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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第 IV 章 第3節 木材利用の動向(1)


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第1部 第 IV 章 第3節 木材利用の動向(1)

木材の利用は、快適で健康的な住環境等の形成に寄与するのみならず、地球温暖化の防止、森林の多面的機能の持続的な発揮及び地域経済の活性化にも貢献する。

以下では、木材利用の意義とその普及について記述するとともに、住宅分野における木材利用、公共建築物等における木材利用及び木質バイオマスのエネルギー利用の各分野について、最新の動向を記述する。

(1)木材利用の意義と普及

(建築資材等としての木材の特徴)

木材は、軽くて強い資材であることから、我が国では住宅等に多く用いられてきた。木材には、空気中の湿度が高いときは水分を吸収し、湿度が低いときには水分を放出するという調湿作用があり、また、木材の揮発成分には人の免疫力を向上させる効果があるほか、木材の香りにはリラクゼーション効果があることにより、心拍数や血圧の上昇を抑えることが研究により明らかになっている。また、木材はパイプ状の組織の集合体で衝撃吸収力があるため、床に使用した場合に転倒時の衝撃が緩和されたり、疲労が軽減するといわれている。このような木材の効果を期待して、福祉施設に木材を多用する例もみられる(事例 IV -5)。

事例IV-5 木材を多用した福祉施設

横ログ工法
横ログ工法
縦ログ工法
縦ログ工法

平成27(2015)年8月、茨城県つくばみらい市に、木材を多用した2階建ての福祉施設(病院と老人ホームの複合施設)が完成した。同施設は、製材を縦に並べて壁を構成する縦ログ工法と横に並べて壁を構成する横ログ工法を組み合わせることで建設されている。公共的な空間である食堂や機能訓練室は2層吹き抜けの縦ログ工法、居室は平屋の横ログ工法となっている。

この工法では、製材を多く使用できるほか、複雑な加工を必要とせず、現場の施工や解体・再利用も容易にできることなどが特徴となっている。


(木材利用は地球温暖化の防止にも貢献)

木材は、炭素の貯蔵、エネルギー集約的資材の代替、化石燃料の代替の3つの面で、地球温暖化の防止に貢献する。

樹木は、光合成によって大気中の二酸化炭素を取り込み、木材の形で炭素を貯蔵している。したがって、木材を住宅や家具等に利用することは、大気中の二酸化炭素を低減することにつながる。例えば、木造住宅は、鉄骨プレハブ住宅や鉄筋コンクリート住宅の約4倍の炭素を貯蔵していることが知られている(資料 IV -34)。さらに、住宅部材等に使用されていた木材をパーティクルボード等に加工して家具等に再利用すれば、炭素を木材の形で固定する時間を延ばすこともできる(資料 IV -35)。

また、木材は、鉄やコンクリート等の資材に比べて製造や加工に要するエネルギーが少ないことから、木材の利用は、製造及び加工時の二酸化炭素の排出削減につながる。例えば、住宅の建設に用いられる材料について、その製造時における二酸化炭素排出量を比較すると、木造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨プレハブ造よりも、二酸化炭素排出量が大幅に少ないことが知られている(資料 IV -34)。なお、このような木材を含む各種資材の環境負荷低減への貢献度等を数値化する「見える化」の取組の一つとして、「カーボンフットプリント(*93)」がある。

さらに、木材のエネルギー利用は、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えない「カーボンニュートラル」な特性を有しており、資材として利用できない木材を化石燃料の代わりに利用すれば、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出を抑制することにつながる。これに加えて、原材料調達から製品製造、燃焼までの全段階における温室効果ガス排出量を比較した場合、木質バイオマス燃料による単位発熱量当たりの温室効果ガス排出量は、化石燃料よりも大幅に少ないという報告もある(資料 IV -36)。

住宅1戸当たりの炭素貯蔵量と材料製造時の二酸化炭素排出量
木材利用における炭素ストックの状態           燃料別の温室効果ガス排出量の比較


(*93)ライフサイクルアセスメントの一種で、原材料調達から廃棄、リサイクルまでの製品のライフサイクルにおける二酸化炭素の排出量を製品に表示する取組。



(国産材の利用は森林の多面的機能の発揮等に貢献)

国産材が利用され、その収益が林業生産活動に還元されることによって、伐採後も植栽等を行うことが可能となり、「植える→育てる→使う→植える」というサイクルが維持される。これによって、森林の適正な整備・保全を続けながら、木材を再生産することが可能となり、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させることにつながる(資料 IV -37)。

また、国産材が木材加工・流通を経て住宅等の様々な分野で利用されることで、木材産業を含めた国内産業の振興と森林資源が豊富に存在する山村地域の活性化にもつながる。

現在の我が国では、戦後に造林した人工林を中心に高齢級の森林が増え、資源として本格的な利用期を迎えている。これに対し、木材の需要量は減少傾向にあり、木材自給率は依然として低い水準にある。

このような現状にある中、我が国の森林資源の有効活用、森林の適正な整備・保全と多面的機能の発揮、林業・木材産業と山村地域の振興といった観点からは、国産材の利用の推進が求められる状況といえる。

森林資源の循環利用(イメージ)

(「木づかい運動」を展開)

林野庁は、平成17(2005)年度から、広く一般消費者を対象に木材利用の意義を広め、木材利用を拡大していくための国民運動として、「木づかい運動」を展開している。同運動では、ポスター等による広報活動や、国産材を使用した製品等に添付し木材利用をPRする「木づかいサイクルマーク」の普及活動等を行っている(資料 IV -38)。「木づかいサイクルマーク」は、平成27(2015)年3月末現在、380の企業や団体で使用されている。

また、毎年10月の「木づかい推進月間」を中心として、シンポジウムの開催や広報誌等を活用した普及啓発活動を行っており、各都道府県においても地方公共団体や民間団体により様々なイベントが開催されている。平成27(2015)年度には、ウッドデザイン賞(新・木づかい顕彰)が創設され、木の良さや価値を再発見させる製品や取組について、特に優れたものを消費者目線で評価、表彰し、木材利用を促進する取組が開始されている(資料 IV -39、事例 IV -6)。

このほか、平成25(2013)年8月には、日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)が、国民に広く国産材利用の意義・重要性を普及啓発し、国産材の利用促進と消費者の製品選択に資するため、丸太や製材・合板等の木材製品に国産材率を表示する「国産材マーク」制度を開始した(資料 IV -38)。同制度は平成27(2015)年8月に一般社団法人全国木材組合連合会に移譲され、今後は産業界と林業界が協力して「国産材マーク」の普及に取り組んでいくこととされた。平成28(2016)年1月現在、61の企業及び団体において、計95件が国産材マークの使用の許可を受けている。



事例IV-6 大型商業施設における木質空間の提供

ウッドデザイン賞表彰会場での展示
ウッドデザイン賞表彰会場での展示
大型商業施設に設置されたウッドキューブ
大型商業施設に設置された
ウッドキューブ

不動産会社のM社は、平成27(2015)年10月に神奈川県海老名市(えびなし)オープンした大型商業施設に、同社社有林から生産された間伐材を活用した木質空間「ウッドキューブ」を設置した。「ウッドキューブ」は、子どもが自由に遊べる空間として、建材メーカーのD社とデザインを手掛けるP社によって企画されたもので、木材の柱や床板等によって構成されている。また、子どもの創造力を育むため、木のおもちゃやパネルも提供している。

この取組は、ユニット型木質空間という形で「木が身近にある暮らし」を子ども・子育て層に提案するものであり、木の良さ、楽しさを実感させ、家庭での木づかいにもつながっていく可能性があるとして、ウッドデザイン賞の林野庁長官賞(優秀賞)(ライフスタイルデザイン部門)を受賞した。


(「木育(もくいく)」の取組の広がり)

近年では、「木づかい運動」の一環として、「木育(もくいく)」の取組も広がっている。木育(もくいく)とは、子どもから大人までを対象に、木材や木製品とのふれあいを通じて木材への親しみや木の文化への理解を深めて、木材の良さや利用の意義を学んでもらうための教育活動である(*94)。

林野庁では、平成22(2010)年度から、「東京おもちゃ美術館」が厳選した木のおもちゃのセットを各地に運び、子どもたちが木のおもちゃに触れる機会を全国に広める「木育(もくいく)キャラバン巡回事業」を支援しており、平成26(2014)年度までに62か所で実施されている。また、木育(もくいく)の取組を全国に普及するため、地域における木育(もくいく)推進のための取組の検討とネットワーク化を目的として木育(もくいく)円卓会議の開催等を支援している。平成24(2012)年度からは、木材に関する授業と森林での間伐体験や木工体験を組み合わせた小中学生向けの「木育(もくいく)プログラム」の開発を支援しており、平成26(2014)年度までに、50校で木育(もくいく)プログラムが実施されている。

また、木育(もくいく)の実践的な活動として、日本木材青壮年団体連合会等が、児童・生徒を対象とする木工工作のコンクールを行っており、平成27(2015)年度には約20,000点の応募があった。このような活動の中には、森林・林業・木材産業に対する地域の子どもたちの関心を高めるためのものもみられる(事例 IV -7)。

事例IV-7 幼少期から一貫して木に親しむ教育を実施

木工工作の作品
木工工作の作品
間伐材の積み木を使った学習
間伐材の積み木を使った学習

岩手県気仙郡(けせんぐん)住田町(すみたちょう)では、保育園から高等学校まで一貫して、森林や木に親しむ教育を行っており、町全体で森林・林業・木材産業に対する関心を高めるための機会を提供している。

6歳頃までの幼少期には森の中で様々な遊びを、12歳頃までの少年前期には間伐材の積み木を使った学習や森の生き物観察等を行うほか、少年後期に当たる中学生になると、間伐体験や木工団地見学など、より地域の産業に近い学習を行っている。平成27(2015)年度には町立世田米(せたまい)中学校が木工工作等の取組で、第6回ものづくり日本大賞文部科学大臣賞を受賞した。

コラム 地域の名産品と連携した木づかい

間伐材を活用したかまぼこ板
間伐材を活用したかまぼこ板

神奈川県小田原市(おだわらし)の名産品としてかまぼこがある。近年、新たな取組として地元の海で獲れた魚と地元のスギ間伐材を活用したかまぼこづくりが行われている。

かまぼこ板は、水分調整の役割を担うもので、かまぼこの色や風味を損なわないよう、匂いがほとんどなく色も淡い輸入モミが使われてきた。このような中で、「豊かな海を作るのは森である」という考えの下、小田原蒲鉾(かまぼこ)協同組合を中心に、森林組合や漁業組合の連携により研究が重ねられた結果、森林整備を通じて搬出される地元のスギ間伐材を活用したかまぼこ板が開発された。これにより、地魚と地元の木材を使ったオール小田原産の商品が完成し、海と森をつなぐ象徴となっている。



(*94)木育に関する情報は「木育ラボ」ホームページ、「木育.jp」ホームページを参照。



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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