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林野庁

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第 VI 章 東日本大震災からの復興

1. 復興に向けた森林・林業・木材産業の取組

(1)森林等の被害と復旧状況

東日本大震災により、15県で林地荒廃、治山・林道施設の被害等が発生。そのうち災害復旧等事業により実施する箇所の大部分が工事に着手済みで、94%の工事が完了。

被災した木材加工・流通施設(全国115か所)について、廃棄・復旧・整備等を支援し、97か所が操業を再開済み。林業生産や木材製品の生産は、おおむね震災前の水準にまで回復。


(2)海岸防災林の復旧・再生

被災状況や地域の実情、地域の生態系保全の必要性に応じた再生方法等を考慮しながら、海岸防災林の復旧・再生に向けた取組を実施。2020年度までの復旧完了を目標。

津波により被災した海岸防災林の要復旧延長は約164km。帰還困難区域等を除き、約161kmで復旧工事に着手済み(うち約82kmで工事完了)。

植栽・保育に当たっては地域住民や企業、NPO等も参加。苗木が計画的に確保されるよう、抵抗性クロマツを含む苗木の安定供給体制の確立に向けた取組を実施。

事例 民間活力を導入した海岸防災林の再生の取組

宮城県名取市の海岸防災林等では、平成23(2011)年から、「名取市海岸林再生の会」及び「公益財団法人オイスカ」が「東日本大震災復興支援 海岸林再生プロジェクト10ヵ年計画」により、クロマツ等の苗木の育苗、植栽、下刈り・除伐・つる切り等の保育作業等を実施。民間資金を活用するとともに、地域住民による苗木の自家生産や地元への保育作業の委託等を通じて地域の雇用を創出。

平成29(2017)年には、海岸防災林を重要なインフラと考え、将来にわたる保全を視野に活動を行ってきたことが評価され、「第1回インフラメンテナンス大賞」の農林水産大臣賞を受賞。


(3)復興への木材の活用と森林・林業の貢献

応急仮設住宅の4分の1以上(約1万5千戸)を木造で建設。災害公営住宅(構造判明戸数)の約3割(約9千戸、平成29(2017)年9月末時点)を木造で建設又は建設予定。

被災者の住宅再建に向けた「地域型復興住宅」を提案する取組、非住宅建築物や土木分野の復旧・復興事業に地域の木材等を活用する取組も進捗。

地震と津波により発生した大量の災害廃棄物のうち、木質系災害廃棄物は木質ボードの原料やボイラー燃料、発電等に利用。

被災地には震災以前から、人口減少や産業空洞化といった全国の地域にも共通する課題。解決に向け、林業・木材産業分野でも森林資源の活用を通じた取組を実施。

事例 CLTパネル工法による復興公営住宅が完成

平成30(2018)年2月、福島県いわき市に、CLTパネル工法による3階建ての復興公営住宅が完成。燃えしろ設計により1時間準耐火構造とし、2,295m3のCLTを含む合計2,512m3の木材を使用。

CLTパネル工法の採用により、 CLTの普及促進や施工ノウハウの蓄積を図るとともに、一般的な鉄筋コンクリート住宅の6割程度にまで工期を短縮し、早期の住宅供給に貢献。


2. 原子力災害からの復興

(1)森林の放射性物質対策

「福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組」(平成28(2016)年3月)に基づき、国は県・市町村と連携しつつ、生活環境の安全・安心の確保、住居周辺の里山の再生、奥山等の林業の再生に向けた取組や、調査研究等の将来に向けた取組、情報発信等の取組を実施。

避難指示解除区域等においてモデル地区を選定し、里山再生に向けた取組を総合的に推進する「里山再生モデル事業」を実施。間伐等の森林整備については、平成30(2018)年3月末時点で、川俣町及び広野町で作業完了、川内村、葛尾村、伊達市、富岡町、浪江町及び飯舘村で実施中。

公的主体による森林整備とその実施に必要な放射性物質対策を行う林業再生対策を、平成29(2017)年度までに福島県内42市町村で実施。

森林内の放射性物質の分布状況の推移等について調査・研究を実施。

森林における放射性物質の分布等に係る知見を始めとした、森林・林業再生のための取組等について、シンポジウムや展示等の普及啓発活動を通じた、最新の情報の提供やコミュニケーションを実施。

事例 東京都内で福島県産の木材・木製品・林産物等の展示を実施

平成29(2017)年12月、農林水産省「消費者の部屋」(東京都千代田区)及び「日本橋ふくしま館MIDETTE(ミデッテ)」(東京都中央区)において、福島県産の木材・木製品・林産物等を紹介する展示を開催。木製品、きのこ加工品の展示や、福島県内で林業・木材産業等の分野で活躍している人を紹介する映像の上映等を実施。

同展示品の一部は、同11月及び12月に福島県と東京都の2か所において開催された「福島の森林・林業再生に向けたシンポジウム」の会場でも紹介。これらの情報発信により、福島における森林の現状への理解の促進、幅広い関係者の参画・連携の下での福島の森林・林業再生に向けた取組の進展に期待。

(2)安全な林産物の供給

食品中の放射性物質の基準値(一般食品は100Bq/kg)に基づき、特用林産物23品目に出荷制限(平成30(2018)年1月現在)。

「放射性物質低減のための原木きのこ栽培管理に関するガイドライン」に基づき栽培管理を行い、基準値を超えるきのこが生産されないと判断された場合に出荷制限を解除。きのこ等の生産継続・再開に向けて支援。また、野生のきのこ・山菜等の出荷制限の解除も進みつつある状況。

福島県産きのこ原木の減少に対応し、原木の安定供給に向けて需給のマッチング等を推進。

(3)樹皮やほだ木等の廃棄物の処理

燃料や堆肥等に利用されていた樹皮(バーク)は、放射性物質の影響により製材工場等に一部滞留したが、廃棄物処理場での処理を支援し滞留量が減少。使用できなくなったほだ木等の処理も必要。

(4)損害の賠償

林業関係では、避難指示等に伴う事業への支障や原木しいたけの減収等に関する損害賠償が実施。平成26(2014)年9月からは避難指示区域内の森林に係る財物賠償の請求受付、平成27(2015)年3月からは避難指示区域以外の福島県内の立木についても財物賠償の請求受付が実施。

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219