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ホーム > 森林・林業白書 > 平成24年度 森林・林業白書(平成25年6月7日公表) > 平成24年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第V章 第1節 林業の動向(4)


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第1部 第V章 第1節 林業の動向(4)


(4)林業の生産性の向上に向けた取組 

(ア)施業の集約化

(生産性の向上には施業集約化が必要)

林業の生産性の向上を図るためには、路網と高性能林業機械を活用した効率的な作業システムを導入することが不可欠である。しかしながら、我が国の私有林の零細な所有規模では、個々の森林所有者が単独で効率的な施業を実施することは難しい。

このため、隣接する複数の所有者の森林を取りまとめて、路網作設や間伐等の森林施業を一括して実施する「施業の集約化」の推進が求められている。施業の集約化により、作業箇所がまとまり、路網の合理的な配置や高性能林業機械による作業が可能となることから、木材生産コストの低減が期待できる。また、一つの施業地から供給される木材のロットが大きくなることから、径級や質の揃った木材をまとめて供給することが容易となり、市場のニーズに応えるとともに、価格面でも有利に販売することが期待できる(事例V-6)。

林野庁では、森林整備事業を通じて施業の集約化を推進するため、平成19(2007)年度から、市町村等が施業の集約化の必要な区域(「集約化推進区域」)を設定した上で、各事業主体が施業の集約化や路網の整備に関する「集約化実施計画」を作成することを促進してきた(*37)。この結果、平成23(2011)年度当初までに、全国54万haの森林を対象に、3,367の主体により「集約化実施計画」が策定された(*38)。

事例V-6 提案型集約化施業の強い味方 

事例V-6

岐阜県の情報通信関連の企業であるI社は、大手林業会社S社の協力により、タブレット型端末を用いて施業集約化を提案するプログラムを開発した。
これまで、高齢者や都市に住む不在村者に対して、施業集約化を分かりやすく説明することは難しかった。今回開発したプログラムでは、タブレット型端末の画面上で現地の写真を見せながら、施業集約化のメリットや進め方を分かりやすく説明することができるようになった。また、森林所有者のニーズに応じて、その場で施業の内容を修正して、再計算した収入額を示すこともできる。同プログラムを試験的に導入している北はりま森林組合(兵庫県多可郡多可町)や建設業者H社(岐阜県下呂市)では、プログラムの使用により、施業プランナーの人件費を削減することができ、施業集約化の提案に係るha当たりの費用が約1月2日程度になった例もみられる(注)。
今後、林業事業体が同プログラムを活用することにより、森林所有者からの施業委託が進むことが期待される。

注:北はりま森林組合への聞き取り
資料:平成24(2012)年10月10日付け林政ニュース: 21-22.


(*37)「多様な森林整備推進のための集約化の促進について」(平成19(2007)年3月30日付け18林整整第1250号林野庁長官通知)

(*38)林野庁整備課調べ。


 

(「提案型集約化施業」が広がり) 

施業の集約化の推進に当たっては、森林所有者等から施業を依頼されるのを待つのではなく、林業事業体から森林所有者に対して、施業の方針や事業を実施した場合の収支を明らかにした「施業提案書」を提示して、森林所有者へ施業の実施を働きかけることが効果的である。このような提案書を作成して、複数の森林所有者等から施業をまとめて受託する取組は「提案型集約化施業」と呼ばれる。

「提案型集約化施業」は、平成9(1997)年に、京都府の日吉町森林組合が森林所有者に施業の提案書(「森林カルテ」)を示して、森林所有者からの施業受託に取り組んだことに始まり、現在、全国各地に広まりつつある(事例V-7)。

事例V-7 集約化により間伐を促進 

事例V-7

愛媛県中部の久万地域では、森林所有者の高齢化と世代交代、不在村地主の増加等により、森林施業への関心が低下している。
このため、愛媛県上浮穴郡久万高原町では、愛媛県、久万高原町、久万広域森林組合が連携して、小面積の森林所有者の森林を集約化して、効率的に路網整備や森林施業を行う「久万林業活性化プロジェクト」を推進している。同プロジェクトでは、久方広域森林組合が森林所有者と管理委託契約を締結して施業団地を取りまとめ、地域の林業事業体へ森林整備を発注している。
同プロジェクトでは、このような取組により、平成17(2005)年度から平成23(2011)年度までに、12,420haの管理委託を受け、そのうち延べ2,532haの間伐を実施した。間伐面積は、平成17(2005)年度には40ha程度であったが、平成23(2011)年度には847haまで増加した。

資料:現代林業, 平成24(2012)年6月号: 56-59.

 

(施業集約化を推進する「森林施業プランナー」を育成) 

林野庁では、「提案型集約化施業」を担う人材を育成するため、平成19(2007)年度から、林業事業体の職員を対象として、「森林施業プランナー研修」を実施している。具体的には、森林施業プランナーの育成を目的とする「基礎的研修」と、組織としての体制強化を目的とする「ステップアップ研修」を実施している。

このうち、「基礎的研修」は、提案型集約化施業の意義や「施業提案書」の作成に関する基本的な考え方を理解した上で、現場での実習を通じて、施業提案ができる現場実践技術を習得する研修である。平成23(2011)年度までに、計992名が「基礎的研修」を修了している(*39)。

「ステップアップ研修」は、「基礎的研修」修了者のスキルアップを図るとともに、同修了者と経営管理者、現場技術者等が一緒に参加して、組織として提案型集約化施業に取り組むことを学ぶ研修である。平成24(2012)年度までに、230事業体の712名が「ステップアップ研修」を受講している。

さらに、平成21(2009)年度から、「ステップアップ研修」を修了した事業体に対して、提案型集約化施業を実施するための基本的な体制が構築されているかについて、外部審査機関が評価を行う「実践体制基礎評価」も実施している。平成23(2011)年度までに、6つの事業体が同評価に基づく認定を受けている。

また、農林中央金庫では、平成22(2010)年度に、森林施業プランナー育成のための基礎的研修として、「J-プランナー研修」を実施した。同研修には、「森林施業プランナー育成研修」に未参加となっていた森林組合等から約120名が受講した。このほか、都道府県でも、「森林施業プランナー」と同等の能力を有する人材の育成を目的とする研修が実施されている。

これらの研修等により、平成23(2011)年度末までに、全国で2,100人程度の森林施業プランナーが育成されている。

さらに、平成23(2011)年度補正予算からは、「森林整備加速化・林業再生基金」の積み増しにより、都道府県に対して、地域の実状を踏まえた森林施業プランナーの育成を目的とする研修の実施を支援している。

しかしながら、これらの研修修了者は、技能、知識、実践力のレベルが様々であることから、研修修了者の能力を客観的に評価して、一定の質を確保することが求められていた。

このような中、平成24(2012)年10月からは、「森林施業プランナー協会」が、森林施業プランナーの能力や実績を客観的に評価して認定を行う「森林施業プランナー認定制度」を開始した。同制度では、森林施業プランナー認定試験の一次試験及び二次試験に合格した者、「実践体制基礎評価」の認定を受けた事業体に所属し、提案型集約化施業の取組実績を有する者等を「森林施業プランナー」として認定することとしている。同制度により、平成25(2013)年3月までに、393名が「森林施業プランナー」の認定を受けている(*40)。


(*39)「基礎的研修」は、平成23(2011)年度で終了。

(*40)森林施業プランナー認定制度ポータルサイト「平成24年度認定森林施業プランナー名簿の公開について」(平成25(2013)年3月27日付け)


 

(「森林管理・環境保全直接支払制度」と「森林経営計画」により施業の集約化を推進) 

林野庁では、平成23(2011)年度から、面的なまとまりをもって計画的な森林施業を行う者に対して、施業の集約化に必要となる森林情報の収集等の活動への支援(森林整備地域活動支援交付金)や、植栽や間伐等の施業とこれと一体となった森林作業道の整備への直接支援(森林環境保全直接支援事業)を行う「森林管理・環境保全直接支払制度」を導入した。

同制度では、間伐の場合、①間伐面積が5ha以上、②間伐材の搬出材積が1ha当たり平均10m3以上等の要件を満たす者に対して、費用の一部を支援している。

平成24(2012)年度からは、改正された「森林法」により、施業の集約化を前提に、面的なまとまりをもった森林を対象とする「森林経営計画制度」が導入された。これまでの「森林施業計画制度」では、森林所有者等が、森林施業の実施に関する事項のみを計画することとされていたが、「森林経営計画制度」では、面的なまとまりのある森林において、森林の経営を自ら行う意欲のある森林所有者又は森林の経営の委託を受けた者が、森林の施業・保護の実施に関する事項を計画することとされた。

具体的には、「森林経営計画」の計画対象森林は、林班(*41)又は隣接する複数林班の面積の2分の1以上の面積規模とすることとした(「属地計画」)。ただし、経営の一体性の観点から、単一の森林所有者が所有している森林の面積が100ha以上である場合、その森林所有者が、自らの所有森林と経営を受託している森林の全てを対象として「森林経営計画」を作成することも可能とされている(「属人計画」)。また、「森林経営計画」では、森林の保護や作業路網の設置・維持管理等に関する事項が計画事項に追加された。

「森林経営計画」を作成して市町村長等から認定を受けた森林所有者又は森林の経営の委託を受けた者は、税制上の特例措置や融資条件の優遇、各種補助金等の支援を受けることができるとされている。平成24(2012)年度からは、「森林経営計画制度」の導入に伴い、「森林管理・環境保全直接支払制度」の対象者に「森林経営計画」の認定を受けた者を追加した。

なお、既に策定されている「森林施業計画」は、計画の終期を迎えるまでは、引き続き、有効な計画として取り扱われる。


(*41)原則として、字界、天然地形又は地物をもって区分した森林区画の単位(面積はおおむね50ha)。


 

(制度の運用を柔軟に見直し) 

これらの新たな制度の周知・定着を図るため、林野庁は、平成24(2012)年5月から7月にかけて、全国16地区で、「森林・林業再生キャラバン」を実施した。同キャラバンには、都道府県、市町村、森林組合、林業事業体の職員や森林所有者等延べ3,300人の参加があり、林野庁の担当者から「森林経営計画」の作成手続きを中心に説明するとともに、意見交換を行った(*42)。

林野庁では、同キャラバン等から得た現場の意見を踏まえて、「森林管理・環境保全直接支払制度」と「森林経営計画制度」の運用の見直しを行った。「森林管理・環境保全直接支払制度」については、1つの「森林経営計画」において間伐等の実施対象となる面積を加えても5haに満たない場合、全てを一体的に実施する場合には、補助の対象とすることとした。また、生育状況が悪い森林については、齢級にかかわらず、保育作業としての除伐等で対応できるようにしている。

「森林経営計画制度」については、「林班又は隣接する複数林班の面積の2分の1以上」とする面積規模の要件の適用に当たり、森林所有者が分からない森林や、計画作成者の働きかけや市町村の長のあっせんによっても計画作成に応じない所有者の森林は、要件の分母から除外してよいこと等とした。

各地では、これらの制度等を活用しながら、施業集約化に向けた取組が進められている。林野庁では、引き続き、現場の意見を聴きながら、これらの制度の運用を行うこととしている。


(*42)林野庁「RINYA」平成24(2012)年8月号: 14.


 

(集約化に必要な調査と合意形成を支援) 

林野庁では、平成14(2002)年度から「森林整備地域活動支援交付金」により、30ha以上のまとまりを有する「森林施業計画」の作成者を対象に、森林の現況調査や施業実施区域の明確化(*43)、歩道の整備等、森林施業の実施に不可欠な活動への支援を行ってきた。

同交付金は、平成23(2011)年度から、「森林管理・環境保全直接支払制度」の一環として、「森林経営計画」の作成や施業の集約化に必要な調査と合意形成活動に対して支援するものとした。各地では、同交付金を活用して、施業の集約化等に向けた森林所有者への説明会やダイレクトメールの送付、施業提案書による説明等が行われている。

平成23(2011)年度には、同交付金を活用して、全国で約10万haの森林について、施業集約化等に向けた合意形成が行われた。


(*43)「境界の明確化」は含まない。


 

(森林所有者の特定と境界の明確化が課題) 

施業集約化の推進に当たっては、不在村者の増加や森林所有者の高齢化、森林の相続等により、森林所有者の特定や境界の明確化が進まず、複数の森林所有者を取りまとめることが難しくなる例がみられる(*44)。

特に、境界の確認には、多くの労力を必要とする。平成23(2011)年度に農林中金総合研究所が行った「第24回森林組合アンケート」によると、施業集約化に向けた合意形成の作業負荷は、「境界確認」で0.48人日/ha、「境界確認以外」で0.35人日/haとなっている(*45)。

このような中、平成23(2011)年の「森林法」の改正により、平成24(2012)年度から、新たに森林の土地の所有者となった者に市町村への届出を義務付ける制度が導入された。また、森林所有者が不明な場合でも、必要な路網整備や適切な森林施業を実施できる仕組みも整備された(*46)。

林野庁では、「森林整備加速化・林業再生基金」等により、境界や所有者が不明で整備が進まない森林を対象として、市町村や地域住民等が行う境界の明確化活動に対し支援を行っている。平成23(2011)年度には、同基金により約12,100haの森林の境界を明確にした(*47)。

さらに、平成22(2010)年5月に閣議決定された「第6次国土調査事業十箇年計画」では、林地における「地籍調査(*48)」の実施面積の割合を、平成31(2019)年度までに42%から50%とすることが目標とされた。国土交通省では、地籍調査の基礎とするため、平成22(2010)年度から、国が行う基本調査として、境界情報を簡易に広範囲で保全する「山村境界基本調査」を実施している。林野庁と国土交通省は、森林における境界の情報と地籍調査の成果を相互に活用するなど連携しながら、境界の明確化に取り組んでいる。

境界の確認に当たっては、GIS(*49)の地図データとGPS(*50)を持参して、現地で境界を確認した上で位置情報をデータに保存する取組や、時点の異なる空中写真の変化から境界を明らかにする取組等もみられる(*51)。


(*44)森林所有者の不在村化による森林管理の問題については、中里太一, 野口俊邦 (2007) 林業経済, 60(5): 1-12.

(*45)農林中金総合研究所「第24回森林組合アンケート調査結果」(平成24(2012)年4月)

(*46)「森林法」改正については、第I章(9−10ページ)も参照。

(*47)林野庁計画課調べ。

(*48)「国土調査法」(昭和26年法律第180号)に基づき、主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査。

(*49)「Geographic Information System」の略。位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術である。

(*50)「Global Positioning System」の略で、地球の周回軌道を回る人工衛星から発信される情報を利用して、受信者と衛星の位置関係を測定し、現在地の緯度・経度をピンポイントで知ることができるシステム。

(*51)村上拓彦 (2012) 現代林業, 2012年4月号: 40-44.


 

(イ)低コストで効率的な作業システムの普及 

(路網整備は低位)

路網は、造林、保育、素材生産等の施業を効率的に行うためのネットワークであり、林業の最も重要な生産基盤である。また、路網を整備することにより、作業現場へのアクセスの改善、機械の導入による安全性の向上、災害時の搬送時間の短縮等が期待できることから、林業の労働条件の改善等にも寄与するものである。さらに、地震等の自然災害により一般公道が不通となった際に、林内に整備された路網が迂回路として活用された事例もみられる(*52)。

平成22(2010)年に農林水産省が実施した「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」では、林業者モニターに路網整備の意向を尋ねたところ、約6割のモニターが車両系又は架線系作業システムに適した路網整備を目指したいと回答している。また、所有山林面積が大きくなるにつれて、路網整備の意向を持つ者の割合が高くなる傾向がみられる(資料V-30)。

しかしながら、我が国においては、路網の整備が十分には進んでおらず、平成23(2011)年度現在、林内路網密度は18m/haとなっている。これに対して、ドイツでは、1960年代から1970年代にかけて集中的な路網整備が進められたことから、林内路網密度は118m/haとなっている。我が国と同様に国土が急峻なオーストリアにおいても、1990年代半ばの時点で89m/haとなっている(*53)。

また、これまで各地で考案された方法により路網作設が進められてきたが、我が国の森林は多様で厳しい自然条件にあることから、作設した路網が損壊する事例もあった。このため、丈夫で簡易な路網作設の基本的事項の整理が求められていた。

資料V-30

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(*52)例えば、「平成23年度森林及び林業の動向」11ページを参照。

(*53)BFW「Österreichische Waldinventur」、BMELV 「Bundeswaldinventur (BWI)」、林野庁企画課調べ。


 

(新たな区分により路網整備を推進) 

林野庁では、平成22(2010)年度に、路網を構成する道を、一般車両の走行を想定した「林道」、普通自動車(10トン積程度のトラック)や林業用車両の走行を想定した「林業専用道」、フォワーダ等の林業機械の走行を想定した「森林作業道」の3区分に整理して、これらを適切に組み合わせた路網の整備を進めることとしている。

また、林業専用道と森林作業道については、それぞれ新たに作設指針を策定し、林業専用道については、管理、規格・構造、調査設計、施工等に関する基本的事項を、森林作業道については、路線計画、施工、周辺環境への配慮等について考慮すべき最低限の事項を目安として示した(*54)。これらの作設指針は、繰り返しの使用に耐える丈夫な道を、費用を抑えて経済性を確保しながら作設することを旨として策定された。指針に示す各事項は、地域の条件に適合した路網を作設するための基礎的な情報となっている。

さらに、林業専用道については、「林道規程」に規格・構造が盛り込まれるとともに、「自動車道2級」に位置付けられた(*55)。

平成23(2011)年7月に見直した「森林・林業基本計画」では、森林施業の効率的な実施のため、路網の整備を進めることとして、林道の望ましい延長を36万km、特に、当面、10年後の目標を27万km程度としている。

また、同7月に見直した「全国森林計画」では、傾斜区分に応じた路網整備の目標とする水準を示した。具体的には、緩傾斜地(0°〜15°)の車両系作業システムでは、路網密度を「100m/ha以上」、急傾斜地(30°〜35°)の架線系作業システムでは、路網密度を「15m/ha以上」等としている(資料V-31)。

現在、各都道府県では、林野庁が示した作設指針を基本としつつ、地域の特性を踏まえた独自の路網作設指針を策定して、路網の整備を進めている(*56)。

平成23(2011)年度には、全国で林道627km、作業道13,463kmが開設された。平成23(2011)年度末現在、全国の林内路網密度(*57)は、18m/haとなっている(*58)(事例V-8)。

事例V-31

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事例V-8 県独自の「林内路網整備指針」を策定 

事例V-8

長野県は、平成24(2012)年2月に、林業事業体や行政関係者が路網配置計画の策定に活用できる「長野県林内路網整備指針」を策定した。
同指針では、路網配置の手順として、①施業団地の設定、②立地の把握、③路網の検討、④路網配置という流れを示すとともに、地形傾斜や作業システムに対応する路網整備の水準や整備の際の留意事項等を示した。
同県では、今後10年間で1,600kmの路網を開設して、路網密度を平成21(2009)年度の19m/haから平成32(2020)年度に21m/haまで高めることを目標としている。

資料:長野県「林内路網整備指針」(平成24(2012)年2月)

 


(*54)「林業専用道作設指針の制定について」(平成22(2010)年9月24日付け22林整整第602号林野庁長官通知)、「森林作業道作設指針の制定について」(平成22(2010)年11月17日付け22林整整第656号林野庁長官通知)

(*55)「「林道規程」の一部改正について」(平成23(2011)年3月31日付け22林整整第813号林野庁長官通達)

(*56)なお、林業専用道については、現地の地形等により作設指針が示す規格・構造での作設が困難な場合には、路線ごとの協議により特例を認めることなどにより、地域の実情に応じた路網整備を支援することとしている。

(*57)各年度末における「公道等」、「林道」及び「作業道」の現況延長の合計を全国の森林面積で割った数値。

(*58)林野庁「民有林森林整備施策のあらまし」(平成24(2012)年12月)


 

(路網整備を担う人材を育成) 

林野庁では、林業専用道の作設に必要な線形計画や設計・作設・維持管理を担う技術者の育成を目的として、平成23(2011)年度から、「林業専用道技術者研修」を開始した。同研修では、発注者と受注者を対象に、講義、机上演習、国有林をフィールドとした現地実習を実施している。平成23(2011)年度には、全国7ブロックで計27回の研修を開催して、合計788人が受講している。

また、林野庁では、森林作業道を作設するオペレーターとその指導者の育成を目的として、平成21(2009)年度補正予算から「路網作設オペレーターの養成事業」を開始しており、平成23(2011)年度からは、「森林作業道作設オペレーターの育成事業」を実施している。同事業は、研修指導者を育成するための「指導者研修」、これから森林作業道づくりに取り組む初級者を対象とする「初級研修」、初級研修修了者を対象に技術力向上を図る「フォローアップ研修」から構成されている。

平成22(2010)年度から23(2011)年度にかけて、「指導者研修」には300名(延べ人数。以下同)、「初級研修」には1,219名、「フォローアップ研修」には155名の合計1,674名が参加した。また、平成23(2011)年度には、研修指導者等を対象として、全国7か所で「現地検討会」を開催した。

これらの研修を受講したオペレーターと指導者は、現場での森林作業道の作設を担うとともに、各地で指導的な役割を果たしている。

(機械化の促進) 

素材生産の生産性向上には、立木の伐倒(伐木)、木寄せ、枝払い・玉切り(造材)、林道沿いの土場への運搬(集材)、椪積の各工程に応じて、林業機械を有効に活用することが鍵となる。

平成22(2010)年に農林水産省が実施した「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」では、林業者モニターに林業の機械化の意向を尋ねたところ、林業経営規模の意向について「規模を拡大したい」と回答したモニターの6割以上が「車両系機械を導入したい」と回答している。これに対して、「現在の規模を維持したい」又は「規模縮小を図りたい」と回答したモニターの約半分が、「機械はなるべく持たず、伐採などは請け負わせにより対応したい」と回答しており、機械化への意向は高くない(資料V-32)。

我が国における高性能林業機械の導入は、昭和60年代(1980年代半ば)に始まり、平成24(2012)年3月末現在、プロセッサ(*59)、ハーベスタ(*60)、フォワーダ(*61)を中心に、前年比9%増の5,089台が保有されている。高性能林業機械を活用した作業システムによる素材生産量の割合は、平成22(2010)年時点の全国平均で約4割となっている(*62)。

保有台数の内訳をみると、プロセッサが1,369台で約3割を占め、プロセッサと同様に造材作業に使用されることの多いハーベスタは924台、両者を合わせて約5割を占めている。このほか、フォワーダが1,349台で3割弱、スイングヤーダ(*63)が752台で1割強を占めている(資料V-33)。

平成18(2006)年度から平成23(2011)年度にかけての保有台数の増減をみると、路網を前提とする車両系のフォワーダ、ハーベスタ、プロセッサ等の機種が増加する一方、伐採木を全幹のまま運搬するスキッダや、急傾斜地で架線集材に用いるタワーヤーダ等の機種では、保有台数が減少している。

また、稼働率をみると、路網を前提とする車両系の機種など、保有台数が増加している機種は、稼働率も比較的高い傾向となっている(資料V-34)。

林野庁では、先進的な機能を有する林業機械の開発・改良を支援しており、森林作業道でも使用できる小型で強力なベースマシン(*64)や、傾斜地でもキャビン(乗務員室)を水平に保つことのできる装置等を開発している。

また、これらの機械を活用した低コストで高効率な作業システムの普及にも取り組んでおり、平成22(2010)年度からは、作業システムの生産性やコスト等に関する検証・分析・評価、林業機械を活用した作業のシミュレーションによる最適な作業システムの検討等を行っている(*65)。

さらに、木質資源の新たな利用に対応した林業機械として、大量の端材や枝条を圧縮して運搬できるフォワーダや、造材作業と同時に端材や枝条を処理できるプロセッサ等の導入・改良を進めている(*66)(事例V-9)。

このほか、地拵・植付・下刈等の育林工程の省力化に向けて、育林機械・技術の開発・改良にも取り組んでいる。

 

資料V-32

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資料V-33

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資料V-34

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事例V-9 小型ハーベスタのヘッドの改良 

事例V-9

林野庁では、先進林業機械を地域の条件に適合するように改良する取組を支援している。素材生産業者のF社(山梨県甲斐市)は、平成22(2010)年度から、道幅が狭い急傾斜地でも効率的かつ安全に間伐を行うことができる北欧製の小型ハーベスタのヘッドを導入して、研究機関や機械メーカー等と連携しながら、現地の作業システムに適合するように改良を行った。
改良したヘッドは、枝払いや玉切りの処理能力の向上、ナイフの目詰まりを防止するカバーの装着、測長器の改良等により、故障が少なく安定した作業を行うことが可能となった。
同ハーベスタと小型グラップル、2トンダンプを組み合わせた作業システムの実証試験では、素材生産の生産性を従来の作業システム(チェーンソー、小型グラップル、2トンダンプ)の「4.8m3/人日」から「8.9m3/人日」に向上させることができた。

資料:藤原正志(2012)機械化林業, No.708: 7-11.

 


(*59)林道や土場等で、全木集材されてきた材の枝払い、測尺、玉切りを連続して行う自走式機械。

(*60)立木の伐倒、枝払い、玉切りの各作業と玉切りした材の集積を一貫して行う自走式機械。

(*61)玉切りした短幹材をグラップルクレーンで荷台に積んで運ぶ集材専用の自走式機械。

(*62)林野庁研究・保全課調べ。

(*63)主索を用いない簡易索張方式に対応し、かつ作業中に旋回可能なブームを装備する集材機。

(*64)イワフジ工業株式会社 (2012) 機械化林業, No.703: 1-4.

(*65)株式会社森林環境リアライズ (2012) 機械化林業, No.705: 27-36.

(*66)毛綱昌弘ほか (2012) 機械化林業, No.704: 5-17.


 

(低コスト作業システムのモデル事業を実施) 

低コストで効率的な木材生産を実現するためには、各地域の実情に応じた作業システムを実地で導入する必要がある。

このため、林野庁は、平成22(2010)年度に、路網整備、先進林業機械の導入等による低コスト作業システムの実践的な取組を先行的に行うモデル事業(*67)を実施した。

同事業では、全国5地区(*68)において、ドイツとオーストリアの技術者から助言を受けながら、森づくりの基本方針を作成した上で、新たに導入した先進林業機械による路網整備と搬出間伐を行い、新旧作業システムの検証を行った。各地区では、同事業により生産性の向上と生産コストの削減を実現した検証事例もみられる。

例えば、高知県香美地区では、トラックが通行可能な路網を10路線、13km整備した上で、集材距離に応じて、トラクタ、タワーヤーダ又は架線・高性能搬器による複数の作業システムを組み合わせることにより、118haの搬出間伐を実施した。この結果、タワーヤーダによる架線の架設・撤去時間の短縮や高性能搬器による荷揚げ速度の上昇により、生産性が向上することが確認されている(*69)。


(*67)「森林・林業再生プラン実践事業」

(*68)北海道鶴居地区、静岡県富士地区、広島県西部地区、高知県香美地区、宮崎県椎葉地区

(*69)林野庁ホームページ「森林・林業再生プラン実践事業について」。導入されたタワーヤーダ等については、山崎敏彦 (2012) 機械化林業, No.706: 8月17日を参照。


 

(造林・保育の効率化) 

我が国では、造林・保育の経費が高いことから、これらの作業の効率化に向け、現在、各地で、コンテナ苗の導入、下刈回数の削減、低密度植栽、シカ被害の軽減、第二世代精英樹(*70)の開発等の取組が進められている(*71)。

コンテナ苗は、硬質樹脂等で作られた複数の容器を空中に懸架して、育苗された苗木のことである。コンテナ苗は、根に土が付いた状態のままで植栽することから、植栽時期の幅を広げることができる。このため、伐採、地拵、植栽を一貫して行うことにより、人件費を削減することが可能となる(*72)。

下刈回数の削減には、通常植栽される苗よりも大きい苗(大苗)を植栽する方法がある。これにより、植栽木が雑草木よりも早く空間を占有することが可能となり、下刈回数を省略することが可能となる(*73)。

低密度植栽は、通常植栽する本数より少ない本数を植栽する方法である。これにより、植栽に掛かる苗木代・人件費や間伐に掛かる経費を削減することが可能となる(*74)。

シカ被害の軽減については、造林地を囲む柵の設置や苗木への保護チューブの取付け等の対策が行われている。これらの対策で植栽地をシカ被害から確実に守ることにより、食害跡地に苗木を再び植栽する経費を削減することができる(*75)。

第二世代精英樹の開発については、独立行政法人森林総合研究所林木育種センターにより、成長の良い精英樹同士を人工交配して育成した中から選抜した精英樹の開発が進められている。今後、これらの苗の使用により、早期の成林が可能となり、育林経費全体が縮減されること等が期待される。

林野庁では、これらの技術の開発を支援するとともに、開発された育林体系の普及に取り組んでいる。


(*70)成長や材質などの形質が良い精英樹同士を人工交配して育成した第二世代の中から選抜される、成長等がより優れた精英樹のことをいう。

(*71)低コスト造林技術の現状については、石塚森吉ほか (2012) 現代林業, 2012年9月号: 12月35日を参照。

(*72)中村松三 (2012) 森林技術,No.839:30-33. コンテナ苗については、第IV章(89−90ページ)参照。

(*73)田代慶彦 (2012) 現代林業, 平成24(2012)年9月号:22-25.

(*74)愛知県農林水産部農林基盤担当局林務課普及グループ (2012) 現代林業, 平成24(2012)年9月号: 18-21.

(*75)小泉透 (2012) 野生動物管理-理論と技術-:348-349.


 

(ウ)「林業経営の具体像」を提示 

林野庁は、平成23(2011)年に「森林・林業基本計画」の見直しを検討する中で、効率的かつ安定的な林業経営の主体が10年後に達成すべき目標を示すとともに、目標を達成した場合の施業地レベルでの収支改善モデルを「林業経営の具体像」として提示した(資料V-35)。

同モデルでは、林業経営の主体が達成すべき10年後の目標として、素材生産については、施業の集約化、路網整備の徹底、高性能林業機械の導入等により、間伐で「8〜10m3/人日以上」、主伐で「11〜13m3/人日以上」の達成を、造林・保育については、コンテナ苗の活用、下刈方法の簡素化等により、「従来よりも2割以上のコスト縮減」を目指すこととした。

現状では、間伐・主伐ともに収支は赤字となっており、このままの状態で推移すると、林業経営を継続することが困難になる。収支改善モデルでは、これらの目標を達成した際、間伐については補助金なしでも黒字に、主伐については主伐収入で造林・保育コストを十分賄えるようになり、林業経営を継続できることが示された(*76)。

なお、この試算は一定の条件に基づくものであり、現実の林業経営では、地理的条件等により大きな幅があることに留意する必要がある。

資料V-35

データ(ワード:41KB)


(*76)林野庁「林業構造の展望について」(林政審議会(平成23(2011)年3月29日)資料4)



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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