令和4年度保護林モニタリング調査評価等部会の概要
1 開催方法
集合開催(オンライン併催)
日時:令和5年2月21日(火曜日)13:15~16:00
場所:近畿中国森林管理局 4階 大会議室
2 出席者
委員:(来局)藤木委員、桃原委員
(オンライン)佐久間委員、深町委員
森林管理局:計画保全部長、計画課長、流域管理指導官、林地保全企画官、計画調整官、企画官等
3 議 事
◯審議事項
(1)令和4年度保護林モニタリング調査について
(2)令和4年度保護林設定管理要領に基づく簡素な現況調査について
(3)令和5年度保護林モニタリング調査等の予定について
◯その他
(1)保護林の新設・拡張等に係る追加情報について
(2)三川山奥~水山~本谷奥国有林に連なる天然林の状況
4 委員からの主な意見
(1)令和4年度保護林モニタリング調査について
◯大杉谷森林生態系保護地域
- シカ被害が収まらないのであれば対策の継続ではなく強化が必要。(A委員)
〔事務局からの回答〕
マンパワーや予算の制約がある中で、緊急性や必要性等の優先順位を付け、可能なものから対策を実施している。将来シカの生息頭数がコントロールされた際に植生を回復するための「パッチディフェンス」等の対策が現実的。 - 温帯性針葉樹と呼ばれるツガ、モミ、サワラ、ヒノキなどの自然個体群の価値についての認知度が低いため、ユネスコエコパークや国立公園と連携し、専門家や国民に対して広くPRすべき。(B委員)
◯音水スギ・ヒノキ・トチノキ遺伝資源希少個体群保護林
◯音水モミ・ブナ・ミズナラ等遺伝資源希少個体群保護林
◯音水渓谷イヌブナ・ミズナラ希少個体群保護林
- 氷ノ山は兵庫県の指定管理鳥獣捕獲等事業によりシカが減少傾向であるが、林道から離れた奥の方までは効果が及んでいないか。地元の保全活動団体との希少種の保全活動について、取組の継続をお願いする。生息域外保全は、六甲山頂にある六甲高山植物園において、低地では栽培困難な寒冷地の植物の受入れが可能と聞いており、連携を進めてほしい。(C委員)
- 保護林として、特にブナ、イヌブナ、トチノキ等保護対象種の更新をどう考えるのか。希少種の保全はもちろん重要であるが、本来の保護林の特徴としての保護対象種の更新について、計画的に、なるべく早く、小面積でもいいのでできることから、何らかの対応を取ってほしい。(D委員)
〔事務局からの回答〕
植生保護柵等により希少な草本類等の群落を緊急的に保護しているほか、中規模的な柵等で一部更新サイトを保護しているところもあるが、保護林全体を囲っているわけではないので、基本的には自然の推移に委ねざるを得ない状況。例えば、兵庫県円山川流域のブナ帯ではシカ被害が大きいが、ブナの稚幼樹はよく見られる。今後の生長経過は分からないものの、地域差や被食に対する耐性などの種間差もあるのではないか。
◯北股暖地性昆虫生息地希少個体群保護林
- 紀伊半島特有のフロラが残っており、積極的な保全が必要。地域個体群の保護の観点から保護林の価値を見直すべき。(C委員)
- 着生植物の全体把握は困難で、調査で見つからなくても食草が絶対ないとは断定できない。将来的に見つかる可能性もあるため、他の希少種も含め、それらが着生する環境としての大径木(ツクバネガシに限らない)などを維持していくことが重要。(B委員)
◯大塔山照葉樹林希少個体群保護林
- ヒノキの天然林の価値を評価することには同意するが、照葉樹の大径木は見つからなかったものの踏査で希少種が出ている状況から、この地域特有の照葉樹林のフロラが維持されていると思うので、その観点からの評価についても落とすべきではない。(C委員)
〔事務局からの回答〕
温帯性針葉樹林と照葉樹林の両方の要素を保護対象に位置付ける考え。 - 天然生ヒノキ林分の保全に際し、尾根上のヒノキ人工林の取扱いについて今後検討が必要かもしれない。(B委員)
〔事務局からの回答〕
保護林設定時に、介在する人工林を含めて保護林化したと思料する。施業の実施は事実上困難と思われるので、必要が生じたときに、現地をよく確認して検討したい。
◯大塔山モミ・ツガ・ブナ希少個体群保護林
- 保護対象種の更新について、個体数が多いものや寿命が長いものは全般に緊急性が低くあまり心配はしていないが、トガサワラについては情報がほとんどなかったのが、調査手法を踏査に変えて状況が分かってきた。今回の報告ではトガサワラの更新サイトは見つかっておらず、個体数はかなり少ないと思われる。存続可能性が懸念されるが評価は可能か。(C委員)
- トガサワラの更新については、更新サイトにはどのような要求性があり、どの程度の確率で更新していれば健全な個体群といえるか、といった知見の蓄積が不十分な状況。このような種の存続を考える上では、林野庁だけでなくある程度オープンに研究者の参画を進めてほしい。(B委員)
◯大山森林生態系保護地域
- 当保護林は大山地域のコアエリアであるが、ほぼシカの影響は出ていないことが今回の調査で分かった。周辺地域、特にシカの侵入経路上での捕獲の継続が重要で、管理局の果たす役割は大きい。大山地域では、食痕調査による広域の被害評価を地方環境事務所が実施しているため、今回の結果を提供し、被害評価のリスクマップを更新・共有してほしい。(C委員)
◯榎平山ミズナラ・コナラ希少個体群保護林
- 当保護林周辺の国有林はほぼ人工林とのことだが、森林総研等の成果でも、保護林周辺の人工林に少しでも広葉樹が混交していると多様性が維持しやすいという話があったので、人工林の取扱いの参考とし、多様性を高めてほしい。(A委員)
〔事務局からの回答〕
国有林では、保護林周辺に限らず、人工林内に入ってきた広葉樹等は極力保残して混交させる、生物多様性に配慮した施業を実施しているが、特に保護林周辺については広葉樹の取扱いに注意して施業していきたい。
(2)令和4年度保護林設定管理要領に基づく簡素な現況調査について
- 特に意見はなく承認された。
(3)令和5年度保護林モニタリング調査等の予定について
- 特に意見はなく承認された。
(4)その他
- 保護林が果たす役割は非常に重要。例えば、今年度策定の生物多様性国家戦略、あるいは地元行政等に対して、保護林としてどのように貢献し、あるいは今後どのように貢献できそうか。(D委員)
〔事務局からの回答〕
保護林制度全体で考えるべき問題については、本庁の方で色々と検討しているがなかなか整理をつけるのが難しいと聞いている。ローカルな話として我々ができることは、モニタリング結果を今後の国有林の管理計画(保護林管理、保護対策)にしっかりと反映することであり、それをもって保護林として貢献している。また、関係府県の自然保護部局、地方環境事務所にはモニタリングの報告書を送付するとともに、情報共有・連携対策の体制構築を行っている。B委員からも指摘のあったオープンデータ化については、現実的な対応を示せる段階ではないが、国有林管理のみでなく学術的にも役立てるような形で情報をストックし、アクセスできるようにしていくことは課題と認識している。
5 資料一覧
議事次第、委員名簿、資料一覧(PDF : 228KB)
資料は全て非公開
資料1 令和4年度保護林モニタリング調査等 対象保護林位置図
資料2-1 令和4年度保護林モニタリング調査 結果一覧
資料2-2 令和4年度保護林モニタリング調査結果(詳細版)
資料2-3 令和4年度保護林モニタリング調査で確認された希少種一覧
資料2-4 令和4年度保護林モニタリング調査対象保護林 シカ等被害状況と保護対策について
資料3 令和4年度保護林設定管理要領に基づく簡素な現況調査 結果一覧及び写真
資料4 令和5年度保護林モニタリング調査予定箇所 一覧
資料5 保護林等の新設・拡張等に係る追加情報について
資料6 三川山奥~水山~本谷奥国有林に連なる天然林の状況
(参考資料)
参考1 被害レベル対応表
参考2 保護林モニタリング調査の調査体系
参考3 現地調査(植生調査関係)の選択基準
参考4 管理方針書(令和4年度保護林モニタリング調査等対象保護林)
参考5 近畿中国森林管理局保護林管理委員会設置要領
参考6 近畿中国森林管理局保護林モニタリング調査評価等部会設置要領
お問合せ先
計画保全部計画課
担当者:森林施業調整官
ダイヤルイン:050-3160-5696