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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第II章 第3節 森林保全の動向(4)


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第1部 第 II 章 第3節 森林保全の動向(4)

(4)森林被害対策の推進

(野生鳥獣による被害が深刻化)

近年、野生鳥獣の生息域の拡大等を背景として、シカやクマ等の野生鳥獣による森林被害が深刻化している。平成26(2014)年度の野生鳥獣による森林被害の面積は、全国で約9千haとなっており、このうち、シカによる枝葉の食害や剥皮被害が約8割を占めている(資料 II -19)。

シカによる被害が深刻化している背景として、個体数の増加や分布域の拡大が挙げられる。環境省が全国の個体数の推定を行ったところ、北海道を除くシカの個体数(*70)の推定値(中央値)は約249万頭(平成24(2012)年度末)となっており(*71)、平成23(2011)年度の捕獲率を維持した場合、平成35(2023)年度の個体数は約402万頭まで増加すると予測されている。また、シカの分布域は、昭和53(1978)年度から平成26(2014)年度までの36年間で約2.5倍に、直近の平成23(2011)年度から平成26(2014)年度までの3年間では約1.2倍に拡大しており、全国的に分布域の拡大傾向が続いている。特に北海道・東北地方や北陸地方において急速に拡大している(*72)(資料 II -20)。また、環境省が作成した密度分布図によると、関東山地から八ヶ岳、南アルプスにかけての地域や近畿北部、九州で生息密度が高い状態であると推定されている(*73)。

シカの密度が著しく高い地域の森林では、シカの食害によって、シカの口が届く高さ約2m以下の枝葉や下層植生がほとんど消失している場合があり(*74)、このような被害箇所では、下層植生の消失や踏み付けによる土壌流出等により、森林の有する多面的機能への影響が懸念されている。

その他の野生鳥獣による被害としては、ノネズミは、植栽木の樹皮及び地下の根の食害により、植栽木を枯死させることがあり、特に北海道におけるエゾヤチネズミは、数年おきに大発生し、大きな被害を引き起こしている。クマは、立木の樹皮を剥ぐことにより、立木の枯損や木材としての価値の低下等の被害を引き起こしている。

ニホンジカ分布域


(*70)北海道については、北海道庁が独自に個体数を推定しており、平成24(2012)年度において約58万頭と推定。

(*71)推定値には、219~286万頭(50%信用区間)、188~358万頭(90%信用区間)といった幅がある。信用区間とは、それぞれの確率で真の値が含まれる範囲を指す。

(*72)環境省プレスリリース「改正鳥獣法に基づく指定管理鳥獣捕獲等事業の推進に向けたニホンジカ及びイノシシの生息状況等緊急調査事業の結果について」(平成27(2015)年4月28日付け)

(*73)環境省プレスリリース「改正鳥獣法に基づく指定管理鳥獣捕獲等事業の推進に向けた全国のニホンジカの密度分布図の作成について」(平成27(2015)年10月9日付け)

(*74)農林水産省(2007)野生鳥獣被害防止マニュアル -イノシシ、シカ、サル(実践編)-: 40-41.



(野生鳥獣被害対策を実施)

野生鳥獣による森林被害対策として、守るべき森林の被害の防除のため、森林へのシカ等の野生鳥獣の侵入を防ぐ防護柵や立木を剥皮被害から守る防護テープ等の被害防止施設の整備、新たな防除技術の開発等が行われている。

また、被害をもたらす野生鳥獣を適正な頭数に管理する個体数管理のため、各地域の地方公共団体や鳥獣被害対策協議会等によりシカ等の計画的な捕獲や捕獲技術者の養成等が行われているほか、わなや銃器による捕獲等についての技術開発も進められている(事例 II -10)。なお、最近では、捕獲鳥獣の肉を食材として利活用する取組や、鹿革を利用した革製品の開発及び販売も、全国に広がりつつある。

さらに、野生鳥獣の生息環境管理の取組として、例えば、農業被害がある地域においては、イノシシ等が出没しにくい環境(緩衝帯)をつくるため、林縁部の藪(やぶ)の刈り払い、農地に隣接した森林の間伐等が行われている。また、地域や野生鳥獣の特性に応じて針広混交林や広葉樹林を育成し生息環境を整備するなど、野生鳥獣との棲み分けを図る取組が行われている。

このような中で、平成25(2013)年12月には、環境省と農林水産省が「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を取りまとめ、捕獲目標の設定(ニホンジカ、イノシシについて、平成35(2023)年度までに個体数を半減(*75))とその達成に向けた捕獲事業の強化、捕獲事業従事者の育成・確保等を推進することとした。さらに、平成26(2014)年5月には、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」が一部改正され、法の目的に「鳥獣の管理(*76)」が加わるとともに、法の題名が「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(以下「鳥獣保護法」という。)に改められ、新たに鳥獣の管理を図るための措置等が導入された。

また、林野庁では、森林整備事業により、森林所有者等による間伐等の施業と一体となった防護柵等の被害防止施設の整備や、スギ等の人工林の針広混交林化や広葉樹林化に対して支援を行っており、さらに平成26(2014)年からは、野生鳥獣の食害等により被害を受けている森林を対象に、鳥獣の誘引捕獲とそれに必要な施設の整備に対して支援を行っている。

さらに、平成26(2014)年11月、厚生労働省では、平成26(2014)年5月の「鳥獣保護法」の一部改正に伴い、野生鳥獣の捕獲数が増加するとともに、捕獲した野生鳥獣の食用としての利活用が増加することが見込まれることから、狩猟から消費に至るまで野生鳥獣肉の安全性確保を推進するために守るべき衛生措置を盛り込んだ「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を作成した。

事例II-10 簡単・安全なバネなしくくりわなを活用した鳥獣被害対策

いのしか御用
いのしか御用

高知県幡多郡(はたぐん)三原村(みはらむら)の三原村森林組合は、平成24(2012)年度から仕掛けが簡単で安全なイノシシ・シカ用のくくりわなの製作に取り組み、平成26(2014)年度にバネなしくくりわな「いのしか御用」を開発した。「いのしか御用」は、バネ材を一切使用しないため、誤作動による怪我の誘発等の危険性がなく、軽量かつコンパクトで持ち運びしやすいなどの特徴がある。わなの仕掛けは簡単で、パイプを地中に埋めて、その上にわな本体を乗せ、本体にワイヤーを差し込み、土や枯れ葉で覆うだけのものである。

同組合では、同村有害鳥獣被害対策協議会と連携し、村内のわなを用いる狩猟者や許可捕獲者を対象に無料貸し出しを行った結果、イノシシ及びシカの合計捕獲頭数が大幅に増加した。

「いのしか御用」は、捕獲に伴う負担の軽減や鳥獣被害対策に大きく貢献しており、今後も更なる活用が期待される。

資料:森林防疫, 2015年5月号: 31、現代農業, 2014年11月号: 228-229



(*75)環境省プレスリリース「改正鳥獣法に基づく指定管理鳥獣捕獲等事業の推進に向けたニホンジカ及びイノシシの生息状況等緊急調査事業の結果について」(平成27(2015)年4月28日付け)によると、ニホンジカについて、平成35(2023)年度に平成23(2011)年度の中央値で半数以下にするためには、平成27(2015)年度以降に平成23(2011)年度の捕獲率の約2.2倍の捕獲を続ける必要があると推測されている。

(*76)「鳥獣の管理」とは、生物の多様性の確保、生活環境の保全又は農林水産業の健全な発展を図る観点から、その生息数を適正な水準に減少させ、又はその生息地を適正な範囲に縮小させることと定義されている(「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(平成14年法律第88号)第2条第3項)。



(「松くい虫」は我が国最大の森林病害虫被害)

「松くい虫被害」は、体長約1mmの「マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)」がマツノマダラカミキリ等に運ばれてマツ類の樹体内に侵入することにより、マツ類を枯死させる現象(マツ材線虫病)である(*77)。

我が国の松くい虫被害は、明治38(1905)年頃に長崎県で初めて発生し(*78)、その後、全国的に広がった。これまでに、北海道を除く46都府県で被害が確認されている。

松くい虫被害量(材積)は、昭和54(1979)年度の243万m3をピークに減少傾向にあり、平成26(2014)年度はピーク時の4分の1程度の約56万m3となったが、依然として我が国最大の森林病害虫被害となっている(*79)(資料 II -21)。

松くい虫被害の拡大を防止するため、林野庁では都府県と連携しながら、公益的機能の高いマツ林等を対象として、薬剤散布や樹幹注入等の予防対策と被害木の伐倒くん蒸等の駆除対策を併せて実施している。また、その周辺のマツ林等を対象として、公益的機能の高いマツ林への感染源を除去するなどの観点から、広葉樹等への樹種転換による保護樹林帯の造成等を実施している(*80)。近年は東北や北陸甲信越地方等で被害が拡大しているほか、地域によっては必要な予防対策を実施できなかったため急激に被害が拡大した例もあり、引き続き被害拡大防止対策が重要となっている。

全国にマツ枯れ被害が広がる中、マツノザイセンチュウに対して抵抗性を有する品種の開発も進められてきた。国立研究開発法人森林総合研究所林木育種センターは、昭和53(1978)年度から、マツ枯れの激害地で生き残ったマツの中から抵抗性候補木を選木して抵抗性を検定することにより、平成26(2014)年度までに375種の抵抗性品種を開発してきた(*81)。各府県では、これらの品種を用いた採種園が造成されており、平成25(2013)年度には、これら採種園から採取された種子から約120万本の抵抗性マツの苗木が生産された(*82)。

松くい虫被害木の処理については、伐倒木をチップ化する方法等もあり、被害木の有効活用の観点から、製紙用やバイオマス燃料用として利用されている例もみられる。



(*77)「松くい虫」は、「森林病害虫等防除法」(昭和25年法律第53号)により、「森林病害虫等」に指定されている。

(*78)矢野宗幹 (1913) 長崎県下松樹枯死原因調査. 山林公報, (4):付録1-14.

(*79)林野庁プレスリリース「「平成26年度森林病害虫被害量」について」(平成27(2015)年7月17日付け)

(*80)林野庁ホームページ「松くい虫被害」

(*81)林野庁研究指導課調べ。

(*82)林野庁整備課調べ。



(ナラ枯れ被害の状況)

「ナラ枯れ」は、体長5mm程度の甲虫である「カシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus)」がナラやカシ類等の幹に侵入して、「ナラ菌(Raffaelea quercivora)」を樹体内に持ち込むことにより、ナラやカシ類の樹木を集団的に枯死させる現象(ブナ科樹木萎凋(いちょう)病)である(*83)。

文献で確認できる最古のナラ枯れ被害は、昭和初期(1930年代)に発生した宮崎県と鹿児島県での被害である(*84)。ナラ枯れの被害量は、平成22(2010)年度の約33万m3をピークに減少に転じ、平成26(2014)年度にはピーク時の8分の1程度の約4万m3となった。また、新たに被害が確認された都道府県はなく、被害が確認されたのは本州と九州のうち27府県となった(*85)(資料 II -22)。

ナラ枯れ被害の拡大を防止するためには、被害の発生を迅速に把握して、初期段階でカシノナガキクイムシの防除を行うことが重要である。このため林野庁では、被害木のくん蒸及び焼却による駆除、健全木への粘着剤の塗布やビニールシート被覆による侵入予防等を推進している。



(*83)カシノナガキクイムシを含むせん孔虫類は、「森林病害虫等防除法」により、「森林病害虫等」に指定されている。

(*84)伊藤進一郎, 山田利博 (1998) ナラ類集団枯損被害の分布と拡大(表-1). 日本林学会誌, Vol.80: 229-232.

(*85)林野庁プレスリリース「「平成26年度森林病害虫被害量」について」(平成27(2015)年7月17日付け)



(林野火災は減少傾向)

林野火災の発生件数は、短期的な増減はあるものの、長期的には減少傾向で推移している。平成26(2014)年における林野火災の発生件数は1,494件、焼損面積は約1,062haであった(資料 II -23)。

一般に、林野火災は、冬から春までに集中して発生しており、ほとんどは不注意な火の取扱い等の人為的な原因によるものである。林野庁は、昭和44(1969)年度から、入山者が増加する春を中心に、消防庁と連携して「全国山火事予防運動」を行っている。同運動では、関係行政機関等により、入山者や森林所有者等を対象として、防火意識を高める啓発活動が行われている(*86)。



(*86) 林野庁プレスリリース「全国山火事予防運動の実施について」(平成28(2016)年2月26日付け)



(森林保険制度)

森林保険制度は、火災、気象災及び噴火災により森林に発生した損害を塡補する保険である。

森林保険の運営は、平成26(2014)年度までは森林保険特別会計を設置し、国が保険者となる「森林国営保険」として国自らが行ってきたが、「森林国営保険法等の一部を改正する法律」の施行を受け、法の題名が「森林国営保険法」から「森林保険法」に改められるとともに、平成27(2015)年度から国立研究開発法人森林総合研究所に移管された(*87)。

森林保険制度に基づく保険金支払総額は、平成26(2014)年度には10億円であった(資料 II -24)。



(*87) 森林国営保険の移管について詳しくは、「平成26年度森林及び林業の動向」の80ページ参照。



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
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