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ホーム > 森林・林業白書 > 平成27年度 森林・林業白書(平成28年5月17日公表) > 平成27年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第I章 第3節 安定供給体制の構築に向けた取組の現状と今後の課題(2)


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第1部 第 I 章 第3節 安定供給体制の構築に向けた取組の現状と今後の課題(2)

(2)木材等の需給情報の共有と原木供給のとりまとめ

(ア)木材等の需給情報の共有

国内における大型工場の設置の進展に伴い、一定の数量の原木を調達するために、製材用材、合板用材、チップ用材の用途を問わず、国産材の流通は、都道府県域を超えて広域化しつつある。このため、木材の需給情報を関係者の間で共有することが困難となってきている。

国産材の安定供給体制を構築するとともに、今後増加の見込まれる主伐後の再造林を確実なものとするためには、木材を供給する側である森林所有者や素材生産業者と、木材を消費する側である製材工場、合板工場、プレカット工場、木材チップ工場等の木材加工業者、これらをつなぐ原木市売市場等の木材流通業者、苗木生産業者等の間で、木材や主伐後の再造林に必要な苗木の需給情報を共有していくことが極めて重要となっている。

このため、木材等の需給情報の共有化を図ることを目的として、民有林の関係者を対象として地域ブロックごとに「広域原木流通協議会」がこれまで開催されてきている。また、国有林野事業においても、「国有林材供給調整検討委員会(*54)」を開催し、木材需要が急激に増減した場合、国有林材の供給調整に取り組んできた。加えて、各ブロックに設置された「林業用種苗需給調整協議会」が苗木の需給に関する情報の共有に取り組んできた。

平成27(2015)年度からは、この3つの協議会及び委員会で得られた木材や苗木の需給情報を、民有林と国有林が連携し一元的に共有することを目的に「需給情報連絡協議会」を全国7ブロックで開催している(資料 I -20)。

都道府県においても、需給情報の共有に向けた取組が進められている。このような取組の中には、「森林法」に基づいて市町村が認定した「森林経営計画」等の内容や同法に基づいて市町村に提出された「伐採及び伐採後の造林に関する届出」の内容を都道府県が集計し、これを踏まえて作成した主伐・間伐別の木材の生産量の1か月ごとの見通しを都道府県が公表している事例や木材需給に関する情報の定期的な配信等が含まれる(事例 I -7)。

「需給情報連絡協議会」の開催状況

事例I-7 広島県による木材の需給情報の共有

広島県による木材の需給情報の共有

広島県では、これまで木材の生産や加工に関する体制の整備、県産材の需要の拡大に取り組んできた一方、木材の需給のミスマッチが生じ木材価格が不安定となっていることが課題となっていた。

この課題に対応するため、広島県では、県産材の価格推移、為替動向、新たなニーズや県内外の需要動向等の情報を記載した「木材流通ニュース」を継続的に発信することなどにより、素材生産業者や木材加工業者の間での情報の共有に取り組んでいる。

これらの取組を通じ、広島県内では、木材加工業者と素材生産業者との間で新たな安定取引が成立した事例が成果としてあがってきている。


(*54)国有林材供給調整検討委員会については、第 V 章(183ページ)を参照。



(イ)原木供給のとりまとめ

景気変動によって新設住宅着工戸数が増減しており、その約5割を木造住宅が占めることから、これらに伴って木材の需要も変動する。このため、木材の需要の増減に応じて、素材の生産量や出荷量を機動的に調整する仕組みを地域の実情に応じて構築していくことが必要である。現状においては、このような仕組みが十分に構築されていないため、木材の需要が拡大する局面においては、製材工場や合板工場等への原木の供給が追いつかない事態が発生している。また一方で、木材の需要が減少する局面においては、素材の生産量を機動的に減少させることができず、工場への出荷量や在庫量が必要以上に積み上がり、その結果として、木材価格の更なる急落や素材生産業者の経営状態の悪化にもつながっている。

我が国の木材の生産と流通の形態は、地域における大規模工場や木質バイオマス発電施設の立地、原木市売市場の有無、素材生産業者の規模や連携の進展状況によって多様な様相を呈している。こうした中、その地域の実情に応じ、素材生産業者や都道府県森林組合連合会、原木市売市場等の木材流通業者、製材工場、合板工場等の木材加工業者のうち最も適した主体が、単体若しくは共同で原木をとりまとめる取組が進展してきている(事例 I -8)。

事例I-8 岐阜県森林組合連合会による原木のとりまとめや需給情報の提供


中間土場における合板用材の仕分けと工場への直送
中間土場における合板用材の仕分けと
工場への直送
岐阜県森林組合連合会の原木取りまとめのイメージ
岐阜県森林組合連合会の
原木取りまとめのイメージ

平成23(2011)年に岐阜県中津川市(なかつがわし)で合板協同組合が合板工場の稼働を開始したことから、地域において合板用材の安定供給体制を構築する必要が生じてきた。このことを踏まえ、岐阜県森林組合連合会は、合板協同組合や岐阜県素材流通協同組合とともに需給情報調整会議を設置し、需給情報の共有に取り組むとともに、合板用材となる原木の規格の調整等に取り組んでいる。

岐阜県森林組合連合会は、合板協同組合と協定を締結しており、この中で、四半期ごとに取引価格を決定し、一定の数量の合板用材を安定供給することとしている。また、合板協同組合からの代金決済を岐阜県森林組合連合会が行い、各森林組合への支払いを担当している。

安定供給を実現するための取組として、岐阜県森林組合連合会では、県内の森林組合に対して、合板用材のための長さや径級に応じた造材や仕分けの指導を実施している。また、中間土場(ストックヤード)を設置し、ここで仕分けを実施して合板工場へ合板用材を直送することにより、流通コストの縮減にも取り組んでいる。


(ウ)安定取引等の動き

需要に応じた供給を進めていく中にあって、素材生産業者等と木材加工業者等の間で、国産材の安定供給のための取引(安定取引)に関する協定を締結する動きが広がってきている。このような安定取引においては、協定に基づき、素材生産業者等が製材用材や合板用材、チップ用材といった用途に応じて一定の規格で一定の数量の原木を一定の期間において安定的に工場等に直送していくこととなる。

国有林野事業では、素材生産事業体や製材工場、集成材・合板工場等の木材加工業者等と協定を締結して原木を安定的に供給する「システム販売」を進めており、「システム販売」による供給量は年々拡大している。

以下では、地域の実情に応じて、林業事業体の組織がとりまとめ役となる安定取引、大型製材工場等がとりまとめ役となる安定取引、原木市売市場がとりまとめ役となる安定取引の3つに分けて、国産材の安定供給体制の構築に向けた取組の具体的な内容について記述する。


(林業事業体の組織がとりまとめ役となる安定取引)

大型の製材工場や合板工場の設置や木質バイオマス利用施設の稼働等が進んでいる地域においては、国産材とりわけ合板用材やチップ用材の需要が安定的に存在している。このような地域のうち、原木市売市場が少なく森林組合系統や素材生産の協同組織が木材流通の中核を担っている地域においては、こうした林業事業体の団体が原木とりまとめやコーディネートの主体となり、木材加工業者と協定を締結した上で、それらの工場に原木を安定的に直送していく取組が進められている(事例 I -9)。

また、直送先となる工場の需要を踏まえた上で、それに適した径級や長さ等の造材方法や原木の柱用、梁(はり)用といった用途別の仕分け方法について、とりまとめ役となる協同組織等が、個々の事業体に対して指導を実施するといった取組も進められている。さらに、個々の素材生産業者や森林組合が木材加工業者と交渉していくと事務管理のためのコストを要することとなることから、とりまとめ役が一括して木材加工業者との価格交渉や出荷量の調整、決済等の業務を代行しているような取組も進められている。

事例I-9 原木供給対策協議会の設立を通じた原木安定供給の取組

C社日向工場
C社日向工場
原木供給対策協議会のイメージ
原木供給対策協議会のイメージ

宮崎県日向市(ひゅうがし)にC社が大型の製材工場を設置し、平成27(2015)年から稼働を開始している。

この工場は、乾燥製材品等を生産する大径木ライン、集成材ラミナ等を生産する中径木ライン、梱包材等を生産する小径木ラインを有するとともに、木質バイオマス発電施設を併置している。このため、この工場は、地域において特に需要の創出が課題であった大径材を含むあらゆる原木を全て集荷することとなり、このことは素材生産業者にとって魅力的であった一方、年間需要に当たる50万m3の原木を安定的に供給できる体制を構築することが急務となっていた。

このことに対応するため、宮崎県木材協同組合連合会、宮崎県森林組合連合会、宮崎県造林素材生産事業協同組合連合会の3者によりC社向けの原木供給対策協議会が設立された。この協議会は、宮崎県内の森林組合や素材生産業者に対し、需給情報の共有や造材の指導を実施している。


(大型の製材工場等がとりまとめ役となる安定取引)

大型の製材工場や合板工場の設置又は木質バイオマス利用施設の稼働が進んでいる地域であって、素材生産業者の協同組織化がそれほど進んでいないなど、川上側において素材の安定供給体制の構築に遅れがみられているような地域においては、大型の製材工場や合板工場等を稼働する木材加工業者等がとりまとめ役となって、国産材の安定供給に向けた取組が進められている。

このような取組においては、木材加工業者が、地域の個々の森林組合や素材生産業者をとりまとめることにより、工場の稼働に必要な数量や規格の原木を安定的に調達している。

大型製材工場や合板工場と近隣の中規模あるいは小規模な製材工場等との連携が進んでいる地域においては、それぞれの工場の用途に応じて、中核となる木材加工業者が原木を製材用材や合板用材、チップ用材に仕分けして各工場に直送していくような取組も実施されてきている。

また、大型製材工場等を稼働する木材加工業者の中には、素材生産を実行する協同組織を設立し、森林所有者から立木を買い付けた上で、自工場の稼働に適した規格の原木を生産する取組(事例 I -10)や、原木を安定的に供給していくために、近隣の森林所有者等が「森林経営計画」の作成や施業の集約化を実施することに対して支援する取組、森林所有者が経営の意思を有さない森林を、大型工場自らが取得し、原木が不足しがちな時期にこうした森林から補完的に原木を調達する取組を実施している者もみられる。

事例I-10 大型製材工場による国産材確保に向けた取組


K社の大型製材工場
K社の大型製材工場
K社による安定供給体制のイメージ
K社による安定供給体制のイメージ

福島県東白川郡(ひがししらかわぐん)塙町(はなわまち)で大型の製材工場を経営するK社は、原木を安定的に調達することを目的として、地域の素材生産業者を会員とする素材生産組合を組織している。この素材生産組合には、地元を中心に約60の素材生産業者が加盟している。K社は、地域の森林所有者から立木を購入し材積の計測を実施した上で、伐採や搬出といった素材生産をこの組合で実施することにより、自社が消費する年間約30万m3の原木のうち約5割を調達している。

この素材生産組合は、プロセッサやフォワーダといった高性能林業機械を購入するとともに、現場ごとに最適な作業システムを選択・採用することにより、生産性の向上に取り組んでいる。また、K社では、取引先の森林所有者に隣接する小規模所有者に営業活動を行って施業の集約化を図っている。

さらに、この素材生産組合は、加盟会員の労働者災害補償保険に加え、民間保険に加入するなど、林業労働力の確保や福利厚生の充実に向けた取組を進めている。


(原木市売市場がとりまとめ役となる安定取引)

原木市売市場が多く立地し木材流通の中核的な役割を担っているような地域や、小規模な製材工場が分散して立地し原木の流通先が比較的分散しているような地域では、原木市売市場等の木材流通業者がとりまとめ役となり、個々の素材生産業者から原木を集荷して、需要先に応じた原木の仕分けを行い、近隣の製材工場、合板工場、木材チップ工場等へ直送する形で国産材の安定取引が実施されている(事例 I -11)。

このような取組においては、これらの工場への直送に加え、原木市売市場が従来から有する市場機能を活用して優良材のセリ売りに取り組むことも可能となっている。

また、原木市売市場が原木のとりまとめを実施する際、従来から有する市場としての機能を組み合わせることにより、地域の木材需要に対して相乗的な対応を実施していくことも期待できる。例えば、直送用に素材生産を行った際、これに伴って発生する優良材については、直送せずに原木市売市場でセリ売りを実施することによって、付加価値が生ずることとなる。このほか、きめ細かな原木の供給が必要な地域における小規模な製材工場に対しても、安定取引を進める中で原木市売市場の取扱量が増加していけば、きめ細かな供給に対応していけることが期待できる。

また、原木市売市場が単体で原木コーディネートに取り組むのではなく、地域の素材生産業者や森林組合と連携してとりまとめ役となって合板工場等に原木を供給していくような取組も進められている。

事例I-11 原木市売市場による原木安定取引の取組


I社の原木市売市場
I社の原木市売市場
I社と近隣のコンビナート
I社と近隣のコンビナート

佐賀県伊万里市(いまりし)で原木市売市場を経営するI社は、九州地方において大型製材工場等の設置が進展し木材需要が増加しつつあることを踏まえ、集成材工場及びラミナ工場のコンビナートに近接する箇所に原木市売市場を移転させた。従来の原木市売市場としての業務に加え、これらの近接する工場向けの原木の調達も実施することとなり、I社は、集荷範囲を九州全域まで拡大することとなった。このような取組を進めた結果、I社の原木市売市場の年間の原木取扱量は、かつて4万m3であったのが平成25(2013)年には、33万m3まで成長している。また、市売りの比率は半分程度となっている。

また、I社は、自ら立木を森林所有者から買い付け、その素材生産を委託することを通じて原木の調達も実施している。買い付けの際には、森林所有者と協定を締結し、I社が植栽や下刈りといった再造林のための事業を代行している。このような取組を通じ、森林資源の循環利用を推進し、今後とも持続的に原木を調達するよう取組を進めている。


お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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