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林野庁

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第 IV 章 木材産業と木材利用

1. 木材需給の動向

(1)世界の木材需給の動向

世界の木材消費量は2008年秋以降減少したが、2010年以降は再び増加傾向。

北米では針葉樹製材の消費が回復傾向。欧州では中国と米国向けの針葉樹製材の輸出が増加。ロシアでは針葉樹製材の輸出が過去最高で、中国が最大の輸出先。中国では針葉樹丸太の輸入が減少したが、15年連続で世界第一の針葉樹丸太輸入国。

平成28(2016)年12月には環太平洋パートナーシップ(TPP)が国会承認、その国内実施法が可決・成立。「総合的なTPP関連政策大綱」に基づき、国際競争力の強化を図るため、合板・製材工場等の施設整備や間伐及び路網整備への支援、違法伐採対策、林産物の輸出対策に取り組み。



(2)我が国の木材需給の動向

木材需要量は、平成21(2009)年を底にやや持ち直しているものの、リーマンショック前の平成20(2008)年の水準には達しておらず、平成27(2015)年には7,516万m3(丸太換算、以下同じ)。

国産材供給量は、平成14(2002)年を底に増加傾向で推移し、平成27(2015)年には2,492万m3。燃料用チップを含む燃料材は前年比52%増の281万m3となり、大幅に増加。

木材輸入量は、平成8(1996)年をピークに減少傾向で推移し、平成27(2015)年には5,024万m3。約9割が製品での輸入。

木材自給率は、平成14(2002)年を底に回復傾向で、平成27(2015)年には5年連続で上昇し、33.2%。



(3)木材価格の動向

平成28(2016)年の国産材の素材価格、国産材のスギの製材品価格は、前年並み。

国産木材チップ価格は上昇。輸入木材チップ価格は下落。



(4)違法伐採対策

我が国は、「違法に伐採された木材は使用しない」という基本的な考え方に基づき、適正に生産された木材を利用する取組を推進。

「 グリーン購入法基本方針」に基づき、政府調達の対象を合法性が証明された木材(合法木材)とするとともに、民間企業、一般消費者に合法木材の使用を普及啓発。

平成28(2016)年5月に、「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)が成立。平成29(2017)年5月の施行に向けて、説明会の開催等により同法の内容の周知や普及に取り組み。



(5)木材輸出対策

平成28(2016)年の木材輸出額は前年比4%増の238億円。

平成28(2016)年5月に政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」が「農林水産業の輸出力強化戦略」を取りまとめ。スギ・ヒノキについて、丸太中心の輸出から、我が国の高度な加工技術を活かした製品の輸出への転換を推進するとともに、新たな輸出先国の開拓に取り組み。

事例 各地域における木材輸出の取組

〈鹿児島県・宮崎県〉

県境を越えた近隣の4森林組合が連携して木材輸出戦略協議会を設立。丸太輸出量全国第1位の志布志港(鹿児島県志布志市)を活用してスギ、ヒノキ丸太を輸出。

今後、付加価値の高い良質材等の更なる輸出拡大に取り組み。

 

〈岡山県〉

美作材輸出振興協議会が、県産ヒノキ製材品を展示・販売するアンテナショップをソウル近郊の城南市に開設。

同施設を拠点に、販路開拓の強化や市場調査等にも取り組み。



2. 木材産業の動向

木材産業は、林業によって生産される原木を様々な木材製品に加工し、消費者・実需者のニーズに応じて製材や合板など様々な木材製品を供給。

我が国の木材産業では、競争力のある木材製品を供給できる体制の構築が課題。林野庁では、引き続き、品質及び性能の確かな製品を低コストで安定供給するため、木材加工・流通施設の整備等に対して支援。

近年、大型の製材・合板工場等の整備が進展しており、木質バイオマスエネルギー利用が拡大の傾向を見せる中、安定的かつ効率的な原木調達が課題。

原木の安定供給体制の構築を図るため、施業及び林地の集約化、主伐・再造林対策の強化等による原木供給力の増大、木材の生産・流通等の状況に応じて、地域の核となる者が原木を取りまとめて供給する体制への転換、川上・川中・川下のマッチングの円滑化を推進。

製材業では、出荷量は減少傾向。素材入荷量の7割が国産材で年々増加。大規模工場に生産が集中する傾向。JAS(日本農林規格)製品、乾燥材等の品質・性能の確かな製品の供給が必要。人工乾燥材の出荷量は増加傾向。

集成材製造業では、国産材を原料とした集成材が徐々に増加しているものの、供給量に占める割合は15%。

合板製造業では、素材入荷量に占める国産材の割合は8割まで上昇。輸入製品を含む合板用材全体に占める国産材の割合は36%。

木材チップ製造業では、原料のほとんどが国産材である一方、輸入木材チップを含む木材チップ消費量全体に占める国産木材チップの割合は3分の1程度。

プレカット加工業については、木造軸組構法におけるプレカット材利用率が91%まで拡大。プレカット工場では、材料を輸入材から国産材に転換する動きも。

国内の製材工場における素材入荷量と国産材の割合

データ(エクセル:99KB)
         合板用材の供給量の推移

データ(エクセル:101KB)

3. 木材利用の動向

(1)木材利用の意義

木材利用は、快適で健康的な住環境等の形成に寄与するだけでなく、地球温暖化の防止、森林の多面的機能の持続的発揮や地域経済の活性化にも貢献。


(2)住宅分野における木材利用

我が国における木材需要の約4割、国産材需要の過半が建築用材。新設住宅着工戸数の約半分は木造。住宅向け建築用材の需要が、特に国産材の需要にとって重要。

関係事業者が連携して地域で流通する木材を利用した家づくり(「顔の見える木材での家づくり」)を推進。木材利用の促進に向けた設計者等の人材の育成も支援。


(3)公共建築物等における木材利用

法律に基づき公共建築物等における木材の利用を促進。公共建築物以外での木材利用も促進するため、県産材の利用について条例を制定する動きも。

平成27(2015)年度に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は11.7%となり、前年度から1.3ポイント増加。都道府県ごとの木造率は、低層で5割を超える県がある一方、都市部では低位など、ばらつきがある状況。

平成27(2015)年度に国が整備した公共建築物で、積極的に木造化を促進するとされた110棟のうち木造は60棟(54.5%)。また、内装等の木質化を行った建築物は186棟。

学校の木造化や非住宅分野における木材利用のほか、液状化対策用の木杭やコンクリート型枠(かたわく)用合板など土木分野における木材利用も推進。

事例 国内初の木造3階建て校舎が完成

平成29(2017)年3月、山形県鶴岡市に、「1時間準耐火構造の建築物」の木造3階建ての高校の校舎が完成。構造用集成材のほか、CLTも採用。同校の学校林から伐り出したスギ等の地域材も活用。

        

コラム 熊本地震における木造住宅の耐震性

一般社団法人日本建築学会、国土交通省国土技術政策総合研究所及び国立研究開発法人建築研究所は熊本県益城町において被害調査を実施。旧耐震基準の木造建築物の倒壊率が高かった一方で、昭和56(1981)年6月の新耐震基準導入以降の木造建築物では、接合部の仕様等が明確化された平成12(2000)年以降の木造建築物の倒壊率が特に低いとの結果が明らかに。

資料:「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書」(平成28(2016)年9月)


(4)木質バイオマスのエネルギー利用

エネルギー源として利用されている木質バイオマスは、製材等残材、建設資材廃棄物、間伐材・林地残材等。間伐材・林地残材等について、木材チップや木質ペレットの形でエネルギーとして利用された量は年々増加。

近年、公共施設、一般家庭、施設園芸等において、木質バイオマスを燃料とするボイラーやストーブの導入が進展。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度を活用した木質バイオマス発電施設が各地で稼動。地域経済への効果が期待される一方、木質バイオマスの安定供給の確保等が課題。

事例 木質バイオマス発電を地域の連携で推進

平成28(2016)年12月、兵庫県朝来市で関係5者が締結した協定に基づく木質バイオマス発電事業が開始。未利用木材の活用を促進し、林業再生や地域経済の活性化、再生可能エネルギーの普及・拡大を図る。


(5)消費者等に対する木材利用の普及

一般消費者を対象に木材利用の意義を普及啓発する「木づかい運動」を展開しており、「ウッドデザイン賞」では、木の良さや価値を再発見させる製品や取組について、特に優れたものを消費者目線で評価、表彰。子どもから大人までが木の良さや利用の意義を学ぶ「木育(もくいく)」も推進。

事例 木の特徴に着目した新たな分野での木材利用の取組

創設2年目となる「ウッドデザイン賞」では、トヨタ自動車株式会社の「コンセプトカーSETSUNA」が、農林水産大臣賞(最優秀賞)を受賞。コンセプトである「歳月を経て変わることを愛でる」を具現化するため、「木」を材料として採用。これまで木材利用とは縁が薄いと考えられていた他の業種・業態への木材利用の波及に期待。

お問合せ先

林政部企画課

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