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ホーム > 森林・林業白書 > 平成24年度 森林・林業白書(平成25年6月7日公表) > 平成24年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第I章 第2節 森林・林業再生に向けた国有林野事業の展開(2)


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第1部 第I章 第2節 森林林業再生に向けた国有林野事業の展開(2)


(2)国有林野事業の具体的取組 

国有林野事業では、平成25(2013)年度から、新たな「管理経営基本計画」に基づき、公益重視の管理経営の一層の推進と森林林業の再生に取り組むこととしている。

以下では、国有林野事業の管理経営の取組を、「公益重視の管理経営の一層の推進」、「森林林業の再生への貢献」、「「国民の森林」としての管理経営」、「国有林野の活用と震災からの復旧復興への貢献」及び「管理経営の実施体制」の5つに分けて、現状と今後の展開方向を紹介する(*41)。


(*41)以下の記述のうち現状については、注釈のある箇所を除いて、農林水産省「平成23年度国有林野の管理経営に関する基本計画の実施状況」(平成24(2012)年9月)又は林野庁「国有林野事業統計」による。


 

(ア)公益重視の管理経営の一層の推進 

(a)公益的機能の維持増進を旨とした管理経営

国有林野は、奥地脊梁山地や水源地域、希少な野生生物の生育生息域にまとまって分布しており、国土の保全や生物多様性の保全上、重要な位置を占めている。国有林野の有する公益的機能は、広く国民全体の利益につながるものであり、昨今の頻発する自然災害への対応や生物多様性の保全への国民の強い関心等を踏まえて、適切に発揮させることが求められている。

国有林野事業では、これまでも、公益的機能の維持増進を図るため、個々の国有林野を重点的に発揮させるべき機能によって区分した上で、間伐等の必要な施業を行うとともに、治山事業や路網整備等にも取り組んできた。

今後は、公益重視の管理経営を一層推進する観点から、新たな機能類型区分に沿って適切な施業を行うともに、隣接介在する民有林との一体的な整備保全等にも取り組むこととしている。

(重視される機能に応じた管理経営の推進) 

国有林野事業では、国民の多様な要請に対応するため、これまで、「森林林業基本計画」と「全国森林計画」の考え方に即して、個々の国有林野を重点的に発揮させるべき機能によって、「水土保全林」、「森林と人との共生林」及び「資源の循環利用林」の3つの機能類型に区分してきた。

それぞれの面積は、平成24(2012)年4月時点で、「水土保全林」が515万ha、「森林と人との共生林」が216万ha、「資源の循環利用林」が27万haで、「水土保全林」と「森林と人との共生林」の2つが全体の9割以上を占めていた。

国有林野事業では、これらの機能類型ごとの目指すべき森林の姿に応じて、地域における自然的特性等を考慮しつつ、育成複層林施業や長伐期施業など、公益的機能を発揮させるための施業を実施してきた。

平成23(2011)年7月の「森林林業基本計画」と「全国森林計画」の見直しでは、国が、重視すべき機能に応じた森林の3機能区分を示すことをやめて、地域主導により発揮を期待する機能ごとの区域を設定することとされた(*42)。国有林野の機能類型についても、同12月の林政審議会答申「今後の国有林野の管理経営のあり方について」において、「森林林業基本計画」等で例示された森林の機能との整合性を図りつつ、従来の区分との連続性を踏まえて見直すべきとされた。

これを踏まえて、国有林野事業では、公益重視の管理経営の一層の推進の観点から、従来の3機能類型を、「山地災害防止タイプ」、「自然維持タイプ」、「森林空間利用タイプ」、「快適環境形成タイプ」及び「水源涵養タイプ」の5タイプに見直した(資料I−10)。

見直しに当たっては、水源涵養機能は、全ての国有林野で発揮を期待する基礎的な機能として位置付けた上で、生物多様性保全、保健レクリエーション文化、山地災害防止、快適環境形成の各機能については、他の機能に配慮しつつ、専ら特定の機能の高度発揮を優先させるべき区域を区分することとした。また、木材等生産機能については、区分に応じた適切な施業の結果得られる木材を計画的に供給することにより発揮するものとした。

新たな機能類型区分は、平成25(2013)年3月までに樹立変更した「地域管理経営計画」において反映した。

今後、国有林野事業では、それぞれの流域の自然的特性等を勘案しつつ、新たな区分に応じて施業を推進することとしている。


I-10


(*42)「森林林業基本計画」と「全国森林計画」の見直しについては、10−12ページを参照。


 

(治山事業の実施) 

国有林野事業では、地域の安全安心を確保することを目的に、治山事業により、自然環境保全への配慮やコスト縮減を図りながら、荒廃地の復旧整備や保安林の整備を計画的に進めている。

国有林内では、集中豪雨や台風等により被災した山地の復旧整備や機能の低下した森林の整備等を推進する「国有林直轄治山事業」を行っている。また、民有林内で発生した大規模な山腹崩壊や地すべり等の復旧に高度な技術が必要となる箇所等では、地方自治体からの要請を受けて、「民有林直轄治山事業」と「直轄地すべり防止事業」を行っている。

さらに、大規模災害が発生した際には、被害状況把握のための職員派遣や治山施設の復旧等の緊急対策に取り組んでいる。平成24(2012)年7月に発生した「九州北部豪雨災害」では、九州森林管理局が、熊本県からの要請を受けて、発生直後から職員を被災地に派遣し、民有林における被害箇所について現地調査を行った(事例I−8)。

加えて、民有林国有林間の事業の調整や情報の共有を図るため、各都道府県を単位として、両者が参加する「治山事業連絡調整会議」を定期的に開催している。民有林と国有林の治山事業実施箇所が近接している地域においては、流域保全の観点から、一体的な全体計画を作成し、民有林と国有林が連携して荒廃地の復旧整備を行っている。

国有林野事業では、今後も、自然環境保全への配慮やコスト縮減を図りながら事業を進めるとともに、大規模な災害発生時における民有林への支援や、民有林と国有林が連携した一体的な治山対策等に取り組むこととしている。

事例I-8 「平成24年7月九州北部豪雨」による民有林の被害調査への協力 

事例I-8

平成24(2012)年7月11日から14日にかけて、九州北部地方を中心に、1時間当たり100mmを超える非常に激しい雨が降った(「平成24年7月九州北部豪雨」)。このため、全国で1,357か所の林地荒廃、93か所の治山施設の被害、4,987か所の林道施設等の被害が発生した。
九州森林管理局では、災害発生直後から、熊本県や福岡県と連携して、ヘリコプターによる被害状況調査を行うとともに、熊本県からの要請を受けて、民有林の被害調査に協力した。民有林の調査では、同局の職員のべ58名が7月19日から27日にかけて、阿蘇五岳周辺の2,436haを対象に、渓間工435基の被害状況を調査した。

資料:九州森林管理局プレスリリース(平成24(2012)年7月30日付け)

 

(路網の整備) 

国有林野事業では、機能類型に応じた適切な森林の整備保全や林産物の供給等を効率的に行うため、林道(林業専用道を含む。以下同)と森林作業道を組み合わせた路網の整備を進めている。このうち、林道については、平成23(2011)年度末における路線数は12,781路線、延長は44,296kmとなっている。

路網の整備に当たっては、地形に沿った路線線形にすることで、切土盛土等の土工量や構造物の設置数を減少させるとともに、現地で発生する木材や土石を土木資材として活用することにより、コスト縮減に努めている。

また、国有林と民有林が近接する地域においては、民有林林道等の開設計画と調整を図り、計画的かつ効率的な路網整備を行っている。

国有林野事業では、今後も、森林の有する公益的機能が高度に発揮されるよう、それぞれの道の役割や自然条件、作業システム等に応じて、林道と森林作業道を適切に組み合わせた路網の整備を進めることとしている。

(地球温暖化防止対策の推進) 

国有林野事業では、「京都議定書目標達成計画」に基づく森林吸収源対策を着実に進めるため、間伐等の森林整備を進めるとともに、林内の巡視等により、保安林等に指定されている天然生林の適切な保全管理に取り組んでいる。平成23(2011)年度には、全国の国有林野で約11.5万haの間伐を実施し、平成19(2007)年度から5年間の間伐実施面積は約60.5万haとなった。

また、間伐材等の利用促進は、間伐の推進のみならず、木材における炭素の貯蔵にも貢献することから、森林管理署等の庁舎建替えに当たっては、木造建築物で整備するとともに、林道事業治山事業の森林土木工事においても、間伐材等を土木資材として利用している。平成23(2011)年度には、林道事業で約1.5万m3、治山事業で約3.4万m3の木材木製品を使用した。

我が国は、平成25(2013)年以降も、引き続き、国際ルールを踏まえて温室効果ガスの削減努力を続けることとしている(*43)。国有林野事業では、引き続き、地球温暖化防止に向けて、森林整備と木材利用に率先して取り組むこととしている。


(*43)地球温暖化防止対策については、第III章を参照。


 

(民有林との一体的な整備保全) 

国有林に隣接介在する民有林の中には、森林所有者等による間伐等の施業が十分に行われず、国有林の発揮している公益的機能に悪影響を及ぼす場合や、民有林における外来樹種の繁茂が国有林で実施する駆除の効果の確保に支障となる場合もみられる。

このような中、平成24(2012)年6月に改正された「森林法」では、国有林の公益的機能の維持増進を図るために必要であると認められるときは、森林管理局長が森林所有者等と協定を締結して、国有林野事業により国有林と民有林の一体的な整備保全を行うことを可能とする制度(「公益的機能維持増進協定制度」)が創設された(資料I−11)。

国有林野事業では、同制度の活用により、隣接介在する民有林と一体となって、施業集約化に向けた路網の開設や、間伐等の施業の実施、生物多様性保全に向けた外来樹種の駆除等に取り組むこととしている(*44)。


資料I-11


(*44)「公益的機能維持増進協定」の場合、「森林共同施業団地」の場合と異なり、民有林においても、国有林野事業として事業を実施することが可能となる(「森林共同施業団地」については、33ページ参照)。


 

(b)生物多様性の保全 

国有林野は、人工林や原生的な天然林、湿原等の森林生態系を有し、希少種を含む多様な野生生物が生育生息している。また、国有林野の生態系は、里山林や渓畔林、海岸林として、農地、河川、海洋等の森林以外の生態系とも結び付いており、我が国全体の生態系ネットワークの根幹として、生物多様性の保全を図る上で重要な構成要素となっている。

森林における生物多様性の保全を図るためには、森林の健全性を維持確保するとともに、流域等の一定の面的広がりの中で、樹種や林齢等の異なる森林が、時間の経過とともに、成長や伐採、自然災害等により変化しながら、バランス良く分散的に配置されることが望ましい。

このため、国有林野事業では、間伐の実施、伐期の長期化、多様な林分のモザイク的な配置等に取り組むとともに、「保護林」や「緑の回廊」の設定、地域の関係者との協働連携による森林生態系の保全、野生生物の保護管理等の取組を進めている。あわせて、「グリーンサポートスタッフ(森林保護員)(*45)」による巡視やマナーの啓発活動を行っている。

今後は、生物多様性の保全に向けて、地域の状況等を踏まえつつ、「保護林」等の設定や区域の見直しを進めるとともに、新たに、渓流等水辺の連続性の確保による森林生態系ネットワークの形成に取り組むこととしている。


(*45)巡視、入山者への指導啓発、簡易な施設補修、巡視結果の取りまとめ等を行う非常勤の職員。


 

(「保護林」の設定) 

国有林野には、世界遺産一覧表に記載された白神山地(青森県、秋田県)、屋久島(鹿児島県)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京都)を始め、原生的な森林生態系や希少な野生生物が生育生息する森林が多く所在している。

国有林野事業では、このような生物多様性の核となる森林生態系を厳正に保全管理するため、「森林生態系保護地域」、「森林生物遺伝資源保存林」、「林木遺伝資源保存林」、「植物群落保護林」、「特定動物生息地保護林」、「特定地理等保護林」、「郷土の森」の7種類の「保護林」を設定している。

平成23(2011)年度には、11か所の「保護林」の設定変更を行った。例えば、長野県松本市では、ケショウヤナギ等の植物群落を保護するため、「上高地ケショウヤナギ等植物群落保護林」を設定した。また、沖縄県八重山郡竹富町では、既設の「西表島森林生態系保護地域」を拡充した(事例I−9)。この結果、平成24(2012)年4月現在における「保護林」の設定面積は、前年から1.1万ha増加して91.5万haとなり、国有林野全体の面積の12%を占めている。

これらの「保護林」では、森林や野生生物等の状況変化に関するモニタリング調査を実施して、森林生態系の保全管理や区域の見直し等に役立てている。

国有林野事業では、今後も、「保護林」を適切に保全管理するとともに、地域の状況等を踏まえて、区域の見直し等にも取り組むこととしている。

事例I-9 「西表島森林生態系保護地域」の拡充 

事例I-9

沖縄県八重山地方に位置する西表島は、土地面積の85%(約24,500ha)が国有林となっている。同島には、我が国最大規模のマングローブ林や亜熱帯性の広葉樹林が生育するとともに、イリオモテヤマネコやカンムリワシ等の貴重な野生生物が生息している。このため、九州森林管理局(熊本市)では、平成3(1991)年に、浦内川周辺のマングローブ林を中心に「西表島森林生態系保護地域」(約11,600ha)を設定した。
同局では、平成22(2010)年度に、世界自然遺産への推薦も視野に、同島の多様な森林生態系を包括的に保護できるよう、有識者からなる設定委員会において、地域の拡充について検討を行った。検討結果を踏まえて、平成23(2011)年度に、同地域の指定面積を約20,470haに拡充した。

 

(「緑の回廊」の設定) 

国有林野事業では、野生生物の生育生息地を結ぶ移動経路を確保することにより、個体群の交流を促進し、種や遺伝的な多様性を保全することを目的として、「保護林」を中心にネットワークを形成する「緑の回廊」を設定している。平成24(2012)年4月現在における「緑の回廊」の設定箇所数は24か所、設定面積は59.2万haとなり、国有林野全体の面積の8%を占めている。

「緑の回廊」では、猛禽類の採餌生息環境の改善を図るために密閉した林分を伐開するとともに、人工林の中に芽生えた広葉樹を積極的に保残することなどにより、野生生物の生育生息環境に配慮した施業を行っている。また、森林の状態と野生生物の生育生息実態に関するモニタリング調査を実施して、保全管理に反映している。

なお、国有林野だけでは十分な回廊の幅を確保できない場合等には、必要に応じて、隣接する民有林へも回廊の設定への協力を依頼している。

国有林野事業では、今後も、「緑の回廊」により民有林と国有林を通じた野生生物の面的な移動経路を確保するとともに、モニタリング調査で得られた知見等を踏まえて、区域の見直し等にも取り組むこととしている。

 

(世界遺産等における森林の保全) 

平成23(2011)年6月に、パリのユネスコ本部で開催された「第35回世界遺産委員会」において、「小笠原諸島」の世界遺産一覧表への記載が決定した。「小笠原諸島」は、「白神山地」、「屋久島」、「知床」に続き、我が国で4件目の世界自然遺産となった。我が国の4か所の世界自然遺産では、陸域の約95%が国有林野となっている(資料I−12)。

国有林野事業では、世界自然遺産区域内の国有林野を「森林生態系保護地域」に設定して、厳正な保全管理に努めるとともに、地元関係者と連携しながら、希少な野生生物の保護や外来種等の駆除による固有の森林生態系の修復、利用ルールの導入普及啓発等の保全対策に取り組んでいる。

政府は、平成25(2013)年1月に、「奄美琉球」を世界自然遺産候補地として、我が国の世界遺産暫定一覧表に記載することを決定した。国有林野事業では、「奄美琉球」の国有林野においても、「森林生態系保護地域」の設定等により、適切な保全対策に取り組んでいる(*46)。

また、「世界文化遺産」等の周辺に位置する国有林野においても、景観の維持保存の観点から森林の管理経営を行っている。


資料I-12

データ(エクセル:33KB)

 

近畿中国森林管理局では、世界文化遺産に登録された「古都京都の文化財」(京都府、滋賀県)、「古都奈良の文化財」(奈良県)、「紀伊山地の霊場と参詣道」(和歌山県、三重県、奈良県)及び「厳島神社」(広島県)の周辺に所在する国有林野計約4,600haに、「世界文化遺産貢献の森林」を設定している。これらの設定箇所では、文化財修復資材の供給、景観の保全、檜皮採取技術者養成フィールドの提供、森林と木造文化財の関わりに関する学習の場の提供等に取り組んでいる(*47)。

平成24(2012)年1月に、政府は、ユネスコ世界遺産センターに、「富士山」(静岡県、山梨県)を世界文化遺産として世界遺産一覧表に記載するための推薦書を提出した。「富士山」の世界文化遺産候補地を構成する資産のうち、山域部分の約3分の1が国有林野となっている。国有林野事業では、「富士山」の世界文化遺産登録に向けて、推薦区域に所在する「保護林」の保全管理、景観に配慮した森林整備、登山者に対する普及啓発等に取り組んでいる(*48)。

東北森林管理局は、平成24(2012)年4月に、我が国の世界遺産暫定一覧表に記載されている「九州山口の近代化産業遺産群」の構成遺産の一つで、岩手県釜石市に所在する「橋野高炉跡」周辺の国有林野に「橋野鉄鉱山郷土の森」(保護林)を設定した。同局では、世界文化遺産への登録に向けて、釜石市と連携しながら、同郷土の森における歴史教育の場の提供や自然景観の保全等に取り組んでいる(*49)。

なお、「ユネスコエコパーク(*50)」に登録されている「志賀高原」(長野県、群馬県)、「白山」(岐阜県、石川県、富山県、福井県)、「大台ヶ原大峰山」(奈良県、三重県)、「綾」(宮崎県)及び「屋久島」(鹿児島県)の国有林でも、一部を「保護林」に設定するなど、適切な保全管理を行っている。

国有林野事業では、今後も、世界遺産等の適切な保全管理のため、「保護林」等の国有林野の適切な保全管理に取り組むこととしている。


(*46)林野庁プレスリリース「「奄美琉球」の世界遺産暫定一覧表への記載について」(平成25(2013)年1月31日付け)

(*47)近畿中国森林管理局「森のひろば」平成20(2008)年10月号: 2-3.

(*48)林野庁ホームページ「世界文化遺産推薦地「富士山」」

(*49)釜石市、東北森林管理局プレスリリース「「橋野鉄鉱山郷土の森」設定に係る保存協定の締結について」(平成24(2012)年4月12日付け)

(*50)「ユネスコエコパーク」については、トピックス(5ページ)参照。


 

(野生生物の保護管理と鳥獣被害対策)  

国有林野事業では、国有林野内に生育生息する希少な野生生物の保護管理を図るため、野生生物の生育生息状況の把握、生育生息環境の維持整備等に取り組んでいる。

一方、近年、シカによる森林植生への食害やクマによる樹木の剥皮等の野生鳥獣による森林被害が深刻化しており、希少な高山植物など他の生物への脅威ともなっている。平成23(2011)年度には、国有林野の約800haにおいて、シカやクマによる立木の被害が発生した。

このため、各森林管理局では、野生鳥獣との共生を目指して、関係者と連携しながら、個体数の管理、被害の防除、生息環境の管理、被害箇所の回復等に取り組んでいる。

例えば、北海道では、エゾシカが65万頭以上生息していると推定されており、道東を中心に、森林への影響が広がっている。このため、北海道森林管理局では、「囲いわな」の設置による生体捕獲、林道の除雪による捕獲の効率化支援等に取り組んでいる(*51)。

また、九州では、適正頭数の約5.8倍に相当する約27万頭のシカが生息していると推定されており、生息域が拡大傾向にある。このため、九州森林管理局では、シカの生息調査や行動パターンの調査分析を行うとともに、「くくり罠によるシカ捕獲マニュアル」を作成して、職員自らによるシカの捕獲等に取り組んでいる(*52)。

このほか、富士山周辺では、シカを一時的に餌付けした上で銃器により捕獲する「シャープシューティング(*53)」も行われている(事例I−10)。

国有林野事業では、今後、地域の関係行政機関等と連携しつつ、捕獲等による積極的な個体数管理や、野生生物との共存に向けた森林の整備を進めることとしている。

事例I-10 富士山国有林におけるシャープシューティングの実施 

事例I-10

静岡県の富士山周辺では、シカの生息密度が平成17(2005)年の50頭/km2から平成24(2012)年には130頭/km2へと急激に高まっている。
このため、静岡森林管理署(静岡市)は、平成23(2011)年度に、富士山国有林において、富士宮市等と連携しながら、シカを対象とする「シャープシューティング」を実施し、計6回で、73頭のシカを捕獲することができた。

資料:関東森林管理局「関東の森林から」平成24(2012)年10月号

 


(*51)北海道森林管理局パンフレット「国有林におけるエゾシカの被害と対策」

(*52)九州森林管理局調べ。

(*53)「シャープシューティング」とは、単に餌付けと狙撃を組み合わせた方法ではなく、一定レベル以上の技量を有する射手、動物の行動をコントロールするための給餌、警戒心の強い個体の出現予防等の体制を備えた捕獲手法のこと。


 

(自然再生の取組) 

国有林野事業では、引き続き、自然災害等により劣化した森林の再生復元に努めるとともに、地域の特性を活かした効果的な森林管理が可能となる地区では、地域やボランティア、NPO等との協働連携により、森林生態系の保全に向けて、荒廃した植生の回復等に取り組むこととしている。

(イ)森林林業の再生への貢献

現在、民有林を中心に、森林林業の再生に向けた取組が進められる中、国有林野事業に対しては、その組織技術力資源を活用することにより、我が国の森林林業の再生に貢献することが求められている。

国有林野事業では、これまでも、流域を基本単位として、民有林国有林を通じ、川上から川下までの一体的な連携を図る「森林の流域管理システム」の下で、民有林との連携による森林整備を進めるとともに、事業の発注を通じて地域の実情に応じた作業システムの普及定着に取り組んできた。また、国有林材の販売を通じて、間伐材や民有林からの供給が期待できにくい木材の安定供給に取り組んできた。

近年では、森林施業技術に関する交流会の開催や、国有林の准フォレスターによる「市町村森林整備計画」の策定支援などにも取り組んでいる(事例A.−11)。

今後は、森林林業の再生に貢献する観点から、低コスト化を実現する施業モデルの展開普及や、林業事業体の育成、森林林業技術者の育成、価格急変時の供給調整等の取組を強化することとしている。

事例I-11 低コスト造林の技術交流会を開催 

事例I-11

京都大阪森林管理事務所(京都市)は、平成23(2011)年11月に、鞍馬山国有林において、コンテナ苗等(注)による低コスト造林技術の技術交流会を開催した。
技術交流会には、民間事業体や研究機関、行政機関等から20名が参加して、苗木生産組合の担当者等から特徴や植栽方法について説明を受けた後、専用の植栽器を使って苗木の植付を体験した。
同所では、今後、植栽したコンテナ苗等の成長状況を調査していくこととしている。

注:コンテナ苗等については、第IV章(89−90ページ)参照。

 

(低コスト化を実現する施業モデルの展開と普及) 

林野庁では、低コストで効率的な木材生産を実現するため、地域の実情に応じた作業システムの普及定着に取り組んでいる。このような中、国有林野事業においては、事業の発注を通じて施策を推進するとともに、全国における多数の事業実績を統一的に分析することが可能である。

このため、国有林野事業では、今後、地域の地形条件や資源条件の違いに応じた低コスト作業システムを提案検証するとともに、先駆的な取組の事業化の可能性を追求して、民有林における低コスト作業システムの普及定着に取り組むこととしている。

(林業事業体の育成) 

林野庁では、林業事業体への情報提供の仕組みや林業事業体を登録評価する仕組みの導入等を通じて、林業事業体の育成に取り組んでいる(*54)。このような中、国有林野事業においては、国内最大の森林所有者という立場を活かして、事業の発注を通じ、林業事業体の経営能力の向上を促すことが可能である。

このため、国有林野事業では、今後、以下のような取組等により、林業事業体の能力向上や技術者の育成に貢献することとしている。

優良な事業体が正当に評価されるよう、各都道府県における林業事業体の登録評価の仕組みの活用を検討

市町村単位で将来事業量を対外的に明確化できる仕組みを導入

総合評価落札方式や事業成績評定制度の活用により、競争性を確保しつつ、林業事業体の創意工夫を促進

特記仕様書の活用により、先駆的な作業システムや手法の事業レベルでの展開を促進


(*54)林業事業体の育成については、16−17ページを参照。


 

(民有林と連携した施業の推進) 

林野庁では、森林施業の低コスト化のため、隣接する複数の所有者の森林を取りまとめて施業を一括して実施する「施業の集約化」を進めている(*55)。

国有林野事業では、民有林と国有林が近接する地域において、両者が連携した「森林共同施業団地」を設定して、一体的な路網整備や計画的な森林整備を推進している。平成23(2011)年度末現在、「森林共同施業団地」の設置箇所数は104か所、設定面積は15.8万ha(うち、国有林野は8.3万ha)となっている。

今後も、事業の効率化や低コスト化が図られる区域に、民有林と国有林の連携による「森林共同施業団地」の設定を進め、民有林と国有林が連結した路網の整備と相互利用、計画的な施業の実施、民有林材と国有林材の協調出荷等に取り組むこととしている。

(森林・林業技術者等の育成) 

林野庁では、森林・林業の再生を担う人材として、「森林総合監理士(フォレスター)」等の技術者の育成に取り組んでいる(*56)。近年、都道府県や市町村における林務担当職員の数が減少傾向にある中、国有林野事業の技術職員には、地域において指導的な役割を果たすことが期待されている。

このため、国有林野事業では、今後、職員を専門的かつ高度な知識・技術と現場経験を有する森林総合監理士(フォレスター)等に系統的に育成して、市町村行政の技術的支援を行うこととしている。また、事業発注や研修フィールドの提供等を通じて、民有林における人材育成の取組を支援することとしている。


(*55)施業の集約化については、14−15ページを参照。

(*56)人材の育成・確保については、17−19ページを参照。


 

(林業の低コスト化等に向けた技術開発) 

国有林野事業では、多様なフィールドを活用した技術開発を進めている。その成果は、国有林野の管理経営に活かすとともに、現地検討会等を通じて、地域の林業関係者等にも普及している。現在、全国で森林・林業の再生に向けた取組が進められる中、国有林野事業に対しては、特に、民有林でも適用できる林業の低コスト化技術等の開発を進めることが期待されている。

このため、国有林野事業では、今後、公益的機能の高度発揮等に対する国民の要請に対応しつつ、民有林経営への普及を念頭に置いた林業の低コスト化等に向けた技術開発をより一層進めることとしている。

(林産物の安定供給) 

国有林野事業では、国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るとともに、持続的・計画的な林産物の供給を行っている。

国有林野事業から供給される木材は、国産材供給量の2割を占めている。平成23(2011)年度の木材販売量は、立木販売(*57)が前年より9万m3減の58万m3、素材販売(*58)が前年より15万m3増の213万m3となっている。

木材の販売に当たっては、森林吸収源対策として積極的に進めている間伐に伴い生産される間伐材等を対象に、国産材の需要拡大や加工・流通の合理化等に取り組む製材工場や合板工場等と協定を締結して、国有林材を安定的に供給する「システム販売」を進めている。「システム販売」による素材販売量は、増加傾向で推移しており、平成23(2011)年度には、素材販売量の44%に当たる94万m3となった(資料I−13)。

また、多様な森林を有する国有林野の特徴を活かして、民有林からの供給が期待しにくい文化財の修復用資材等として、大径長尺材や木曽ヒノキ等を供給している(事例I−12)。

このような中、「森林・林業基本計画」の掲げる「木材自給率50%」の目標を達成するためには、地域における原木の安定供給体制を確立するとともに、木質バイオマスなど木材の新たな需要開拓を進める必要が高まっている。また、国有林野事業に対しては、国産材の2割を供給することができる優位性を活かして、価格急変時の供給調整機能を発揮することが期待されている。

このため、国有林野事業では、引き続き、公益重視の管理経営から得られる木材の持続的かつ計画的な供給に努めるとともに、新規需要の開拓に向けて、製紙用チップや燃料用チップ等の原木の安定供給や、未利用間伐材等の低コスト搬出システムの確立に向けた民有林材と国有林材の協調出荷等に取り組むこととしている。また、価格急変時の供給調整機能の発揮のため、今後、国有林野事業として、木材価格、需給動向、地域関係者の意見を迅速かつ的確に把握する取組を進めることとしている。


資料I-13

データ(エクセル:41KB)

事例I-12 伊勢神宮の「式年遷宮」行事への木材供給 

事例I-12

伊勢神宮(三重県伊勢市)では、20年に一度、御正殿を始め、御垣内の建物を全て建て替えて、御神体を新宮に遷す「式年遷宮」が行われている。平成25(2013)年には「第62回式年遷宮」が行われる。
木曽森林管理署(長野県木曽郡上松町)と東濃森林管理署(岐阜県中津川市)では、社殿の建替えに必要な資材として、平成23(2011)年度に、同神宮に木曽ヒノキを供給した。平成24(2012)年3月には、御正殿の御柱を立てる「立柱祭」が開催され、国有林から供給された資材が活用された。

 

 


(*57)樹木を伐採することなく、立木のままで販売すること。

(*58)樹木を伐採し、丸太にして販売すること。


 

(ウ)「国民の森林」としての管理経営 

国有林野の管理経営に当たっては、国有林野を国民共通の財産である「国民の森林」として位置付けた上で、国民に対する情報の公開、フィールドの提供、森林・林業に関する普及啓発などにより、国民に開かれた管理経営を行うことが求められている。

国有林野事業では、これまでも、国民への情報提供や意見の聴取を行ってきた。また、地元関係者やNPO・企業等との連携により、国民参加の森林づくりを進めるとともに、森林環境教育の場としての国有林野の利用を進めてきた。

今後も、これらの取組を進めるともに、新たに、「地域管理経営計画」等の策定に当たって、それまでの計画に基づく取組結果を示した上で、計画案の作成前の段階から、国民や地方公共団体等から幅広く意見を求めることとしている。

(双方向の情報受発信) 

国有林野事業では、「国民の森林」としての管理経営の透明性を確保するため、森林・林業に関する情報・サービスを提供するとともに、国有林野における活動全般について国民の意見を聴取している。

情報・サービスの提供としては、国有林野事業の実施に関する情報の提供、地域で開催される自然教育活動への協力、ホームページや広報誌による情報発信等に取り組んでいる。

意見の聴取としては、「地域管理経営計画」等の策定・変更に当たり、計画案を広く公表して意見を聴くとともに、計画案を作成する前の段階で地域住民との懇談会を開催するなど、対話型の取組を進めている。また、一般公募により「国有林モニター」を選定して、「国有林モニター会議」や現地見学会、アンケート調査等により、意見を聴取している。「国有林モニター」には、平成24(2012)年4月現在、全国で340名が登録している。

このような中、「地域管理経営計画」等の策定に当たっては、国民や市町村等の意見を更に積極的に反映するとともに、民有林と国有林の計画を一層調和したものとすることが求められている。

このため、国有林野事業では、今後、「地域管理経営計画」等の策定に当たり、それまでの計画に基づく取組・実績・現状を評価した結果を提示した上で、計画案の作成前の段階から国民や地方公共団体等から広く意見を求める取組を進めることとしている。

(「モデルプロジェクト」の実施) 

各地の森林管理局等では、地域の森林の特色を活かした効果的な森林管理が期待される地域において、地方公共団体やNPO、自然保護団体等と協働・連携して森林の整備・保全活動をモデル的に行う「モデルプロジェクト」を実施している。

関東森林管理局では、平成15(2003)年度から、群馬県利根郡みなかみ町に広がる国有林野約1万haを対象に、同森林管理局、地域住民で組織する「赤谷プロジェクト地域協議会」、公益財団法人日本自然保護協会の3者の協働による「赤谷プロジェクト」を進めている。

同プロジェクトでは、生物多様性の保全と持続可能な地域社会づくりを目指した森林管理を実施している。平成23(2011)年には、同森林管理局と関係者との協働により、将来の目標とする森林の姿や今後の方針等を定める「赤谷の森管理経営計画」を策定した。同計画では、人工林を自然林へ誘導することなどにより、希少な野生生物が生育・生息できる環境を創出するとともに、木材資源の持続的な利用も図ることとしている(*59)。

九州森林管理局では、平成16(2004)年度から、宮崎県東諸県郡綾町に広がる国有林野約9千haを核に、同森林管理局、綾町、宮崎県、公益財団法人日本自然保護協会、地元の複数のNPO等によって設立された「てるはの森の会」の5者の協働による「綾の照葉樹林プロジェクト」を進めている。同プロジェクトでは、照葉樹林の保護・復元を目指した森林管理を実施している。平成24(2012)年7月には、同プロジェクトの対象地域を中心とした「綾」14,580ha(うち、国有林野8,703ha)が「ユネスコエコパーク」に登録された(*60)。

国有林野事業では、引き続き、生態系の保全と持続可能な利活用の調和に向けた取組を進めることとしている。


(*59)関東森林管理局「赤谷の森管理経営計画書」(第4次地域管理経営計画書(利根上流森林計画区)別冊)(平成23(2011)年4月)

(*60)「綾」の 「ユネスコエコパーク」への登録については、トピックス(5ページ)も参照。


 

(NPO等による森林づくり活動への支援) 

国有林野事業では、自ら森林づくりを行いたいという国民からの要望に応えるため、NPO等と協定を締結して森林づくりのフィールドを提供する「ふれあいの森」を設定している。「ふれあいの森」では、NPO等が、植樹や下刈、森林浴、自然観察会、森林教室等の活動を行うことができる。平成23(2011)年度末現在、全国で137か所の「ふれあいの森」が設定されており、同年度には、年間延べ約1.3万人が国有林野における森林づくり活動に参加した。

また、森林管理署等では、NPO等に継続的に森林づくり活動に参加してもらえるよう、技術的な助言や講師の派遣等の支援も行っている。

国有林野事業では、引き続き、これらの取組を進めることとしている。

(「木の文化を支える森」の設定) 

国有林野事業では、歴史的に重要な木造建造物や各地の祭礼行事、伝統工芸等の次代に引き継ぐべき木の文化を守るため、「木の文化を支える森」を設定して、国民の参加による森林づくり活動を進めている。平成23(2011)年度末現在、全国で22か所の「木の文化を支える森」を設定している。

「木の文化を支える森」には、歴史的建造物の修復等に必要となる木材を安定的に供給することを目的とする「古事の森」を始めとして、木造建築物の屋根に用いる檜皮の供給を目的とする「檜皮の森」、神社の祭礼で用いる資材の供給を目的とする「御柱の森」等がある。

「木の文化を支える森」を設定した箇所では、地元自治体等からなる協議会が、植樹祭の開催や下刈作業の実施等に継続的に取り組んでいる(事例I−13)。

国有林野事業では、今後も、地域の歴史的木造建築物や伝統文化の継承等に貢献する取組を進めることとしている。

事例I-13 「祖谷のかずら橋・架け替え資材確保の森」の設定 

事例I-13

徳島県三好市にある「祖谷のかずら橋」と「奥祖谷二重かずら橋」では、橋の構造部材となるシラクチカズラ(サルナシ)の確保が年々困難になりつつある。このため、徳島森林管理署(徳島市)は、管内の国有林から、架け替え工事の資材として、シラクチカズラを供給してきた。
平成24(2012)年度からは、三好市との「木の文化を支える森」の協定により、同署管内の国有林660haに「祖谷のかずら橋・架け替え資材確保の森」を設定した。今後、同協定を踏まえて、三好市の実行委員会が、国有林内でシラクチカズラを計画的に育成することとしている。平成24(2012)年度には、地元中学生の協力を得て、シラクチカズラの挿し木苗400本の育成に取り組んだ。

資料:徳島森林管理署プレスリリース「「木の文化を支える森」における国民参加の森林づくり活動の公表」(平成24(2012)年3月28日付け)、四国森林管理局「グリーン四国」平成24(2012)年8月号: 5-6.

 

(森林環境教育の推進) 

国有林野事業では、森林環境教育の場としての国有林野の利用を進めるため、森林環境教育のプログラムの作成やフィールドの提供等に取り組んでいる。

この一環として、学校等と森林管理署等が協定を結び、国有林の豊かな森林環境を子どもたちに提供する「遊々の森」の設定を進めている。「遊々の森」では、地域の自治体やNPO等の主催により、森林教室や自然観察、体験林業などの活動が行われている。平成23(2011)年度には、新たに7か所で学校等と「遊々の森」の協定を締結して、全国の設定箇所数は175か所となった。

平成24(2012)年8月には、京都市で「「学校林・遊々の森」全国子どもサミット」が開催された。同サミットでは、全国20の小学校から「遊々の森」等における活動状況について報告が行われるとともに、京都市内の国有林で自然体験活動も行われた(*61)。

このほか、国有林野事業では、森林環境教育に取り組む教育関係者の活動を支援するため、森林環境教育の推奨事例集の作成、小中学校の教員を対象とする森林環境教育に関するセミナーの開催等に取り組んでいる(事例I−14)。

国有林野事業では、今後も、NPO等民間団体との連携を図りつつ、森林環境教育の場としての国有林野の利用を進めることとしている。

事例I-14 「森林環境教育手引書」を作成 

事例I-14

近畿中国森林管理局箕面森林環境保全ふれあいセンター(大阪市)は、平成24(2012)年3月に、「森林環境教育手引書(小学校編)」を作成した。同書では、小学校の教員が無理なく森林環境教育を実践できるよう、授業時間の目安、具体的な学習計画・内容、使用する教材・資材等を掲載して、授業の展開例を示している。また、同書には、森林・林業に関する図表や写真、動画を収録したDVDも添付している。
同センターでは、この手引書を2,000部発行して、教育関係機関やイベント実施時等に配布するとともに、インターネット上でも公開している。

(参考)手引書公開ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/kinki/minoo_fc/pdf/tebikishohonbun.pdf

 


(*61)林野庁「RINYA」平成24(2012)年9月号: 14、近畿中国森林管理局「森のひろば」平成24(2012)年9月号: 1.


 

(分収林制度による森林づくり) 

国有林野事業では、将来の木材販売による収益を分け合うことを前提に、契約者が苗木を植えて育てる「分収造林」や、契約者が生育途中の森林の保育や管理等に必要な費用の一部を負担して国が育てる「分収育林」の制度を通じて、国民参加の森林づくりを進めている。平成23(2011)年度末時点における設定面積は、分収造林で約12.5万ha、分収育林で約1.9万haとなっている。

分収育林の契約者である「緑のオーナー」に対しては、契約対象森林への案内や植樹祭等のイベントへの招待を行っている。また、契約者の多様な意向に応えるため、契約期間を10〜20年延長することを可能とする運用改善も行っている。

契約期間が満了して、木材販売を行った分収育林は、平成11(1999)年度から平成23(2011)年度までで1,128か所となっている。一口(50万円)当たりのオーナーの分収額は、平均32万円となっている。

また、分収林制度を活用して、企業等と契約を結ぶ「法人の森林」も設定している。「法人の森林」では、契約を結んだ企業等が、社会貢献や社員教育、顧客とのふれあいの場として、森林づくりを行っている。平成23(2011)年度末時点で、「法人の森林」の設定箇所数は499か所、設定面積は2,304haとなっている。

なお、分収林制度については、「管理経営法」の一部改正により、長伐期施業の推進のため、公益的機能の維持増進を図ることが適当と認められる場合は、これまでの上限を超えて契約期間を延長することが可能となった(*62)。

国有林野事業では、制度の改正も踏まえて、引き続き、分収林制度による森林づくりを進めることとしている。


(*62)「管理経営法」の改正については、25ページ参照。


 

(エ)国有林野の活用と震災からの復旧・復興への貢献 

国有林野は、国民共通の財産であるとともに、地域の資源でもある。このため、国有林野の活用により、地域産業の振興や住民福祉の向上に寄与するとともに、都市との交流を促進して地域社会の活性化に貢献することが求められている。

国有林野事業では、これまでも、国民の保健休養の場としての「レクリエーションの森」の提供や、地域振興のための国有林野の貸付け・売払い等に取り組んできた。今後は、再生可能エネルギーの利用に資する国有林野の活用も進めることとしている。

また、平成23(2011)年3月に発生した東日本大震災への対応・復旧に当たって、被災地の森林管理局・署は、地域に密着した国の出先機関として、地域の期待に応えた取組を行ってきた。国有林野事業では、今後も、震災からの復旧・復興に向けて、海岸防災林の再生や森林の除染等に取り組むこととしている。

(公衆の保健のための活用) 

国有林野事業では、優れた自然景観を有し、森林浴や自然観察、野外スポーツ等に適した国有林野を「レクリエーションの森」に設定して、国民に提供している。「レクリエーションの森」には、「自然休養林」、「自然観察教育林」、「風景林」、「森林スポーツ林」、「野外スポーツ地域」、「風致探勝林」の6種類がある。平成24(2012)年4月現在、全国で1,096か所、約38.8万haの国有林野を「レクリエーションの森」に設定している。平成23(2011)年度には、延べ約1.27億人が「レクリエーションの森」を利用した。

「レクリエーションの森」では、地方自治体を核とする「「レクリエーションの森」管理運営協議会」と地元の森林管理署等が協定を締結して、両者が連携しながら、利用者のニーズに即した管理経営を行っている。管理経営に当たっては、利用者からの「森林環境整備推進協力金」による収入や「サポーター制度」に基づく企業等からの資金も活用している。

このうち、「サポーター制度」は、企業等がCSR活動の一環として、「「レクリエーションの森」管理運営協議会」との協定に基づき、「レクリエーションの森」の整備に必要な資金や労力を提供する制度である(*63)。平成23(2011)年度末現在、全国9か所の「レクリエーションの森」において、延べ12の企業等が「サポーター」として、「「レクリエーションの森」管理運営協議会」と資金・労力提供に関する協定を締結している。


(*63)「「レクリエーションの森」のリフレッシュ対策の実施について」(平成17(2005)年4月25日付け17林国業第13号林野庁長官通知)


 

(国有林野の貸付け・売払い) 

国有林野事業では、農林業を始めとする地域産業の振興や住民の福祉の向上等に貢献するため、地方公共団体や地元住民等に対して、国有林野の貸付けを行っている。平成23(2011)年度末現在の貸付面積は約7.6万haで、このうち、道路・電気・通信・ダム等の公用・公共用又は公益事業用の施設用地が約5割、農地や採草放牧地が約2割を占めている。

また、国有林野の一部に、地元住民を対象として、薪炭材等の自家用林産物採取等を目的とした共同利用を認める「共用林野」を設定している(*64)。共用林野は、自家用のための落葉・落枝の採取を行う「普通共用林野」、自家用薪炭のための原木採取を行う「薪炭共用林野」、家畜の放牧を行う「放牧共用林野」の3つに区分される。共用林野の設定面積は、平成23(2011)年度末現在で、127万haとなっている。

さらに、国有林野のうち、地域産業の振興や住民福祉の向上等に必要な森林や庁舎・苗畑・貯木場の跡地等については、地方公共団体等への売払いを進めている。平成23(2011)年度には、ダム用地や道路用地等として、計378haの売払いを行った。

国有林野事業では、今後も、地方公共団体等と十分に情報交換を行いつつ、地域振興に寄与する国有林野の活用に取り組むこととしている。


(*64)「管理経営法」第18条


 

(再生可能エネルギーの利用に資する国有林野の活用) 

平成23(2011)年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、再生可能エネルギーに対する関心が高まっている。このような中、同7月に閣議決定された「規制・制度改革に係る追加方針(*65)」では、規制改革の一つとして、風力発電や地熱発電等の再生可能エネルギー発電設備に係る国有林野の貸付条件を緩和することとされた。

これまで、電力供給を目的とした民間業者への国有林野の貸付けに当たっては、公益性の観点から、一般電気事業者(*66)への売電量を発電量の過半とすること等が定められていた。これに対して、同方針では、売電先に卸電気事業者(*67)や特定電気事業者(*68)等を追加する方針を示した。

これを受けて、林野庁では、平成24(2012)年3月に、売電先に卸電気事業者や特定電気事業者等を追加し、これら電気事業者への売電量の合計が発電量の過半を超える場合には、国有林野の貸付けを認めることとした(*69)。

また、平成24(2012)年4月に閣議決定された「エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針(*70)」では、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」により再生可能エネルギー発電設備としての認定を受けた場合等について、随意契約による国有林野の使用を認める方針を示した。

これを受けて、林野庁では、平成24(2012)年6月に、認定を受けた発電設備については、公益事業の用に供するものとして、随意契約による国有林野の使用を認めることとした(*71)。

このほか、「管理経営法」の一部改正により、地域住民の共同のエネルギー源として国有林野の立木を使用する場合に、「共用林野」を設定できることとされた(*72)。

このような動きを踏まえて、国有林野事業では、今後、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の再生可能エネルギー源を利用した発電に資する国有林野の活用を進めるとともに、バイオマスエネルギー源としての共用林野制度の活用を進めることとしている。


(*65)「規制・制度改革に関する追加方針」(平成23(2011)年7月22日閣議決定)

(*66)一般の需要に応じて電気を供給する事業を営むことについて経済産業大臣の許可を受けた者(「電気事業法」(昭和39年法律第170号)第2条第2号)。

(*67)一般電気事業者に電気を供給する事業を営むことについて経済産業大臣の許可を受けた者(「電気事業法」第2条第4号)。

(*68)特定の供給地点における需要に応じて電気を供給する事業を営むことについて経済産業大臣の許可を受けた者(「電気事業法」第2条第6号)。

(*69)「国有林野を自然エネルギーを利用した発電の用に供する場合の取扱いについて」(平成24(2012)年3月30日付け23林国業第159号林野庁長官通知)

(*70)「エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針」(平成24(2012)年4月3日閣議決定)

(*71)「予算決算及び会計令の規定に基づき国有財産を随意契約によって売り払い、又は貸し付けする場合について(協議)」(平成24(2012)年6月29日付け24林国業第62号林野庁長官通知)

(*72)「管理経営法」の改正については、25ページ参照。


 

(東日本大震災からの復旧・復興への貢献)

平成23(2011)年3月に発生した東日本大震災では、国有林野においても、山腹崩壊や地すべり等の林地荒廃、防潮堤や海岸防災林等の治山施設の被害、法面・路肩の崩壊等の林道施設の被害、林野火災等の森林被害が発生した。

東北森林管理局等では、震災発生の翌日から、ヘリコプターによる現地調査を実施するとともに、現地に担当官を派遣することにより、被害状況を把握して、今後の対応について検討を行った。また、海岸地域において治山施設が流失した箇所のうち、浸水被害が危惧される箇所では、緊急対策工事として大型土のうの設置を行った。さらに、森林管理局・署職員による被災地への食料等支援物資の搬送や応急仮設住宅用杭丸太向けの原木の供給にも取り組んだ。

現在、国有林野事業では、国有林野における被害の復旧に取り組むとともに、被災地のニーズに応じて、海岸防災林の再生や原子力災害への対応等に取り組んでいる。

海岸防災林の再生については、国有林野における海岸防災林の復旧工事を行うとともに、宮城県知事からの要請を受けて、仙台湾沿岸地区では「民有林直轄治山事業」により、気仙沼地区では「特定民有林直轄治山施設災害復旧事業」により、民有林における海岸防災林の復旧にも取り組んでいる(*73)。

原子力災害への対応については、平成24(2012)年4月に、国有林内の放射性物質の除染を円滑に実施することを目的として、関東森林管理局に「森林放射性物質汚染対策センター」(福島市)を設置した。同センターでは、市町村と連携しつつ、市町村が作成する「除染実施計画」に基づき、住居等近隣の国有林野の除染に取り組んでいる。平成25(2013)年3月末現在、福島県、茨城県及び群馬県の3県約9haで国有林野の除染を実施している。

また、地方公共団体等から、汚染土壌等の仮置場として、国有林野を使用したいとの要請があった場合には、国有林野の無償貸付等により、積極的に協力している。平成25(2013)年3月末現在、4市4町3村の16か所で計約40haの国有林野を仮置場として、市町村や環境省等に無償貸付等を行っている(*74)(事例I−15)。

今後の復興に向けて、国有林野事業では、引き続き、NPOや企業等と連携した植栽等による海岸防災林の再生に取り組むとともに、地域の復興に必要な国有林の貸付け・売払い要望への積極的な対応や、復興用材をいつでも供給し得る体制の整備を図ることとしている。また、関係機関と連携しつつ、住民等近隣の国有林野の除染に取り組むとともに、実証事業の実施等により、森林の除染に関する知見の集積や技術開発にも貢献することとしている。

事例I-15 除去土壌等の仮置場の提供 

事例I-15

内閣府は、平成23(2011)年度に、警戒区域や計画的避難区域等の12市町村を対象に、除染の効果的な実施のために必要となる技術の実証実験等を推進するため、独立行政法人日本原子力開発機構への委託により、「除染モデル実証事業」を実施した。
関東森林管理局は、同事業の実施のため、除去土壌等の仮置場用地として、内閣府に、福島県伊達郡川俣町の国有林野0.75haを使用承認した。この仮置場には、フレキシブルコンテナ2,910個、計1,496トンの除去土壌等が保管された。

資料:第12回原子力委員会(平成24(2012)年4月3日)資料1−2

 


(*73)海岸防災林の再生については、第II章(47−50ページ)参照。

(*74)原子力災害からの復興については、第II章(57−66ページ)参照。


 

(オ)管理経営の実施体制

今後、国有林野事業が、公益重視の管理経営を一層推進しながら、地域における森林・林業の再生に向けた取組を推進する役割を果たしていくためには、森林管理局・署等の現場の機能と能力の向上を図ることが求められている。

また、国有林野の管理経営に当たっては、非常に長い時間軸の中で、広いスケールの森林を管理できる人材が必要であり、特に、地域の森林・林業を牽引するマインドと造林から伐採までのトータルな技術を持って、民有林をリードする人材が求められている。

このため、国有林野事業では、これまでの7森林管理局98森林管理署等の基本的体制を堅持した上で、都道府県等との連携強化や、民有林への指導やサポートの充実を図ることとしている。

また、森林に関する技術者としての専門的な知識・能力や、行政官としての幅広い知識・経験・能力を養うため、職員を対象として、研修の充実や森林総合監理士(フォレスター)等への系統的な育成等に取り組むこととしている。



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