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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第 VI 章 第2節 原子力災害からの復興(1)


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第1部 第 VI 章 第2節 原子力災害からの復興(1)


東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、環境中に大量の放射性物質が放散され、福島県を中心に広い範囲の森林が汚染されるとともに、林業・木材産業にも影響が及んでいる。

以下では、原子力災害からの復興に向け、森林の放射性物質対策、安全な林産物の供給、樹皮やほだ木等の廃棄物の処理、損害の賠償について記述する。

(1)森林の放射性物質対策

(ア)「避難指示区域」の見直しと除染の実施

東京電力福島第一原子力発電所の事故により、平成23(2011)年4月に設定された「警戒区域」及び「避難指示区域」は、平成24(2012)年4月から平成25(2013)年8月までに見直しが行われ、「避難指示解除準備区域(*23)」、「居住制限区域(*24)」、「帰還困難区域(*25)」の3つの区域とされた。

その後、年間積算線量が低下したことなどにより、平成26(2014)年4月に、福島県田村市(たむらし)の避難指示解除準備区域が解除された。平成26(2014)年10月には、双葉郡(ふたばぐん)川内村(かわうちむら)で、避難指示解除準備区域が解除されるとともに、居住制限区域が避難指示解除準備区域に見直された。平成27(2015)年9月には、双葉郡(ふたばぐん)楢葉町(ならはまち)で、避難指示解除準備区域が解除され、平成27(2015)年9月時点で、避難指示区域は1市5町3村で指定されている(資料 VI -2)。

東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性物質で汚染された地域では、放射性物質の影響を速やかに低減させることが大きな課題となっている。政府は、平成23(2011)年8月に公布された「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)に基づき、除染(*24)を進めることとしている。

「放射性物質汚染対処特措法」では、「除染特別地域」と「汚染状況重点調査地域」が規定されており、平成28(2016)年2月末時点で、除染特別地域は福島県11市町村で指定されているとともに、汚染状況重点調査地域は8県99市町村が指定されている。「除染特別地域」は、「警戒区域」又は「計画的避難区域」の指定を受けたことがある地域が指定されており、環境大臣が定める「特別地域内除染実施計画」に基づいて、国により除染等が実施されている。また、「汚染状況重点調査地域」は、空間線量率が毎時0.23μSv以上の地域を含む市町村が指定されており、指定を受けた市町村は汚染の状況について調査測定を行った上で「除染実施計画」を定め、この計画に基づき市町村、県、国等により除染等の措置等が実施されている(資料 VI -3)。

避難指示区域の概念図           「除染実施計画」の策定状況


(*21)年間積算線量が20mSv以下となることが確実であることが確認された地域。

(*22)年間積算線量が20mSvを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から引き続き避難を継続することを求める地域。

(*23)5年間を経過してもなお年間積算線量が20mSvを下回らないおそれがあり、年間積算線量が50mSv超の地域。

(*24)放射性物質を「取り除く」、「遮る」、「遠ざける」などの方法を組み合わせて環境中にある放射性物質による被ばく線量を低減すること。



(イ)森林除染の実施状況

(森林除染の基本方針)

森林の除染については、「放射性物質汚染対処特措法」と同法による基本方針(平成23(2011)年11月閣議決定)に基づき、住居等近隣における措置を最優先に行うこととされている。環境省は平成23(2011)年12月に策定した「除染関係ガイドライン」の中で、「住居等近隣の森林」の除染の方法について具体的な方法を示している。

環境省が平成25(2013)年9月に公表した「除染の進捗状況についての総点検」においては、森林内の放射性物質に関する研究・実証等により明らかになった知見を踏まえ、「森林における今後の方向性」が示された。これを踏まえ、同12月には「除染関係ガイドライン」の森林部分について、森林内の放射性物質の動態に係る知見や効果的な除染手法に係る知見の追加等の見直しが行われている。

平成27(2015)年12月に、環境省の「第16回環境回復検討会」において、森林から生活圏への放射性物質の流出・飛散に関する調査等から得られた知見に基づき、「森林における放射性物質対策の方向性について」が取りまとめられた。この中で、「住居等近隣の森林」及び「利用者や作業者が日常的に立ち入る森林」については、引き続き必要な除染を進めていくことが適当であるとされた。

一方、森林の表層の堆積有機物や土壌は森林にとって非常に重要なものであるため、広範囲にわたってこれらを除去すれば、土壌流出や地力低下による樹木への悪影響が懸念される。そのため、同取りまとめにおいて、住居等近隣や人が日常的に立ち入るエリア以外の対策として、除染実施後の事後モニタリング等の結果、土壌被覆率が低く、勾配が急でかつ汚染度の高い森林からの経年的な土壌等の流出による再汚染が確認された場合、これまでの森林土壌の流出防止に係る知見等を踏まえ、木柵工、土のう筋工等の対策工を実施することとされた。また、同エリアにおける林業の再生のための取組として、被ばく線量管理を行う必要のない平均空間線量率2.5μSv/h以下の場所での作業を原則としつつ、作業の機械化による屋外作業時間の短縮など、作業者の被ばく低減に取り組みながら、引き続き、間伐等の森林整備と放射性物質対策を一体的に実施する事業や、林業再生に向けた実証事業等を推進することとした。

(森林除染の方法と実施状況)

「除染関係ガイドライン」等においては、「住居等近隣の森林」について、林縁から5~10mの除染が特に効果的との知見を踏まえて、林縁から20m程度の範囲を目安に、落葉等の堆積有機物の除去を行うこととしている。これにより除染の効果が得られない場合には、林縁から5mを目安に追加的に堆積有機物残さ(土壌表面に残った堆積有機物のくず)の除去を実施することや、谷間にある線量が高い居住地を取り囲む森林等については、面的な除染が終了した後においても相対的に線量が高い場合には、例外的に効果的な個別対応を20mよりも広げて実施することが可能としている(*25)。

「利用者や作業者が日常的に立ち入る森林」については、個別の状況に応じた対応を行うこととしている。平成28(2016)年3月に取りまとめられた、「福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組(*26)」を踏まえ、ほだ場、炭焼場、キャンプ場、遊歩道・散策道・林道、休憩所、広場、駐車場など、森林内の人々の憩いの場や人が立ち入る機会の多い場所について、立入り頻度や滞在時間、土壌流出のリスク等を勘案し、適切に除染を実施することとしている。

また、その他の森林については、森林から生活圏への放射性物質の流出防止のための対策工(木柵工等)の実施が可能としている。

住居等近隣の森林等について、「除染特別地域」では、環境省が約4,500ha(平成28(2016)年2月現在)で除染を実施済みであり(*27)、また「汚染状況重点調査地域」では、民有林は市町村が約2,400ha(平成28(2016)年1月末現在)で(*28)、国有林は林野庁が福島県、茨城県及び群馬県の3県約20ha(平成28(2016)年3月末現在)で除染を実施済みである(*29)。



(*25)環境省「除染関係ガイドライン 平成25年5月第2版(平成26年12月追補)」

(*26)詳細については、202-203ページを参照。

(*27)環境省ホームページ「除染情報サイト」

(*28)環境省ホームページ「除染情報サイト」。福島県分については、福島県ホームページ「市町村除染地域(汚染状況重点調査地域)における除染実施状況」による。

(*29)林野庁業務課調べ。



(ウ)森林内の放射性物質に関する調査・研究

(森林内の放射性物質の分布状況の推移を調査)

林野庁は、平成23(2011)年度から、東京電力福島第一原子力発電所からの距離が異なる福島県内の3か所の森林を対象として、放射性セシウムの濃度と蓄積量の推移を調査している。葉や枝、樹皮、落葉層の濃度は、平成24(2012)年度には大幅に低下し、その後も低下傾向を示した。また、これまでの調査では、材の放射性セシウム濃度は樹木の他の部位に比べると全般的に低く、大きな変化は認められていない。一方、落葉層の下の土壌については、深さ5cmまでの層の濃度が、平成24(2012)年度に大幅に上昇した後、平成25(2013)年度以降は明瞭な傾向はみられず、深さ5cmより深い層の濃度は、深さ5cmまでの層より大幅に低い状態が続いている。

森林全体の放射性セシウムの蓄積量の分布は、地上部の樹木に蓄積する割合が減少し、落葉層や土壌の浅い層に蓄積する割合が増加している(資料 VI -4)。また、森林全体の放射性セシウムの蓄積量の変化や渓流水中の放射性セシウム濃度の調査等から、放射性セシウムは森林内に留まり、森林外への流出量は少ないと考察されている(*30)。

林野庁では、森林内の放射性物質の分布状況等について、継続的に調査を進めていくとともに、調査結果を踏まえ、より効果的な放射性物質対策技術の検証や開発など、森林の除染や森林からの放射性物質の拡散防止等に向けた取組を進めている。



(*30)林野庁ホームページ「平成27年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について」(平成28(2016)年3月25日)



(落葉等除去や伐採等に伴う空間線量率の推移及び放射性物質の移動)

林野庁は、平成23(2011)年度から、福島県内の森林に設定した試験地において、落葉等除去や伐採等の作業を実施し、その後の空間線量率の推移について調査を行った。その結果、作業の実施により空間線量率は低減し(*31)、その後はおおむね物理的減衰(放射性物質の崩壊に伴う減衰)に応じて低減しており、安定的に推移している。

また、落葉等除去や伐採等の作業を実施した後の土砂等や放射性セシウムの移動状況についても調査している。その結果、土砂等移動量と放射性セシウム移動量はほぼ同様の傾向を示すことが確認された。また、落葉等除去を実施した箇所では1年目の放射性セシウムの移動量が、何も実施していない対照区に比べて多くなることが確認されたが、2年目以降は対照区と同程度であった。伐採を実施した箇所では1年目の移動量は比較的軽微であり、2年目以降はおおむね対照区と同程度であった。



(*31)現在では森林内の放射性セシウムの8割程度が土壌中に滞留しており、落葉等除去や伐採による低減効果は限定的である。



(萌芽更新木に含まれる放射性物質)

平成25(2013)年度から、東京電力福島第一原子力発電所の事故後に伐採した根株から発生した萌芽更新木等に含まれる放射性セシウムの濃度についても調査している。萌芽更新木の葉と枝に含まれる放射性セシウムの濃度の比較では、葉に含まれる濃度が高いという傾向がみられた。また、コナラとクヌギの樹種による比較では、コナラに含まれる放射性セシウムの濃度が高いという傾向がみられた。

また、平成26(2014)年度からはカリウム施肥を行った場合の放射性セシウムの吸収抑制効果についても調査を開始している(*32)。



(*32) 林野庁ホームページ「平成26年度 森林における放射性物質対策関係事業の結果について」



(林業再生対策の取組)

平成25(2013)年度からは、林業再生の観点から、間伐等の森林整備と放射性物質対策を一体的に推進する実証事業を実施している。平成27(2015)年度までに、汚染状況重点調査地域等に指定されている福島県内37市町村の森林において、県や市町村等の公的主体による間伐等の森林整備を行うとともに、森林整備に伴い発生する枝葉等の処理及び減容化や、木柵等の設置による放射性物質の拡散抑制対策等を実施している。さらに平成26(2014)年度からは、避難指示区域の解除・見直しにより地域住民の早期帰還に向けた動きが本格化している状況を踏まえ、避難指示解除準備区域等を対象に伐採木の活用策を含めた林業の再生や適正な森林管理を進めていくため、試行的な間伐等を通じた作業者の被ばくの低減策等の実証を実施している。また、森林における放射性物質に関する情報について、シンポジウムや講習会の開催やパンフレットの作成・配布等を通じて普及啓発を行っている。

(エ)汚染土壌等の仮置場用地として国有林野を提供

各地で除染作業が進むことに伴い、放射性物質に汚染された除去土壌等が大量に発生している。平成27(2015)年9月末時点で、除染により発生した除去土壌等の保管量は、福島県で約915万m3(仮置場1,028か所、現場保管約11万3千か所)(*33)、その他の県で約42万m3(仮置場42か所、現場保管約2万3千か所)(*34)となっており、除染を迅速に実施するため仮置場の確保が重要となっている。

林野庁では、地方公共団体等から、汚染土壌等の仮置場用地として国有林野を使用したいとの要請があった場合、国有林野の無償貸付け等を行っている。平成27(2015)年12月末現在、福島県、茨城県、群馬県及び宮城県の4県22か所で計約68haの国有林野を提供している(*35)。



(*33)福島県除染対策課資料(福島県内市町村)及び環境省資料

(*34)環境省資料

(*35)林野庁業務課調べ。なお、仮置場を設置する場合には、設置主体が地域住民の同意を得るとともに、二次汚染の防止措置を講ずるなどの対応を行うことが必要である。



(オ)森林除染等における労働者の安全確保

避難指示区域の見直しに伴い、「避難指示解除準備区域」では、除染作業以外の生活基盤の復旧や製造業等の事業活動が認められ、営林についても再開できることが認められた(*36)。

これを踏まえ、平成24(2012)年7月、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」(以下「除染電離則(*37)」という。)が改正され、「除染特別地域」又は「汚染状況重点調査地域」内においては、除染業務に加え、1万Bq/kgを超える汚染土壌等を扱う業務(以下「特定汚染土壌等取扱業務」という。)や、土壌等を扱わない場合にあっても平均空間線量率が2.5μSv/hを超える場所で行う業務(以下「特定線量下業務」という。)については、従事者の被ばく線量の測定による線量管理や内部被ばく防止のための措置、事業者が労働者に対して行う特別教育等が求められることになった(*38)。

林野庁では、除染電離則の改正を受けて、平成24(2012)年7月に「森林内等の作業における放射線障害防止対策に関する留意事項等について(Q&A)」を作成し、森林内の個別の作業が特定汚染土壌等取扱業務や特定線量下業務に該当するかどうかをフローチャートで判断できるように整理するとともに、実際に森林内作業を行う際の作業手順や留意事項を解説している(*39)。

また、平成25(2013)年度から、汚染状況重点調査地域の森林で作業を行う事業者(合計520名)に対し、放射線障害防止に関する講習の開催と線量測定器の支給を行った。

さらに、平成25(2013)年には、福島県内の試験地において、機械の活用による作業者の被ばく低減等について検証を行い、キャビン付林業機械による作業の被ばく線量は、屋外作業と比べて35~40%少なくなるとの結果が得られた(*40)。このため林野庁では、林業に従事する作業者の被ばくを低減するため、リースによる高性能林業機械の導入を支援している。



(*36)原子力被災者生活支援チーム「避難指示解除準備区域内での活動について」(平成24(2012)年5月9日)

(*37)「労働安全衛生法」第22条、第27条等に基づく厚生労働省令(平成23年厚生労働省令第152号)

(*38)「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則等の一部を改正する省令の施行について」(平成24(2012)年6月15 日付け基発0615第7号厚生労働省労働基準局長通知)

(*39)農林水産省プレスリリース「森林内等の作業における放射線障害防止対策に関する留意事項等について(Q&A)」(平成24(2012)年7月18日付け)

(*40)農林水産省プレスリリース「森林における放射性物質の拡散防止技術検証・開発事業の結果について」(平成25(2013)年8月27日付け)



(カ)福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組保

平成28(2016)年2月に、福島の森林・林業の再生を加速させるべく、「福島の森林・林業の再生のための関係省庁プロジェクトチーム」が設置され、復興庁、農林水産省、環境省等の関係省庁が連携して検討を行い、平成28(2016)年3月に「福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組」を取りまとめた(資料 VI -5)。

今後、この総合的な取組に基づき、関係省庁が連携して取組を進めていくこととしている。

福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組(骨子)

お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
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