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林野庁

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里山林の広葉樹循環利用のすすめ

里山林の広葉樹の現状

コナラ、クヌギなどの広葉樹が大部分を占める里山林は、明治期以前の古くから、薪や炭などの燃料、山菜等の食糧、農業用の肥料・資材の採取など、様々な用途に利用されてきました。こうした里山林は、20~30年程度の間隔で伐採と萌芽による更新を繰り返し、比較的直径が細く、樹高も低い株立ちした樹木からなる森林でした。

その後、薪炭の需要は昭和30年代の燃料革命によって激減し、薪炭用材向けとしての伐採が減少する一方、しいたけなどきのこ原木の供給のための伐採が盛んになった時期もありましたが、近年では、安価な中国産乾しいたけの輸入増加や菌床栽培による生産の増加とともに、きのこ原木の供給のための伐採も減少してきています。

こうした状況の中で、里山林の多くは、直径が太く樹高も高い森林に変化しています。

近年になって、広葉樹は、薪ストーブの普及が広がるなど環境への関心の高まりとともに需要が増加しつつあります。また、東日本大震災により、多くの地域できのこ原木の使用等が制限されている状況から、全国的なきのこ原木不足が生じています。このため、これらの資源を循環利用し、安定供給することが喫緊の課題です。 

紀州備長炭の原料となるウバメガシ林      大径化しつつあるナラ林
   紀州備長炭の原料となるウバメガシ林                   大径化しつつあるナラ林

なぜ里山林の整備が必要なのか

適切な薪炭・きのこ原木の生産

薪炭・きのこ原木となる広葉樹のコナラ、クヌギ、ミズナラ、カシ等は、それぞれ製炭、きのこ生産に適する伐採適齢期(茶炭原木のクヌギは7年~8年、黒炭原木のナラや、白炭原木のカシ類は20年~30年程度、きのこ原木のコナラ、クヌギは20年程度が目安)があります。適齢期を過ぎ大径木となると、製炭および原木きのこ生産には不向きとなり、市場価値が極端に落ちるだけでなく、萌芽更新が促進されにくいため、里山林の利用にも支障をきたします。
 広葉樹循環利用
                   (図)里山林の循環利用のイメージ

ナラ枯れ防止

近年、カシノナガキクイムシが媒介するナラ菌(学名:Raffaelea quercivora)により、ナラ類、カシ類、シイ類が集団で枯損する「ナラ枯れ」が本州の日本海側を中心に発生しています。
この病気は高齢な巨木の方がかかりやすいため、用材生産などを目的にした長伐期の施業では、ナラ枯れが発生する危険性が高くなります。これに対し、薪炭・きのこ原木を供給する短伐期の施業ではナラ枯れの発生が少ないことが知られているので、薪炭・きのこ原木としての利用は、この被害拡大を防止する意味でも重要です。
ナラ枯れ被害
ナラ枯れ被害(写真提供:一般社団法人 日本森林技術協会)

獣害被害の防止

近年、野生獣類が市街地まで出没し、農作物さらには人にまで被害を加え問題になっています。放置されてヤブと化した雑木林は、クマやイノシシなどにとって格好の隠れ家です。さらにナラ類等が高木化することにより結実量が増えれば、餌場にもなります。放置された雑木林を整備することは、人里に居座り始めた野生獣類を、山に押し戻す効果的な手段でもあります。

生物多様性の保全

チョウ類や各種野生きのこなど、里山林のような比較的明るい環境を好む生き物の多くは、放置された里山林が暗い環境の森林に変化することにより、その生息・生育環境が失われることが懸念されています。荒廃した里山林を整備することは、里山林特有の生物多様性の保全に効果が期待できます。 

参考文献:津布久隆(2008)補助事業を活用した里山の広葉樹林管理マニュアル 一般社団法人全国林業改良普及協会
               独立行政法人森林総合研究所関西支所(2009)里山に入る前に考えること

里山林の整備に対する主な支援

林業・木材産業成長産業化促進対策(内部リンク)
森林の整備・保全の推進を図る目的として、特用樹林造成に必要な経費について都道府県等に対し一体的に支援。 

森林・山村多面的機能発揮対策交付金(内部リンク)
地域住民、森林所有者、自伐林家等が協力して行う、地域の森林の保全管理等の取組に対し、一定の費用を支援。

森林環境保全直接支援事業(内部リンク)
集約化を図り、間伐やこれと一体となった路網の整備、主伐後の再造林等を推進。広葉樹林等を主体とする里山林であっても、森林経営計画が作成されている森林であれば、支援対象。

お問合せ先

林政部経営課特用林産対策室
担当:特用林産指導班
代表:03-3502-8111(内線6086)
ダイヤルイン:03-3502-8059