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ホーム > 森林・林業白書 > 平成23年度 森林・林業白書(平成24年4月27日公表) > 平成23年度 森林・林業白書 全文(HTML版) > 第1部 第III章 第2節 国土保全の推進と野生鳥獣等の森林被害対策(3)


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第1部 第III章 第2節 国土保全の推進と野生鳥獣等の森林被害対策(3)

(3)野生鳥獣被害対策の推進

(野生鳥獣による被害が深刻化) 

近年、野生鳥獣の生息域の拡大等を背景として、シカ、クマ等の野生鳥獣による森林被害が新たな地域で発生する傾向にあり、全国で年間約5〜7千haの被害が報告されている。被害面積のうちシカによる枝葉や樹皮の食害が約7割、クマによる剥皮被害が約1割を占めている(図III-22)。

シカは、北海道から沖縄県まで全国に生息しており、林内や林縁、伐採跡地等を餌場としている。シカの密度が著しく高い地域の森林では、シカの食害によって、シカの口が届く高さ約2m以下の枝葉や下層植生がほとんど消失し、都市公園のような景観を呈している場合がある(*32)。このような被害箇所では、下層植生の消失や踏み付けによる土壌流出等により、森林の有する多面的機能に影響を与える可能性もある(事例III-7)。

シカによる被害は、全国約1万4千か所で実施している森林資源モニタリング調査の結果でみると、平成16(2004)〜20(2008)年度には、平成11(1999)〜15(2003)年度と比べて、シカの生息・被害が確認されたプロットの数は、大きく増加している(図III-23)。

また、クマは、主な餌となる堅果類(ミズナラ等のドングリやブナの実)の凶作等により餌が不足した場合、行動圏を拡大して、農地や集落に出没することが知られている(*33)。平成23(2011)年度には、北海道で住宅街へのヒグマ出没が多発し、平成24(2012)年1月現在のヒグマ捕獲数は780頭に上っている。これは、記録がある昭和30(1955)年度以降では、昭和37(1962)年度の868頭、昭和39(1964)年度の794頭に次ぐ捕獲数である(*34)。

事例III-7 ニホンジカによる日本の植生への影響 

植生学会は、平成21(2009)〜22(2010)年にかけて、同学会の会員等植生・植物の専門家に、シカによる森林や草原等植生への影響に関する情報提供を呼び掛け、その集計結果をまとめた。調査には、北海道から鹿児島県に至る46都道府県の154人から計1,155件の回答があった。
同調査では、2.5万分の1地形図の1月4日区画(約5km四方)を単位として集計を行った。その結果、回答があった区画の48%でシカによる植生への影響が認められ、20%で下層植生の著しい衰退や土壌の流出等の深刻な被害が生じていた。東北〜北陸地方の日本海側では、シカが生息しないため影響はほとんど認められなかったが、関東以西の太平洋側では深刻な影響が起きている地域が多数認められた。特に、近畿地方では影響が深刻であった。
影響が深刻な地域には、知床(しれとこ)、奥日光(おくにっこう)、奥多摩(おくたま)、富士山、南アルプス、大台ヶ原(おおだいがはら)、剣山(つるぎさん)、九州中央山地、屋久島(やくしま)など日本を代表する自然植生がみられる地域が含まれた。
シカの影響は、森林/草原、自然林/人工林、常緑樹林/落葉樹林の区別なくあらゆる植生型にみられ、海岸から高山にまで及んでいた。中でも、シラビソ林、ブナ林、シイ林等の自然林では、18〜32%で下層植生がほとんど失われており、人手の加わった二次林や人工林よりも強い影響を受けていた。



(*32)農林水産省 (2007) 野生鳥獣被害防止マニュアル −イノシシ、シカ、サル(実践編)−: 40-41.

(*33)環境省自然環境局「クマ類出没対応マニュアル」(平成19(2007)年3月)

(*34)北海道自然環境課調べ。



(総合的な野生鳥獣被害対策を実施) 

野生鳥獣被害対策では、「個体数調整」、「被害の防除」及び「生息環境管理」の3つを総合的に推進することが重要である(図III-24)。

「個体数調整」については、地方自治体や被害対策協議会等によるシカ等の計画的な捕獲や捕獲技術者の養成等が行われている。また、捕獲鳥獣の肉を食材として利活用する取組も全国に広がりつつある。

個体数調整の担い手である狩猟者は、年々減少するとともに、高齢化が進行していることから、狩猟者の育成・確保が課題となっている。このため、環境省は、平成23(2011)年9月に、「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」を改正して、平成24(2012)年度より、銃器を用いないで捕獲を行う場合、狩猟免許を受けていない者を補助者として含むことを認めることとした(*35)。

また、「被害の防除」については、森林所有者等自らが森林整備と一体として行う防護柵等の被害防止施設の整備や、防護柵等の設置方法を学ぶ技術講習会の開催、新たな防除技術の開発等が行われている。

さらに、「生息環境管理」については、農地に隣接した森林の間伐等により、見通しをよくして、鳥獣が出没しにくい環境(緩衝帯)をつくるとともに、針広混交林や地域の特性に応じた広葉樹林を育成する取組等が行われている。

また、対策の実施に当たっては、協議会等において、行政機関や森林所有者、森林組合等の関係者が情報の共有化や役割分担の明確化を図りながら連携して、地域が一体となった広域的な取組を行うことが重要となる。特に、個体数調整については、野生生物の広域的な移動特性を十分把握した上で、巡回的な捕獲や地域一斉の捕獲等により効果的に行うことが重要である(事例III-8、9)。

事例III-8 シンポジウム「野生鳥獣による森林被害対策を考える」を開催 

林野庁は、平成24(2012)年3月に、農林水産省内において、「野生鳥獣による森林被害対策を考える」と題するシンポジウムを開催した。同シンポジウムは、森林における野生鳥獣被害に対する効果的な対策や体制整備等について、関係者からの情報提供や意見交換を行うことにより情報を共有して、今後の対策に活かすことを目的とするもので、当日は、行政機関や大学・研究機関、林業者等から約200名が参加した。
シンポジウムでは、国や自治体、研究者等から事例発表が行われた。また、「野生鳥獣被害対策を如何に成功させるか」をテーマとするパネルディスカッションでは、パネラーから、「地域で設置する協議会では、各構成員が役割分担を自覚して被害対策に取り組むことが重要」、「森林生態系の維持・保全の観点からも早急な被害対策が必要」等の意見があった。また、翌日は、効果的な被害対策の技術開発について、成果の発表が行われた。
林野庁では、今回のシンポジウムで得られた知見を参考に、野生鳥獣による森林被害対策の推進に努める考えである。

事例III-9 狩猟と環境を考える円卓会議 

平成22(2010)年11月に、社団法人大日本猟友会を中心として、狩猟と環境に関する基本的認識を整理し、具体的取組に関する提言を行うことを目的とする「狩猟と環境を考える円卓会議」が設置された。同会議では、狩猟関係者から自然保護関係者まで様々な分野の有識者が意見交換を行い、平成23(2011)年6月に提言書を取りまとめた。
提言書では、シカ等の大型獣の増え過ぎによる農林業・生活環境への被害や自然生態系への悪影響、捕獲の担い手である狩猟者激減等を指摘した上で、「野生動物の命=自然の恵みを積極的にいただくことを通じて、生物多様性を守る」という価値観の変革、狩猟者・捕獲技術者の確保・育成、地域ぐるみで駆除や個体数調整に取り組む体制の構築等が重要であると提言している。



(*35)環境省ホームページ「野生鳥獣の保護管理に係る計画制度 基本指針」



お問い合わせ先

林政部企画課年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219
FAX:03-3593-9564

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