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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第II章 第3節 森林保全の動向(2)


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第1部 第 II 章 第3節 森林保全の動向(2)

(2)治山対策の展開

(山地災害への対応)

我が国の国土は、地形が急峻かつ地質がぜい弱であることに加え、前線や台風に伴う豪雨等が頻発することから、毎年、各地で多くの山地災害が発生している。

平成27(2015)年は、6月には活発な梅雨前線の影響により、熊本県や鹿児島県を中心に、7月には「台風第11号」により、兵庫県や大阪府等を中心に、8月には「台風第15号」により、熊本県、宮崎県等を中心に山地災害が発生した(事例 II -8)。また、同9月の「平成27年9月関東・東北豪雨」では、栃木県、福島県等を中心に記録的な大雨となり、栃木県の五十里(いかり)では最大24時間降水量551mm(アメダス観測値)を記録した。これらの大雨等により、大規模な山腹崩壊等が多数発生し、平成27(2015)年の山地災害による被害は約282億円に及んだ(資料 II -16)。

林野庁では、山地災害が発生した場合には、被災都道府県等と連携して、被害状況の調査や二次災害の防止など、初動時の迅速な対応に努めるとともに、早期復旧に向けて災害復旧事業の実施等に取り組んでいる(*52)。

事例II-8 平成27(2015)年6月の熊本県の豪雨災害における治山施設の効果

治山ダムによる土砂流出の抑制効果 (熊本県球磨郡五木村)
治山ダムによる土砂流出の抑制効果(熊本県球磨郡五木村)

平成27(2015)年6月11日、九州の西海上から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で大気の状態が非常に不安定になり、熊本県を中心に大雨となった。

この大雨により、林野関係では、熊本県で、林地荒廃46か所、林道施設被害182か所など甚大な被害が発生した。

熊本県球磨郡(くまぐん)五木村(いつきむら)入鴨(いりがも)地区では、この雨により土砂が流下したものの、熊本県が整備した治山ダム群(平成23(2011)年度及び平成24(2012)年度施工)が、山脚(注1)を固定し、渓床勾配を緩和(注2)していたことにより、侵食による斜面の崩壊を抑制して規模拡大を防ぎ、下流域への土砂流出を抑制した。この結果、この地区での被害が軽減された。

注1:山のすそ、山麓のこと。

2:治山ダムの上流側に土砂が堆積し、渓流の傾斜が緩やかになること。



(*52)林野庁の取組については、「平成26年度森林及び林業の動向」のトピックス(5ページ)参照。



(治山事業の実施)

国及び都道府県は、安全で安心して暮らせる国土づくり、豊かな水を育む森林づくりを推進するため、「森林整備保全事業計画」に基づき、山地災害の防止、水源の涵(かん)養、生活環境の保全等の森林の持つ公益的機能の確保が特に必要な保安林等において、治山施設の設置や機能の低下した森林の整備等を行う治山事業を実施している。平成26(2014)年6月には「国土強靱(じん)化基本計画」が策定され、国土保全分野等の国土強靱(じん)化の推進方針として、治山施設の整備等のハード対策と地域におけるソフト対策との連携を通じた総合的な対策を進めることなどの治山事業の推進が位置付けられた。

治山事業は、「森林法」で規定される保安施設事業と、「地すべり等防止法」で規定される地すべり防止工事に関する事業に大別される。保安施設事業では、山腹斜面の安定化や荒廃した渓流の復旧整備等のため、施設の設置や治山ダムの嵩上げ等の機能強化、森林の整備等を行っている。例えば、治山ダムを設置して荒廃した渓流を復旧する「渓間工」、崩壊した斜面の安定を図り森林を再生する「山腹工」等を実施しているほか、火山地域においても荒廃地の復旧整備等を実施している(事例 II -9)。地すべり防止工事では、地すべりの発生因子を除去・軽減する「抑制工」や地すべりを直接抑える「抑止工」を実施している。これらに加え、地域における避難体制の整備等のソフト対策と連携した取組として、山地災害危険地区(*53)を地図情報として住民に提供するとともに、土石流、泥流や地すべり等の発生を監視・観測する機器や雨量計等の整備を行っている。

近年、短時間強雨の発生頻度が増加傾向にあることに加え、地球温暖化に伴う気候変動により大雨の発生頻度が更に増加するおそれが高いことが指摘されており(*54)、今後、山地災害の発生リスクが一層高まることが懸念されている。このような中、平成27(2015)年6月に、内閣府の中央防災会議(*55)の下に設置された「総合的な土砂災害対策検討ワーキンググループ」において、平成26(2014)年8月に発生した広島県での土砂災害等から得られた課題や教訓を整理し、政府一体となった土砂災害対策が検討され、「総合的な土砂災害対策の推進について」が報告された。この中で、治山事業については、森林の適切な整備・保全に向け、山地災害危険地区の的確な把握、土砂流出防備保安林等の配備、治山施設や森林の整備を着実に進めるなど、山地災害による被害を防止・軽減する事前防災・減災に向けた対策を推進していく必要があるとされている。

このため、山地災害等の被害を防止・軽減する事前防災・減災の考え方に立ち、集落等に近接する山地災害危険地区や重要な水源地域等において、保安林の積極的な指定、治山施設の設置や機能強化を含む長寿命化対策、荒廃森林の整備、海岸防災林の整備等を推進するなど、総合的な治山対策により地域の安全・安心の確保を図る「緑の国土強靱(じん)化」を推進することとしている。

事例II-9 スコリア地帯における荒廃地を治山事業により復旧


地域住民による木柵工の施工
地域住民による木柵工の施工
谷止工の施工状況(静岡県小山町)
谷止工の施工状況
(静岡県小山町)

静岡県駿東郡(すんとうぐん)小山町(おやまちょう)北部の山地は、富士山の火山噴出物(スコリア)が厚く堆積した固結度の低い土壌に覆われているため侵食されやすい性質を有している。このため、山地災害が頻発する上、災害後には荒廃地の拡大等により森林の再生が困難となりやすい。

平成22(2010)年9月には、台風第9号に伴う豪雨(静岡県の小山町で、日最大24時間降水量490mm、最大1時間降水量118mmを記録)に見舞われ、山地災害による甚大な被害が発生した。このため、静岡県により積極的な復旧治山事業が実施されたが、その後の降雨により荒廃地の拡大と土砂流出による被害が継続して発生する事態となった。

このような状況の中で、当該山地の荒廃地の規模やスコリアの特性を勘案した結果、復旧には多大な事業費と高度な技術を要すると判断されたことから、国直轄による荒廃地の復旧整備を行うこととし、平成27(2015)年度より民有林直轄治山事業を実施している。

このほか、平成25(2013)年度に、同町により「小山町山地強靭(じん)化総合対策協議会」が設立され、国、県、町、地域住民が一体となった荒廃森林の復旧整備等の検討が行われている。同協議会では、取組の一つとして、町と地域住民が中心となって、小規模崩壊地の拡大を防止するため間伐材を活用した木柵工等の体験施工を行っている。このような取組により、地域住民が自主的に地域の森林について考える機会を提供している。



(*53)平成24(2012)年12月末現在、全国で合計18万4千か所が調査・把握され、市町村へ周知されている。

(*54)IPCC第5次評価報告書による。IPCCについては、76ページを参照。

(*55)内閣総理大臣をはじめとする全閣僚、指定公共機関の代表者及び学識経験者により構成されており、防災基本計画の作成や防災に関する重要事項の審議等を実施している。



(海岸防災林の整備)

我が国は、周囲を海に囲まれており、海岸線の全長は約3.4万kmに及び、各地の海岸では、潮害や季節風等による飛砂や風害等の海岸特有の被害が頻発してきた。このような被害を防ぐため、先人たちは、潮風等に耐性があり、根張りが良く、高く成長するマツ類を主体とする海岸防災林を造成してきた。これらの海岸防災林は、潮害、飛砂及び風害の防備等の災害防止機能の発揮を通じ、地域の暮らしと産業の保全に重要な役割を果たしているほか、白砂青松(はくしゃせいしょう)の美しい景観を提供するなど人々の憩いの場ともなっている。

このような中、東日本大震災で、海岸防災林が一定の津波被害の軽減効果を発揮したことが確認されたことを踏まえ、平成24(2012)年7月に中央防災会議が決定・公表した「防災対策推進検討会議最終報告」、同会議の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」と「津波避難対策検討ワーキンググループ」の報告の中で、海岸防災林の整備は、津波に対するハード・ソフト施策を組み合わせた「多重防御」の一つとして位置付けられた(*56)。

これらの報告や林野庁により開催された「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」が示した方針(*57)を踏まえ、林野庁では都道府県等と連携しつつ、東日本大震災により被災した海岸防災林の復旧・再生を進めるとともに、全国で飛砂害、風害及び潮害の防備等を目的として、海岸防災林の整備・保全を進めている(*58)。



(*56)中央防災会議防災対策推進検討会議「防災対策推進検討会議最終報告」(平成24(2012)年7月31日)、中央防災会議防災対策推進検討会議南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」(平成25(2013)年5月28日)、中央防災会議防災対策推進検討会議津波避難対策検討ワーキンググループ「津波避難対策検討ワーキンググループ報告」(平成24(2012)年7月18日)

(*57)林野庁プレスリリース「今後における海岸防災林の再生について」(平成24(2012)年2月1日付け)

(*58)東日本大震災により被災した海岸防災林の再生については、第 VI 章(190-194ページ)参照。



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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