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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 概要(HTML版) > 第 I 章 国産材の安定供給体制の構築に向けて


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第 I 章 国産材の安定供給体制の構築に向けて

1.森林資源の充実と国産材需給の現況

(1)森林資源の充実と「林業の成長産業化」

○我が国の森林資源は、戦後造成された人工林を中心に充実。現在は、資源の利用期に本格的に移行し、十分な供給余力。

○充実してきた森林資源については、「植える→育てる→使う→植える」というサイクルの中で循環利用することによって森林の多面的機能が発揮。

○一方で、我が国の林業は、採算性の悪化等により生産活動が低迷。小規模零細な森林所有構造の下、施業集約化や路網整備、効率的な作業システムの導入の立ち後れ等により、生産性が低い状況。

○林業従事者等が居住する山村地域は、過疎化等により依然として厳しい状況。山村の振興を図っていく上でも、豊富な森林資源の利活用を進め、国産材の安定供給を図り、林業の成長産業化を実現することが重要な課題。


(2)国産材需給の現況

○国産材の需要構造は変化。生活様式の変化等に伴い、構造用の役物(やくもの)需要は減少し並材(なみざい)の需要が増加。また、品質・性能が安定する乾燥材や集成材がニーズの中心。

○合板製造業において、技術の改良等を背景に、国産材利用量が増加。

○国内の豊富な人工林資源の利用を見越して、内陸部に大型工場を建設する動きが活発化。また、再生可能エネルギーの固定価格買取制度により、木質バイオマス等のチップ用材需要も増加。

○一方、国産材の流通は依然として小規模・分散的で、需要に応じた流通ができていない状況。いわゆる「駆け込み需要」時には、スギやヒノキの素材価格が急騰。

近年の主な大型工場の設置状況           国産材の素材価格の推移(平成25(2013)年から平成26(2014)年)
    データ(エクセル:264KB)

2.国産材の安定供給体制の構築の意義と考え方

(1)国産材安定供給体制の構築の意義

○国産材の安定的な供給体制の構築は、
・需要側の工場等にとっては、原木を、まとまった数量、必要な品質、一定の納期に調達することに寄与。また、計画的な稼働や原料調達コストの縮減等に寄与。
・供給側の森林所有者・素材生産業者にとっては、安定的な販売先が確保でき、経営の安定化等に寄与。
・工務店・住宅メーカー等にとっては、一定の期間内に一定のコストでの材料調達に寄与。

(2)国産材の安定供給の考え方

○国産材の総需要量は、景気動向等により変動することから、需要構造の変化に柔軟に対応できる供給体制を構築することが必要。用途別の需要に応じて必要な数量の原木をとりまとめて、持続的に供給していく必要。

○そのためには、原木を供給する能力を拡大するとともに、関係者の間で木材に関する需給情報を積極的に共有する取組が不可欠。

○国産材の安定供給体制の構築は、原木価格の乱高下を一定程度緩和することにも、結果として貢献。

○また、我が国の人口動態を踏まえれば住宅用製材の需要の増加は見込みにくいため、住宅用やそれ以外の用途において木材需要を拡大していくことが必要。

国産材の安定供給体制の構築に向けたイメージ

3.安定供給体制の構築に向けた取組の現状と今後の課題

(1)原木の供給力の増大

(ア)主伐とその後の確実な更新の実施

○育成段階にある人工林において間伐の適切な実施に引き続き取り組むとともに、利用適期を迎えた人工林において、適切な主伐を進めることが、国産材の安定供給体制を構築する上で重要。主伐を実施した伐採跡地は、植栽による再造林又は天然更新や、その後の保育作業を確実に実施する必要。

○再造林を確保するためには、造林・保育に要する経費を縮減する必要。林野庁では、伐採から植栽までを一体的に実施する「一貫作業システム」の実証・普及やコンテナ苗の生産の拡大を実施。

○成長に優れた苗木や花粉症対策苗木の安定供給を図ることが一層重要。また、野生鳥獣による森林への被害対策に取り組む必要。

《事例》 寒冷積雪地に適した一貫作業システムの検討

青森県は、関係団体等とともに「青い森低コスト再造林協議会」を設立。寒冷積雪地の地理的・自然的条件に適した伐採・造林一貫作業システムの導入手法を検討。

《事例》 素材生産業者による低コスト造林の取組

宮崎県のNPO法人ひむか維森の会は、伐採搬出ガイドライン等を策定。この中で、皆伐から再造林まで責任を持つことなどを規定。また、「責任ある素材生産事業体認証制度」を開始。

(イ)効率的な作業システムの構築

○素材生産の生産性を向上させることが重要であり、素材生産の各工程に応じて開発されている林業機械を有効に活用することが鍵。

○急傾斜地における効率的な作業システムに対応した次世代の架線系林業機械の開発・導入や高度な索張り技術等を備えた技術者の育成に取り組み。

○チップ用材の需要増加が見込まれるため、末木枝条等を効率的に収集するための取組が必要。全木集材システム等は、これらを効率的に収集でき、再造林のコスト縮減にも寄与。また、成長速度や木材の強度に優れた早生樹種に対する注目が高まり。

(ウ)原木流通の合理化

○素材生産現場から製材工場等への原木の流通を合理化し、原木流通コストを縮減していく取組が重要。中間土場(ストックヤード)の整備や、デジタルカメラ画像を利用した材積測定システムの利用可能性の検証等の取組がみられるところ。

高性能林業機械の保有台数の推移
データ(エクセル:65KB)
          中間土場のイメージ

(エ)林業事業体の育成

○優れた経営力を有する林業事業体の育成が急務。今後は、林業事業体の生産管理等の導入やICT(情報通信技術)の活用を推進していくことが必要。

○地域の条件に応じた適切な作業システムを選択、運用できる人材の育成も重要。

《事例》 ICTを活用した生産管理手法の導入

ICTを活用した生産管理手法の導入

長野県の北信州森林組合では、境界明確化や森林資源調査で得られたデータのデジタル管理に加え、原木の生産・流通についても、ICTを活用した生産管理手法を導入。

画像情報等を用いて生産現場の用材の数量を把握するとともに、ICTを用いて、出材量や出荷量といった情報をリアルタイムに森林組合内で共有。

作業日報や経費、出来高等の労務管理も、ICTにより効率化。

これらの取組を進めた結果、素材の取引が迅速化。

(オ)施業の集約化

○我が国の私有林の所有規模は零細。このため、隣接する複数の所有者をとりまとめて森林施業を一体的に実施する「施業の集約化」が必要。

○提案型集約化施業を担う「森林施業プランナー」の育成を推進。

○平成24(2012)年に、面的なまとまりをもった森林を対象とする森林経営計画制度が導入。それ以降も、現場の状況に応じて運用改善に取り組み。

○集約化には、森林所有者等の情報整備が不可欠。「森林整備地域活動支援交付金」により、集約化に必要な調査・合意形成等を支援。

○共有林等の既にまとまった森林の活用や森林組合等や製材工場等による森林保有等の事例もあるところ。

○民有林と国有林が連携した「森林共同施業団地」の設定を推進。

《事例》 認定森林施業プランナーによる集約化の取組

認定森林施業プランナーによる集約化の取組

兵庫県の北はりま森林組合は、認定森林施業プランナーによるタブレット型コンピューターを活用した施業集約化に取り組み。

従来よりも円滑に森林所有者の関心や理解、同意を得られるようになっている。

《事例》 共有林を活用した施業集約化の推進

共有林を活用した施業集約化の推進

山梨県のF事業体は、同県北杜市の共有林代表からの相談を契機に、この共有林と周辺の森林を合わせた区域を対象とした「森林経営計画」を作成。一括して林内路網の作設に取り組み、間伐及び搬出を実施。

(カ)労働力の確保

○原木の供給力を増大させる上で、素材生産に必要な林業労働力の確保が不可欠。

○これまで「「緑の雇用」事業」により、技術・技能を有する林業労働者を育成。今後は、通年雇用の推進等による雇用条件の改善が課題。

(キ)路網の整備

○路網は、木材を安定的に供給する等のために必要な施業を効率的に実施するためのネットワークであり、最も重要な生産基盤。林道、林業専用道、森林作業道を適切に組み合わせた路網の整備を推進。

○国産材の安定供給体制を早期に構築する観点からは、引き続き育成林のうち林地生産力が高い林分で重点的に整備していくことが有効。

○また、高度な知識・技能が必要な路網ルートの設計・施工等の路網整備を担う人材を育成。

(2)木材等の需給情報の共有と原木供給のとりまとめ

(ア)木材等の需給情報の共有

○大型工場設置の進展に伴い、国産材の流通は広域化し、木材の需給情報の共有が困難になりつつあるところ。国産材の安定供給体制の構築や主伐後の確実な再造林のためには、木材や苗木の需給情報を共有していくことが極めて重要。

○平成27(2015)年度からは、木材や苗木の需給情報を、民有林と国有林が連携し一元的に共有することを目的に「需給情報連絡協議会」を全国7ブロックで開催。都道府県においても、主伐・間伐別の木材の生産量の一か月ごとの見通しを公表する取組等が進展。

「需給情報連絡協議会」の開催状況

(イ)原木供給のとりまとめ

○木材の需要の増減に応じて、素材生産の生産量や出荷量を調整する仕組みを構築していく必要。

○地域の実情に応じ、最も適した主体が、単体若しくは共同で原木をとりまとめる取組が進展。

(ウ)安定取引等の動き

○素材生産業者等と木材加工業者等の間で、安定供給のための取引(安定取引)に関する協定を締結する動きが拡大。地域の実情に応じて、林業事業体の組織、大型製材工場等、原木市売市場がとりまとめ役となって安定取引を実施。

○森林組合系統や素材生産の協同組織が木材流通を担う地域では、こうした林業事業体の組織がとりまとめ役となる安定取引が進展。とりまとめ役の協同組織が個々の事業体に造材方法等の指導を実施する取組も。

○素材生産業者等の協同組織化が進んでいない地域では、大型の製材工場等がとりまとめ役となる安定取引が進展。こうした大型工場が自ら素材生産を実行する協同組織を設立する取組も。

○原木市売市場が木材流通の中核的な役割を担う地域では、原木市売市場がとりまとめ役となり、個々の素材生産業者から集荷し、工場に直送する取組が進展。この場合、従来の市場機能を活用し、優良材のセリ売り等も可能。

《事例》 原木供給対策協議会の設立を通じた原木安定供給の取組

原木供給対策協議会の設立を通じた原木安定供給の取組

C社が宮崎県日向市に大型の製材工場を設置し、稼働が開始。

年間に50万m3の原木を安定的に供給できる体制を構築することが急務となっていたところ。

これに対応するため、宮崎県の木材協同組合連合会、森林組合連合会、造林素材生産事業協同組合の3者により、C社向けの原木供給対策協議会が設立。県内の森林組合や素材生産業者に、需給情報の共有や造材の指導を実施。

《事例》 大型製材工場による国産材確保に向けた取組

大型製材工場による国産材確保に向けた取組

福島県東白川郡塙町で大型の製材工場を経営するK社は、原木を安定的に調達するため、素材生産組合を組織化。

K社は、地域の森林所有者から立木を購入し、素材生産をこの組合で実施。また、K社は、小規模森林所有者に営業を行って、施業の集約化にも取り組み。

さらに、その素材生産組合は、労働者災害補償保険や民間保険に加入するなど、労働力の確保や福利厚生の充実に向けた取組も実施。

原木市売市場による原木安定取引の取組

《事例》 原木市売市場による原木安定取引の取組

佐賀県伊万里市で原木市売市場を経営するI社は、従来業務に加え、近接する工場向けの原木調達の取組を実施。集荷範囲を九州全域に拡大し、年間の原木取扱量は、33万m3に成長。

また、I社は、自ら立木を買い付けて素材生産を委託して原木を調達する取組や、森林所有者と協定を締結して再造林を代行する取組を実施し、持続的な原木調達を推進。

(3)国産材の安定供給体制の構築を目指して

○このように、国産材の安定供給体制を構築する上で、森林所有者や森林組合、国有林、素材生産業者、原木市売市場、製材工場、合板工場、木材チップ工場、木質バイオマス発電施設等の全ての関係者が取組を進展させるとともに、相互の連携を図っていくことが必要。

○国、地方公共団体はもとより、林業、木材産業を含む関係者が連携し、普及啓発を続けて国民の理解を得て、木材利用の推進や国産材の安定供給体制の構築につなげていくことが必要。


お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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