深めてもらいました。
また、フォレスターには、今後、樹立の機会等を捉えて、長期的広域的な視点から構想の作成見直し、公平公正中立的な立場からの合意形成、構想実現のための具体的な取り組みを行い、市町村森林整備計画のブラッシュアップを図り、市町村支援を行っていくことが求められていることについて理解してもらいました。


講義資料:「新たな市町村森林整備計画の概要」(PDF:897KB) 

 

 

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森づくりと森林経営計画   

この講義等では、将来ビジョンに向けて、森林計画制度、森林整備事業等を的確に運用できるよう、森林経営計画の趣旨を理解するとともに、盛り込むべき内容について学ぶことをねらいとして実施されています。    

森林経営計画の趣旨

森林経営計画は、従来の森林施業計画とは、面的なまとまりの確保、森林の保護に関する事項の追加、森林の受委託の推進、間伐の計画面積基準の設定という点で、大きく異なっており、このような改正をした趣旨について説明し、理解を深めてもらいました。

1 面的な管理の推進

我が国の民有林は、小規模分散的な所有構造(大規模所有者の所有山林も分散している場合が多い)となっています。このような所有構造は、造林保育など人力に頼る施業が中心だった時期は問題がさほど顕在化しませんでしたが、前後を中心に造成された人工林が資源として利用可能となり、林業機械の使用が前提となる間伐や主伐が施業の中心となるにつれて、効率的な施業の実施の大きな障害となっています。
合理的な路網整備を進め、林業機械の性能を最大限引き出し、効率的な施業を実施していくためには、面的まとまりのある森林が確保されていることが欠かせません。
また、再生プラン、基本計画では、木材生産のみならず、生物多様性保全を含む森林の有する多面的機能の持続的発揮を図っていくこととしており、この観点からも一定の面的なまとまりのある森林を確保していく必要があるところです。
従来の森林施業計画制度においても、面的なまとまりを確保していくという観点から、面積要件を課していましたが、自動車で1時間以内の範囲であれば『一体として整備することを相当とする森林』であると認めるという運用を行っていたことから、造林や間伐等の施業が予定されている箇所だけが虫食い的に森林施業計画に組み込まれることになり、結果として、効率的な森林施業が可能となる面的なまとまりを確保することに繋がりませんでした。
このような反省を踏まえ、今回の森林経営計画においては、尾根や河川等の自然条件によって区分された林班又は隣接する複数林班を単位とする計画に改めたことなどについて説明しました。


2 森林の保護

森林所有者レベルでも一部対応可能な森林の保護活動が少なからず存在していること、木材木材製品の合法性、持続可能性の証明や、カーボンビジネス制度の動向なども踏まて施策を進める必要があることから、「持続可能な森林経営」を行っていることを明らかにするため、計画事項に、「森林病虫害の駆除および予防の方法、火災の予防その他森林の保護に関する事項」を追加した趣旨について理解してもらいました。

3 森林の経営の受委託の促進

面的なまとまりの確保については、提案型集約化施業等により施業レベルの受委託が進んでいます。しかし、これは、個別の施業についての受委託である場合が多く、これだけで施業の継続性が担保されるものではありません。
しかし、持続的な森林経営を実現していくためには、面的な森林のまとまりの中で、意欲のある特定の主体が計画に基づき森林の施業と保護を実施していくことが効率的なことから、ある程度包括的な内容で、また、ある程度の長さを対象とする受委託を進めて行く必要があります。
このようなことから、今回の森林法の改正により、

・計画の作成主体を「森林所有者『等』」から、責任の面で質の高い森林経営の受託者に限定することとして、「森林所有者又は森林所有者から森林の経営の委託を受けた者」に改め、森林経営の受委託(所有と経営の分離)を推進することとしたことや、

・森林経営計画は、単独ではなく、施業等の実施の共同化や路網の共同利用を行いつつ、複数の主体(森林所有者、森林組合、林業事業体等)が共同で作成することも可能なこと

について、理解を深めてもらいました。

 

森林経営計画の策定に当たっての留意事項

森林経営計画が適切であるとの認定を受けるためには、森林法施行規則に定められた施業実施基準や市町村森林整備計画に適合していることが必要です。施業実施基準や市町村森林整備計画に記された施業方法を遵守することは、森林を適切なものに誘導していくことにつながりますが、遵守するだけでは理想的な山づくりが達成されるものではありません。また、森林経営計画に基づき施業が実行されなければ意味がありません。
地域の森林林業の牽引車(リーダー)であるフォレスターは、直接、森林経営計画を作成するわけではないものの、森林経営計画の策定などを行う森林施業プランナーに対して公的な立場から助言することが期待されていることから、助言に際して必要な視点について理解してもらいました。

1 山づくりの視点

施業実施基準で定められている基準は最低限守るべき事項であり、計画作成者が独自の判断で認定基準よりも厳しい施業を実施することは何ら妨げられません。施業の計画又は実施に当たっては、
・地域における森林施業の技術や情報を収集し、個々の森林の特性に応じた施業体系の選択を検討することが必要なこと
・主伐の時期を何時に定め、どのような材を主体に生産していくか、間伐を時間的空間的にどのようなサイクルで行っていくかを踏まえる必要があること
など、具体的な施業については、科学的な側面や林業経営面からの検討が必要なことについて理解してもらいました。

2 間伐の考え方

森林経営計画の作成において、当面、重要となる計画事項は間伐に係る認定要件です。間伐の計画面積の計画量の下限などの施業の実施基準が定められていますが、
・森林簿、施業履歴に基づき、標準伐期齢未満の森林の2分の1、標準伐期齢以上の森林の3分の1をリストアップしたとしても、気象害や成長状況によっては、樹冠疎密度からみて間伐が不要とみられる森林があること、リストから漏れる森林でも間伐が必要とされる場合があること
・『「標準伐期齢未満」の森林に該当する林齢の下限は初回間伐の林齢(4~5齢級)』、『「標準伐期齢以上」の森林に該当する林齢の上限は標準伐期齢×2』、がそれぞれ目安とされていますが、明確な一線を引けるものではないこと
の状況にあることについて説明しました。
このため、
・若齢な森林(5齢級)、老齢な森林(本数調整が終了した森林)、過密化しない森林(樹種特性から過密化しにくい森林)、気象害や生育不良により林冠が閉鎖していない森林のような森林については、対象外とされていること
・実際に間伐が必要か否かについては、現実林分の状況を優先して検討が必要なこと
林分の状況や林業機械路網の状況等から、実際の間伐方法(定性、列状、中層等)については現場判断を行っていく必要があること
について説明し、理解を深めてもらいました。


*間伐の計画面積の計画量の下限などの施業の実施基準計画期間が5年である森林経営計画においては、一般的に、標準伐期齢未満の森林では概ね10年に1回、標準伐期齢以上の森林では概ね15年に一回、間伐を行うことが妥当であるという考えに基づき、標準伐期齢未満の森林(5年以内に間伐の履歴がないもの)の2分の1、標準伐期齢以上の森林(10年以内に間伐の履歴がないもの)の3分の1の合計面積以上の間伐を森林経営計画に計上することが要件(ただし、市町村森林整備計画に間伐の標準的な間隔が定められている場合には、当該間隔の年数に基づいて基準となる間伐面積を算出)

3 複層林の考え方

森林林業基本計画では、約1,000万haの育成単層林(人工林)の約3分の1に当たる350万haについて、公益的機能をより重視した育成複層林へ誘導していくことにしています。このため、森林環境保全直接支払事業でも更新伐をメニューとしているほか、広葉樹林化や針広混交林化に向けた施業を支援する環境林整備事業の実施や、水源林造成事業において針広混交の育成複層林を造成するなどの取組を進めています。
しかし、複層林化は、同樹種による上下2段林タイプの複層林は必ずしも順調に生育しておらず極めて困難な施業方法であること、現時点では、同一空間に上層木下層木が生育する複層林ではなく、一定の広がりにおいて異なる樹高の森林が空間的に配置されている帯状、モザイク状の複層林(水平方向の複層林、「複相林」という文字を充てている場合もある)では成林の可能性が高いとされているところです。
森林経営計画では、従来の森林施業計画と同様に市町村森林整備計画で「複層林施業を推進すべき森林」に定められた森林において、複層林施業の実施が求められますが、その際、「複層林施業を推進すべき森林」には、「択伐により複層林施業を推進すべき森林」と「択伐複層林施業以外の複層林施業を推進すべき森林」(つまり、「択伐により複層林施業を推進すべき森林」ではない森林)の2つの種類があり、主伐に係る適正な伐採の方法に関する基準が異なっています。
これらの違いを意識した市町村森林整備計画の見直し等が行われることから、今後の複層林施業を推進すべき森林については、二段林ではなく帯状又はモザイク状の複層林に向けた森林施業を想定した区域が増えてくると思われるます。
針葉樹人工林を針広混交の複層林に誘導するため下層木として広葉樹を天然更新させて複層林化を図っていくことは、高木性の広葉樹の導入定着が難しく、容易ではありません。高木性の広葉樹の前生稚樹が少ない林分などで複層林を仕立てていく場合には、伐採箇所に植栽を計画することも必要となります。
 これらの説明を行い、複層林に関して理解を深めてもらいました。

4 木材生産の視点

(1) 路網計画と林業機械

森林経営計画では、面的なまとまりの確保により、合理的な路網整備を進め、林業機械の性能を最大限引き出していくことを1つの目的としています。
路網や林業機械については、市町村森林整備計画において、傾斜別作業システム別の路網密度の水準、計画期間内に路網整備や施業集約化を推進していく路網整備等推進区域等を記載することとしています。森林経営計画では、これらを参考にしながら、既設の基幹路網、既設の森林作業道、開設予定の森林作業道の名称、基点終点、参考となるその線形(大まかなもの)、主伐や搬出間伐の区域とその作業システム(作業システムエリア)などを記載することになります。
これらを計画書に記載する場合には、主伐や間伐のように特段の数値基準がなく、記載内容は定性的なもの、または図示されるだけのこととなります。
この際、
・計画の表面に出てこない場合が多い土場や作業場の位置などについては、効率的な森林施業の実施に欠かせない事項であり、十分な検討が必要なこと
・森林経営計画の路網の検討に当たっては、隣接区域の森林経営計画への取り込む場合も考えて、林業専用道と森林作業道の最適な組み合わせを森林経営計画よりも大きな単位で考えるとことも必要なこと
についても、あわせて理解してもらいました。

5 原木の安定供給

大規模な木材加工工場に対して原木を安定的に供給する体制の整備が求められている中、各地の森林組合連合会や素材生産協同組合等が中心となって原木生産量を取りまとめ、大型加工工場等の需要先との協定等に基づいて安定的に原木を供給していく取り組みが進められています。
山の現場は、木材のサプライチェーンの最上流部に位置していることを意識し、
・一定量の原木を確実に生産していくことは当然であること
・需要先の要望に臨機応変に対応することも必要なこと
・将来の木材の需給見通し、地域の木材の供給先などを念頭において、将来の生産目標を検討することが重要なこと
を説明しました。
そして、
・森林経営計画は今後の原木生産量の見通しを明らかにするという重要な役割を果たすが、需要先の要望に臨機応変に対応していくためには、認定要件をかろうじて満たすような森林経営計画ではなく、間伐の実行量や主伐の予定箇所等に余裕を持たせた計画を作成していくことが求められること
・森林経営計画では計画に定める間伐の実施年に幅を持たせた記載を可能としており、実施年に係る計画変更をせずに柔軟に施業が実施できるようになっていること
について理解を深めてもらいました。

 

これらにより、
フォレスターの役割として、
・森林経営計画の趣旨や留意事項を踏まえつつ、森林組合や民間事業体等に所属する森林施業プランナーに、公的な立場から助言することとなり、自身が原木の売買に直接関わらないものの、森林所有者や経営の受託者、原木の需要先等の関係者の動向をつかみながら、活動していくかとが期待されていること
・策定しようとする森林整備計画は、市町村森林整備計画やその土台となる森林林業の構想における中長期的な視点と整合し、特に林道林業専用道の整備計画を踏まえ、さらに地域の現状を踏まえつつも他地域の先進的な事例などを参考にして改善の方向を取り入れるなど、フォレスターならではの時間軸空間の広がりを持って助言すること
が求められることについて理解してもらいました。

講義資料:

「森林経営計画制度の概要」(PDF:1,290KB)

「森林経営計画ガイドブックVer2」(PDF:773KB)

 

 

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間伐実行監理演習   

この講義等では、

・木材の流通販売の動向を理解し、広域的な販売戦略を考えることができること、
・マーケットを広域で勘案して木材の生産目標を選択できること、
・生産目標に向けて効率的な路網計画作業システムの選択運用について指導できること
を目標として、

・路網及び作業システムに関する基礎的な知識を得るとともに、これらの改善に向けたフォレスターの役割について理解する
・森林作業道の基本的な考え方を学び、その考え方を踏まえて20ha程度の間伐予定箇所における森林作業道の配備計画を検討する
・机上で検討した森林作業道の路線について、ポイントとなる箇所を踏査して机上演習の検討結果と照らし合わせることを通じ、地形・地質に応じた配置や実際に森林作業道を作設する際の隘路への対処方法等を習得する
・国有林の取組等の紹介を通じ、外部講師による講義(『木材の流通・販売』)を補完しつつ、フォレスターとして木材の流通・販売に関わる視点を学ぶ
・集約化の必要性を確認するとともに、施業提案書等を題材に間伐コストの構造を理解する
・事業体の育成において、イコールフッティングの観点を踏まえたフォレスターの役割を理解する
・研修(前期)を通じて学んだことを活かして班毎に異なるテーマについての検討を行い、その成果を全体で共有し、議論することで、フォレスターとして循環的な木材生産の戦略を描く能力を醸成する
・コミュニケーション・プレゼンテーションの講義の内容を実践し、合意形成のための効果的なプレゼンテーションと建設的な議論を行うための能力の向上を図る
ことをねらいとして実施されています。


我が国の森林が小規模零細な所有構造にある中、持続的な森林の経営を確立するためには、面的なまとまりのある森林を確保し、効率的な施業を実現していくことが重要です。また、路網整備と作業システムの改善による生産性の向上に関する技術・知識について、林業事業体などへ直接普及・指導できる能力も必要です。
このため、森林所有者や森林組合等の林業事業体により森林経営計画が作成され、これに基づく森林施業が着実に実施されるよう、准フォレスターには、森林施業プランナーをはじめとする関係者との連携強化を図りつつ、森林施業の団地化、集約化の促進、生産性の向上に向けた作業システムの改善などの指導活動の積極的な実施を図ることが期待されています。
次の演習を通じて、准フォレスターとして、これらの業務について積極的に行える人材の育成を図りました。

路網・作業システム

高い労働生産性を実現し、コストを低減して循環的な木材生産の基礎を築くためには、路網、林業機械、人員配置を一体的に捉え、よりよい組み合わせを選択していく必要があります。
このため、林内路網の体系や作業システム構築の基礎的な考え方を学んでもらうとともに、使用する機械の組み合わせによる生産性の違いや確保すべき事業量などについて体感してもらいました。
これらにより、路網整備や作業システム改善に向けたフォレスターの役割について理解してもらい、林業事業体などへ直接普及・指導できる能力を養ってもらいました。

講義資料:「間伐実行監理演習(路網と作業システム)」(PDF:4,667KB)

 森林作業道

林内路網は、作業システムと密接し不可分な関係であり、間伐は収益性を高め、長期にわたって森林経営に活用される重要なインフラとなります。森林作業道は、森林施業プランナーが施業提案する際に細部路網として計画するものであり、森林経営計画の構成要素となるものです。フォレスターは、こうした重要な路網計画がよりよいものとなるよう指導・助言する必要があります。
このため、講義により森林作業道の規格・構造の特徴や路線選定の要点などを理解してもらうとともに、限られた時間の中で森林施業プランナーの施業提案に関して特に現地でチェックする箇所を選定する考え方を習得するため、森林作業道計画線が記入されている図面を素材として、線形配置の妥当性や現地で確認を要する箇所等のチェックポイント等の検討を行う演習を実施しました。また、演習検討結果を題材として踏査を行い、机上演習と現地の状況の違いを体感してもらいました。
これらの踏査・体感を通じて、土質の判断、常水地での沢を渡る箇所の選定や渡り方、崩壊の危険性や部分的な急斜面での対応、路網間隔(密度)、土場の配置場所やフォワーダーによる運搬距離など、現場に応じてポイントとなる箇所の予見方法や視点を学んでもらうとともに、既設の路網施設の状況を題材として水質汚濁や作業終了後の路体崩壊などのリスクやその回避方法について学んでもらいました。
これらにより、森林施業プランナーなどとのかかわりや、丈夫で簡易な森林作業道の作設と普及に向けたフォレスターの役割について理解してもらい、森林施業プランナーなどへ直接普及・指導できる能力を養ってもらいました。

講義資料:

「間伐実行監理演習(森林作業道)」(PDF:2,367KB)

「間伐実行監理演習(事業地の法規制、地形・地質等に関する情報)」(PDF:1,119KB)

「間伐実行監理演習(プランナーが持参した事業計画に関する検討)」(PDF:2,396KB) 

 

木材の流通・販売

近畿・中国地方を中心とした地域の木材価格、流通組織の状況や、国有林における生産・販売の工夫や間伐の収益性向上事例の紹介等を通じて、フォレスターとして、地域経済活性化のために流通・販売に関してどのような手段・選択肢があるのかについて学んでもらいました。
その上で、そのために川上をどのように指導していくべきか等について、合理的で広い視野のもとに考えていく能力を養ってもらいました。


講義資料:「間伐実行監理演習(木材の流通・販売)」(PDF:3,216KB)

 

集約化施業と事業体の育成

搬出間伐事業におけるコスト構造や施業提案書内容について理解してもらい、集約化及び合理的な路網整備の意義必要性について学んでもらいました。
その上で、「利用するステージ」に移行した林業が産業として再生のため、集約化による事業ロットの拡大促進、担い手となる事業体の育成に向け、現状の改善を図るために必要な視点、能力を養ってもらいました。


講義資料:「間伐実行監理演習(集約化施業と事業体の育成)」(PDF:746KB)

 

発表とディスカッション

循環的な木材生産の戦略を描くに当たり、研修(前期)で得た、
・森林経営計画をどのような観点から検討すべきか、
・集約化の進展に向けどのようなアクションが効果的か、
・アクションの実行に際して効果を上げる工夫(仕掛け)としてどのようものが考えられるか、
・地域の林業を担う事業体が安全を確保しつつ効率の良い作業を行えるものへと成長するインセンティブを与えるためには、各々の役割分担とイコールフッティングをどのように考えるべきか
などの様々な視点から、
「効果的な路網の整備」、「作業システムの改善」、「間伐材の販売方法の改善」、「担い手の「やる気」を助長」という課題に対して、その解決策をグループ討議により検討し、発表した上で全体議論を行ってもらいました。このようにして、フォレスターとして持つべき総合的な戦略のイメージを共有してもらいました。
また、グループ討議や全体討議が生産的建設的な議論になったか、プレゼンテーションで重要な点を確実に伝えることができたか等について、自ら振り返る機会を持つことで、コミュニケーション能力及びプレゼンテーション能力の向上に努めてもらいました。
これらにより、フォレスターとして循環的な木材戦略を描く能力の醸成と合意形成能力の向上を図ってもらいました。


講義資料:「間伐実行監理演習(とりまとめの発表とディスカッション)」(PDF:126KB)

 

 

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コミュニケーションとプレゼンテーション   

この講義等では、将来のビジョンについて、市町村長、森林所有者等の間で合意するプロセスをリードすることができることを目標に、
・フォレスターとして求められる合意形成に必要なコミュニケーションと、プレゼンテーションの基礎的な知識を学ぶ
・それらの能力を高めるための具体的な手法ポイント等を理解し、この後の各演習の発表や意見交換で実践して、能力の向上を図る
ことをねらいとして実施されています。

フォレスターは、市町村森林整備計画の策定支援や森林経営計画の認定支援及びそれらの実行監理を行える能力を持ち、市町村長や森林所有者、森林組合等の林業事業体、並びに地域住民など多様な意向を調整しつつ、地域の森づくりの合意形成を図る役割を担っていることについて、再度説明し理解してもらいました。
その理解を得るためには、森林所有者をはじめとする利害関係者や流域住民など多様な関係者の意向を上手に聞(引)き出す力、意向を取りまとめる力、一定の理解を得る(合意形成を図る)ための提案力が必要であることを説明し、理解を深めてもらいました。
その上で、それらの能力を身につけるためのスキルや実践方法、ツールとその選び方や使用方法などの具体的な手法、ポイント等について説明し、また体験してもらい、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力の向上に磨きをかけることの重要性について理解を深めてもらいました。


講義資料:「フォレスターに求められる合意形成に必要なコミュニケーションプレゼンテーション力」(PDF:459KB)

   

 

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木材の流通販売   

この講義等では、木材の流通販売の動向を理解し、広域的な販売戦略を考えることができること、マーケットを広域で勘案して木材の生産目標を選択できることを目標に、流通販売に第一線で携わる講師から、木材の用途、価格、必要とされる原木の条件等、木材の流通販売に関する最新情報を直接聞くことを通じ、木材需要を考慮に入れた素材生産や森林施業の戦略を策定するための情報収集、分析、立案能力を養うことをねらいとして実施されています。

フォレスターにとって、川中川下の流通販売現場の実態を理解することは、地域の森林林業の構想の策定等には欠かせないものです。
川中川下の流通販売の現場にあまり接点を持つ機会の乏しい行政担当者においては、大きな変化が絶えず起こっている近年の木材流通や最終需要の知識については不十分と考えられることから、
全国地域における木材需給の動向、木材価格の形成要素、丸太価格製品価格の動向、需要の大きな割合を占める住宅需要の動向、商品開発による木材の新たな分野への利用拡大の状況、木材流通のトレンド、需要者側から求められる素材の安定供給の意味、地域の林業再生を担うフォレスターの活動への期待等について、講師の幅広い知識と実務経験に基づき説明してもらいました。
これらを通じて、地域の流通販売現場のリアルな動きについて理解を深めてもらい、今後川上側が対応すべき方向について考える視点を養ってもらいました。

講義資料:「木材マーケットの現状」(PDF:474KB)            

 

 

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林業労働安全(リスクアセスメント)   

この講義等では、フォレスターの役割には林業における安全な職場環境の構築の支援を含むことを理解するとともに、演習を通じてリスクアセスメントの進め方のポイントを理解し、労働安全衛生の指導能力の向上を図ることをねらいとして実施されています。

労働安全衛生問題との関わりおいて、
・フォレスターは、労働安全衛生に関して特別な事務(権限)を持つものではないが、林業の再生を主導していく者として労働安全衛生の重要性を一般的に普及、啓発していくという位置付けにあること
・フォレスターは、地域で様々な活動を従事する中で、特に事業体等に対して労働災害の絶滅が社会的責任であることを強く認識させるとともに、現場において危険作業等を発見した場合には現場代理人等に適切な安全指導を行うことが必要なこと
について理解してもらいました。
 
その上で、各局面において関係者に「なぜ安全作業ができないのか」という考え方から、「どうすれば安全作業ができるのか」という発想の転換を求めていくことが必要なことや、演習を通じてリスクの見積もりと対策の評価を行うリスクアセスメントの進め方などを理解してもらい、労働安全衛生の指導能力の向上を図ってもらいました。


 

 

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森林資源循環利用構想策定演習   

この講義等では、「森林を科学的に評価する能力」と「循環的な木材生産の戦略を描ける能力」を統合調和させて、森林林業の将来ビジョンを描くことができることを目標として、

・現地実習に先立ち、1000ha程度の団地を対象として、市町村森林整備計画を念頭に、間伐の計画と林業専用道の整備計画を大局的に検討する
・机上演習を行った団地を対象として、現地条件に応じて、地形の遠望、地質及び水系の確認、周辺の土地利用における社会条件等を観察、確認し、現地調査の方法及びポイントを習得する
・現地実習でゾーニングや路網を検討した対象地において、その結果を反映しつつ10年間の間伐計画及び路網整備計画を含む総合的な森林整備の構想を策定する
・総合的な森林整備の構想策定を通じて、市町村森林整備計画における木材生産を中心とした団地の中・長期的な森林・林業の経営ビジョンを構築するための能力を高める
・コミュニケーション・プレゼンテーションの講義の内容を実践し、合意形成のための効果的なプレゼンテーションと建設的な議論を行うための能力の向上を図る
  ことをねらいとして実施されています。

1 林業専用道の検討

研修(前期)に学んだ森づくりの考え方、計画制度、路網・作業システムと効率的な路網等に関する要点について説明を行い、これらについて再確認してもらった上で、間伐適期の人工林が太宗を占める演習対象地(1000ha程度の団地)を対象に、机上図面で地形、林況や既設の公道等の状況などの情報を見て、班毎に、間伐の年次計画と林業専用道の配置を検討してもらいました。

2 現地条件の確認、林業専用道の再検討、ビジョンの策定、発表準備

ビジョンを作成する際に重要な路線計画の感覚の醸成等を図るため、演習対象地を対象に、地形(遠望)、地質・土質、林況、水系の状況、既設の公道・林内路網の状況等、土場や森林作業道の取付位置など、対象地の林業ビジョンを描くにあたり参考となる情報を現地で確認してもらいました。
現地実習後は、
(ア)地域の状況を踏まえた森林の経営ビジョンの検討
(イ)現地実習を踏まえて検討した林業専用道の新設路線の配置の再検討
(ウ)間伐指定のある箇所について、間伐の実施と路網整備とのマッチングを考慮しながら年次計画の策定
(エ)年次ごとの木材生産の売上と整備にかかる経費の試算
(オ)10年間の森林経営のビジョンを策定、発表の準備 
をしてもらいました。

3 発表、ディスカッション

一定の広がりがある森林を対象として10年間にわたる経営ビジョンを様々な視点から検討し、とりまとめることを通じて、次のような感覚や視点を持ってもらいました。
・個々の所有単位・経営単位を超えて、集約的かつ効率的な森林整備の戦略を策定し、市町村長等に提案・実行していく感覚を養う
・中・長期的な視野に立って、短期的な利害得失を調整する視点を持つ
また、立場の異なる多様な関係者の合意を得ることを意識した総合的な計画策定を疑似体験を行うことやグループ討議や全体討議を通じて、建設的・効率的な議論の進め方や、発表を通じて効果的なプレゼンテーションの方法を習得してもらいました。


講義資料:

「森林資源循環利用構想策定演習(フォレスターの役割の再確認と研修B.(後期)の全体像)」(PDF:701KB)

「森林資源循環利用構想策定演習(演習手順の説明)」(PDF:345KB)

「森林資源循環利用構想策定演習(林業専用道の説明)」(PDF:1,710KB)

「森林資源循環利用構想策定演習(演習地を巡る地形・地質等に関する情報)」(PDF:1,707KB)

「森林資源循環利用構想策定演習(演習手順の補足)」(PDF:2,374KB)

 

 

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市町村森林整備計画策定演習   

この講義等では、「森林を科学的に評価する能力」と「循環的な木材生産の戦略を描ける能力」を統合・調和させて、森林・林業の将来ビジョンを描くことができることを目標として、前期・後期の研修の学習内容を市町村森林整備計画に落とし込むとともに、その実現に向けた取組方策について検討を行い、川上から川下を統合的に捉えてまとめていくというフォレスターとしての能力・意識を醸成することをねらいとして実施されています。

森林の有する多面的機能の持続的発揮及び林業の再生を図っていくためには、地域の森林の整備・保全や林業・木材産業の活性化の構想(ビジョン)を広域的・長期的な視点に立って描き、森林・林業関係者をはじめとする地域住民の合意形成を図ることが不可欠です。
このため、最も地域に密着した公的な計画である市町村森林整備計画が地域の森林の整備・保全や林業の再生に向けた構想を示すマスタープランとなるよう、
(ア)現状の整理及びこれに対応した地域の優先事項や目標を明確にする森林整備の基本方針
(イ)発揮を期待する森林の機能とこれに対応する望ましい森林の姿や施業方法を示すための区域の設定
(ウ)効率的な森林施業に必要な路網整備の整備目標の明確化
などの市町村森林整備計画についての見直し演習を行うとともに、
(エ)地域住民等との合意形成に向けたコミュニケーション能力やプレゼン能力の向上
に向けた演習を行いました。

これらの演習を通じて、フォレスターとして、専門的な技術や知識を必要とする事項について、市町村に対し積極的に協力できる人材の育成を図りました。


講義資料:「市町村森林整備計画演習」(PDF:1,915KB)

 

 

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お問い合わせ先

森林整備部技術普及課
ダイヤルイン:050-3160-6751
FAX:06-6881-2055

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