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ホーム > 森林・林業白書 > 平成24年度 森林・林業白書(平成25年6月7日公表) > 平成24年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第II章 第1節 森林・林業・木材産業の被害と復旧状況


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第1部 第II章 第1節 森林・林業・木材産業の被害と復旧状況

 

平成23(2011)年3月11日に発生した「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」では、広い範囲で強い揺れが観測されるとともに、東北地方の太平洋沿岸を中心に大規模な津波被害が発生した。その後も規模の大きな余震が発生するとともに、同12日には、長野県北部を震源とする最大震度6強の地震が発生した。「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」による被害は未曾有の規模となり、東京電力福島第一原子力発電所の事故による災害を含めて、「東日本大震災」と呼称することとされた(*1)。森林・林業・木材産業においても、東北地方を中心に大きな被害を受けており、政府では、震災の復旧・復興に向けた取組を進めている。

以下では、森林・林業・木材産業の津波等による被害と復旧状況について、平成24(2012)年度における動向を中心に記述する。

(1)森林の被害と復旧状況 

東日本大震災により、青森県から高知県までの15県において、山腹崩壊や地すべり等の林地荒廃(458か所)、防潮堤(*2)等の治山施設の被害(275か所)、法面・路肩の崩壊等の林道施設の被害(2,632か所)、火災による焼損等の森林被害(1,065ha)等が発生した。

治山施設や林道施設等の被害箇所については、国や都道府県、市町村等が「山林施設災害復旧等事業」などにより、災害からの復旧に向けた工事を進めている(事例II−1)。平成25(2013)年1月時点で、「山林施設災害復旧等事業」の対象箇所の約9割が工事に着手済みとなっており、その大部分で工事が完了している。未着手箇所については、地域や他事業等との調整を行いつつ、準備が整った箇所から速やかに着手することとしている。

海岸防災林については、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県及び千葉県の6県総延長約140kmにおいて、防潮堤や林帯地盤の損壊・沈下・流失や、樹木の倒伏・流失等の被害が発生した。特に、地盤高が低く地下水位が高い場所では、樹木の根が地中深くに伸びず、根の緊縛力が弱かったことから、根返り(*3)し、流木化したものが多数確認されている(*4)。また、平成23(2011)年5月以降には、津波が到達しながら流失を免れた海岸防災林で、時間の経過とともに葉が赤褐色化して立木が枯死する事例が確認された。枯死の原因は、津波の到達により土壌中に塩類が集積して、樹木の水分吸収等が阻害されたためと考えられている(*5)。

海岸防災林の復旧・再生に当たっては、防潮堤の復旧などの海岸防災林の造成に必要な基盤造成を概ね5年間で完了するとともに、基盤造成が完了した箇所から順次植栽を行い、概ね10年間で全体の復旧を完了することを目指している(*6)。

事例II-1 長野県北部の地震による山腹崩壊を復旧 

事例II-1事例II-1

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の翌日に、長野県北部で、最大震度6強の地震が発生した。この地震により、長野県下水内郡栄村中条川では、約16haの大規模な山腹崩壊が起こり、渓床に大量の土砂が流出した。現地では、その後の余震や融雪により、崩壊の拡大や土石流の発生のおそれがあった。
このため、長野県は、同4月から平成25(2013)年3月にかけて、国の支援を受けて、災害関連緊急治山事業による復旧を行った。同事業では、治山堰堤の設置により渓床に堆積した不安定土砂の移動を防止するなどの工事を行い、被害の拡大防止を図った。


(*1)平成23(2011)年4月1日閣議了解。

(*2)高潮や津波等により、海水が陸上に浸入することを防止する目的で、陸岸に設置される堤防。治山事業では、海岸防災林の保護のため、治山施設として防潮堤等を整備している。

(*3)樹木の根株ごと幹が倒れ、根が地表に現れた状態。

(*4)東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会「今後における海岸防災林の再生について」(平成24(2012)年2月):14.

(*5)小野賢二, 平井敬三 (2012) 森林総合研究所研究報告, 第11号2巻:33-42.

(*6)海岸防災林の復旧・再生については、47月50日ページ参照。


 

(2)林業の被害と復旧状況 

東日本大震災では、林地・林道施設等への直接の被害に加え、木材加工・流通施設の被災により、素材生産業者による原木等の出荷が困難となった。

特に、東北地方では太平洋沿岸地域に位置する大規模な合板工場・製紙工場が被災したことから、これらの工場に供給されていた合板用材や木材チップの流通が停滞した。平成22(2010)年時点で、東北地方では、素材生産量(丸太生産量)に占める合板用材とチップ用材の割合が約6割(*7)となっていたことから、流通の停滞が地域の林業に与えた影響は大きかった(*8)。

林野庁では、平成23(2011)年度から、被災工場に原木等を出荷していた素材生産業者が、非被災工場に原木等を出荷する場合等に、流通コストに対する支援を行っている。平成23(2011)年度には、原木等約25万m3の流通コストについて助成を行った(*9)。その後、被災した製紙工場では平成23(2011)年5月以降、合板工場では同7月以降、順次、操業を再開しており、合板用材や木材チップの受入れも回復しつつある(*10)。

また、地域の森林整備の担い手として重要な役割を果たしている森林組合も、地震や津波により大きな被害を受けた。特に、東北地方の太平洋沿岸地域に位置する一部の森林組合では、事務所が破損・流失等の被害を受けるとともに、役職員の尊い生命が失われた。

被害を受けた森林組合の中には、震災直後から仮事務所を設置して、事業を再開している組合もある(事例II−2)。また、被災地の森林組合では、津波浸水による塩害被害木の処理や高台移転予定地における立木の伐採等を請け負ったり(*11)、復興住宅の資材を供給する協議会に参画したりする動きがみられる(*12)。

事例II-2 被災した森林組合が事業を再開 

事例II-2事例II-2

岩手県釜石市の釜石地方森林組合は、東日本大震災の津波により事務所が全壊して、事業に必要な書類やデータが流失するとともに、組合長を含む5名の役職員の尊い生命が失われた。
同組合では、震災直後から事業の再開に向けた取組を開始した。震災の翌日には、仮事務所を山元の貯木場に設置して、津波で失われた経営データの復元作業を始めた。また、震災の翌週には、所有する重機を使って、ボランティアで同市内のがれきの撤去作業を始めた。平成23(2011)年8月には、市内の火力発電所が操業を再開して、木質バイオマス燃料を納入する目処が立ったことから、搬出間伐などの森林整備事業を再開した。組合員の被災により、森林整備の費用を負担することは難しい状況であったが、「J-VER(ジェイバー)制度(注)」のクレジット売却で得た資金を事業費に充てることで、森林整備を継続的に行うことができた。
同組合では、平成24(2012)年6月に事務所を再建して、以後、震災からの復興に向けて、岩手県森林組合連合会と連携しながら、津波で流失した養殖筏や復興住宅の資材として木材の供給を行っている。

注:J-VER制度については、第III章(72−74ページ)参照。
資料:今野知樹 (2012) 森林技術, No.840:13−17、森林組合, 平成23(2011)年10月号: 4-5.


(*7)平成22(2010)年の素材生産量に占める合板用材とチップ用材の割合は、岩手県でそれぞれ28%、36%、宮城県でそれぞれ38%、30%であった(資料:林野庁「森林・林業統計要覧2012」)。

(*8)山本信次 (2011) 林業経済, 64 (6):19-28.

(*9 )林野庁木材産業課調べ。

(*10)関野登ほか (2012) 木材工業, Vol.67 (10):420-425.

(*11)平成24(2012)年9月25日付け読売新聞26面、平成24(2012)年8月19日付け岩手日報朝刊4面

(*12)平成23(2011)年11月2日付け岩手日報朝刊20面


 

(3)木材産業の被害と復旧状況 

東日本大震災により、全国の木材加工・流通施設115か所が被災した。このうち、製材工場については、青森県から高知県にかけての71か所が被災して、多くの工場が操業を停止した。合板工場については、岩手県と宮城県に位置する大規模な合板工場6か所が被災して、操業を停止した(*13)。

林野庁では、平成23(2011)年度第1次補正予算により、被災した木材加工・流通施設の廃棄・復旧・整備や港湾等に流出した木材の回収等への支援を行うとともに、第3次補正予算により、木材加工・流通施設の復旧や特用林産施設の復旧・再建等の支援を行った。

この結果、平成24(2012)年7月までに、木材加工・流通施設全体で96か所が操業を再開している(*14)。

東北地方における製材品の生産量は、平成24(2012)年9月現在、震災前のレベルとほぼ同程度まで回復している(*15)。また、東北地方の合板生産量は、平成24(2012)年7月時点で震災前の8割程度となっていたが(*16)、これは市況の低迷により全国的に減産体制にあったことによる。平成25(2013)年1月現在では、全国の合板生産量は、ほぼ震災前のレベルまで回復している(*17)。


(*13)林野庁木材産業課調べ。

(*14)林野庁木材産業課調べ。

(*15)東北6県(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)における平成22(2010)年の月別製材品生産量の平均(9.3万m3)と平成24(2012)年の月別製材品生産量の平均(10.0万m3)を比較(資料:農林水産省「製材統計」)。

(*16)林野庁木材産業課調べ。

(*17)全国の平成22(2010)年の月別合板生産量の平均(22万m3)と平成25(2013)年の1月の合板生産量(21万m3)を比較(資料:農林水産省「合板統計」)。



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