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ホーム > 森林・林業白書 > 平成24年度 森林・林業白書(平成25年6月7日公表) > 平成24年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第II章 第2節 復興に向けた森林・林業・木材産業の貢献(2)


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第1部 第II章 第2節 復興に向けた森林・林業・木材産業の貢献(2)

(2)住宅や建築物への木材の活用 

(応急仮設住宅の約4分の1を木造で建設)

東日本大震災では、地震の揺れと津波による建物の全壊・半壊が39万戸を超え、このうち全壊は約13万戸に及んだ。地震発生直後には、最大約47万人が避難生活を余儀なくされ、被災者の住まいの確保が喫緊の課題となった。平成25(2013)年2月現在、依然として、約32万人の被災者が、応急仮設住宅(約4.8万戸)、民間住宅(約6.0万戸)、公営住宅等(約1.1万戸)に避難している(*23)。

「応急仮設住宅(*24)」については、「災害救助法」に基づき、被災地の各県が、平成25(2013)年3月までに約5.3万戸を建設した(*25)。各県は社団法人プレハブ建築協会と「災害時における応急仮設住宅の建設に関する協定」(災害協定)を結んでいたことから、当初、同協会に加盟する大手住宅メーカーが中心となって応急仮設住宅の建設を受注した。その後、被災3県では、被災地域の経済復興のため、地元の建設業者等を対象として、応急仮設住宅の建設事業者を公募することとした。

公募に応じた地元業者は、地域で流通する木材を用いた応急仮設住宅の供給に積極的に取り組み、3県で6,829戸の応急仮設住宅が木造で建設された。また、社団法人プレハブ建築協会の加盟各社の一部も、木造により応急仮設住宅を建設した。この結果、全体の約4分の1に当たる13,335戸の応急仮設住宅が木造で建設された(*26)。

今回建設された木造応急仮設住宅は、利便性や住み心地が高く評価されている。岩手県住田町では、ボランティア団体が、同町が提供した木造応急仮設住宅に居住する被災者に対して、住み心地等に関する聞き取り調査を行った。その結果、木造応急仮設住宅について、「木の香りや木肌の柔らかさ・温かみが感じられる」、「追加工事が容易なため、物置台、風除室、軒などが追加できた」、「非木造仮設住宅に比べて結露が少ない」などのコメントが得られた(*27)。


(*23)復興庁「復興の現状と取組」(平成25(2013)年3月7日)

(*24)「災害救助法」(昭和22年法律第118号)第23条第1項第1号に基づき、住家が全壊、全焼又は流失し、居住する住家がない者であって、自らの資力では住宅を得ることができない者に対して、2年間を限度に、簡単な住宅を仮設し、一時的な居住の安定を図るもの。

(*25)国土交通省ホームページ「応急仮設住宅関連情報」

(*26)国土交通省調べ(平成23(2011)年11月16日現在)。

(*27)岩手県住田町より聞き取り。


 

(木造仮設住宅建設に関する協定を都道府県と締結)

今回の震災における木造応急仮設住宅の供給実績と評価を踏まえて、一般社団法人工務店サポートセンター(*28)と全国建設労働組合総連合は、平成23(2011)年9月に、「一般社団法人全国木造建設事業協会」を設立した。同協会では、大規模災害後、木造の応急仮設住宅を速やかに供給する体制を構築するため、各都道府県との災害協定の締結を進めている。

同協会では、平成25(2013)年2月までに、23県に対して災害協定の締結に向けた要請を行い、うち8県(徳島県、高知県、宮崎県、愛知県、埼玉県、岐阜県、長野県、愛媛県)と災害協定を締結した。同協会では、平成26(2014)年までに、全体の7割の都道府県と災害協定を締結することを目標としている(*29)。


(*28)平成24(2012)年10月に「一般社団法人JBN: Japan Builders Network」に改称。

(*29)一般社団法人全国木造建設事業協会ホームページ「災害協定締結状況」


 

(災害公営住宅を木造で整備する動きも) 

応急仮設住宅の存続期間は、「建築基準法」上、最長2年3か月とされているが(*30)、復興状況の進捗を鑑み、厚生労働省は、平成24(2012)年4月に、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づき、応急仮設住宅の存続期間を1年間延長するよう、都道府県等に要請した(*31)。

各県では、被災者が応急仮設住宅の存続期間内に「災害公営住宅(*32)」等に転居できるよう、災害公営住宅の整備等を進めている。

現時点では、岩手県と宮城県における災害公営住宅の必要戸数は、約2万戸と見込まれている(*33)。これに対して、岩手県、宮城県、福島県において確保した災害公営住宅の用地は、平成25(2013)年2月末時点で約1万戸分となっている。

「東日本大震災からの復興の基本方針」では、「津波の危険性がない地域では、災害公営住宅等の木造での整備を促進する」こととされており、災害公営住宅を木造で整備する自治体もみられる(事例II−6)。

事例II-6 木造で災害公営住宅を整備 

事例II-6

福島県相馬市は、平成24(2012)年7月に、被災した高齢者や障がい者のための木造災害公営住宅「井戸端長屋」を完成した。
同施設は、木造平屋建てで、福島県産のスギとヒノキを中心に約100m3の木材を使用している。施設はバリアフリー仕様で、台所・風呂付きの個室と、食堂やサンデッキ等の共有エリアを整備しており、プライバシーを保ちながら、入居者同士の見守りや共助の精神が活かされる設計となっている。
建設資金の一部は中華民国紅十字会(台湾赤十字)等が支援した。同市では、平成25(2013)年度半ばまでに、同様の施設を当施設を含めて計5棟整備し、うち4棟が木造となる予定である。

資料:日本赤十字プレスリリース「相馬市に災害公営住宅「井戸端長屋」完成」(平成24(2012)年8月3日付け)

 


(*30)「建築基準法」(昭和25年法律第201号)第85条第3項及び第4項。

(*31)東日本大震災に係る応急仮設住宅の供与期間の延長について」(平成24(2012)年4月17日付け社援総発0417第1号厚生労働省社会・援護局総務課長通知)

(*32)災害により住宅を滅失した者に対し、地方公共団体が整備する公営住宅。

(*33)福島県は、全体計画が未定のため、必要戸数の集計から除いている。


 

(自宅の再建に木造住宅を提案) 

被災者の自宅再建に当たっては、地域で流通する木材を活用した木造住宅を提案する動きもみられる。

被災3県(岩手県、宮城県、福島県)と関係団体等からなる「地域型復興住宅三県(岩手・宮城・福島)官民連携連絡会議」は、平成23(2011)年12月に、木造復興住宅のモデル的な設計と生産システムに関するガイドラインを策定した(*34)。

平成24(2012)年2月には、被災3県の林業・木材産業関係者や建築設計事務所、大工・工務店等関係団体が同連絡会議を発展させて、被災者の住宅再建への支援を目的とする「地域型復興住宅推進協議会」を設立した。同協議会では、木造住宅を建設する被災者に対して、設計のアドバイスや融資情報の提供、住宅生産者グループの紹介等を行っている(*35)。

また、住宅メーカーが、地域で生産される木材を活用して集合住宅を建設する動きもみられる(事例II−7)。

事例II-7 岩手県産材による集合住宅を建設 

事例II-7

建設会社のD社(東京都港区)は、平成24(2012)年7月から、被災地域の産業復興や雇用拡大のため、岩手県沿岸部で産出され、岩手県陸前高田市内の工場で加工された「気仙杉」を用いて、仙台市、北上市、盛岡市などで、ツーバイフォー工法の集合住宅を建設している。
同社では、今後、岩手県を中心に、約200棟(1,200戸)建設することを予定している。

資料:平成24(2012)年6月13日付け林政ニュース: 20.

 


(*34)地域型復興住宅三県(岩手・宮城・福島)官民連携連絡会議「地域型復興住宅 設計と生産システムガイドライン」(平成23(2011)年12月)

(*35)地域型復興住宅推進協議会ほか「地域型復興住宅」(平成24(2012)年3月)


 

(新しいまちづくりに木材を活用) 

被災地では、新しいまちづくりに当たり、住宅や建築物等に木材を活用する取組も広がっている。

例えば、岩手県釜石市の森林組合では、平成24(2012)年6月に、津波で流失した事務所の再建に当たり、スギ間伐材を用いた木造復興住宅のモデルルームを事務所に併設した(*36)。

宮城県南三陸町の幼稚園では、同7月に、津波被害により枯死した樹齢200年余のスギ約200本(約140m3)を用いて、津波で流失した園舎を再建した(*37)。

岩手県陸前高田市では、平成24(2012)年11月に、建築家のグループが、津波による塩害で枯死したスギを柱に使用して、被災住民が憩う施設を建設した。この施設の建設プロセスは、同8月にイタリアで開催された「ベネチア・ビエンナーレ国際建築展」において最高賞を受賞した(*38)。

宮城県東松島市は、平成24(2012)年7月から、住宅メーカーと協力して、公共施設の木造化や木質バイオマス関連事業の立ち上げなどにより、木材の活用を軸とするまちづくりを進めている(事例II−8)。

事例II-8 住宅メーカーが「木化都市」づくりに協力 

事例II-8

宮城県東松島市は、平成23(2011)年12月に、内閣府が環境問題や高齢化に対応した都市として選ぶ「環境未来都市」のモデル地域に選定され、地域再生の柱の一つに林業を組み入れる「木化都市」構想を推進している。
住宅メーカーのS社(東京都千代田区)は、平成24(2012)年7月に、東松島市と協定を締結して、同構想の実現に向けた取組を支援している。「木化都市」実現に向けた具体的な取組としては、沿岸部被災地での林業の推進、公共施設の木造化、木質バイオマス関連事業の立ち上げなどが予定されている。
平成24(2012)年7月には、S社が、市内の応急仮設住宅敷地内に、地域で流通する木材を活用した木造の仮設診療所を建設した。同診療所は、同12月から診療を開始した。

資料:平成24(2012)年7月25日付け林政ニュース: 19、内閣官房ホームページ「「環境未来都市」構想とは」

 


(*36)高橋幸男 (2012) 森林と林業, 12月号:16-17.

(*37)日本ユニセフ協会ホームページ「東日本大震災緊急募金第157報宮城県南三陸町あさひ幼稚園で上棟式」(平成24(2012)年5月25日付け)、平成24(2012)年7月7日付け日刊木材新聞7面

(*38)平成24(2012)年9月11日付け毎日新聞夕刊5面、平成24(2012)年11月19日付け読売新聞38面


 

(木材を活用した液状化対策を開発) 

東日本大震災では、関東地方の1都6県の少なくとも96市町村において、地震の震動により地下水位の高い砂地盤が液体状になる「液状化現象」が発生した。特に、東京湾沿岸部や利根川下流域等の埋立地や旧河道・旧池沼等で被害が集中した(*39)。

今回の液状化現象の発生を踏まえて、千葉県浦安市では、液状化対策のために間伐材丸太を地中に打設する工法の開発を進めている。同工法では、丸太を地中に打設して地盤の密度を高めることにより液状化を防ぐのみならず、木材の使用により炭素を地中に貯蔵する効果も期待されている(*40)。


(*39)国土交通省プレスリリース「「液状化対策技術検討会議」の検討成果について」(平成23(2011)年8月31日付け)資料1

(*40)木村礼夫ほか (2012) 木材工業, Vol.67:444-446.


 

(木材活用のための今後の課題) 

今後、復興住宅の整備が本格化することにより、木材の需要が増加することも見込まれる。このため、復興に必要な木材を確実に供給できるよう、引き続き、全国における木材供給体制の強化を図ることが重要である。

また、今回の震災では、平成7(1995)年の「阪神・淡路大震災」以降、木造住宅の耐震化が進んできたことなどから、地震の揺れによる木造住宅の被害は比較的軽微であった。今後、被災地における住宅の再建に当たっては、木造住宅の更なる普及を図るため、施主や住宅メーカー等に対して、このような木造住宅の耐震性の高さを十分に説明することが重要である。

さらに、現在、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に基づき、公共建築物の木造化・内装等の木質化に向けた取組が進められている。「東日本大震災からの復興の基本方針」では、住宅や公共建築物に地域で流通する木材を積極的に利用することとされていることから、被災地においても、津波の危険性がない地域では、公共建築物の木造化・内装木質化を積極的に進めることが重要である。

加えて、東日本大震災では、木造の応急仮設住宅が相当数供給された。今後、大きな災害が発生した際に、居住性の優れた木造応急仮設住宅を早急に供給できるように、地域で流通する木材を活用した低コストで優れた居住性を有する住宅のモデルを開発するとともに、災害発生時の即応供給体制を整備することが重要である。

コラム 東北の復興と森林再生を議論するサミットを開催 

コラム東北の復興

一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(JAPIC(ジャピック)、会長:三村明夫)は、平成22(2010)年3月に「次世代林業システム」の実現に向けた政策提言を行い、以後、林業界と産業界が連携して、森林資源のカスケード利用を進めることにより、木材自給率50%を目指す活動を展開している。
同協議会は、平成24(2012)年7月に、東京、九州に続き3回目となる「次世代林業サミット」を岩手県遠野市で開催した(主催:岩手県、遠野市、釜石市、住田町、大槌町、社団法人東北経済連合会、JAPIC)。同サミットには約800名が参加して、林野庁長官による基調講演や地元の取組紹介が行われ、森林資源を活かした震災からの復興と産業の再興を盛り込んだ「次世代林業東北サミット宣言」が採択された。あわせて、東北地方の木材加工施設や仮設住宅、バイオマス利用施設等の現地視察も行われた。
平成25(2013)年2月には、これまでの活動を踏まえて、農林水産大臣等に、「林業復活」を日本経済再生策の一つとして位置付けるよう提言を行った(注)。

注:提言については、第IV章(93ページ)参照。
資料:JAPICホームページ「次世代林業東北サミットを開催しました。」(平成24(2012)年7月27日)

 

 


お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
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