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関東森林管理局

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    群馬森林管理署長が語る

    1 はじめに

      関東平野を潤す利根川の最上流部で首都圏の水源地域である群馬県には、県土面積の3分の2にあたる42万4千ヘクタールの森林があり、この森林面積は関東1都6県の中では最大です。県内の国有林は、森林全体のおよそ半分近く19万6千ヘクタールで、主に県の北東部から南西部にかけて比較的多く、これらを利根沼田、吾妻と群馬の3森林管理署で管理経営しています。

      海のない群馬県の形は、南東に首を伸ばして空を舞う鶴の姿によく例えられますが、当署の管轄区域は県の南半分、うち平野部に伸びる「鶴の頭部」など国有林のないエリア(3市7町1村)を除く8市(前橋市、高崎市、桐生市、渋川市、藤岡市、富岡市、安中市、みどり市)3町2村(多野郡神流町・上野村、甘楽郡下仁田町・甘楽町・南牧村)に所在する4万ヘクタール弱の国有林を管理経営しています。

    妙義山
    奇岩、巨岩の連なる妙義山
    榛名富士
    榛名富士


      当署管内の国有林は、群馬県を代表する赤城山、榛名山、妙義山の上毛三山に一部点在しているほか、概して県境や市町村界など行政界の近くに偏在し、長野県境付近では一部に上信越高原国立公園、妙義荒船佐久高原国定公園の指定があります。

      また、高崎市近郊で公園等も整備されている観音山、桐生市黒保根町のキャンプ場(花見ケ原、利平茶屋)、古く明治期から国内外の樹種が造林された林業の試験地・見本林で現在は県・市の協力を得て「森林公園」となっている安中市松井田町の小根山(おねやま)等々のユニークな見どころもあって、登山や自然探勝、キャンプ、野鳥観察や憩いの場など様々なアウトドア活動、森林レクリエーション利用に多くの人が訪れています。

      森林管理署では、水源の涵(かん)養、山地災害の防止、保健・休養の場の提供などそれぞれの森林で期待される機能が発揮されるよう、計画的に造林、保育、間伐をするなど森林を育成・整備し、また山崩れなどの復旧・予防対策を進めています。もちろん、国民全体の大切な国有財産である国有林の土地や立木を適切、良好に維持管理するため、山火事の予防、病虫害のような異状を発見すれば駆除・拡大防止など必要な対策にも努めています。

      さらに、間伐など森林整備や更新(伐採・再造林など森林の世代交代)に伴って得られる木材を販売し、森林の整備・保全と資源の有効活用を持続的に両立させていくことも森林管理署の仕事です。

      以下、当署管内での各種取組の一端をトピックス的に紹介します。  

    2 オオタカモデル森林

      林業生産活動と野生生物の生息・生育の場としての森林環境との調和が重視されるようになってきている中で、国有林としても希少な野生動植物を保護するなど、生物多様性の保全に配慮した取組を進めています。

      管内には、場所によって、クマタカやオオタカ、ノスリなどの猛禽類が生息しています。これら食物連鎖の上位者は、餌となる獲物を確保するため、良好かつ広がりをもった森林が必要となります。オオタカは、人の生活圏に近い里山を中心に生息していますが、スギなどの人工林を中心とする森林にも生息していて、樹齢40年前後のスギやアカマツ等の造林木であっても、巣づくりに利用します。

      また、オオタカは、小型から中型の多種の鳥類や、リスなどの小型ほ乳類を補食します。オオタカの獲物にもなる多様な小動物が、安定的に生息していくためには、伐採地などの開放地、低木層が多い若い人工林、うっそうとした高齢の人工林、広葉樹が生育する天然林など、多様なタイプの森林が存在していることが重要であり、人工林を適切に管理することによって、オオタカの生息に適した環境を維持・創出することができます。

      安中市松井田町北部にある約2千ヘクタールの国有林は「オオタカモデル森林」となっています。このエリアは、約7割が人工林で優良なスギ・ヒノキの産地でもありますが、以下の考え方を盛り込んだ独自の管理経営計画書が作成され、将来的に人工林と天然林、針葉樹林と広葉樹林、伐採後の植栽地や若齢林、成熟林など多様な森林をモザイク状に配し、生物多様性と木材資源の有効活用を両立できる森林づくりを目指しています。

    モデル林の全景
    モデル林の全景
    広葉樹を残した伐採地
    広葉樹を残した伐採地


    (1)猛禽類の獲物となる小鳥が多く生息する広葉樹林を増やしていく。
    (2)人工林は長伐期施業とし、伐採箇所の選択や面積の制限等に留意する。
    (3)人工林間伐を繰り返しながらオオタカの飛翔しやすい林内環境を目指す。
    (4)枝張りの良いスギ大木等、巣づくりに適した木は造林木でも伐らずに残す。
    (5)有識者からなる委員会を設置し、施業効果の把握等を行うモニタリングを継続する。

    3 企業・団体の皆さんとの協定等による森林づくり活動への協力

      県南部は東京から100キロメートル圏及びその周辺にあり、企業、工場等の立地も多いことから、当署には森林づくり活動に参加したい、地球環境の保全に貢献したいといった声が多く寄せられます。このため、電力や電気通信サービス、通信機器メーカー等の企業や生命保険関連財団、県林業技士会等の社会貢献、森林ボランティア活動等を行う様々な主体との間で協定や分収林契約を締結し、森林整備活動の場として国有林のフィールドを提供しています。

      なかでも総合飲料メーカー「水と生きる企業」S社では、良質の水を持続的に確保するため「天然水の森」を整備する間伐保育活動、社員研修としての森林整備体験活動を実施しているほか、大学教授や鳥類専門家、地元の自治体・農林系高校・森林ボランティア団体等を交えた協議会を組織し、造林地にシカを進入させない防鹿柵の設置、降雨等による土砂の移動状況や草本類、鳥類に関する調査研究、サクラソウの保護活動等を幅広く手がけています。(同社の取組は平成27年度森林・林業白書の中でも紹介されています。)

    4 獣害対策の実施

      近年、野生鳥獣により農作物に甚大な被害が発生して大きな問題となっていますが、森林においても、植林した苗木が食べられたり、成長した林木の樹皮を剥がされ幹を傷つけられて木材の利用価値が損なわれたりと、長年の努力苦労を台無しにしてしまうニホンジカ、ツキノワグマによる森林被害が深刻化しています。

      当署では、造林地を防鹿柵で囲ったり、動物の嫌う臭気等で近づかないようにさせる忌避剤を塗布したり、樹木の剥皮を防ぐ資材を樹幹に巻き付けるなどの防除対策を行うとともに、シカの食害を受けやすい期間を短縮させるため従来よりも大きく育った苗を試験的に植栽したり、くくりワナを設置してニホンジカを捕獲したりしています。

    クマに剥皮された造林木
    クマに剥皮された造林木
    剥皮被害対策
    剥皮被害対策(防護用資材の樹幹巻付け)

     5 民有林と連携した林産物の安定供給システム販売

      当地では民有林間伐の際、これまでスギは長さ3メートルの一般材を中心に搬出されることが多く、スギ短尺材や端材は林内に残置されがちでした。

      当署では平成26年度から地域の森林組合に呼びかけ、間伐箇所から生産されるスギ短尺材や低質材の素材(丸太)を国有林と連携して販売するようにしています。

      民有林単独では需要のなかったスギ短尺材や端材について、国有林材の販路を活かし連携・協調して出荷されるようになることで、素材の安定的な取引や有利販売が可能となるなど、資源の有効活用が図られるとともに、民有林での間伐等森林整備の促進にも繋がる効果が期待されます。

      このほか、地元自治体の目指す「持続する村づくり」に呼応してエネルギーの地産地消(熱利用、バイオマス発電)に向けた新たな共用林野を設定するなど、雇用創出や山村の活性化に協力していくこととしています。 

    スギ端材(民有林)
    スギ端材(民有林)
    協調出荷される民有林のスギ短尺材
    協調出荷される民有林のスギ短尺材

    6 むすびに

      ひところ18%台まで下がった木材自給率が31%に回復するなど国産材が見直されてきています。利用期を迎えた人工林を活用して、山村地域の活性化につなげるには、素材生産や再造林、育林に要するコストを低減させ、これら現場作業を効率的かつ着実に進めることが重要です。

      国有林においても伐採と再造林を組み合わせた一貫作業による事業発注や低密度植栽(ヘクタール当たり植栽本数2千本)といった取組を進めていくこととしています。

      群馬県では、昨年度「群馬県森林・林業基本計画」が全面的に見直され、平成31年には年間の素材生産量を平成22年比で倍増させることが目標となるなど「林業県ぐんま」の実現を加速することとされました。

      林業・木材産業の全体が底上げして、山元の素材生産事業者や森林所有者にも利益が還元されることが、林業成長産業化の理想の姿だと思います。

      森林管理署としても、民有林関係の皆さまと連携協力し、地域に少しでも貢献できる存在となるよう、関係者の皆さま方とともに努力していきたいと考えていますので、ご理解をいただきたくよろしくお願いいたします。

    お問合せ先

    総務企画部 総務課
    担当者:広報
    ダイヤルイン:027-210-1158

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