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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第 V 章 第2節 国有林野事業の具体的取組(2)


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第1部 第 V 章 第2節 国有林野事業の具体的取組(2)

(2)森林・林業の再生への貢献

現在、施業の集約化等による低コスト化や担い手の育成をはじめ、森林・林業の再生に向けた取組の推進が課題となっている。

このため、国有林野事業では、その組織、技術力及び資源を活用することにより、林業の低コスト化等に向けた技術の開発及び普及、民有林と連携した施業の推進、林業事業体や森林・林業技術者等の育成及び林産物の安定供給に取り組んでいる。

(低コスト化等に向けた技術の開発・普及と民有林との連携)

国有林野事業では、多様なフィールドを活用し、林業の低コスト化等に向け、先駆的な技術等について、各森林管理局が中心となり、地域の研究機関等と連携しつつ、事業レベルでの試行を進めている。さらに、現地検討会等を開催するなど、地域の林業関係者等との情報交換や普及に努めている(事例 V -8)。

また、全国における多数の事業実績の統一的な分析等が可能な国有林野事業の特性を活かし、地域ごとの地形条件や資源状況の違いに応じた低コストで効率的な作業システムの提案及び検証を行い、民有林への普及と定着に努めている。

特に近年は、施工性に優れたコンテナ苗の活用による効率的かつ効果的な再造林手法の導入・普及等を進めるとともに、植栽適期の広さ等のコンテナ苗の優位性を活かして伐採から植栽までを一体的に行う「一貫作業システム(*8)」の実証・普及に取り組んでいる(事例 V -9)。国有林野事業では、平成26(2014)年度には452haでコンテナ苗等を植栽し、31か所・232haで伐採と造林の一括発注による一貫作業システムを実施した(資料 V -8、9)。なお、コンテナ苗の活用に当たっては、実証を通じた技術的課題の把握等を行い、我が国でのコンテナ苗の普及に向け、生産方法や使用方法の改善を支援することとしている。

また、国有林野事業では、地域における「施業の集約化」の取組を支援し、森林施業の低コスト化に資するため、民有林と連携することで事業の効率化や低コスト化等を図ることのできる地域において「森林共同施業団地」を設定し、民有林と国有林を連結した路網の整備と相互利用、計画的な施業の実施、民有林材と国有林材の協調出荷等に取り組んでいる。平成26(2014)年度末現在、森林共同施業団地の設定箇所数は154か所、設定面積は約36万ha(うち国有林野は約20万ha)となっている(資料 V -10)。



森林共同施業団地の設定状況

事例V-8 早生樹の試験植栽や早生樹の産学官共催セミナーを実施

試験植栽されたセンダン(三重県北牟婁郡紀北町)
試験植栽されたセンダン
(三重県北牟婁郡紀北町)

20年程度で50cmもの胸高直径になる早生広葉樹であり、材質の堅いセンダンは、現在輸入材に大きく依存している家具、内装材に適した国産材としての供給が川下側から期待されている。また、森林所有者が短伐期で収入を得ることができる可能性があり、造林樹種としての活用が注目されている。

近畿中国森林管理局では、京都府立大学と共同で、平成27(2015)年3月から5月にかけて、管内の国有林野10か所においてセンダン170本の試験植栽を行った。今後、気温や施肥等の条件が成長に与える影響等を明らかにするため、継続的に調査を行うこととしている。

また、同森林管理局では、同9月に日本木材加工技術協会関西支部早生植林材研究会、京都府立大学と産学官共同で早生樹林業に関するセミナーを開催するなど、早生樹林業の持つ可能性についての認識を広めるための取組を行っている。

事例V-9 一貫作業システムの実証試験を実施

伐採・地拵えと一体的に実施するコンテナ苗植栽の様子
伐採・地拵えと一体的に実施する
コンテナ苗植栽の様子
伐採と同時期に実施する地拵えの様子
伐採と同時期に実施する地拵えの様子

東北森林管理局では、再造林の低コスト化を図るため、伐採から植栽までを一体的に行う「一貫作業システム」の実証・普及に管内各県や研究機関等と連携して取り組んでいる。

平成27(2015)年10月には、同森林管理局が国立研究開発法人森林総合研究所、管内の県担当者、森林組合や林業事業体等を対象とした「平成27年度一貫作業システム現地検討会」を開催した。検討会では、同森林管理局が行ってきた一貫作業システムの成果や課題について、同研究所東北支所の研究者による講演等が行われた後、実際に試験が行われている秋田森林管理署湯沢(ゆざわ)支署(秋田県湯沢市)管内の国有林野において現地検討を行った。

同森林管理局では、地域林業の抱える課題の解決に向け、このような技術開発を更に進め、その成果の普及に努めることとしている。



(*8)一貫作業システムとは、伐採から植栽までを一体的に行う作業システムのこと。



(林業事業体及び森林・林業技術者等の育成)

国有林野事業は、国内最大の森林所有者として、林業事業体への事業の発注を通じ、その経営能力の向上等を促すこととしている。具体的には、①総合評価落札方式や複数年契約(*9)、事業成績評定制度の活用による林業事業体の創意工夫の促進、②市町村単位での将来事業量の明確化、③特記仕様書の活用による先駆的な作業システムや手法の事業レベルでの展開の促進等の取組等により、林業事業体の能力向上や技術者の育成、林業事業体の計画的な実行体制の構築の促進に取り組んでいる(事例 V -10)。

また、近年、都道府県や市町村における林務担当職員の数が減少傾向にある中、国有林野事業の職員には森林・林業の専門家として、地域において指導的な役割を果たすことが期待されている。このため、国有林野事業では、職員を専門的かつ高度な知識や技術と現場経験を有する「森林総合監理士(フォレスター)」等に系統的に育成して、市町村行政に対し「市町村森林整備計画」の策定支援等の技術的支援を行っている。

また、事業発注や研修フィールドの提供等を通じて、民有林における人材育成の取組に対しても支援しているほか、大学等の研究機関と連携して技術者の育成を推進している(事例 V -11)。

事例V-10 複数年契約による間伐及び路網整備の実施

複数年契約に基づく間伐材の造材の様子
複数年契約に基づく
間伐材の造材の様子

平成23(2011)年度から、全国の森林管理局では、一定の区域において間伐及び路網整備を複数年契約により一括して発注する取組を進めている。この取組では、林業事業体が創意工夫した効率的な路網整備や高性能林業機械を組み合わせた作業システム等を企画提案することとなっており、生産性の向上や林業事業体の育成整備につながることが期待される。

中部森林管理局の東信(とうしん)森林管理署(長野県佐久市(さくし))では、管内の183haの区域において、平成26(2014)年度から3年間の複数年契約により間伐及び路網整備を一括して発注しており、平成27(2015)年度には72haの間伐を実施した。

事例V-11 森林管理局及び森林管理署が実施する研修への市町村職員等の受入れ

地方公共団体職員等の森林調査体験の様子
地方公共団体職員等の
森林調査体験の様子

東北森林管理局では、地域の森林・林業を支える人材の育成に向けて、民有林と国有林との連携をより一層推進しつつ取り組んでいる。

同森林管理局では、従来、国有林職員向けに実施してきた研修に、地方公共団体の林務担当職員等を受け入れることとした。その結果、平成27(2015)年度は、管内の市職員など計10名が、森林・林業に関する基礎的知識を習得するための研修に参加した。

また、三陸北部森林管理署(岩手県宮古市(みやこし))及び米代(よねしろ)東部森林管理署上小阿仁(かみこあに)支署(秋田県北秋田郡(きたあきたぐん)上小阿仁村(かみこあにむら))では、署内の若手職員を対象とした日常業務を通じて行う教育訓練(OJT(注))の場に管内の村職員等を受け入れ、森林調査の体験機会を設けた。

注:「on-the-job training」の略。



(*9)国有林野では、平成23(2011)年度から、まとまりのある区域でおおむね100~200ha程度の事業量の間伐事業を、3か年契約で一括発注する取組を実施している。



(林産物の安定供給)

国有林野事業では、公益重視の管理経営の下で行われる施業によって得られる木材について、持続的かつ計画的な供給に努めることとしている。国有林野事業から供給される木材は、国産材供給量の約2割を占めており、平成26(2014)年度の木材供給量は、立木によるものが前年度より1万m3減の108万m3(丸太換算)、素材(丸太)によるものが前年度より3万m3減の247万m3となっている。

国有林野事業からの木材の供給に当たっては、素材生産事業体や製材工場、集成材・合板工場等の需要者と協定を締結して、国有林材(間伐材等)を安定的に供給する「システム販売(*10)」を進めている。システム販売による丸太の販売量は増加傾向で推移しており、平成26(2014)年度には丸太による販売量の57%に当たる141万m3となった(資料 V -11)。また、システム販売の実施に当たっては、民有林所有者等との連携による協調出荷に取り組むとともに、新規需要の開拓に向けて、燃料用チップ、薪等を用途とする未利用間伐材等の安定供給にも取り組んでいる(事例 V -12)。

さらに、国有林野事業については、国産材の約2割を供給している特性を活かして、地域の木材需要が急激に増減した場合に、地域の需要に応える供給調整機能を発揮することが重要となっている。このため、平成25(2013)年度からは、林野庁及び全国7つの森林管理局において、学識経験者のほか川上、川中及び川下関係者等から成る「国有林材供給調整検討委員会」を開催することにより、地域の木材需給を迅速かつ的確に把握し、需給に応じた国有林材の供給に資することとしている。これに加え、平成27(2015)年度からは、全国7ブロックで開催されている「需給情報連絡協議会(*11)」に各森林管理局も参画している。

事例V-12 民有林と連携したシステム販売により中国への輸出向け原木を供給

中間土場での木材の積み込みの様子
中間土場での木材の積み込みの様子
協定締結の様子
協定締結の様子

関東森林管理局は、平成27(2015)年10月に、碓氷川(うすいがわ)森林組合(群馬県安中市(あんなかし))と連携し、A社(群馬県前橋市)との間で、中国への輸出向けのスギ原木を供給するシステム販売の協定を締結した。平成27(2015)年度末までに群馬森林管理署(群馬県前橋市)管内から国有林材2,000m3、同森林組合から民有林材600m3の合計2,600m3が供給される協定となっており、平成27(2015)年12月末までに1,238m3が供給された。

A社が購入したこれらの原木は、群馬県内の運送業者を通じて中国へ輸出され、平成27(2015)年12月に上海(シャンハイ)港へ最初の荷揚げが行われた。



(*10)システム販売とは、「国有林材の安定供給システムによる販売」の略称で、森林吸収源対策として積極的に推進している間伐に伴い生産された間伐材等について、森林管理局が、国産材の需要拡大や加工・流通の合理化等に取り組む素材生産事業体や製材工場、集成材・合板工場等と協定を締結し、国有林材を安定的に供給すること。

(*11)需給情報連絡協議会については、第 I 章(32ページ)を参照。



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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