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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第 IV 章 第3節 木材利用の動向(3)


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第1部 第 IV 章 第3節 木材利用の動向(3)

(3)公共建築物等における木材利用

(法律に基づき公共建築物等における木材の利用を促進)

我が国では、戦後の森林資源の枯渇への懸念や建築物の不燃化の徹底等から、公共建築物への木材の利用が抑制されていた時期があり、現在も木材の利用は低位にとどまっている。一方、公共建築物はシンボル性と高い展示効果があることから、公共建築物を木造で建築することにより、木材利用の重要性や木の良さに対する理解を深めることが期待できる。

このような状況を踏まえて、平成22(2010)年10月に、木造率が低く潜在的な需要が期待できる公共建築物に重点を置いて木材利用を促進するため、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行された。同法では、国が「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」を策定して、木材の利用を進める方向性を明確化するとともに、地方公共団体や民間事業者等に対して、国の方針に即した取組を促すこととしている。

「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」では、過去の「非木造化」の考え方を「可能な限り木造化又は内装等の木質化を図る」という考え方に大きく転換して、国が整備する公共建築物のうち、法令に基づく基準において耐火建築物とすること又は主要構造部を耐火構造とすることが求められていない低層の公共建築物(ただし、災害応急対策活動に必要な施設等を除く。)については、「原則としてすべて木造化を図る」などの目標を掲げた。

国では22の府省等の全てが、同法に基づく「公共建築物における木材の利用の促進のための計画」を策定しており、地方公共団体では、全ての都道府県と1,741市町村のうち86%に当たる1,496市町村が、同法に基づく「公共建築物における木材の利用の促進に関する方針」を策定している(*105)(事例 IV -8)。

事例IV-8 国内最大級の木造ホールを持つ文化会館が完成

木造のメインホール
木造のメインホール
文化会館の外観
文化会館の外観

山形県南陽市(なんようし)では、平成27(2015)年に新しい文化会館を木造で建設した。新文化会館は地上3階、地下1階、延べ床面積5,900m2であり、1,403人を収容可能なメインホールの構造部には地元産のスギを活用した木質耐火部材等を使用している。これにより、1時間耐火構造とするほか、安全性の高い耐震構造とし、災害時には防災拠点としての役割を担うことも期待されている。

文化会館全体の建設に利用されたスギ、カラマツの量は約12,000m3、そのうちの約5,700m3が南陽市産であることに加え、木質バイオマスボイラー設備も導入しており、地域の森林資源を有効活用した施設となっている。



(*105)国は平成24(2012)年2月、都道府県は平成24(2012)3月までに全ての計画、方針を策定しており、方針を策定している市町村数は平成27(2015)年12月末現在の数値。



(公共建築物の木造化の実施状況)

国、都道府県及び市町村が着工した木造の建築物は、平成26(2014)年度には3,668件であった。このうち、市町村によるものが3,148件と8割を超えている(*106)。また、平成25(2013)年度に新築・増築・改築を行った公共建築物のうち木造のものの床面積の割合は8.9%であった(*107)。

国の機関による木材利用の取組状況については、平成26(2014)年度に国が整備した公共建築物のうち、「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」において積極的に木造化を促進するものに該当するものは100棟であり、うち木造で整備を行った建築物は32棟であった。また、内装等の木質化を行った建築物は172棟であった(資料 IV -43)。この結果を踏まえ、林野庁と国土交通省による検証チームが設置され、同基本方針において積極的に木造化を促進するものに該当するもののうち非木造で整備された公共建築物について、木造化しなかった理由を検証したところ、木造の公共建築物の耐久性を確保するための維持管理や低コスト化等が課題となっていることが明らかになった。今後更なる木造化の促進を図るため、平成28(2016)年3月に農林水産省等においては「公共建築物における木材の利用の促進のための計画」の見直しを行った。

国土交通省は、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行を受けて、平成25(2013)年3月に、技術的難易度が高い木造耐火建築物の整備に関する技術的な事項を取りまとめた「官庁施設における木造耐火建築物の整備指針」を策定し、同6月には、主に事務所用途以外の建築物を対象として、主として設計段階における木材利用の技術的事項を整理した「公共建築物における木材利用の導入ガイドライン」を取りまとめた。また、平成27(2015)年5月には、木造建築物についての経験の少ない公共建築物の発注者や設計者が、木材調達や主要構造部に用いる木材の選定、接合部の検討等の建設コストや工期に影響を及ぼす内容を踏まえた合理的な設計ができるよう「木造事務庁舎の合理的な設計における留意事項」を取りまとめた。

さらに、林野庁では、地方公共団体等における木造公共建築物等の整備に係る支援として、木造建築の経験が少なく、設計又は発注の段階で技術的な助言を必要とする地域に対し、専門家を派遣して、発注者、木材供給者、設計者、施工者等の関係者と連携し課題解決に向けて取り組む事業を行っている。



(*106)国土交通省「建築着工統計調査2014年度」

(*107)農林水産省試算。



(学校の木造化を推進)

学校施設は、児童・生徒が一日の大半を過ごす学習及び生活の場であり、学校施設に木材を利用することは、木材の持つ柔らかさ、温かさ、高い調湿性等の特性により、健康や精神面で良好な学習・生活環境を実現する上で大きな効果が期待できる。

このため、文部科学省では、昭和60(1985)年度から、学校施設の木造化や内装の木質化を進めてきた。平成26(2014)年度に建設された公立学校施設の21.1%が木造で整備され、非木造の公立学校施設の63.2%(全公立学校施設の49.9%)で内装の木質化が行われている(*108)(事例 IV -9)。

文部科学省は、平成27(2015)年3月に、大規模木造建築物の設計経験のない技術者等でも比較的容易に木造校舎の計画・設計が進められるよう「木造校舎の構造設計標準(JIS A3301)」を改正するとともに、その考え方や具体的な設計例、留意事項等を取りまとめた技術資料を作成した。また、平成28(2016)年3月には、木造3階建ての学校を整備する際のポイントや留意事項をまとめた「木の学校づくり─3階建て校舎の手引─」を作成した。これらにより、地域材を活用した木造校舎の建設が進むだけでなく、木造校舎を含む大規模木造建築物の設計等の技術者の育成等が図られ、更に3階建て木造校舎の整備が進められることにより、学校施設等での木材利用の促進が期待される。

また、文部科学省では、平成11(1999)年度以降、木材活用に関する施策紹介や専門家による講演等を行う「木材を活用した学校施設づくり講習会」を全国で開催し、林野庁では後援と講師の派遣を行っている。

さらに、文部科学省、経済産業省、農林水産省及び国土交通省が連携して行っている「エコスクールパイロット・モデル事業(*109)」において、農林水産省では内装の木質化等の支援(平成26(2014)年度は9校が対象)を行っている。

事例IV-9 地元の木材と技術を活かして校舎を建設

栃木県鹿沼市(かぬまし)では、市立粟野(あわの)小学校の校舎建替えに当たり、地元産のスギ等を使用した、木造(一部鉄骨造)2階建ての新校舎が建設された。新校舎は、延べ床面積が3,034m2であり、木造の普通教室棟、特別教室棟、屋内運動場と鉄骨造の渡り廊下から構成されている。床面積3,000m2を超える学校施設等は耐火建築物にする必要があるが、鉄骨造の渡り廊下で建物全体を分離することで1棟当たりの床面積を2,000m2以下に抑え、さらに防火扉や防火壁で区画するなどの工夫により、一般に流通している規格の製材品を使用した木造軸組構法で建設することが可能となった。

新校舎の建設に当たっては、地元の粟野財産区から50~60年生のスギ約5,000本が提供され、また、伐採から製材・加工・建設に至るまで全ての工程に地元の業者が携わるなど、地域の木材と技術力を最大限活かしている。製材や乾燥、集成材の製造は地元の粟野木材協会に所属する各工場が分担し、新校舎に必要な無垢材や大断面の集成材を供給した。建物に使用された木材は約1,200m3となり、このほかに机や椅子も地元の木材を用いて製作されている。新校舎は、平成27(2015)年1月から供用が開始されている。

校舎の外観
校舎の外観
          校舎内の様子 校舎内の様子
校舎内の様子


(*108)文部科学省調べ。

(*109)学校設置者である市町村等が、環境負荷の低減に貢献するだけでなく、児童生徒の環境教育の教材としても活用できるエコスクールとして整備する学校をモデル校として認定し、新エネルギーの導入、省CO2対策、地域で流通する木材の導入等の支援を行う事業であり、平成26(2014)年度には80校が認定されている。本事業の連携開始年度は、経済産業省が平成9(1997)年、農林水産省が平成14(2002)年、国土交通省が平成24(2012)年からとなっている。



(都市部における木材利用)

平成27(2015)年に農林水産省が実施した「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」で、消費者モニターに対して都市部において木材が利用されることを期待する施設について聞いたところ、「学校や図書館などの公共施設」が88.2%、「駅やバスターミナルなどの旅客施設」が51.7%、「ホテルなどの宿泊施設」が39.0%などとなっている(資料 IV -44)。このように都市部においては、住宅建築に加えて、非住宅分野での木材利用が期待されている。

このような中で、近年、学校施設や図書館等をはじめとする公共施設を中心に、都市部においても木材を利用した施設が建設される事例がみられ、公共施設の他にショッピングモール、コンビニエンスストア等の商業施設やオフィス等にも木材が利用されている。また、都市部での木材利用の推進に向けて、木材の産地と消費地が連携する取組も行われている(事例 IV -10)。

事例IV-10 宮崎県と川崎市が都市部での木材利用促進で連携

「川崎市木材利用促進フォーラム」設立総会(平成27(2015)年10月)
「川崎市木材利用促進フォーラム」
設立総会(平成27(2015)年10月)
宮崎県と川崎市との連携・協力の取組に関する基本協定 締結式(平成26(2014)年11月)
宮崎県と川崎市との連携・協力の取組に関する基本協定 締結式
(平成26(2014)年11月)

木材をはじめとする豊富な資源やその利用に関する高い技術力を有する宮崎県と、首都圏における立地優位性を活かした消費ポテンシャルを有する神奈川県川崎市(かわさきし)は、互いの持つ資源や特性、強みを活かしながら、地域の活性化や持続的な成長に向けた取組を推進するため、平成26(2014)年11月に「宮崎県と川崎市との連携・協力の取組に関する基本協定」を締結した。

協定の締結以降、木材利用に関する取組として、講演会等の開催、川崎市内の設計業者や保育事業者等を対象とした宮崎県への視察等を通じて、技術・ノウハウの向上及び普及等を実施している。

また、川崎市では、平成27(2015)年10月に、設計や建築など各分野の事業者の参画により「川崎市木材利用促進フォーラム」を設立し、関係事業者の技術力の向上や人材育成、民間建築物への木材利用促進に向けた取組等を行っている。その中で、宮崎県との多様な事業者間連携による設計ノウハウ等の実務的な検討、相互の強みを活かしたビジネスマッチング等を通じて、「都市と地方の連携・協力による新しい価値の創造モデル」の構築に向けた取組を進めている。

このような取組は、木材の生産地と消費地が連携・協力し、都市から地方へ、地方から都市へ人や物の好循環を進める、全国に先駆けたモデル的な取組としても期待される。

(土木分野における木材利用)

土木資材としての木材の特徴は、軽くて施工性が高いこと、臨機応変に現場での加工成形がしやすいことなどが挙げられる。

土木分野では、かつて、橋や杭等に木材が利用されていたが、高度経済成長期を経て、主要な資材は鉄やコンクリートに置き換えられてきた。近年では、木製ガードレール、木製遮音壁、木製魚礁、木杭等への間伐材等の利用が進められている。今後、このような屋外における木材の利用を更に促進していくためには、防腐処理等を施す必要があるなどの課題がある。林野庁では、平成27(2015)年度に、屋外での木材の活用に向けた企画提案を募集し、優良事例を選定する「ウッドチャレンジ2015」を実施するなど、屋外における木材利用を推進している。また、国産材針葉樹合板の新たな需要先として、コンクリート型枠用合板、工事用仮囲い、工事現場の敷板等への利用もみられるなど、土木分野における間伐材等の利用が広がっている。

コンクリート型枠用合板については、これまで南洋材(ラワン材)による輸入合板が使われてきたが、これを国産材で製造する取組も進められている。国産材針葉樹を活用したコンクリート型枠用合板の実証試験も各地で行われ、ラワン合板と比較して、強度、耐久性、耐アルカリ性、接着性能、転用回数等について遜色のない品質・性能を有することが実証されている。平成27(2015)年2月には、合板型枠が「グリーン購入法基本方針」の特定調達品目に追加され、間伐材や合法性が証明された木材等の使用が判断の基準に定められており、今後、間伐材や合法性が証明された木材等を使用した合板型枠の利用拡大が期待される。

また、「一般社団法人日本森林学会」、「一般社団法人日本木材学会」及び「公益社団法人土木学会」の3者は、平成19(2007)年に「土木における木材の利用拡大に関する横断的研究会」を結成して、平成22(2010)年度に、土木分野での年間木材利用量を現在の100万m3から400万m3まで増加させるためのロードマップを作成した(*110)。また、同研究会は、平成25(2013)年3月に、ロードマップの達成に向けた提言「土木分野における木材利用の拡大へ向けて」を発表している(*111)。



(*110)土木における木材の利用拡大に関する横断的研究会「2010年度土木における木材の利用拡大に関する横断的研究報告書」(平成23(2011)年3月)

(*111)土木における木材の利用拡大に関する横断的研究会ほか「提言「土木分野における木材利用の拡大に向けて」」(平成25(2013)年3月12日)



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
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