English

このサイトの使い方

サイトマップ

ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第II章 第2節 森林整備の動向(1)


ここから本文です。

第1部 第 II 章 第2節 森林整備の動向(1)


我が国の森林整備は、森林所有者や林業関係者に加え、国、地方公共団体、NPO(民間非営利組織)や企業等の幅広い関係者が連携して、間伐や伐採後の再造林等を適正に進める必要がある。

以下では、森林整備の推進状況、社会全体に広がる森林(もり)づくり活動、研究・技術開発及び普及の推進について記述する。

(1)森林整備の推進状況

(間伐等の森林整備の状況)

国土の保全、水源の涵(かん)養、地球温暖化の防止、木材をはじめとする林産物の供給等の森林の有する多面的機能が将来にわたって十分に発揮されるようにするためには、植栽、保育、間伐等の森林整備を適切に行うことによって、健全な森林を造成し、育成する必要がある。特に、我が国の森林面積の約4割(1,029万ha)を占める人工林については、現在、成熟した資源が増加している一方、適正に管理されない森林もあるため、公益的機能と木材等生産機能の両者が適切に発揮されるよう、資源の適切な利用を進めつつ、必要な間伐や主伐後の再造林等を着実に行う必要がある。また、立地条件に応じて公益的機能を高度に発揮するため、複層林化(*8)、長伐期化(*9)、針広混交林化や広葉樹林化(*10)を推進するなど、多様で健全な森林へ誘導することも必要である。このため、我が国では、「森林法」に基づく森林計画制度等により計画的かつ適切な森林整備を推進している。

また、地球温暖化対策として、我が国は、2020年度における自主的な温室効果ガス削減目標を2005年度総排出量(13億9,700万CO2トン)比3.8%減としており、森林吸収源対策では約3,800万CO2トン(2.7%)以上を確保することとしている。この森林吸収量の目標は、京都議定書第2約束期間(2013年~2020年)においては、森林経営活動による森林吸収量の算入上限値が1990年総排出量比で各国一律3.5%(2013年~2020年平均)とされていることを踏まえ、この上限値が確保されることを前提としたものである。この目標を達成するため、「間伐等特措法」に基づき農林水産大臣が定める「特定間伐等及び特定母樹の増殖の実施の促進に関する基本指針」では、平成25(2013)年度から平成32(2020)年度までの8年間において、年平均52万haの間伐を実施することとしている(*11)。

このような中、林野庁では、森林所有者等による間伐等の森林施業や路網整備に対して、「森林整備事業」により支援を行っている。このうち、「森林環境保全直接支援事業」では、「森林経営計画(*12)」の作成者等が、施業の集約化や路網整備等を通じて、低コスト化を図りつつ計画的に実施する施業に対し支援を行っている。また、「環境林整備事業」では、所有者の自助努力によっては適正な整備が期待できない急傾斜地等の条件不利地において、市町村等が森林所有者と協定を締結して実施する施業に対し支援を行っている。さらに、「美しい森林づくり基盤整備交付金」では、「間伐等特措法」に基づき行う間伐等に対して支援を行っている。

また、国立研究開発法人森林総合研究所森林整備センターが実施する「水源林造成事業」では、ダムの上流域等の水源地域に所在する水源涵(かん)養上重要な保安林のうち、水源涵(かん)養機能等が低下している箇所について、急速かつ計画的に森林の造成を行っている。同事業は、「分収林特別措置法」に基づき、土地所有者、造林者及び国立研究開発法人森林総合研究所の3者が分収造林契約(*13)を締結して、土地所有者が土地の提供を、造林者が植栽、植栽木の保育及び造林地の管理を、同研究所が植栽や保育に要する費用の負担と技術の指導を行うものである。同事業により、これまで全国で約47万haの森林が造成され、管理されている(*14)。

このほか、「治山事業」により、森林所有者等の責に帰することができない原因により荒廃し、機能が低下した保安林の整備が行われている。

国有林野事業においても、間伐等の森林整備や保安林の整備が行われている。

平成26(2014)年度の主な森林整備の実施状況は、人工造林の面積が2.5万haであり、このうち複層林の造成を目的として樹下に苗木を植栽する樹下植栽は0.4万haであった。また、保育等の森林施業を行った面積は74万haであり、このうち間伐の面積は47万haであった(資料 II -7)。



(*8)針葉樹一斉人工林を帯状、群状等に択伐し、その跡地に人工更新等により複数の樹冠層を有する森林を造成すること。

(*9)従来の単層林施業が40~50年程度で主伐(皆伐)することを目的としているのに対し、おおむね2倍に相当する林齢まで森林を育成し主伐を行うこと。

(*10)針葉樹一斉人工林を帯状、群状等に択伐し、その跡地に広葉樹を天然更新等により生育させることにより、針葉樹と広葉樹が混在する針広混交林や広葉樹林にすること。

(*11)地球温暖化対策については、76~80ページを参照。

(*12)「森林経営計画」については、第 I 章(27~29ページ)を参照。

(*13)一定の割合による収益の分収を条件として、造林地所有者、造林者及び造林費負担者のうちの3者又はいずれか2者が当事者となって締結する契約。

(*14)国立研究開発法人森林総合研究所森林整備センターホームページ「業務案内(造林に関する業務)」



(林業公社の状況)

「林業公社」は、戦後、国、地方公共団体、森林・林業関係者が一体となって造林を進める中で、森林所有者による整備が進みにくい地域において、分収方式によって造林を推進するため、昭和40年代を中心に都道府県によって設立された法人である。林業公社はこれまで、全国で約40万haの森林を造成し、森林の有する多面的機能の発揮や、地域の森林整備水準の確保、雇用の創出等に重要な役割を果たしてきた。

平成28(2016)年3月末現在、26都県に28の林業公社が設置されており、これらの公社が管理する分収林は、全国で約32万ha(民有林の約2%)となっている。林業公社の経営は、個々の林業公社により差はあるものの、木材価格の低下等の社会情勢の変化や森林造成に要した借入金の累増等により、総じて厳しい状況にある。加えて、各地の公社造林地では、契約期限が到来して伐採時期を迎える林分が出てきており、伐採後の再造林の確実な実施が課題となっている。

このような状況に対応して、平成20(2008)年度に、総務省、林野庁及び地方公共団体から成る「林業公社の経営対策等に関する検討会」が設置され、今後の林業公社の経営の在り方について検討を行い、平成21(2009)年6月に経営が著しく悪化した林業公社については、その存廃を含む抜本的な経営の見直しを検討すべき旨の報告書が取りまとめられた(*15)。これを受けて、平成21(2009)年度以降、12法人の林業公社が解散・合併、債務整理、県営化を行っており、近年では、平成26(2014)年度に一般社団法人京都府森と緑の公社が、平成27(2015)年度に一般社団法人愛知県農林公社が解散している。また、今後、2法人の林業公社が解散等の処理を進める予定となっている(資料 II -8)。林業公社に対しては、成長が悪い森林や木材の搬出が困難な森林等の契約解除に向けた取組や、間伐等と森林作業道の一体的な整備に対して、林野庁が補助事業により支援を行っているほか、金融措置による支援や地方財政措置も講じられている。各林業公社では、このような支援等も活用しつつ、経営改善に取り組んでいる(事例 II -1)。

事例II-1 林業公社による経営規模拡大の取組

徳島森林(もり)づくり推進機構有林(徳島県美波町)
徳島森林(もり)づくり推進機構有林
(徳島県美波町)

受託した企業所有森林の概況(N社、582ha(徳島県那賀町))
受託した企業所有森林の概況
(N社、582ha(徳島県那賀町))

徳島県では、昭和41(1966)年に徳島県林業公社を設立して、分収造林契約による森林整備を進めてきた。その後、全国的に林業公社の経営状況が厳しくなる中、同公社は、平成18(2006)年度に全国に先駆けて、「林業公社経営改善計画」を策定し、分収林の新規契約休止や、事業や事務経費のコスト縮減、長期借入金の無利子化等により、経営改善に取り組んできた。平成23(2011)年度には、外部委員から成る「徳島県林業公社あり方検討委員会」を設置して、抜本的な改革に向けた検討を行い、その結果、同委員会により、従来の経営改善を一歩進め、分収造林契約を公社有林化により解消し、経営基盤の拡充による積極的な経営を目指すべきことが提言された(注1)。

これを踏まえて、平成26(2014)年4月、同県は、同公社と「公益社団法人とくしま森とみどりの会(注2)」を合併して、「公益社団法人徳島森林(もり)づくり推進機構」を設置した。同機構では、現在、公有林と私有林の一体的管理に向けて、「経営改善計画(第2期)問題解決プラン」に基づき、森林の新規取得・受託管理と分収林の契約解消等に取り組んでいる。

分収林契約の解消については、同機構が管理経営を行う7,750haの分収林において、長伐期化を進めるとともに相続等の構造的な問題を解決するため、契約相手方の土地と持分の買取を実施している。これまで、626haの分収林を取得しており、平成32(2020)年度までに合計3,000ha取得することを目標としている。

同機構では、これらの取組により、経営規模を拡大して、効率的な林業経営を行うことにより、経営状況の改善を進めることとしている。

注1:徳島県林業公社あり方検討委員会「徳島県林業公社あり方検討委員会報告書」(平成23(2011)年12月)

2:緑の募金事業等を展開してきた団体。



(*15)林業公社の経営対策等に関する検討会「「林業公社の経営対策等に関する検討会」報告書」(平成21(2009)年6月30日)



(適正な森林施業の確保等のための措置)

適切な森林整備の実施を確保するため、「森林法」に基づき、「市町村森林整備計画」で伐採、造林、保育等の森林整備の標準的な方法を示した上で、森林を伐採する場合には市町村長にあらかじめ伐採及び伐採後の造林の届出書を提出することとされている(*16)。さらに、平成23(2011)年4月の「森林法」の改正により、無秩序な伐採や造林未済地の発生防止に向け、無届による伐採が行われ土砂の流出や崩壊といった山地災害の発生のおそれがある場合等には、市町村長が伐採の中止命令や伐採後の造林命令を発出できる制度が導入され(*17)、あわせて、届出制度等の違反に対する罰則も強化された(*18)。

また、同改正では、森林所有者が不明となる事例が生じていることに対応し、土地所有者等が不明であっても、他人の土地に路網等の設置が必要な場合は意見聴取の機会を設ける旨を公示することなどにより使用権の設定ができる制度(*19)や、早急に間伐が必要な森林(要間伐森林)の間伐が行われない場合は行政の裁定により施業代行者が間伐を実施できる制度が整備された(*20)。

このほか、林野庁では、平成22(2010)年度から、外国人及び外国資本による森林買収について調査を行っている。平成27(2015)年4月には、平成26(2014)年1月から12月までの期間における、居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われる者による森林買収の事例(13件、計173ha)等を公表した(*21)。林野庁では、引き続き、森林の所有者情報の把握に取り組むこととしている(*22)。

なお、一部の道県等では、水資源保全の観点から、水源周辺における土地取引行為に事前届出を求める条例を定める動きもみられる(*23)。



(*16)「森林法」(昭和26年法律第249号)第10条の8

(*17)「森林法」第10条の9第4項

(*18)「森林法」第206条~第209条

(*19)「森林法」第50条第2項

(*20)「森林法」第10条の11の6

(*21)林野庁プレスリリース「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」(平成27(2015)年4月24日付け)

(*22)森林所有者情報の把握については、第 III 章(90~92ページ)を参照。

(*23)平成28(2016)年1月現在、北海道、山形県、茨城県、群馬県、埼玉県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、徳島県、新潟県、秋田県、宮崎県、滋賀県及び三重県の17道県が関連する条例を制定済み。



(優良種苗の安定供給)

我が国における山行(やまゆき)苗木の生産量は、平成25(2013)年度で約5,600万本であり、ピーク時の1割以下となっている(資料 II -9)。このうち、針葉樹ではスギが約1,600万本、ヒノキが約950万本、カラマツが約990万本、マツ類が約210万本となっており、広葉樹ではクヌギが約220万本、ケヤキが約37万本となっている。また、苗木生産事業者数は、全国で約900事業体となっている(*24)。苗木の需給については、地域ごとに過不足が生ずる場合もあることから、必要量の確保のため、地域間での需給調整等が行われている。

現在、戦後造林された人工林を中心に本格的な利用期を迎えており、今後、主伐の増加が見込まれる中、主伐後の再造林に必要な苗木の安定的な供給を図ることが一層重要になっている。このような中で、林野庁では、低コスト造林に資する「コンテナ苗」の生産拡大に取り組んでおり(*25)、苗木不足を懸念する地方公共団体では、民間企業と連携してコンテナ苗生産に取り組む例もみられる(事例 II -2)。

また、平成25(2013)年5月には、「間伐等特措法」が一部改正され、将来にわたって二酸化炭素の吸収作用の強化を図るため、成長に優れた種苗の安定供給に向けて、その種子等を生産する母樹(特定母樹)の増殖に関する計画制度が新設された。特定母樹は、成長量等の評価基準を満たすものから選定されており、平成28(2016)年3月現在、特定母樹173種類のうち132種類が第二世代精英樹(*26)から選ばれている。

事例II-2 地方公共団体と民間企業との連携によるコンテナ苗増産の取組

コンテナ苗生産施設整備予定地の敷地造成 (岐阜県下呂林木育種事業地)
コンテナ苗生産施設整備予定地の敷地造成 (岐阜県下呂林木育種事業地)
協定締結式
協定締結式

岐阜県では、苗木不足への対応が課題になっていることから、民間事業者が持つ技術を導入したコンテナ苗木の安定供給体制づくりを進めるため、公募型プロポーザル方式による事業者の募集を実施し、平成27(2015)年3月に林業関連会社のS社と協定を締結した。S社は、平成24(2012)年に宮崎県日向市(ひゅうがし)に国内最大規模のコンテナ苗生産施設を整備し、年間20万本のコンテナ苗生産を行っている。

協定締結を受け、S社は、有償で借り受けた県所有地にコンテナ苗生産に必要な施設を整備し、平成28(2016)年から年間約5万本の苗木生産を開始し、3年後には少花粉スギなど年間約20万本を生産することとしている。その後も段階的に設備を拡充し、最終的には100万本の苗木生産体制を目指している。


(*24)林野庁整備課調べ。

(*25)コンテナ苗について、詳しくは第 I 章(20~21ページ)参照。

(*26) 第二世代精英樹については、第 I 章(21ページ)参照。



(花粉発生源対策)

近年では、国民の3割が罹患し(*27)国民病とも言われている花粉症(*28)への対策が課題となっている。このため、関係省庁が連携して、発症や症状悪化の原因究明、予防方法や治療方法の研究、花粉飛散量の予測、花粉の発生源対策等により、総合的な花粉症対策を進めている。

林野庁では、花粉発生源対策として、スギ人工林等を花粉の少ない森林へ転換する取組を推進している。戦後造成された人工林が本格的な利用期を迎えている中で、森林資源の循環利用を推進することは花粉発生源対策の観点からも重要である。このため、平成27(2015)年度からは、花粉発生源となっているスギ人工林等の伐倒と花粉症対策苗木(*29)の植栽に対する支援を新たに行っている。

スギの花粉症対策苗木については、供給量を平成29(2017)年度において約1,000万本とすることを目標に、少花粉スギ等の種子を短期間で効率的に生産する「ミニチュア採種園」の整備を進めるとともに、苗木生産の施設整備やコンテナ苗生産技術の普及等により、花粉症対策苗木の供給拡大に取り組んでいる。その結果、スギの花粉症対策苗木の生産量は、平成17(2005)年度の約9万本から平成26(2014)年度には約258万本へと30倍近くまで増加した(資料 II -10)。しかしながら、スギ苗木生産量全体に占めるスギの花粉症対策苗木の割合は15%にとどまっていることから、更に取組を推進する必要がある。

また、ヒノキの花粉生産量の予測に必要なヒノキ雄花の観測技術の開発、菌類を用いたスギ花粉飛散防止薬剤の研究開発等にも取り組んでいる。



(*27)馬場廣太郎, 中江公裕 (2008) 鼻アレルギーの全国疫学調査2008(1998年との比較)-耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として-, Progress in Medicine, 28(8): 145-156.

(*28)花粉に対して起こるアレルギー反応で、体の免疫反応が花粉に対して過剰に作用して、くしゃみや鼻水等を引き起こす疾患であるが、その発症メカニズムについては、大気汚染や食生活等の生活習慣の変化による影響も指摘されており、十分には解明されていない。

(*29)ほとんど、又は、全く花粉をつくらない品種の苗木。



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

ページトップへ


アクセス・地図