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林野庁

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第1部 第 I 章 第1節 林業の成長産業化と新たな技術の必要性(2)

(2)新たな技術の導入の必要性

(「林業の成長産業化」には新たな技術が必要)

「林業の成長産業化」を実現していくためには、主伐や植栽といった施業の効率性を向上させるとともに、これまで国産材の利用が低位であった分野において新たな木材需要を創出することが不可欠であり、その基礎となるのが技術の導入である。例えば、林業の生産性向上についてみてみると、平均で4.7m3/人日となっている搬出間伐の生産性(*2)について、高性能林業機械を組み合わせた作業システムを導入した林業事業体では、10m3/人日を大きく超えるまで生産性を達成している事例(*3)がある(*4)。このように、林業生産や木材の需要創出に関する新たな技術の導入によって、従来の手法では得られないような収益を生み出すことが可能となり、これが森林所有者や林業者に還元されるようになれば、再造林への意欲が増進され、林業の再生産がより促進されていくこととなる。

上述のとおり、人工林を中心とした我が国の森林資源は充実してきている。そのため、主伐期を迎えた人工林での素材生産を高効率化するための技術に加え、伐採跡地の再造林や保育、鳥獣被害対策を低コストで実施していくための技術の開発や導入を促進し、森林資源の循環利用を推進していくことが重要な課題となっている。

これに加え、国産材はこれまで、住宅分野の柱材や構造用合板等に供されてきたが、将来的な人口動態を見据えれば新設住宅着工戸数の増加は見込みにくい。このことから、公共建築物等の非住宅分野や住宅分野のうち国産材の使用比率が低い横架材等に国産材を利用していくための技術等の開発が進められている。

また、木質バイオマスについては、再生可能エネルギーの固定価格買取制度によるエネルギー利用が進められてきた。さらに、木質バイオマスからセルロースやリグニン等の成分を抽出し、有用な化学物質に変換し、マテリアル(素材)として利用する研究開発が進められており、新たな木材需要の創出につながることが期待されている。


(*2)関東地域の34林業事業体の数値。出典は、林野庁「経営感覚に優れた素材生産事業体等の育成について」(林政審議会(平成27(2015)年11月10日)資料1-3)(https://www.rinya.maff.go.jp/j/rinsei/singikai/pdf/15111013.pdf)

(*3)林野庁「経営感覚に優れた素材生産事業体等の育成について」(林政審議会(平成27(2015)年11月10日)資料1-3)

(*4)なお、林野庁「諸外国における森林の小規模分散構造に対応した林業経営システムに関する調査」(平成20(2008)年3月)によると、オーストリアでは、アルプス山岳地帯を中心とする急峻な土地ではタワーヤーダの活用により、7~43m3/人日の搬出間伐の生産性を達成している。



(研究・技術開発のための戦略の策定)

新たな技術の研究開発や導入を進めていく上では、国や国立研究開発法人森林総合研究所(*5)、都道府県、大学、民間組織等が相互に連携しながら、森林・林業に係る政策ニーズに対応して戦略的に実施していくことが必要である。

平成28(2016)年5月の「森林・林業基本計画」の変更を受け、林野庁は、平成29(2017)年3月に、「森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略」を改定した。

同戦略では、森林の有する多面的機能の発揮、林業の持続的かつ健全な発展、林産物の供給及び利用の確保、森林・林業・木材産業における優良品種の活用、東日本大震災からの復旧・復興を大きな柱として、研究・技術開発の取組の方向性を示している。

このように、林業での新たな技術は、これまで官民を問わず開発や実践、検証、改良が実施されてきたところである。本章では、林業の成長産業化に向けた新たな技術について、その開発や導入の状況を記述するとともに、今後の課題を分析し、こうした技術の導入を進めるための条件整備について記述することとする。


(*5)平成29(2017)年4月1日から国立研究開発法人森林研究・整備機構に名称変更。


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