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林野庁

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第2部 I 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策

1 面的まとまりをもった森林経営の確立

(1)実効性の高い森林計画制度の普及及び定着

地域の森林整備のマスタープランとして、地域に最も密着した行政機関である市町村が策定する市町村森林整備計画について、国及び都道府県が例示する森林の機能等を参考に、森林・林業関係者をはじめとする国民の理解と協力を得ながら、市町村が主体的かつ柔軟に、発揮を期待する機能ごとの区域とその施業方法を決定するとともに、これらの区域や路網計画等の図示化が進むよう、都道府県に対する助言等を行った。


(2)適切な森林施業の確保

適切な伐採及び更新の確保を推進するため、伐採及び伐採後の造林の届出制度の適正な運用を図った。

適正な間伐又は保育が実施されていない森林に対しては、行政の裁定による施業の代行を行う要間伐森林制度の適正な運用等を図った。

また、伐採に係る手続が適正になされた木材の証明等の普及を図った。


(3)路網整備の推進

傾斜区分別の作業システムに応じた目指すべき路網整備の水準を目安として、地域の実情を踏まえ、林道や森林作業道がそれぞれの役割等に応じて適切に組み合わされた路網の整備を推進した。

また、林業専用道等の機能強化のため、局部構造の改良等を推進したほか、既設林道の長寿命化を図るため、トンネルや橋梁(りょう)等の計画的・定期的な点検診断・補強等を推進した。


(4)森林関連情報収集・提供の推進

持続的な森林経営の推進及び地域森林計画等の樹立に資するため、民有林と国有林を通じ、森林土壌や生物多様性等の森林経営の基準・指標に係るデータを継続的に把握するための森林資源のモニタリングを引き続き実施するとともに、データの公表及び活用を進めた。

森林簿情報について、施業履歴等の明確化や精度向上を図り、都道府県と市町村等との間での共有化を進めるとともに、森林施業の集約化を図るため、森林経営計画の作成等に必要な森林情報が、個人情報保護に関する法令等に則しつつ、森林組合等の林業事業体に提供されるよう、都道府県に対する助言等を行った。

また、森林所有者情報や境界情報については、新たに森林の土地の所有者となった場合の市町村長への届出制度の適正な運用を図るとともに、登記簿、地籍調査等の情報について、地方公共団体など行政機関の間での共有を推進し、データベース化を進めた。


2 多様で健全な森林への誘導

(1)多様な森林への誘導と森林における生物多様性の保全

健全な森林の育成のための間伐はもとより、長伐期林、育成複層林、針広混交林、広葉樹林等多様で健全な森林への誘導に向けた効率的な整備を推進した。

具体的には、一定の広がりにおいて様々な生育段階や樹種から構成される森林がモザイク状に配置されている状態を目指し、立地条件等を踏まえつつ、育成複層林への移行や長伐期化等による多様な森林整備を推進した。さらに、これらの推進に向けた効率的な施業技術の普及やコンセンサスの醸成等を図った。

加えて、原生的な森林生態系、希少な生物の生育地又は生息地、渓畔林など水辺森林の保全及び管理等を進め、森林における生物多様性の保全と持続可能な利用の調和を図った。


(2)多様な森林整備に資する優良種苗の確保

主伐後の再造林を確実に実施するとともに、花粉発生源対策や地球温暖化防止等の社会的なニーズに対応した優良種苗の安定供給を図るため、種穂の生産拡大に対して支援したほか、新たな品種の開発に取り組んだ。

また、これらの優良種苗の生産拡大に向けて、コンテナ苗を低価格で大量に供給するための生産施設等の整備、コンテナ苗生産の技術研修等の取組に対して支援した。


(3)公的な関与による森林整備の推進

急傾斜地など立地条件が悪く、自助努力によっては適切な整備が図られない森林等について、公益的機能の発揮を確保するため、針広混交林の造成等を行う水源林造成事業等を実施するとともに、地方公共団体が森林所有者と締結する協定に基づき行う森林の整備等や、鳥獣被害対策を支援した。

また、荒廃した保安林等について、治山事業による整備を実施した。


(4)花粉発生源対策の推進

ア 少花粉スギ等の花粉症対策苗木の生産体制の整備

少花粉スギ等の苗木生産量の増大を図るため、採種園等の整備、コンテナ苗を低コストで大量に供給するための生産施設等の整備、人工交配による種子の生産拡大のための取組、コンテナ苗の利用拡大のための協議会の設置や技術研修等の取組を支援しつつ、無花粉スギ品種等の開発に取り組むとともに、コンテナ苗の需要拡大に取り組んだ。

イ 花粉の少ない森林への転換等の推進

森林所有者に対する花粉症対策苗木への植替えの働きかけを支援するとともに、花粉発生源となっているスギ人工林等の伐倒とコンテナを用いて生産された花粉症対策苗木への植替え、広葉樹の導入による針広混交林への誘導等を推進した。また、花粉飛散量予測のためのスギ雄花着生状況調査や、ヒノキ雄花の観測技術の開発等を推進した。


3 地球温暖化防止策及び適応策の推進

(1)地球温暖化防止策の推進

平成32(2020)年度及び平成42(2030)年度における我が国の温室効果ガス削減目標の達成に向け、京都議定書第2約束期間(平成25(2013)年から平成32(2020)年まで)における森林経営による吸収量の国際的算入上限である1990年総排出量比3.5%を確保できるよう、「森林・林業基本計画」や「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」(平成20年法律第32号)等に基づき、間伐等の森林の適正な整備や保安林等の適切な管理及び保全、成長に優れた種苗の確保に向けた生産体制の構築、「国民参加の森林(もり)づくり」、木材及び木質バイオマスの利用拡大、「木づかい運動」等の森林吸収源対策を推進した。


(2)吸収量の確保及び検証体制の強化

京都議定書第1約束期間(平成20(2008)年から平成24(2012)年まで)に引き続き、平成25(2013)年以降においても森林吸収量を算定し、報告する義務があるため、土地利用変化量や伐採木材製品(HWP)の炭素蓄積変化量の把握等必要な基礎データの収集及び分析を行った。あわせて、条約事務局による国際審査等に備え、技術的課題の分析及び検討を行った。


(3)地球温暖化の影響に対する適応策の推進

平成27(2015)年8月に策定された「農林水産省気候変動適応計画」及び同11月に閣議決定された「気候変動の影響への適応計画」に基づき、地球温暖化との関連性が指摘されている集中豪雨等に起因する山地災害への対応、将来影響について知見の少ない人工林等における影響把握等の研究・技術開発等を推進した。


(4)地球温暖化問題への国際的な対応

気候変動に関する国際的な枠組みづくりに積極的に参画し、貢献するとともに、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)(*1)におけるREDD+(*2)の実施ルールを検討した。また、開発途上国の森林劣化の防止に資する技術開発及び人材育成、森林減少及び劣化を抑制する場合の機会費用等の分析、森林保全が経済価値を創出する事業モデルの開発、民間企業等によるREDD+への参入等に対して支援した。


(*1)開発途上国において優れた低炭素技術の普及や緩和活動を実施し、開発途上国の持続可能な開発に貢献するとともに、温室効果ガス排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価し、日本の削減目標の達成に活用する制度。

(*2)開発途上国の森林減少及び劣化に由来する温室効果ガスの排出の削減(REDD: Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation in developing countries)に、森林炭素蓄積の保全、持続可能な森林経営及び森林炭素蓄積の強化を加えたもの。



4 東日本大震災等の災害からの復旧、国土の保全等の推進

(1)被災した海岸防災林の復旧及び再生

潮害の防備、飛砂・風害の防備等の災害防止機能を有し、地域の生活環境の保全に重要な役割を果たしている海岸防災林について、被災箇所ごとの地形条件及び地域の合意形成の状況等を踏まえながら、津波に対する減災機能も考慮した復旧及び再生を推進した。

なお、生育基盤の造成等に当たっては、災害廃棄物由来の再生資材を活用することにより災害廃棄物処理の促進に貢献するとともに、NPO等の民間団体とも連携しつつ植栽等を推進した。


(2)災害からの復旧の推進

東日本大震災や平成27(2015)年及び平成28(2016)年の台風に伴う集中豪雨等により被災した治山施設について、治山施設災害復旧事業(*3)により復旧を図るとともに、集中豪雨等により新たに発生した崩壊地等のうち緊急を要する箇所について、災害関連緊急治山事業等により早期の復旧整備を図った。

また、林道施設、山村環境施設及び森林に被害が発生した場合は、林道施設災害復旧事業(*4)、災害関連山村環境施設復旧事業及び森林災害復旧事業(激甚災害に指定された場合)(*5)により、早期復旧を図った。

さらに、平成28(2016)年4月の熊本地震や8月以降に相次いで発生した台風に伴う集中豪雨等による大規模災害発生時には、森林管理局においてヘリコプターによる被害箇所の調査を実施するとともに、山地災害が確認された場合には、災害復旧についての助言を行う専門家の派遣等、地方公共団体に対する支援を迅速かつ円滑に実施した。

特に、熊本地震で震度6弱以上を記録した市町村を中心に、航空レーザ計測によって林地の亀裂や崩壊箇所を把握し、関係県及び市町村に情報提供した。また、被災した治山施設の復旧について、特定民有林直轄治山施設災害復旧事業(*6)による直轄施行を実施した。


(*3)「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」(昭和26年法律第97号)に基づき被災した林地荒廃防止施設及び地すべり防止施設を復旧する事業。

(*4)「農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律」(昭和25年法律第169号)に基づき被災した林道施設を復旧する事業。

(*5)「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(昭和37年法律第150号)に基づき被災した森林を復旧する事業。

(*6)「森林法施行規則」(昭和26年農林省令第54号)に基づき、被災した都道府県が管理する治山施設等を国が直轄施行により復旧する事業。



(3)保安林の適切な指定・管理の推進

水源の涵(かん)養、土砂流出の防備等の公益的機能の発揮が特に要請される森林について保安林に指定するなど、保安林の配備を計画的に推進するとともに、衛星デジタル画像等を活用した保安林の現況等に関する総合的な情報管理や巡視及び指導の徹底等により、保安林の適切な管理の推進を図ったほか、伐採、転用規制等の適切な運用を図った。


(4)地域の安全・安心の確保のための効果的な治山事業の推進

近年、頻発する集中豪雨や地震等による大規模災害の発生のおそれが高まっていることを踏まえ、山地災害による被害を未然に防止し、軽減する事前防災・減災の考え方に立ち、地域の安全・安心を確保するため、効果的かつ効率的な治山対策を推進した。具体的には、山地災害の発生する危険性の高い地区のより適確な把握に向け、山地災害危険地区の再調査を推進した。また、山地災害を防止し、地域の安全性の向上を図るための治山施設の設置等のハード対策や、地域における避難体制の整備等のソフト対策と連携して、山地災害危険地区を地図情報として住民に提供するなどの取組を総合的に推進した。さらに、重要な水源地や集落の水源となっている保安林等において、浸透能力及び保水能力の高い森林土壌を有する森林の維持・造成を推進した。

集中豪雨等により発生した山地災害の早期の復旧整備を推進するとともに、荒廃山地の復旧等と荒廃森林の整備の一体的な実施、治山施設の機能強化を含む長寿命化対策やコスト縮減対策、海岸防災林の整備・保全対策等を推進した。

また、国有林と民有林との連携による計画的な事業の実施、他の国土保全に関する施策と連携した流木災害対策の実施、工事実施に当たっての木材の積極的な利用、生物多様性の保全等に配慮した治山対策を推進した。


(5)松くい虫等の病害虫防除対策等の総合的かつ効率的実施

マツ材線虫病による松くい虫被害対策については、保全すべき松林において、被害のまん延防止のための薬剤散布、被害木の伐倒駆除や健全な松林を維持するための衛生伐(*7)を実施するとともに、その周辺の松林において、広葉樹林等への樹種転換を推進した。また、抵抗性マツ品種の開発及び普及を促進した。

カシノナガキクイムシが媒介するナラ菌による「ナラ枯れ」被害対策については、予防や駆除を積極的に推進した。林野火災の予防については、全国山火事予防運動等の普及活動や予防体制の強化等を図った。

さらに、各種森林被害の把握及び防止のため、森林保全推進員を養成するなどの森林保全管理対策を地域との連携により推進した。


(*7)被害木を含む不用木及び不良木の除去及び処理。



(6)野生鳥獣の生息動向に応じた効果的な森林被害対策の推進

「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」(平成19年法律第134号)を踏まえ、関係府省等による鳥獣保護管理施策との一層の連携強化を図りつつ、野生鳥獣による被害及びその生息状況を踏まえた効果的な森林被害対策を推進するとともに、シカの広域的な捕獲をモデル的に実施するなど地域の実情に応じた各般の被害対策を促進するための支援措置等を行った。

また、地域の実情に応じて、野生鳥獣の生息環境となる針広混交の育成複層林や天然生林に誘導するなど、野生鳥獣との共存に配慮した対策を適切に推進した。


5 森林・林業の再生に向けた研究・技術の開発及び普及

(1)研究・技術開発等の効率的かつ効果的な推進

森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略等を踏まえ、国及び国立研究開発法人森林総合研究所が都道府県の試験研究機関、大学、学術団体、民間企業等との産学官連携の強化を図りつつ、研究・技術開発を効率的かつ効果的に推進した。

ア 試験研究の効率的推進

国立研究開発法人森林総合研究所において、「森林・林業基本計画」や「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号)等に基づく森林・林業施策について、その優先事項を踏まえ、

(ア) 森林の多面的機能の高度発揮に向けた森林管理技術の開発

(イ) 国産材の安定供給に向けた持続的林業システムの開発

(ウ) 木材及び木質資源の利用技術の開発

(エ) 森林生物の利用技術の高度化と林木育種による多様な品種開発及び育種基盤技術の強化

等を推進した。

また、効率的な研究及びその成果の活用を図るため、国立研究開発法人森林総合研究所が主導的な役割を担いつつ、都道府県の試験研究機関等と連携して試験研究を推進した。

イ 森林・林業・木材利用に関する技術の開発

林業の収益性の向上や木材需要に対応した原木の安定供給等を着実に推進するため、

(ア) 素材や木質バイオマスの生産を効率化する林業機械の開発・改良

(イ) 低コスト造林技術等の実証によるデータの収集・整理及びその導入に向けたノウハウの提案

等を実施した。

また、林地残材や未利用間伐材等を活用するため、これらを原料とする、CNF(セルロースナノファイバー)等の付加価値の高い製品や熱効率の高い固形燃料の製造技術や利用技術の開発等、新たな木質バイオマスの加工や利用に関するシステム開発を支援した。


(2)放射性物質による影響の調査とそれに対応した技術開発等

東京電力福島第一原子力発電所事故により放射性物質に汚染された森林について、汚染実態を把握するため、樹冠部から土壌中まで階層ごとに分布している放射性物質の挙動に係る調査及び解析を行った。

また、汚染された森林における放射性物質対策に係る技術の早期確立を目指し、森林施業等による放射性物質の拡散防止効果の検証や、県及び市町村との連携による必要なデータの蓄積等の取組を推進した。加えて、避難指示解除準備区域等において、試行的な間伐を通じた作業者の被ばく低減対策など、避難指示解除後における林業の円滑な再開に向けた知見を整理するための実証事業を実施した。

さらに、消費者に安全な木材製品を供給するため、木材製品や作業環境等に係る放射性物質の調査及び分析、放射性物質の効率的な除去・低減技術の検証及び測定検査手法の開発・検証並びに安全証明体制の構築に対して支援した。

加えて、放射性物質が付着したことにより利用できず、製材工場等に滞留している樹皮(バーク)の処理費用等に対して支援した。

このほか、被災地における森林整備を円滑に進めるため、伐採に伴い発生する副産物の減容化や、木質バイオマスの利用の推進、ほだ木等の原木林の再生等に向けた実証的な取組を進めた。


(3)効率的かつ効果的な普及指導の推進

国と都道府県が共同した林業普及指導事業を実施するとともに、都道府県間の均衡のとれた普及指導水準を確保するための林業普及指導員の資格試験や研修を行ったほか、林業普及指導員の普及活動に必要な機材の整備等の経費について林業普及指導事業交付金を交付した。

また、地域全体の森林(もり)づくりや林業の再生に向けた構想及びその実現に向けた活動の展開を図るため、林業普及指導事業等を通じ、地域の指導的林業者、施業等の集約化に取り組む林業事業体、市町村等を対象とした重点的な普及活動を効率的かつ効果的に推進した。

さらに、林業研究グループに対する支援のほか、各人材の育成段階や専門分野に応じた研修を実施することにより、林政の重要な課題に対応するための人材の育成を図った。


6 森林を支える山村の振興

(1)地域特産物の振興等による山村の就業機会の増大

きのこ生産に必要な資材の安定供給を図るとともに、新たな需要の創出を通じた特用林産物の消費拡大を図るため、

(ア) コーディネーターによる需給情報の提供を通じたきのこ原木等の安定供給体制の構築

(イ) 新たな需要の創出に向け、新規用途開拓など品目別の課題の解決に向けた取組

に対して支援した。

また、原木しいたけの需要や価格の回復基調を定着させるため、生産性や品質向上に向けた取組に対して支援するとともに、竹材の需要拡大に向け、新規用途の開拓や竹材生産情報の収集等の取組に対して支援した。

さらに、東日本大震災の被災地等において、その復興や食料供給の場の形成及び特用林産施設の効率化を推進するため、生産、加工及び流通施設の整備や被災生産者等のきのこ等の生産再開に必要な生産資材の導入を支援した。


(2)放射性物質の影響に対応した安全な特用林産物の供給確保

安全な特用林産物の供給と生産の継続のため、安全な山菜、きのこ等の栽培方法や利用方法の検討等及び放射性物質による汚染を低減させ産地を再生させるための技術の検証に対して支援するとともに、放射性物質による被害を防除するためのほだ木の洗浄機械や簡易ハウス等の整備に対して支援した。

また、都道府県が行う放射性物質の検査を支援するため、国においても必要な検査を実施した。


(3)里山林など山村固有の未利用資源の活用

ア 里山資源の継続的かつ多様な利用

里山林など山村固有の未利用資源を活用し、山村の活性化を図るため、

(ア) 未利用間伐材等の利用を促進するための木質バイオマス利活用施設整備等に対する支援

(イ) 地域住民等から成る活動組織が実施する里山林の景観の保全及び整備、侵入竹の伐採及び除去、広葉樹をしいたけ原木等として利用するための伐採活動等に対する支援

(ウ) 山村の地域資源の発掘・活用を通じた所得・雇用の増大を図る取組に対する支援

を実施した。

イ 森林分野でのクレジット化の取組の推進

平成25(2013)年度に開始されたJ-クレジット制度を通じ、森林整備による温室効果ガスの吸収や、木質バイオマスの化石燃料代替利用による排出削減の取組を促進した。


(4)都市と山村の交流等を通じた山村への定住の促進

ア 山村振興対策等の推進

「山村振興法」(昭和40年法律第64号)に基づいて、都道府県による山村振興基本方針と市町村による山村振興計画に基づく産業の振興等に関する事業の推進を図った。

また、山村地域の産業の振興に加え住民福祉の向上にも資する林道の整備等に対して助成するとともに、都道府県が市町村に代わって整備することができる基幹的な林道を指定し、その整備に対して助成した。

さらに、山村地域の安全・安心の確保に資するため、治山施設の設置や保安林の整備に加え、地域における避難体制の整備等と連携した効果的な治山対策を推進した。

このほか、農山漁村における定住や二地域居住、都市との地域間交流に資する農山漁村の活性化に向けた取組に対して支援した。

加えて、振興山村の農林漁業者等に対し、株式会社日本政策金融公庫による長期かつ低利の振興山村・過疎地域経営改善資金の融通を行った。

イ 過疎地域対策等の推進

人口が著しく減少し、生活環境の整備等が他の地域より低位にある過疎地域及び半島地域について、都道府県が市町村に代わって整備することができる基幹的な林道を指定し、その整備に対して助成した。また、基幹的な林道について、利用区域内森林面積の要件を引き下げるなど、指定要件を緩和した。

さらに、過疎地域の農林漁業者等に対し、株式会社日本政策金融公庫から長期かつ低利の振興山村・過疎地域経営改善資金の融通を行った。


7 社会的コスト負担の理解の促進

森林の有する多面的機能の持続的発揮のための社会的コストの負担方法については、一般財源による対応のほか、国及び地方における環境問題に対する税等の活用、上下流の関係者の連携による基金の造成や分収林契約の締結、森林整備等のための国民一般からの募金、森林吸収量等のクレジット化等の様々な手法が存在することを踏まえ、地球温暖化防止に果たす森林の役割への期待に応えつつ森林吸収源対策を含めた森林・林業の諸施策の着実な推進を図っていくためには、どのような手法を組み合わせてコストを負担すべきか、都市・地方を通じて国民に等しく負担を求める税制等の新たな仕組みを含め、国全体としての財源確保等を検討した。


8 国民参加の森林(もり)づくりと森林の多様な利用の推進

(1)多様な主体による森林(もり)づくり活動の促進

国民参加の森林(もり)づくりを推進するため、

(ア) 全国植樹祭、全国育樹祭等の国土緑化行事、緑の少年団活動発表大会等の実施

(イ) 「森林(もり)づくり」や「木づかい」に対する国民の理解を醸成するための幅広い普及啓発

(ウ) NPO等による森林(もり)づくり活動及び木への親しみや木の文化への理解を深め、木材の良さや利用の意義を学ぶ「木育(もくいく)」の実践

に対して支援した。


(2)森林環境教育等の充実

森林体験等の森林環境教育や里山林の再生等、森林の多様な利用を推進するため、

(ア) 幅広い体験活動の機会の提供、体験活動の場に関する情報の提供、教育関係機関等との連携の強化

(イ) 林業後継者等の林業体験学習等の促進

(ウ) 年齢や障害の有無にかかわらず全ての利用者が森林と触れ合えるよう配慮した、国民に開かれた森林及び施設の整備の推進

(エ) 地域住民等から成る活動組織が実施する森林環境教育や研修活動に対する支援

等を実施した。


9 国際的な協調及び貢献

(1)国際協力の推進

ア 国際対話への参画等

世界における持続可能な森林経営に向けた取組を推進するため、国連森林フォーラム(UNFF)、国連食糧農業機関(FAO)等の国際対話に積極的に参画し、貢献したほか、関係各国、各国際機関等と連携を図りつつ、国際的な取組を推進した。とりわけ、モントリオール・プロセス(*8)については、事務局として参加12か国間の連絡調整、総会等の開催支援を行ったほか、他の国際的な基準・指標プロセスとの連携及び協調の促進等についても積極的に貢献した。

また、日中韓持続可能な森林経営に関する3か国対話等を通じ、近隣国との相互理解を推進した。

さらに、世界における持続可能な森林経営の推進に向けた課題の解決に引き続きイニシアティブを発揮していく観点から、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI )のサイドイベントとして、アフリカの持続可能な森林経営の推進に関する閣僚級の国際会議を開催した。

イ 開発途上国の森林保全等のための調査及び技術開発

開発途上国における森林の減少及び劣化の抑制や持続可能な森林経営を推進するため、JCMにおけるREDD+の実施ルールを検討した。また、開発途上国の森林劣化の防止に資する技術開発及び人材育成、森林減少及び劣化を抑制する場合の機会費用等の分析、森林保全が経済価値を創出する事業モデルの開発、民間企業等によるREDD+への参入等に対して支援した。

ウ 二国間における協力

開発途上国からの要請を踏まえ、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じ、専門家派遣、研修員受入れや、これらと機材供与を効果的に組み合わせた技術協力プロジェクトを実施するとともに、開発途上地域の森林管理計画の策定等を内容とする開発計画調査型技術協力を実施した。

また、開発途上国からの要請を踏まえ、JICAを通じた森林・林業案件に対する無償資金協力及び円借款による支援を検討した。

さらに、日韓農林水産技術協力委員会及び日中農業協力グループ会議を通じた技術交流を推進した。加えて、日インド森林及び林業分野の協力覚書に基づき両国の協力を推進した。

エ 国際機関を通じた協力

国際熱帯木材機関(ITTO)への拠出を通じ、熱帯地域における持続可能な森林経営及び違法伐採対策を推進した。

また、世界における持続可能な森林経営を推進するため、国連森林フォーラム(UNFF)への拠出を通じ、世界の各地域の森林関係機関の活動の強化に対して支援した。

さらに、我が国の民間団体等が行う中国への植林協力を推進するため、日中民間緑化協力委員会を通じた協力に対して支援した。

オ 民間組織による活動への支援

日本NGO連携無償資金協力制度(*9)及び草の根・人間の安全保障無償資金協力制度(*10)等により、我が国のNGOや現地NGO等が開発途上国で行う植林、森林保全の活動に対して支援した。


(*8)「平成28年度森林及び林業の動向」第1部-第 II 章(75-76ページ)を参照。

(*9)日本のNGOが開発途上国・地域で実施する経済・社会開発プロジェクト及び緊急人道支援プロジェクトに対し資金協力を行う制度。

(*10)開発途上国の地方公共団体、教育・医療機関並びに開発途上国において活動している国際及びローカルNGO等が実施する比較的小規模なプロジェクトに対し、日本の在外公館が中心になって資金協力を行う制度。



(2)違法伐採対策の推進

二国間、地域間、多国間協力を通じて、違法伐採及びこれに関連する貿易に関する対話、開発途上国における人材の育成、合法性等の証明された木材及び木材製品(合法木材)の普及等による違法伐採対策を推進した。

また、我が国においては、「総合的なTPP関連政策大綱」も踏まえ、合法木材が木材供給事業者から一般消費者に至るまで円滑に供給されるための体制の整備、合法性証明の信頼性を向上させる取組、違法伐採対策の重要性について一般企業や消費者等の理解を得るための取組等に加え、第三者による供給状況の調査も実施し、合法木材の普及拡大を引き続き推進した。

これに加え、平成29(2017)年5月に「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(平成28年法律第48号)(クリーンウッド法)が施行されることを踏まえ、法施行に向けた体制整備や広報、生産国における現地情報の収集等を行った。

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219