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林野庁

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第1部 第 II 章 第4節 国際的な取組の推進(4)

(4)我が国の国際協力

我が国は、持続可能な森林経営等を推進するための国際貢献として、技術協力や資金協力等による「二国間協力」、国際機関を通じた「多国間協力」等を行っている。

2015年の世界の森林分野の政府開発援助による拠出金7億4千万ドルのうち、我が国は2千6百万ドルを拠出しており、英国、ドイツに次ぐ世界第3位の金額を拠出している(*175)。


(*175)OECD Stat



(二国間協力)

我が国は、「技術協力」として、JICAを通じて、専門家派遣、研修員受入れ及び機材供与を効果的に組み合わせた技術協力プロジェクト、開発計画調査型技術協力、研修等を実施している。平成28(2016)年度には、インド等で新たに森林・林業分野の技術協力プロジェクトを開始した。平成28(2016)年12月末現在、森林・林業分野では、18か国・地域で21件の技術協力プロジェクトを実施している。林野庁からは、JICAを通じて、8か国・地域に10名の専門家を派遣している(資料 II -43、事例 II -12)。

「資金協力」としては、供与国に返済義務を課さない「無償資金協力」により、森林造成プロジェクトの実施や森林管理のための機材整備等を行っている。また、JICAを通じて開発資金の低利かつ長期の貸付け(円借款)を行う「有償資金協力」により、造林の推進や人材の育成等を目的とするプロジェクトを支援している。

さらに、日中農業協力グループ会議及び日韓農林水産技術協力委員会を通じ、日中及び日韓それぞれの間で、農林水産分野に関する試験研究の動向について意見交換を実施している。

事例 II -12 モザンビークにおける持続可能な森林管理に向けた能力強化のための支援

木炭収入に依存する農村住民
木炭収入に依存する農村住民
違法伐採を取り締まる森林監視員
違法伐採を取り締まる森林監視員

モザンビークは、多くの開発途上国と同様に森林減少及び森林劣化が進んでおり、面積にして約22万haの森林が毎年失われている。この要因として、農地への転用や焼畑による移動耕作、薪炭材の生産拡大、過放牧、違法伐採を含む森林伐採が指摘されている。

こうした中、我が国は、平成22(2010)年から、JICAを通じて同国へ長期専門家等を派遣し、森林資源の保全に関する政策を進めるための人的能力の強化、リモートセンシングやGISを活用した森林資源情報プラットフォームの整備を進めている。また、地方政府や地域レベルでの能力強化を図るとともに、森林保全プロジェクトの企画立案等も支援している。

このような我が国の支援により、森林保全だけではなく、森林資源の持続的な利用を通じた農村地域の開発と経済成長が期待されている。


(多国間協力)

「国際熱帯木材機関(ITTO)」は、熱帯林の持続可能な経営の促進と合法的に伐採された熱帯木材の貿易の発展を目的として、1986年に設立された国際機関であり、本部を我が国の横浜市に置いている。ITTOの加盟国は、2016年には新たにマダガスカルが加盟し、その数は72か国及びEUとなった。2016年11月に行われたITTOの理事会(ITTC(*176))では、2015年11月以降空席となっていた事務局長が選出されたほか、財務規則の改正等が承認された。我が国はITTOに対し、加盟国としての分担金や本部事務局の設置経費を拠出することで、ITTOによる持続可能な熱帯林経営等の推進を支援している。

「国際連合食糧農業機関(FAO)」は、各国国民の栄養水準と生活水準の向上、食料及び農産物の生産及び流通の改善並びに農村住民の生活条件の改善を目的として、1945年に設立された国連専門機関(*177)であり、本部をイタリアのローマに置いている。我が国はFAOに対し、加盟国としての分担金の拠出、信託基金によるプロジェクトへの任意拠出、職員の派遣等の貢献を行っている。平成25(2013)年からは、任意拠出した資金を活用し、開発途上国が森林の水土保全機能を適切に評価するための手法を開発し、その手法を普及させるプロジェクトを実施している。

また、我が国は、平成5(1993)年以降、国連、UNDP、アフリカ連合委員会(AUC(*178))等と共同でアフリカ開発会議(TICAD(*179))を開催しており、平成28(2016)年8月にケニア共和国のナイロビで「第6回アフリカ開発会議(TICAD VI )」を開催した。同会議の成果文書として、気候変動や森林破壊等に対処すること等を含む「ナイロビ宣言」が採択され、その具体的措置を定めた「ナイロビ実施計画」において、持続可能な森林の管理や陸域生態系の持続可能な利用のための取組に関する内容が盛り込まれた。

また、林野庁は、同会議にて国際アグロフォレストリー・センター(ICRAF(*180))や国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS(*181))等と共同で「アフリカにおける持続可能な森林経営の推進に関するTICAD VI 特別イベント」を開催し、アフリカ各国の閣僚を含む政府関係者や国際機関の専門家など約150名が参加して討議を行い、「アフリカにおける持続可能な森林経営の推進に関する林業担当大臣からTICAD VI へのメッセージ」を採択した(資料 II -44、45)。

「アフリカにおける持続可能な森林経営の推進に関するTICAD Ⅵ特別イベント」の様子

(*176)「International Tropical Timber Council」の略。

(*177)それぞれの専門分野で国際協力を推進するために設立された国際機関で、国連憲章第57条及び第63条に基づき国連との間に連携協定を有し、国連と緊密な連携を保っている国際機関のこと。

(*178)「African Union Commission」の略。

(*179)「Tokyo International Conference on African Development」の略。

(*180)「International Centre for Research in Agroforestry」の略。

(*181)「Japan International Research Center for Agricultural Sciences」の略。



(その他の国際協力)

「日中民間緑化協力委員会(*182)」では、2016年6月、中国で第17回会合を開催し、平成27(2015)年度に実施された植林事業のレビューや平成28(2016)年度の植林事業の実施方針について意見交換を行い、今後も引き続き気候変動対策、砂漠化・黄砂対策により焦点を当てることを含めて、効果的にプロジェクトを実施していくことで一致した(*183)。

本委員会は、平成12(2000)年より毎年開催されている。緑化協力事業には、これまで日本側から74の民間団体、中国側から各関係省庁及び29の省・自治区・市における多数の地元住民が参加しており、日中両国民の信頼関係、相互理解の増進に貢献している。


(*182)中国における植林緑化協力を行う日本の民間団体等(NGO、地方公共団体、民間企業)を支援することを目的として、平成11(1999)年11月に、日中両国政府が公文を交換し設立された委員会。同委員会は、日中両政府のそれぞれの代表者により構成され、助成対象とする植林緑化事業の選定に資するための情報及び意見の交換等を実施(事務局は日中緑化交流基金)。

(*183)林野庁プレスリリース「「日中民間緑化協力委員会第17回会合」の結果概要について」(平成28(2016)年6月29日付け)


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