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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第II章 第4節 国際的な取組の推進(2)


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第1部 第 II 章 第4節 国際的な取組の推進(2)

(2)地球温暖化対策と森林

(世界の気候は温暖化傾向)

2014年11月に公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)(*120)」「第5次評価報告書統合報告書」では、気候変動の自然科学的根拠について、気候システムの温暖化には疑う余地がなく、大気と海洋は温暖化し、雪氷の量は減少し、海面水位は上昇し、温室効果ガスの濃度は増加していると報告されている。同統合報告書には、このような自然科学的根拠のほか、気候変動の影響・適応・ぜい弱性や、気候変動の緩和に関する内容も含まれている。森林・林業分野については、最もコスト効率の高い緩和策として新規植林、持続可能な森林経営、森林減少抑制が挙げられることなどが記されている(*121)。

また、世界気象機関(WMO)によると、主要な温室効果ガス(*122)である二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素の世界平均濃度は、2014年に過去最高となった(*123)。

日本の年平均気温は、長期的には100年当たり約1.16℃の割合で上昇しており、特に1990年代以降、気温の高い年が頻出している(資料 II -32)。



(*120)「Intergovernmental Panel on Climate Change」の略。人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、昭和63(1988)年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織。

(*121)文部科学省等プレスリリース「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書統合報告書の公表について」(平成26(2014)年11月2日付け)

(*122)地球から宇宙への赤外放射エネルギーを大気中で吸収して熱に変え、地球の気温を上昇させる効果を有する気体の総称。

(*123)World Meteorological Organization (2015) Greenhouse Gas Bulletin No.11: 1.



(国際的枠組みの下での地球温暖化対策)

地球温暖化は、人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つであり、その原因と影響は地球規模に及ぶため、1980年代後半以降、様々な国際的対策が行われてきた。

1992年には、地球温暖化防止のための国際的な枠組みとして「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約(UNFCCC(*124)))」が採択された。同条約では、気候システムに危険な影響をもたらさない水準で、大気中の温室効果ガス濃度を安定化することを目的として、国際的な取組を進めることとされた。

平成9(1997)年には、京都市で、「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」が開催され、先進国の温室効果ガスの排出削減目標等を定める「京都議定書」が採択された。「京都議定書」では、平成20(2008)年から平成24(2012)年までの5年間の「第1約束期間」の温室効果ガスの排出量を、基準年(原則として平成2(1990)年)と比較して、先進国全体で少なくとも5%削減を目指すこと、我が国については法的拘束力のある約束として6%削減することが定められた。このうち、森林吸収量(*125)については、我が国の年当たりの算入上限が、基準年の総排出量(12億6,100万CO2トン)の3.8%に相当する1,300万炭素トン(約4,770万CO2トン)とされ、年平均55万haの間伐等の実施に官民一体となって取り組んだ結果、目標である3.8%分を確保した。また、国全体の目標については、森林吸収量の目標が達成されたことなどから、京都議定書第1約束期間の5か年平均で基準年比8.7%減となり、「京都議定書」の目標である基準年比6%減を達成することとなった。



(*124)United Nations Framework Convention on Climate Change

(*125)森林吸収量は、対象森林における年当たりの幹材積の増加量に、容積密度等の係数を乗じて立木全体の重量の増加量に換算し、更に炭素含有率を乗ずるなどして算出。



(2013年以降の取組)

「京都議定書」では、2013年から2020年までの8年間を「第2約束期間」としており、2011年に開催された「気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17(*126))」では、同期間における各国の森林吸収量の算入上限値を1990年総排出量の3.5%とすること、森林から搬出された後の木材(伐採木材製品(HWP(*127)))における炭素固定量を評価し、炭素蓄積の変化量を各国の温室効果ガス吸収量又は排出量として計上することなどが合意されている(*128)。

我が国は、第2約束期間においては「京都議定書」の目標を設定していないが、2015年に開催された「気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」において、COP17で合意された第2約束期間の森林等吸収源のルールに則して、2013年以降の吸収量についても報告を行い、審査を受けることとなった(*129)。

なお、我が国は、2013年に開催された「気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)」の場で、2020年度の削減目標を2005年度総排出量(13億9,700万CO2トン)比3.8%減とすることを表明した(*130)。森林吸収源については約3,800万CO2トン(2.7%)以上の吸収量を確保することとしており(資料 II -33)、2013年から2020年の間において年平均52万haの間伐等を実施する必要がある。

2014年度における間伐面積は47万haであり、森林吸収量は1,361万炭素トン(約4,990万CO2トン)、また、このうちHWPによる吸収量は58万炭素トン(約211万CO2トン)となっている(*131)。

2020年以降の枠組みについては、我が国は平成27(2015)年7月に、COP19の決定に基づき、2030年度の削減目標を2013年度総排出量(14億800万CO2トン)比26.0%減とし、このうち2.0%相当の約2,780万CO2トン(約760万炭素トン)を森林吸収源対策で確保することを目標とするなどの約束草案を気候変動枠組条約事務局へ提出した(*132)(資料 II -34)。同11月から12月にかけてフランスのパリでCOP21が開催され、2020年以降の気候変動対策について、先進国、開発途上国を問わず全ての締約国が参加する法的枠組みである「パリ協定」が採択された(*133)。

森林吸収量を確保するために必要となる間伐等を推進するための安定的な財源の確保に向け、林野庁として、一貫して森林吸収源対策に活用できる環境税・地球温暖化対策税を要望してきた。また、全国知事会、全国市長会、全国町村会、林業関係団体等からは、森林吸収源対策の財源確保に関する要望・提案がなされてきた。

与党においても、平成17(2005)年度与党税制改正大綱に、「いわゆる環境税については、必要に応じ、そのあるべき姿について早急に検討する」ことが盛り込まれるとともに、その後も森林吸収源対策のための安定財源の確保について活発な議論が行われてきた。さらに、平成26(2014)年度与党税制改正大綱に、「森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する財源の確保について、財政面での対応、森林整備等に要する費用を国民全体で負担する措置等、新たな仕組みについて専門の検討チームを設置し早急に総合的な検討を行う」ことが明記され、同チームにより検討が重ねられてきた。その結果、そのとりまとめを反映する形で、平成28(2016)年度与党税制改正大綱に、森林吸収源対策のための安定財源の確保についての新たな仕組みとして、「エネルギー起源CO2の排出抑制のための木質バイオマスのエネルギー利用や木材のマテリアル利用を普及していくことは、森林吸収源対策の推進にも寄与することから、地球温暖化対策のための税について、その本格的な普及に向けたモデル事業や技術開発、調査への活用の充実を図る」ことや、「森林整備や木材利用を推進することは、地球温暖化防止のみならず、国土の保全や地方創生、快適な生活環境の創出などにつながり、その効果は広く国民一人一人が恩恵を受けるものである。しかしながら、森林現場には、森林所有者の特定困難や境界の不明、担い手の不足といった、林業・山村の疲弊により長年にわたり積み重ねられてきた根本的な課題があり、こうした課題を克服する必要がある。このため、森林整備等に関する市町村の役割の強化や、地域の森林・林業を支える人材の育成確保策について必要な施策を講じた上で、市町村が主体となった森林・林業施策を推進することとし、これに必要な財源として、都市・地方を通じて国民に等しく負担を求め、市町村による継続的かつ安定的な森林整備等の財源に充てる税制(森林環境税(仮称))等の新たな仕組みを検討する。その時期については、適切に判断する」ことが盛り込まれた。



(*126)ここでは、「COP11」以降の「COP」は、「京都議定書締約国会合(CMP)」を含む一般的な呼称として用いる。

(*127)「Harvested Wood Products」の略。

(*128)京都議定書第2約束期間における森林関連分野の取扱いについては、「平成24年度森林及び林業の動向」78~80ページ参照。

(*129)農林水産省プレスリリース「「気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」、「京都議定書第11回締約国会合(CMP11)」等の結果について」(平成27(2015)年12月15日付け)

(*130)外務省ホームページ「国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)京都議定書第9回締約国会合(CMP9)等の概要と評価」

(*131)二酸化炭素換算の吸収量(CO2トン)については、環境省プレスリリース「2014年度(平成26年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」(平成28(2016)年4月15日付け)による。CO2トンは、炭素換算の吸収量(炭素トン)に44/12を乗じて換算したもの。

(*132)環境省プレスリリース「「日本の約束草案」の地球温暖化対策推進本部決定について」(平成27(2015)年7月17日付け)

(*133)COP21について詳しくは、トピックス(5ページ)参照。



(途上国の森林減少及び劣化に由来する排出の削減等(REDD+)への対応)

途上国の森林減少及び劣化に由来する温室効果ガスの排出量は、世界の総排出量の約1割を占めるとされており(*134)、その削減は地球温暖化対策を進める上で重要な課題となっている。「REDD+(レッドプラス)(*135)」とは、途上国の森林減少及び劣化に由来する温室効果ガスの排出の削減に向けた取組である「REDD(レッド)」に、森林保全、持続可能な森林経営等の取組を加えたものである。2007年のCOP13で提唱された後、2010年のCOP16の「カンクン合意」では、REDD+の5つの基本的な活動(森林減少からの排出の削減、森林劣化からの排出の削減、森林炭素蓄積の保全、持続可能な森林経営及び森林炭素蓄積の強化)が定義され、2013年のCOP19では、COP16からの課題であったREDD+の実施に必要な技術的課題等の指針、資金及び組織を含む支援の調整に関する枠組み(通称:REDD+のためのワルシャワ枠組)が決定された(*136)。また、2015年にパリで開催されたCOP21で採択された「パリ協定」には、REDD+の実施や支援を奨励する条項が盛り込まれた。

我が国はREDD+について、森林減少・劣化を効率的に把握する技術の開発、人材育成、森林資源を活用する事業モデルの開発や普及等により途上国の取組を支援している。

また、民間企業による途上国での活動を促進するため、平成26(2014)年度から関係省庁が連携して、二国間クレジット制度(JCM(*137))でREDD+を実施するための規則やガイドライン類の検討を開始し、平成27(2015)年度はインドネシアと協議を行った。

さらに、国立研究開発法人森林総合研究所REDD研究開発センターでは、民間企業支援のため、REDD+の実施に必要とされる技術の開発や作成した技術解説書による情報提供等に取り組んでいる。

平成26(2014)年11月、独立行政法人国際協力機構(JICA)と国立研究開発法人森林総合研究所は、REDD+を含む途上国での森林保全活動を推進していくため、関係省庁、民間企業、NGO等が連携を強化し、情報を発信・共有する場として、「森から世界を変えるREDD+プラットフォーム」を立ち上げた。平成27(2015)年12月現在、72団体が加盟している。

国際機関を通じた協力としては、我が国は、2007年に世界銀行が設立した「森林炭素パートナーシップ基金(FCPF(*138))」の「準備基金(*139)」に対して、これまでに14百万ドルを拠出している。また、森林減少を抑制するための拡大資金を提供する世界銀行のプログラム(FIP(*140))に67百万ドル、途上国のREDD+戦略の準備や実施を支援するためにFAO、UNDP(*141)、UNEP(*142)が設立したプログラムであるUN-REDDに3百万ドルを拠出している。また、2015年には、REDD+の成果に応じた途上国への資金の支払に活用されることが決定している緑の気候基金(*143)に15億ドルを拠出している。



(*134)IPCC(2014)IPCC Fifth Assessment Report: Climate Change 2014: Synthesis Report: 88.

(*135)「Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries; and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries」の略。

(*136)農林水産省プレスリリース「「気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)」、「京都議定書第9回締約国会合(CMP9)」等の結果について」(平成25(2013)年11月26日付け)

(*137)「Joint Crediting Mechanism」の略。

(*138)「Forest Carbon Partnership Facility」の略。

(*139)途上国に対して、森林減少の抑制やモニタリング等のための能力の向上(技術開発や人材育成)を支援するための基金。

(*140)「Forest Investment Program」の略。

(*141)「United Nations Development Programme(国連開発計画)」の略。

(*142)「United Nations Environment Programme(国連環境計画)」の略。

(*143)UNFCCC(2015)FCCC/CP/2015/L.9/Rev.1 : 8.



(気候変動への適応)

農林水産省は、平成27(2015)年8月に「農林水産省気候変動適応計画」を策定し、同11月には、政府全体の「気候変動の影響への適応計画」が策定された。今後、これらの計画に基づき適応の取組が進められることとなっている。

これらの計画では、将来、気候変動による大雨の発生頻度の増加や台風の最大強度の増加等が予測されている。これらに対応するため、森林・林業分野においては、山地災害が発生する危険性の高い地区のより的確な把握を行い、土砂流出防備保安林等の計画的な配備を進めるとともに、土石流等の発生を想定した治山施設の整備や健全な森林の整備等を実施することとしているほか、集中豪雨の発生頻度の増加を考慮した林道施設の整備を推進していくこととしている。また、気候変動による影響についての知見が十分ではないことから、人工林における造林樹種の成長等に与える影響や天然林における分布適域の変化等の継続的なモニタリングや影響評価、高温・乾燥ストレス等の気候変動の影響に適応した品種開発等の調査・研究を推進していくとともに、森林病害虫対策や国有林野における「緑の回廊」の保全・管理等についても積極的に取り組んでいくこととしている。



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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