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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第 IV 章 第2節 木材産業の動向(8)


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第1部 第 IV 章 第2節 木材産業の動向(8)

(8)新たな製品・技術の開発・普及

(建築分野における技術開発)

木材産業では、これまで、木材製品の利用拡大のため、製材業における乾燥技術やスギやカラマツ等の針葉樹材に対応した構造用合板の製造技術の開発を進めてきた(*83)。

特に、合板の分野では同技術の開発を踏まえて、「新流通・加工システム」の取組を実施したことにより、スギ等針葉樹材を原料とする合板の生産量は大幅に増加した。

現在、木造住宅の分野では、国産材ツーバイフォー工法用部材、スギ大径材からの心去り構造材、国産材合板によるフロア台板、高断熱の木製サッシ等の部材等の開発・普及が進められている。

また、中大規模建築物の分野では、一般流通材を用いたトラス梁(ばり)(*84)、製材を用いた縦ログ工法(*85)、国産材合板等による高強度耐力壁等の開発・普及が進められている(資料 IV -30)。

国産材を活用した技術開発の例 スギ大径材からの心去り平角 構造用合板の耐力壁


(*83)詳細については、「平成26年度森林及び林業の動向」34ページ及び36ページ参照。

(*84)三角形状の部材を組み合わせて、外力に対する抵抗を強化した骨組み構造の梁。

(*85)縦ログ工法については、149ページの事例や「平成26年度森林及び林業の動向」159ページを参照。



(CLTの普及に向けた取組)

近年、新たな木材製品として、一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着した「CLT(*86)(直交集成板)」が注目されている。欧米を中心に様々な建築物の壁や床等に利用されており、我が国においても新たな木材需要を創出する新技術として期待されている。

平成26(2014)年11月には、CLTの普及に関する施策を計画的かつ総合的に進めるため、「CLTの普及に向けたロードマップ」が公表された(資料 IV -31)。ロードマップでは、平成28(2016)年度の早期を目途に基準強度や一般的な設計法の告示を整備することや、実証的建築を積み重ねて施工ノウハウの蓄積に取り組むこと、平成36(2024)年度までに年間50万m3程度の生産体制を構築することなどを目指す成果として掲げており、林野庁と国土交通省が連携して取り組むこととしている(資料 IV -32)。

告示の整備については、これまでの林野庁及び国土交通省の事業による実験等を通じてCLTの構造や防火に関する技術的知見が得られたことから、平成28(2016)年3月31日及び4月1日に、CLTを用いた建築物の一般的な設計法等に関する告示が交付・施行された。実証的建築については、林野庁支援により、平成26(2014)年度に8棟、平成27(2015)年度に14棟が建設されるとともに、国土交通省支援により大型テーマパークにおける宿泊施設等が建設された(事例 IV -2)。さらに、平成27(2015)年度末には岡山県内に国内で初のCLT量産工場が竣工するなど、生産体制の構築に向けた取組も進みつつある。

また、平成27(2015)年8月には、高知県知事と岡山県真庭(まにわ)市長を共同代表とする「CLTで地方創生を実現する首長連合」が設立されるなど、地方創生の観点から関係地方公共団体が広域的に連携し、CLTの普及を積極的に推進していく体制も整備されている。

CLTの普及に向けたロードマップ
CLTの普及に向けた取組例 CLTの強度試験 実証的CLT建築の現場における構造見学会 工場でのCLT生産

事例IV-2 「CLTパネル工法」による宿泊施設が完成

客室内の様子
客室内の様子

「CLTパネル工法」による宿泊施設
「CLTパネル工法」による宿泊施設

平成28(2016)年2月に、長崎県佐世保市(させぼし)のテーマパーク内に、構造部にCLTを使用する「CLTパネル工法(注1)」による木造2階建ての宿泊施設3棟が完成した。客室数は合計72室であり、客室内部は2面の壁面をCLTの現(あらわ)し(注2)としている。CLTのラミナにはスギ材が使用され、長崎県を含む九州の各地域から調達されるなど、九州地方に豊富に存在する森林資源の活用にもつながっている。

このように、多数の人々の目に触れる施設において、CLT等の木材製品を活用することは、人々の木材への親しみを深めることにつながることも期待される。

注1:耐力壁など構造上主要な部分にCLTを用いた建築物。

2:木材を耐火被覆することなく露出した状態でそのまま使うこと。



(*86)「Cross Laminated Timber」の略。



(木質耐火部材の開発)

「建築基準法」では、大規模な建築物や不特定多数の人が利用する建築物については、火災時の避難安全や延焼防止等の観点から、地域、規模、用途に応じて、「耐火建築物(*87)」や「準耐火建築物(*88)」としなければならないと定められている。例えば、高さ13m又は軒高9mを超える建築物で4階建て以上のものや延べ面積が3,000m2を超える建築物は、主要構造部を耐火構造としなければならないとされている(*89)。また、劇場や学校等の不特定又は多数の人が利用したり、就寝の場としたりする「特殊建築物」のうち3階建て以上のものについては、一定の場合を除き耐火建築物とすることが求められる(*90)。

このように大規模な建築物や不特定多数の人が利用する建築物には、高い耐火性能が求められるが、所要の性能を満たせば、木造でも建築することが可能であり、木材と非木質資材の組合せや木材の難燃処理により、一定の耐火性能を有する耐火集成材等の木質耐火部材が開発されている。

耐火方式には、木材を石膏ボードで被覆したもの、木材を難燃処理木材等で被覆したもの、鉄骨を木材で被覆したものがある(資料 IV -33)。

これらの耐火方式を用いた木質耐火部材のうち、「建築基準法」に基づき1時間の耐火性能を有する部材として国土交通大臣の認定を受けたものは、建築物の柱や梁(はり)等に使うことで、最上階より数えて4階建てまでを木造とすることが可能である。さらに、平成26(2014)年11月には、2時間の耐火性能を有する耐火集成材が開発され、耐火性能の観点からは最上階より数えて14階建てまで木造で建築することが可能となっている。各地では、これらの木質耐火部材を使用した建築物が建設されている(事例 IV -3)。

木質耐火構造の方式

事例IV-3 2時間耐火の木質耐火部材を使用した建物が完成

京都木材会館の外観
京都木材会館の外観

平成28(2016)年3月、京都府京都市に木造4階建ての「京都木材会館」が竣工した。1階部分の柱には平成26(2014)年11月に2時間耐火の国土交通大臣の認定を取得した木質耐火部材を使用している。同施設は、1階が店舗・ギャラリー、2階が事務所、3、4階が共同住宅となっており、不特定多数の人が出入りする1階部分に高い耐火性能を持つ部材を使用することとした。

構造材には京都府産のスギ・ヒノキ材を100%使用するなど、地域の木材の積極的な利用も実現している。


(*87)通常の火災が終了するまでの間、当該火災により建築物の倒壊及び延焼を防止するために主要構造部を耐火構造とするなどの措置を施した建築物(「建築基準法」(昭和25年法律第201号)第2条第7号及び第9号の2)。

(*88)火災による延焼を抑制するために主要構造部を準耐火構造とするなどの措置を施した建築物(「建築基準法」第2条第7号の2及び第9号の3)。

(*89)「建築基準法」第21条

(*90)「建築基準法」第27条。平成27(2015)年6月から、耐火構造とすることが義務付けられていた3階建ての学校等について、一定の防火措置を講じた場合には準耐火構造等にすることができるとされている。



(木質バイオマスのマテリアル利用に向けた技術開発)

木質バイオマスは、製紙、パーティクルボード等の木質系材料や燃料として利用されるほか、新たな用途の研究・技術開発が行われている。木質バイオマスのマテリアル(素材)としての利用促進は、新たな木材需要の創出や林地残材等の未利用木材を高付加価値化するものとして期待されており、現在、リグニン(*91)やナノカーボン(*92)に加え、セルロースナノファイバーの製造・利用技術の開発が行われている。セルロースナノファイバーは植物由来の環境負 荷の少ない素材で、軽量かつ高強度な特性があり、産業分野での新たな素材への活用が期待されている。林野庁では、中山間地域において、国内森林資源由来の木質バイオマスを原料とするセルロースナノファイバーを製造できる省エネルギーのナノ化技術等の開発(事例 IV -4)に対して支援を行っている。

事例IV-4 国産材を原料としたセルロースナノファイバーのベンチプラントの公開

セルロースナノファイバーは、木材等の植物細胞壁成分であるセルロースをナノレベルまでほぐしたもので、今後、透明フィルムやプラスチックの補強材料等としての利用が期待されている。

国立研究開発法人森林総合研究所では、中山間地域に広がるスギやヒノキ等を原料とし、地域に適応した小規模・低環境負荷型のセルロースナノファイバー製造技術と生産されたセルロースナノファイバーを用いた新素材の開発に取り組んでいる。平成27(2015)年12月にはセルロースナノファイバーの製造実証ベンチプラントが新設され、平成28(2016)年1月に民間企業、研究機関、行政機関等に公開された。

同研究所では、今後、ベンチプラントを活用し、産学官の連携により、製造・利用技術の高度化を進め、国産材の特徴を活かしたセルロースナノファイバーの実用化に取り組むこととしている。

資料:国立研究開発法人森林総合研究所



木材からセルロースナノファイバーになるまでの過程

木材からセルロースナノファイバーになるまでの過程
          ベンチプラントの公開の様子

ベンチプラントの公開の様子
ベンチプラントの公開の様子

コラム セルロースナノファイバーで「マルクス・ヴァーレンベリ賞」を受賞

スウェーデン国王から表彰される磯貝明教授ら
スウェーデン国王から表彰される磯貝明教授ら

平成27(2015)年に、東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明(いそがい あきら)教授、同研究科の齋藤継之(さいとう つぐゆき)准教授、フランス国立科学研究センターの西山義春(にしやま よしはる)博士の3名が「森林・木材科学分野のノーベル賞」ともいえる「マルクス・ヴァーレンベリ賞(注1)」をアジアで初めて受賞した。

同教授のグループは、TEMPO触媒(注2)を用いた酸化反応を利用することで、樹木を構成するミクロレベル幅のセルロース繊維をナノレベル幅まで細かくほぐし、高効率でセルロースナノファイバーを調製する研究を行った。これは、セルロースナノファイバーの産業利用にとって画期的な技術であるとともに、関連する研究開発が世界へ拡大する先駆けとなった。

注1:森林・木材科学分野、関連生物分野において独創的かつ卓越した研究成果、あるいは実用化に大きく貢献した功績を対象に表彰を行うもので、1981年にヴァーレンベリ財団によって創設された。

2: 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル触媒


(*91)セルロース、ヘミセルロースとともに木材を組成する主要成分で、主に繊維と繊維を接着する役目を果たしている高分子化合物。

(*92)ナノメートル(10億分の1m)の大きさの構造を持つカーボン(炭素)から成る物質群。



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
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