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新見中央認定こども園の園児約120名を対象に森林教室を開催しました。
年長組は、植物の種子散布の学習及び種子の模型づくり、年中組と年少組は、スギの丸太切り体験及び森の素材を使った工作を行いました。
飛ぶ種(ユリノキ)で遊ぶ園児ら |
森の素材を使った工作 |
スギの丸太切り体験 |
地元ケーブルテレビの取材にこたえる細川所長 |
森林技術・支援センターでは、森林・林業の再生に向け「使う・植える・育てる」という循環が確立できるような技術開発に取り組んでいます。その中で重視しているものの一つがコンテナ苗を用いた造林技術の確立です。今回は岡山県新見市が開催した花粉症対策のためのコンテナ苗を用いた少花粉スギの植樹式に、当センターが植樹指導のため参加しましたので、その詳細を報告します。
11月10日、前日の雨模様とはうってかわり雲一つない爽天の下、新見市の市有林(0.2ha)で少花粉スギモデル林植樹式が開催されました。少花粉スギとは、普通のスギに比べて花粉量が1%以下のスギのことで、今回用いたコンテナ苗は岡山県森林研究所が開発した花粉量の少ない品種をもとに奈義町の生産者が育てたものです。植樹式には石垣正夫新見市長や林野庁森林整備部新島森林整備課長、地元保育園児ら約90人が出席しました。開会の挨拶の中で、新島課長からは「国も無花粉品種の研究を進めている。コンテナ苗と合わせて普及させたい」との話しがありました。その後、当センターの細川所長と池田専門官からコンテナ苗の植え方の説明があり、出席者は林内に入り、専用の器具で穴を開けて苗木約500本を植えました。
国内のスギ植栽地は450万haあり、平成25年は1,580万本が新植されましたが、このうち少花粉、無花粉品種が植えられたのは200万本で全体の13%しかありません。花粉症の原因は花粉以外にも排気ガスや体質などと考えられていますが、次世代が健康的に過ごすためにも少花粉、無花粉品種に切り替えていくことが必要です。岡山県では年間約2万本のスギが植えられており、平成28年までに全てを少花粉スギに切り替える予定です。
今回植栽した少花粉スギはわずか500本だけでしたが、保育園児が大人になる頃には少花粉、無花粉スギの植栽が常識となり、コンテナ苗を用いた低コスト造林技術が確立し、現在疲弊している日本の山村地域が活性化していることを期待します。
新島林野庁森林整備課長によるあいさつ |
細川所長(左)と池田専門官(右)による植栽説明 |
細川所長と園児による植樹 |
全体写真 |
10月27日:「一貫作業システムとコンテナ苗を用いた低コスト造林」の現地検討会(島根県東部農林振興センター雲南事務所及び管轄内の企業等)、於三光山国有林
9月3日:「コンテナ苗を用いた低コスト造林と列状間伐」((独)森林総合研究所村林整備農地センター中国四国整備局)於三室国有林、入開山国有林
森林技術・支援センターでは、森林技術者育成支援と技術開発の実施に加え、これまで取り組んだ技術開発の成果の普及に努めています。
9月3日には、(独)森林総合研究所森林整備農地センター中国四国整備局及び関係事務所職員約50名を対象に、「コンテナ苗を用いた低コスト造林と列状間伐」の現地検討会を開催しました。当センターからは細川所長ほか3名が参加し、始めに三室国有林で一貫作業システム(伐採と造林を同時に行なった事業地)について細川所長が説明後、昨年夏(8月下旬)に植栽した試験地において、池田専門官がコンテナ苗の植栽方法・活着状況について説明しました。午後は入開山国有林へ移動し、3回の列状間伐試験地、定性間伐試験地及び全く施業を行っていない試験地との比較などを説明しました。最後にこれまでに2回の間伐を行ったものの間伐後10年が経過した57年生のヒノキ林分において、今後の目標林型、施業方針を各事務所単位で検討いただき事務所ごとに発表してもらいました。検討結果としては、路網が整備されていること、収益が見込めること、シカ被害がない地域であることなどから、施業方針としては、主伐・再造林を選択される事務所が多かったところですが、軽度の間伐を繰り返し大径材生産に向けた長伐期施業を考える事務所などがあり、森林の将来像を描くに当たり様々な考えがあることが分かりました。
また、10月27日には島根県東部農林振興センター雲南事務所の職員及び管轄されている地域の森林組合、林業会社、合板工場の方々約20名を対象に、「一貫作業システムとコンテナ苗を用いた低コスト造林」の現地検討会を開催しました。当センターからは細川所長ほか2名が参加し、三室国有林において一貫作業システムについて、三光山国有林において、コンテナ苗の生育状況等について説明しました。島根県では大手の合板会社があるため、スギの需要は高く、スギ林の再造林への関心は高く、また、低コスト造林が喫緊の課題となっており活発な意見交換が行われました。今後、コンテナ苗は夏季植栽でも活着率が高い(枯れにくい)こと、春と秋に限定されていた植栽期間が長く、事業が特定の季節に限定されず柔軟に行えることなど、こうしたメリットを活かした施業が低コスト造林に資することが期待されます。
以上、2回の現地検討会で延べ約70名の参加者に国有林で事業を通じて実践した技術開発の成果を見ていただきました。「低コスト造林」については、コンテナ苗の生産技術をはじめとしてまだ確立したものはなく手探りの状況ですが、こうした現地検討会に参加いただいた皆様と引き続き情報交換を行いつつ、森林・林業の再生に向け「使う・植える・育てる」という循環が確立できるよう取り組んでいきたいと考えています。
細川所長による一貫作業システムの説明(三室国有林) |
池田専門官によるコンテナ苗植付方法の説明(三室国有林) |
矢野業務係長による根の説明(三光山国有林) |
夏季植栽区を踏査(三光山国有林) |
森林技術・支援センター(近畿中国)
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